本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫 た 72-1)
- KADOKAWA/メディアファクトリー (2014年2月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041012581
感想・レビュー・書評
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「メアリー・スーを殺して」中田永一
「初めて本をつくるあなたがすべきこと」朱野帰子
「時田風音の受難」沢木まひろ
「ラバーズブック」小路幸也
「校閲ガール」宮木あや子
この5篇が好きだったな
1作目の「メアリー〜」が面白かったので、一気に読み切れた。
小路さん以外は初めて読む作家さんなので、他のも読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
8人の語り手による短編集。
本を通して見た世界はこんなにも多く、こんなにも刺激的。
広がる世界の面白さを、あなたに。
『メアリー・スーを殺して』
メアリー・スーとは聞きなれない言葉だった。
一体それは誰?
この人物は、二次創作における、書き手の願望を一身に背負った自己愛の塊というべき人物。
つまり、イタいキャラクターであり、ご都合主義的な登場人物ということらしい。
ありがちな設定だ。
プロの作家なら、それらを上手く操れるのだろうが、残念ながら多くの書き手はそうではない。
自分の妄想とありがちな設定と底の浅さが露見する、書いている本人だけが満足できるという代物。
このことに気づいた主人公、如月ルカは彼女を徹底的に排除すべく努力を開始する。
それが彼女の扉を開けた瞬間だった。
好きなことをもっと上手くなりたいと熱望し、自らを客観的に眺め、己と戦った。
そして彼女はメアリー・スーと再会する。
その再会は、きっと彼女にとって、大切な瞬間だったことだろう。
『校閲ガール』
出版社の校閲部に配属された悦子は、この仕事が好きではなかった。
好きではなかったが、雑誌編集部に行くために彼女は真面目に、完璧に仕事をしていた。
今や、素人が好き勝手に情報を配信できる時代。
しかもその垂れ流す情報の多くはたった一人で書き、他人の目を通さぬまま世界中に発信される。
だから、変換ミスもおおいし、誤用も多い。
私も自分の文章を読み直しているかと問われたら、毎回はやっていない、というか、ざっと目を通すだけできっちり訂正をかけてはいない。
だが、出版物はそうはいかない。
一応、他人の目が入っているはずなのだ。
さて、嫌だけど、嫌だから、悦子はきっちり仕事をこなす。
言葉遣いはなってない、かもしれないが、意味もなく人を批判してくるわけではない。
ゆとりと言われようが、商売女っぽいと言われようが、その相手にあるだろう思い込みを壊す感じが好きだ。
実際にこんな人が後輩にいたら面倒だろうが、それはそれで面白いかもしれない。
ただ、私のような大雑把な人間に校閲が務まるかはかなり怪しげなところだが。 -
中田永一(乙一)の作品が収録されていること、そして本にまつわる話のアンソロジーということで購入。
しかし、朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」と沢木まひろ「時田風音の受難」以外はすべて『ダ・ヴィンチ』に掲載されたものだった。
『ダ・ヴィンチ』に掲載される作品は結構クセがあるので苦手だ。
案の定、この短編集も特徴的というか・・・。
中田永一「メアリー・スーを殺して」
おもしろかった。しかし、終盤にかけておもしろさが加速していくような他の乙一の作品と比べると、ややしりすぼみしている。
あと、主人公の内面の話だと思ってたら外に向き始めたことにもやや違和感があった。
「メアリー・スー」という理想像は、完全になくしてもいけないのだろうな。
宮下奈都「旅立ちの日に」
手紙に書かれた物語と、父からの本当のメッセージの間に飛躍を感じる。
原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
実話が元になっているようだが、小説としての見せ方が中途半端だ。
ノンフィクションとして書くか、もっと飾り付けるかすればいい。
小手鞠るい「ページの角の折れた本」
どうして「あなた」という語りかけ口調なのか。
ストーリーもなんだかよくわからなかったが、読み返す気にもならない。
主人公みたいな女の人がとにかく苦手。
朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」
夫が情けないのは確かだとは思うが、主人公がすべて正しいような描き方が気に食わない。
ラストの主人公にキレ方はスカッとしてよかった。
沢木まひろ「時田風音の受難」
おもしろい。
官能小説は読んだことがないが、こういう感じの文章なのだろうか。
主人公が女性編集者の百山に翻弄されるのと同じように、私も翻弄されていた。
なおかつ、そうやって振り回されるのが心地良いのもよくわかる。
小路幸也「ラバーズブック」
素敵な話だと思う。
しかし、アメリカっぽさを出しすぎで、押し付けがましい感じがする。
宮木あや子「校閲ガール」
校閲ってそんなところまで見てるのか、と勉強になった。
ただ、やはり苦手な女の人が出てくる。
全体的に、小説を読むというより、世間話を聞かされるような作品が多い。
なので、あまり心に残らない。
強い女の人ばかり出てくるのもひとつの特徴だと思う。
