刑事マルティン・ベックロセアンナ (角川文庫)

  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041013830

感想・レビュー・書評

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  • 「マイ・シューヴァル」、「ペール・ヴァールー」共著の長篇ミステリー作品『刑事マルティン・ベック ロセアンナ(原題:Roseanna)』を読みました。

    「マイ・シューヴァル」、「ペール・ヴァールー」共著は、昨年6月に読んだ『刑事マルティン・ベック 笑う警官』以来なので、ほぼ1年振りですね。

    -----story-------------
    バルト海近くの運河で見つかった遺体。
    背景にあるのは性暴力か--。

    ボーレンスフルトの閘門で、全裸女性の絞殺死体が見つかった。
    身元不明の遺体には誰からの問い合わせもなく、事件は膠着状態に陥ったかに見えた時、アメリカの警察から一通の電報が届いた。
    「ソレハコッチノサガシテイルオンナダ」。
    「ロセアンナ・マッグロー」、27歳。
    この知らせをきっかけに、刑事「マルティン・ベック」は、「ロセアンナ」と関係をもった男達についての証言を探ってゆくが―。
    警察小説の金字塔シリーズ・第一作。
    ----------------------

    「ヴィヴェカ・ステン」、「カミラ・レックバリ」、「オーサ・ラーソン」、「アンデシュ デ・ラ・モッツ」に続きスウェーデン作家の作品… 北欧ミステリが続いています。

    以前読んだ『刑事マルティン・ベック 笑う警官』は、スウェーデンの警察小説「マルティン・ベックシリーズ」の第4作(1968年)でしたが、、、

    本作品は1965年に発表された「マルティン・ベックシリーズ」の記念すべき第1作です… 携帯電話がなく公衆電話が使われていたり、ICレコーダではなくカセットテープが使われていたりという違いはありますが、内容は古びてなく、骨太の警察小説を愉しめる一冊でしたね。


    1964年7月8日、エステルイェータランド県モータラのボーレンスフルト閘門(こうもん:水位に高低差がある水路を運行するために船を昇降させる装置・水門)で作業中の浚渫船が女性の死体をボーレン湖中から引き上げた… 地元のモータラ署は「グンナル・アールベリ警部」の担当で捜査を開始、、、

    司法解剖の結果、性的暴行を受けた後に絞殺されたことは判明したが被害者の身元は不明のまま捜査は行き詰まり本庁の応援を仰ぐことに… ストックホルムから「マルティン・ベック」とその部下達がモータラに集まり捜査を開始したが、現地ではめぼしい進展が無く捜査陣はいったん散開した。

    9月29日、アメリカ合衆国の大使館経由でネブラスカ州の警察から失踪者の照会がベックの元に届いた… 確認すると被害者はリンカーンの図書館に勤務する司書の「ロセアンナ・マッグロー」であることが判明、、、

    同じ頃、「アールベリ」から事件発生と同時期に現場付近を通常のスケジュールとは異なる時間帯に通過した遊覧船があったという情報が入った… 船客名簿を確認すると被害者の名前があり、被害者は船上から投げ落とされたと推測された。

    船客への聞き込みを進めるうちに捜査線上に1人の不審な人物が浮かび上がり事情聴取も行ったが、決め手となる証拠を見つけることはできなかった… そこで「ベック」らは通常とは異なる捜査手法(女性警察官を使った囮捜査)を試してみることにした、、、

    容疑者は、なかなか罠にかからず作戦は難航… 焦燥感が募る中、事件は急激な進展を見せ、囮となった女性警察官が危機に陥る事態に!


    奇想天外なトリックはなく、天才的な刑事や探偵も登場せず、捜査は行き詰まり足踏み状態が続く… 被害者の身元が判明するまに3ヵ月近くかかり、その後も警察の地道で辛抱強い捜査が続き、事件解明までに半年以上も要する、、、

    刑事たちはヒーローとは程遠い存在で、家族との関係も良好とは言えず、地下鉄で気分が悪くなり、胃の調子が悪く食事もろくに摂れない… それでも、独特の魅力があり、最後まで集中して読める作品でしたね。

