本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫 た 72-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041012581

作品紹介・あらすじ

旬の作家の「本の物語」。新たな一歩を踏み出す8編。新しい扉を開くとき、本があなたのそばにいます。執筆陣は、中田永一、宮下奈都、原田マハ、小手鞠るい、朱野帰子、沢木まひろ、小路幸也、宮木あや子。

感想・レビュー・書評

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  • 本の話だから、まあ予想がつくけど、と侮っていたら、結構いけた。凸凹はあるが。今まで読んだことのなかった作家のものが新鮮でよかった。この作家、読んでみようかという気にさせる。
    中田永一「メアリー・スーを殺して」この小説自体がメアリー・スーぽいがなあ。
    宮下奈都「旅立ちの日に」期待したけどねえ。手抜き。
    原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジェ」ピンと来ない。
    小手鞠るい「ページの角の折れた本」さすが元詩人だけあって、描写が美しい。物語もいい。
    朱野帰子「初めて本を作るあなたがすべきこと」察してちゃんの夫への対応に苦労する主人公が面白い。
    沢木まひろ「時田風音の受難」官能小説家と編集者との対峙に笑ってしまう。
    小路幸也「ラバーズブック」アメリカをピックアップトラックで一人旅する小説家の気持ちいい話。
    宮木あや子「校閲ガール」主人公の口の悪さが最高。

  • 本をめぐる物語…書き手であったり、読み手であったり、編集校閲であったり、様々な立場からの本をめぐる物語。前回読んだ「栞は夢を見る」よりも、こちらの作家陣の方が興味があった。
    私的に原田マハさんの話が飛び抜けて良かった。泣いてしまった。この話だけだったら間違いなく★5!他の話もそれぞれ勢いがあって面白く、短編だが大変読み応えがあった。

  • 「メアリー・スーを殺して」中田永一
    「初めて本をつくるあなたがすべきこと」朱野帰子
    「時田風音の受難」沢木まひろ
    「ラバーズブック」小路幸也
    「校閲ガール」宮木あや子

    この5篇が好きだったな
    1作目の「メアリー〜」が面白かったので、一気に読み切れた。

    小路さん以外は初めて読む作家さんなので、他のも読んでみたい。

  • 8人の語り手による短編集。
    本を通して見た世界はこんなにも多く、こんなにも刺激的。
    広がる世界の面白さを、あなたに。

    『メアリー・スーを殺して』
    メアリー・スーとは聞きなれない言葉だった。
    一体それは誰?
    この人物は、二次創作における、書き手の願望を一身に背負った自己愛の塊というべき人物。
    つまり、イタいキャラクターであり、ご都合主義的な登場人物ということらしい。
    ありがちな設定だ。
    プロの作家なら、それらを上手く操れるのだろうが、残念ながら多くの書き手はそうではない。
    自分の妄想とありがちな設定と底の浅さが露見する、書いている本人だけが満足できるという代物。
    このことに気づいた主人公、如月ルカは彼女を徹底的に排除すべく努力を開始する。
    それが彼女の扉を開けた瞬間だった。
    好きなことをもっと上手くなりたいと熱望し、自らを客観的に眺め、己と戦った。
    そして彼女はメアリー・スーと再会する。
    その再会は、きっと彼女にとって、大切な瞬間だったことだろう。

    『校閲ガール』
    出版社の校閲部に配属された悦子は、この仕事が好きではなかった。
    好きではなかったが、雑誌編集部に行くために彼女は真面目に、完璧に仕事をしていた。

    今や、素人が好き勝手に情報を配信できる時代。
    しかもその垂れ流す情報の多くはたった一人で書き、他人の目を通さぬまま世界中に発信される。
    だから、変換ミスもおおいし、誤用も多い。
    私も自分の文章を読み直しているかと問われたら、毎回はやっていない、というか、ざっと目を通すだけできっちり訂正をかけてはいない。
    だが、出版物はそうはいかない。
    一応、他人の目が入っているはずなのだ。
    さて、嫌だけど、嫌だから、悦子はきっちり仕事をこなす。
    言葉遣いはなってない、かもしれないが、意味もなく人を批判してくるわけではない。
    ゆとりと言われようが、商売女っぽいと言われようが、その相手にあるだろう思い込みを壊す感じが好きだ。
    実際にこんな人が後輩にいたら面倒だろうが、それはそれで面白いかもしれない。
    ただ、私のような大雑把な人間に校閲が務まるかはかなり怪しげなところだが。

  • ⚫メアリー・スーを殺して/中田永一(乙一)
    ⚫旅立ちの日に/宮下奈都
    ⚫砂に埋もれたル・コルビュジェ/原田マハ
    ⚫ページの角の折れた本/小手鞠るい
    ⚫初めて本をつくるあなたがすべきこと/朱野帰子
    ⚫時田風音の受難/沢木まひろ
    ⚫ラバーズブック/小路幸也
    ⚫校閲ガール/宮木あや子

    こういった本を読んでいつも思うのは、自分にとって新しい作家に出会える嬉しさ。
    といっても、今までは目当ての作家以外に1人2人いれば当たりだったが、今回は4人もいる。
    誰から手を出そうか。