『ダ・ヴィンチ』が女性向けだからだろう。
掲載される作品は芸術ではなく商品であり、読んだ女性が快感を得られるようになっている。
芸能界や海外といったキラキラ感も重要視している。
そういう作品をうまく集めてくるのは、編集部が優秀でコンセプトが定まっているからだと思う。
ただ、やはり男性にはうけないだろう。
私が嫌悪感を抱いてしまうのも、器か小さいということ以上に、仕方ない面が大きいと思う。 -
「ラバーズブック」古き良きアメリカのドラマのよう。ピックアップトラックという言葉からずっと頭の中に佐野元春の曲が流れて郷愁に胸をくすぐられる。
「メアリースーを殺して」若い頃、同じような妄想をしたなぁ。なんか懐かしい。
一冊の本から生まれるいろんなストーリー。
いろんな作家に出会うきっかけとなるアンソロジー。 -
本屋さんとか図書館とかじゃなくて、「本」に関わるアンソロジーだったので作家さんとか装丁とかのお話ばっかりで楽しかった!!中田さんのお話はやっぱりいいなあと再認識したのでした。
あと夫が本を出す話が良かったなあ。読んだことない人がいっぱいいたのでこっから新しい作家さん開拓したいと思いました! -
シリーズ別冊「栞は夢をみる」が面白かったので、こちらも。
リーダビリティ抜群で、短時間で読了。
読書から離れて久しい娘も、気になって読んでいたみたい♪読みやすいんです(*^-゜)b
中田永一さん、宮木あや子さん目当てでしたが、お初の朱野帰子さん、沢木まひろさんの作品がとてよ面白かったです。
小路幸也さんもまぁ爽やかだけどよかったかな^^;
宮下奈都さん、原田マハさん、小手鞠るいさんはやっぱり苦手…マハさんにいたっては「作家より」なんて反則じゃないのかなぁ?(笑)キャリアをひけらかす作風がどうしても鼻についてしまうノデス (_"_)
◆メアリー・スーを殺して/中田永一
メアリー・スー=中2病、か。わかるわ〜。
私にも憶えがあって、恥ずかしすぎる(笑)
◆旅立ちの日に/宮下奈都
短すぎるし面白く無さすぎてビックリした。
◆砂に埋もれたル・コルビュジェ/原田マハ
タイトルがいつもカチンとくる(笑)
私の好きな画家や建築家だけに、なおさら(笑)
◆ページの角の折れた本/小手鞠るい
絡まった糸を解すべく再読して登場人普通の関係を読み解くべきなんだろうけど…再読する気にはなれずゴメンなさい。
◆初めて本をつくるあなたがすべきこと/朱野帰子
面白かった!メンドくさい夫に気を遣う妻。
ゆーたれゆーたれ!って気分爽快だったし、夫も実は可愛くて、なんかほのぼのしました(´౪`)
◆時田風音の受難/沢木まひろ
これも面白かったな〜(´౪`)官能的な作風なのかな?
◆ラバーズブック/小路幸也
LOVEだねぇってやつですか^^;
◆校閲ガール/宮木あや子
宮木さんの作品じゃなかったらキライだったかも(*^v^) 口悪すぎやろ河野悦子。確か同タイトルの本があったと思うけど続きかな?読みたい。 -
▶「メアリー・スー」という言葉を初めて知りました。でも、どんな作品にもメアリー・スーは影を見せてると思うし彼女がいなければその作品は面白くなくなるのでは? とも思ったり。▶小路幸也さんの「ラバーズブック」はスッキリとしていて気に入りました。▶宮城あや子さんの「校閲ガール」は主人公のキャラが楽しかったです。▶表紙カバー絵は片山若子さん。この方の絵は好きです。SF作品の『たったひとつの冴えたやり方』や、米澤穂信さんの『小市民シリーズ』なんかで気になっていました。カバー絵買いの対象の一人です。
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最近お気に入りの中田永一さん、宮下奈都さん、宮木あや子さん等の作品が含まれた短篇集だったため、迷わず手に取りました。
やはり中田永一さんはおもしろかった!
朱野帰子さんの作品は初めてでしたが、他の作品も読んでみたいと感じました。 -
タイトル通り、本にまつわる短編のアンソロジー。
中田永一の作品が読みたかったのと、他の作家が著作を読んだことのない名前ばかりだったので、新規開拓のため読みました。
表紙のイラストを見るに若い読者がターゲットかと思いましたが、話のキーとなる本は二次創作の同人誌から戦争に関わるものや官能小説まであり、全体として不思議な一冊。
お目当ての中田永一「メアリー・スーを殺して」に関しては、メアリースーという言葉は知っていましたので、オタク趣味で中高生の時分そういった部活に所属こそしなかったものの周囲に部員の友人がたくさんいた自分としては、なんかもう胃が痛かったです。創作活動は簡単なことじゃないぞという内容を十代でデビューした著者が書いたんだから、なんだかな、という感じ。あと乙一の描く女子は何故「実は美人」ばかりなんだろう。わざとやっているんだろうけど、メアリースーそのもの。男子は等身大に見えるキャラクターが多いのに。まさか、女の子は誰だって本当は可愛いのよ、という考えの持ち主なのか?男子の実態は女である私には想像するしかない部分も大きいので、等身大と感じるのが間違いなだけなのかもしれない。
他の作品に関しては、言葉選びや運びが面白かった小手鞠るい「ページの角の折れた本」、言い回しは好みではないが頭の中にはっきり風景の浮かぶ描写とストーリーが良かった小路幸也「ラバーズブック」、キャラクターが立っていて爽快な宮木あや子「校閲ガール」が気に入りました。それぞれ他の著作も読んでみようと思う。「校閲ガール」は連作短編集になる予定とあるので既に出ているのかな。 -
小路幸也の話がおもしろかった。