    登場する人物がフツーの人で、身近にいても違和感のない存在だから、感情移入して読めることが魅力のひとつなんでしょうね。


    『刑事マルティン・ベック 笑う警官』よりも、本作の方が面白くて印象的でした、、、

    新訳により邦題が『ロゼアンナ』から『ロセアンナ』に変更になったそうです… スウェーデン語にはザジズゼゾの濁音がなく、言語に忠実にしたんだそうです。


    以下、主な登場人物です。

    「マルティン・ベック」
     スウェーデン警察本庁刑事殺人課犯罪捜査官

    「レンナート・コルベリ」
     同刑事殺人課捜査官

    「フレドリック・メランダー」
     同刑事殺人課捜査官

    「オーケ・ステンストルム」
     同刑事殺人課捜査官

    「エルマー・B・カフカ」
     ネブラスカ州リンカーン市警察殺人課捜査官

    「ハンマル」
     スウェーデン警察本庁刑事殺人課警部

    「グンナル・アールベリ」
     モーターラ警察署捜査官

    「ラーソン」
     モーターラ警察署警部

    「ウステルユートランド県警察本部長」

    「ロセアンナ・マッグロー」
     被害者

    「ソニア・ハンソン」
     巡査

  • 1965年執筆と有って、新訳とは言うものの、古典臭たっぷり。海を経だった捜査と言い、犯人像と言い、今では当たり前なのに、当時ではユニークだったろう。
    6割を過ぎるまで何とも地味で退屈な捜査の動き、後半一気に劇画チックに走る。

  • この有名シリーズを今まで手に取らなかったなが残念でならない。マンケルよりもヒラリーウォーを思い出した。酷い陵辱を受けて殺された女性の死体が発見された所から話が始まる。数ヶ月は身元さえ分からないのだが、主人公や他の警官は淡々とやるべきことをやり、徐々にに真相をつかんでいく。その過程が、派手さは全くないのに全然退屈しない。後半、犯人を罠にかける場面もじっくり書かれていて実にリアルだ。先を読むのが楽しみ。

  • 本シリーズを読まずして警察小説は語れない。

    「忍耐という美徳の物語」は、ヴァランダー・シリーズにも共通している。被害者を特定することに始まり、リストを潰し関係者に話を聞き、焦りと苛立ち、不眠や疲労に悩まされる半年間の捜査時間が、等身大の刑事の目線でシンプルに描かれる。派手さはないが、堅実な展開と魅力溢れる捜査チームにハマってしまい、気付くと読み終えるのが勿体無く感じていた。

    ヘニング・マンケルがあとがきを書いていたが、読み終えると彼が本シリーズをリスペクトしていることに納得する。マルティン・ベックがいなければ、クルト・ヴァランダーも生まれなかったのではないかと思うくらい。いいキャラ、いいチーム。そして安心の柳沢さん、ありがとう。次回作が待ち遠しい!

  • 年に1回刊行予定の「マルティン・ベック」シリーズの新訳、本来なら第1作目ですが「笑う警官」から先に出ちゃいました。でもこれが第1作です。
    旧訳では「ロゼアンナ」だったのですが、スウェーデン語にはザジズゼゾの濁音が無いので今回改めたということです。今回はスウェーデン語からの翻訳ということで、旧訳とは微妙に人名などが違ってます。
    基本的な話はロセアンナというアメリカ人女性が殺されて、警察がそれを解決しようとする…という、とっても単純なお話ではありますが、マルティン・ベックという人間くさく、しかし腕利きの刑事やその仲間が粘り強く犯人を追い詰める描写は、すごいトリックやアクションがあるわけでもないのに緊迫感があり、先が気になってしまいます。
    また、どこかにいそうなそれぞれの刑事たちの個性、行ったことはないけれど、スウェーデンの街並みの描写の細かさが臨場感あります。
    スウェーデン本国でも最近、全十巻の新装版が発売されたそうで、どれだけ人気があるのかが伺えます。
    (最近の北欧ミステリブームもあるのかもしれませんが)
    一度読んだ作品ですが、続きが楽しみです。

  • 刑事マルティン・ベックシリーズの第一作。スウェーデン語からの新訳の第二弾。時は1960年代、スパイ小説全盛期に一石を投じた作品である。正体不明の他殺体の女性の身元が判明したとき動き出すストーリーの面白さに脱帽。

  • 現代的って単語がほんまその通り。
    ただそれをン十年前に書いてるんがすごい。

著者プロフィール

1935年、ストックホルム生まれ。雑誌記者・編集者を経て65年から10年間ペール・ヴァールーとマルティン・ベックシリーズを10作書き上げる。ストックホルムに詳しく、マルティン・ベックシリーズの陰の主役ストックホルムの町と人々の暮らしの卓越した描写はマイの功績。現在ノルウェー語、デンマーク語、英語の翻訳者。

「2017年 『バルコニーの男 刑事マルティン・ベック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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