刑事マルティン・ベック 煙に消えた男 (角川文庫)

  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041014806

作品紹介・あらすじ

取材でハンガリーを訪れたルポライターが消息を絶った。単身ブタベストに飛び、同僚からの情報を頼りに捜査に当たる刑事マルティン・ベック。だが、やがて執拗な尾行者に悩まされるようになり--。

感想・レビュー・書評

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  • スウェーデンの夏休みと、ハンガリー。
    スルカというハンガリーの刑事とマルティンベックの出会いで二つの事件をならべる。絡むのか絡まないのか?麻薬に関係するのがハンガリー。消えた男はスウェーデンでの素行が悪く、それはそれで別の犯罪である。甘い生活。侮辱。静けさ。退屈さ。北欧の空気を感じさせる。忘れているので再読が必要だ。

  • 長さ、トーンが絶妙、名作だわ

  • 刑事マルティン・ベックシリーズ2作目。ブダペストで失踪したと見られる記者の捜査のために、ベックはバカンス返上でハンガリーに向かう。
    ストーリーは地味に展開するが、1960年代のブダペストやストックホルムの空気感が伝わり、街も楽しめる。時代も国も全く違うのだが、ベックがごく普通の疲れた中年刑事であり、親近感を感じる。

  • スウェーデンの作家「マイ・シューヴァル」、「ペール・ヴァールー」共著の長篇ミステリー作品『刑事マルティン・ベック煙に消えた男(原題:Mannen som gick upp i rok、英題:The Man Who Went Up in Smoke)』を読みました。

    「マイ・シューヴァル」、「ペール・ヴァールー」共著は、一昨年の7月に読んだ『刑事マルティン・ベック ロセアンナ』以来なので、ほぼ2年振りですね… 北欧ミステリは3月に読んだ「ヘニング・マンケル」の『北京から来た男』以来なので2ヶ月振りです。

    -----story-------------
    夏休みに入った刑事「マルティン・ベック」にかかってきた一本の電話。
    「これはきみにしかできない仕事だ」。
    上司の命で外務大臣側近に接触した「ベック」は、ブダペストで消息を絶った男の捜索依頼を受ける。
    かつて防諜活動機関の調査対象となったスウェーデン人ジャーナリスト。
    手がかりのない中、「鉄のカーテンの向こう側」を訪れた「ベック」の前に、現地警察を名乗る男が現れる―。
    警察小説の金字塔シリーズ・第二作。
    ----------------------

    1966年(昭和41年)に発表されたスウェーデンの警察小説「マルティン・ベックシリーズ」の第2作です… これまでに読んだシリーズ第4作の『刑事マルティン・ベック 笑う警官』、シリーズ第1作の『刑事マルティン・ベック ロセアンナ』でも感じたことですが、犯罪の不可解性や捜査にあたる警察官の行動・推理、その家族の立場等、発表から50年を経た現代社会でも十分通用する内容で、骨太の警察小説・犯罪小説を愉しめる一冊でしたね、、、

    本作品は2016年(平成28年)に新訳により再販された作品で、旧版では『蒸発した男』というタイトルだったようですね。


    1966年(昭和41年)8月、夏の休暇初日を群島で過ごしていた「マルティン・ベック」は上司でスウェーデン警察本庁刑事殺人課警部の「ハンマル」から緊急の呼び出しを受けた… 「ハンマル」のもとに出頭すると外務省に行き外務大臣の側近という人物の話を聴くように指示された、、、

    その人物の話によると、ある大手の週刊誌専属のジャーナリストの「アルフ(アッフェ)・シクスティン・マッツソン」が取材先のブダペストで行方不明になっているので探して欲しいという依頼であった… スウェーデン人がハンガリーで行方不明となるという事例はスウェーデンの外交官で1945年(昭和20年)1月にブダペストでソ連によりスパイ容疑で逮捕されたまま行方不明となった(恐らく1947年(昭和22年)7月にモスクワで処刑された)「ラウル・ヴァレンベリ」の件を想起させ、国際問題に発展するような事態にはしたくないという配慮があった。

    夏休み中の「ベック」は不承不承この事件を引き受け、まず国内で「マッツソン」の身辺調査を行うが失踪の要因となるようなものは見つからなかった… ブダペストに渡り「マッツソン」が宿泊していたホテルを拠点に捜索を始める「ベック」には彼につきまとう影があった、、、

    ストックホルムで「マッツソン」について情報収集をする「レンナート・コルベリ」から「マッツソン」が交際しているハンガリー人女性で元水泳選手の「アリ・ブック」のことを知らされた「ベック」は探して会いに行くが、その女性からは「マッツソン」という人物は知らないと言われてしまう… 「マッツソン」の足取りを追い続ける「ベック」であったが、ある暑い晩散歩に出たときに二人組の男に襲われた。

    生命の危険に晒された「ベック」だったが、ハンガリー人少佐「ヴィルモス・スルカ」等に救出され、「ベック」を襲った二人組が逮捕されたことから、「マッツソン」は彼等と麻薬取引を行っており、東欧諸国等で調達した麻薬をスウェーデンで売りさばき、多額の収入を得ていたことが判明、、、