  •  短編集。どれも面白く、さらりと読めた。

     作者・読者・装幀家・校閲者など、色々な立場から本と関わる主人公たちの、本に纏わる物語。

    「メアリー・スーを殺して」を特に気に入った。

  • 小路さんがいらっしゃるので購入。
    電車移動時間等におすすめな読みきりサイズの短編集。
    宮下さんはスコーレNo.4のみ読んだことがあり、他の方々の作品は初めて読みました。
    本というキーワードを多角的な視点でピックアップして物語が展開しています。

    「メアリー・スーを殺して」は、二次創作の畑を通ってきた身としては、お、俺を殺してくれ、と思うような暗黒時代を思い出させるような、そんなリアリティのある空気にえぐられました。面白かった。

    やっぱり大好きな作家さんということで贔屓目もりもりな気もしますが、「ラバーズブック」がとても好きです。読み返したい短編。短絡的じゃなくて完結していてなおかつ重量がある文章。すきです。

  • 中田永一(乙一)の作品が収録されていること、そして本にまつわる話のアンソロジーということで購入。
    しかし、朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」と沢木まひろ「時田風音の受難」以外はすべて『ダ・ヴィンチ』に掲載されたものだった。
    『ダ・ヴィンチ』に掲載される作品は結構クセがあるので苦手だ。
    案の定、この短編集も特徴的というか・・・。


    中田永一「メアリー・スーを殺して」
    おもしろかった。しかし、終盤にかけておもしろさが加速していくような他の乙一の作品と比べると、ややしりすぼみしている。
    あと、主人公の内面の話だと思ってたら外に向き始めたことにもやや違和感があった。
    「メアリー・スー」という理想像は、完全になくしてもいけないのだろうな。

    宮下奈都「旅立ちの日に」
    手紙に書かれた物語と、父からの本当のメッセージの間に飛躍を感じる。

    原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
    実話が元になっているようだが、小説としての見せ方が中途半端だ。
    ノンフィクションとして書くか、もっと飾り付けるかすればいい。

    小手鞠るい「ページの角の折れた本」
    どうして「あなた」という語りかけ口調なのか。
    ストーリーもなんだかよくわからなかったが、読み返す気にもならない。
    主人公みたいな女の人がとにかく苦手。

    朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」
    夫が情けないのは確かだとは思うが、主人公がすべて正しいような描き方が気に食わない。
    ラストの主人公にキレ方はスカッとしてよかった。

    沢木まひろ「時田風音の受難」
    おもしろい。
    官能小説は読んだことがないが、こういう感じの文章なのだろうか。
    主人公が女性編集者の百山に翻弄されるのと同じように、私も翻弄されていた。
    なおかつ、そうやって振り回されるのが心地良いのもよくわかる。

    小路幸也「ラバーズブック」
    素敵な話だと思う。
    しかし、アメリカっぽさを出しすぎで、押し付けがましい感じがする。

    宮木あや子「校閲ガール」
    校閲ってそんなところまで見てるのか、と勉強になった。
    ただ、やはり苦手な女の人が出てくる。


    全体的に、小説を読むというより、世間話を聞かされるような作品が多い。
    なので、あまり心に残らない。

    強い女の人ばかり出てくるのもひとつの特徴だと思う。
    『ダ・ヴィンチ』が女性向けだからだろう。
    掲載される作品は芸術ではなく商品であり、読んだ女性が快感を得られるようになっている。
    芸能界や海外といったキラキラ感も重要視している。
    そういう作品をうまく集めてくるのは、編集部が優秀でコンセプトが定まっているからだと思う。
    ただ、やはり男性にはうけないだろう。
    私が嫌悪感を抱いてしまうのも、器か小さいということ以上に、仕方ない面が大きいと思う。

  • 本をめぐる物語というか、本に係わる物語って感じ。
    色んなかかわり方があるとは思うけれど、それだけでなく、
    本が出来上がるまでに、色んな人が関わっているんだと思ったら
    ますます本が愛おしくなります。

    アンソロジーは新しい作家さんとの出会いの場である。
    ましてや本関連のアンソロジーときたら、期待度大である。

    好きなのは、「メアリー・スーを殺して」
    話の流れから、どんな結末になるかと思ったら
    さすがの乙一氏ですね。
    ある意味、予想外で中田氏らしい終わらせ方でした。
    ちょっとしたきっかけで、人って変われるんだって思わせる。
    これは読後感がよいです(p^_^q)

    「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
    最後に一気にこみ上げてきます。ブワーって来ます。

    「ラバーズブック」
    ステキ過ぎるお話。周りの人の優しさが素晴らしい(*´◇`*)

    原田マハさんと、小路幸也氏の本は、他の作品も読んでみたい。
    短編集なのに、大いに楽しませていただきました。

  • おもしろかった作品

    「初めて本をつくるあなたがすべきこと」朱野帰子
    夫のキャラクターがめんどくさくておもしろい。現実にもいる
    「時田風音の受難」沢木まひろ
    こんな優秀な編集者がいたら書けないものも書ける。でも心を蝕まれる・・・

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著者プロフィール

1978年福岡県生まれ、2008年『百瀬、こっちを向いて。』でデビュー。他の著書に『吉祥寺の朝日奈くん』『くちびるに歌を』『私は存在が空気』。別名義での作品も多数。

「2017年 『僕は小説が書けない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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