    また、スウェーデン国内で「マッツソン」の調査を進めていた「コルベリ」等は、「マッツソン」は酒癖が悪く、泥酔して女性に手を出そうとしたり、女性を侮辱したことがきっかけで何度もトラブルを起こしていたことが判明… そして、「ベック」は、「マッツソン」の目撃証言の服装や残された服装、ブダペストでの他の旅行者のパスポート紛失等から、「マッツソン」はスウェーデン国内から出ておらず、別な人物が「マッツソン」になりすましてブダペストを訪問していたという推理を組み立てる。

    あとは、真犯人と目する人物を落すだけ… 「マッツソン」のジャーナリスト仲間の自宅を訪ねた「ベック」は、時間をかけて徐々に犯人を追い込んでいく、、、

    今回の事件は2週間程度で解決しましたが… ブダペストでの現地捜査で思うような成果をあげることが出来ず焦燥感が募るものの、スウェーデン国内に残った仲間たちの協力を得つつ、地道で辛抱強い捜査が功を奏する結果となりましたね。

    刑事たちを中心とした、登場する人物が、身近にいても違和感のない存在として描かれているので、感情移入しやすいのことが魅力のひとつだと思います… あと本作品の魅力は当時のブダペストの佇まいが、とれもリアルに、情感豊かに描かれていることかな、、、

    ブダペストの街中を流れる雄大なドナウ川や、その水辺の建物や人々の生活、モーターではなく蒸気でドナウ川を走る観光船、桟橋や市民プールでくつろぐ人々、市民の憩いの場であり硫黄の匂いのする温泉プール、ギーギーと音を出す古いホテルの古いベッド、レストランでの魚のスープ 等々、東欧の古い都市の魅力が、たっぷりと描かれていて、一度、訪れてみたくなりましたね。


    以下、主な登場人物です。

    「マルティン・ベック」
     スウェーデン警察本庁刑事殺人課犯罪捜査官・警部補

    「オーケ・ステンストルム」
     同刑事殺人課捜査官

    「レンナート・コルベリ」
     同刑事殺人課捜査官

    「フレドリック・メランダー」
     同刑事殺人課捜査官

    「ハンマル」
     スウェーデン警察本庁刑事殺人課警部

    「アルフ(アッフェ)・シクスティン・マッツソン」
     ジャーナリスト

    「オーケ・グンナルソン」
     マトソンのジャーナリスト仲間

    「ベングド・エイラート・ユンソン」
     マトソンのジャーナリスト仲間

    「アリ・ブック」
     ブダペストに住む元水泳選手

    「テッツ・ラーデベルゲル」
     ドイツ人ツアーコンダクター

    「テオドール・フルーベ」
     ドイツ人ツアーコンダクター

    「ヴィルモス・スルカ」
     ハンガリー人少佐

  • 刑事マルティン・ベック・シリーズの2作目で、舞台は1966年夏のストックホルムとブダペスト。

    ベックは遅めの休暇に入ったが、家族と島で過ごし始めた途端に呼び戻された。外務省の高官から依頼されたのは、ブダペストで消息を絶ったジャーナリスト、アルフ・マッツソンの捜索だった。ストックホルムからブダペストに到着し、ホテルにチェックインした直後から行方が分からないという。マッツソンはなぜ、どこへ消えたのか。ブダペストで同じホテルに泊まり調査を開始したベックは、やがて尾行されていることに気づき、警察官からの接触を受けた。

  • 話がなんとなくぼやけたまま終わってしまった。
    盛り上がりに欠けている印象で、ちょっと残念

  • 刑事マルティン・ベックシリーズ。初刊行当時は、シリーズ通りに刊行されていない。これは新装版。
    北欧デンマーク。やっと取れた夏季休暇を家族と過ごす筈が、初日にして呼び戻されるベック。
    当時共産圏だったハンガリーでルポライターが消えたのだ。ブタベストに飛び、同僚からの情報を頼りに捜査に当たるも、まるで煙のように消えた男の行方は分からず。。

  • 当時の社会情勢が分かります
    風景の描写が分かりにくいと感じました
    ストーリーはシンプルですが良いです

  • 夏のバカンスの初日、ストックホルムの島で休暇を過ごしていた、マルティン・ベックが署に呼び戻されるところから物語が始まります。仕事の内容は、ハンガリーで行方不明になったジャーナリストを探し出すというものでした。
    この小説が書かれた当時、ハンガリーはまだ鉄のカーテンの向こう側にあったようです。ヨーロッパ近代史の知識がない自分には、この事件がどうして微妙な問題を含んでいるのかわかり辛い部分がありました。そういう意味では、解説を先に読んだ方が理解しやすいと思います。
    卓越した能力があるわけでもなく、タフガイでもない主人公たちは、けっしてヒーローではありません。どこにでもいそうな普通の男として描かれる彼らの姿が、このシリーズの魅力になっているのでしょうネ。


    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 刑事マルティン・ベック第2作。1966年に刊行されたらしい。

    あらすじ
    スウェーデンジャーナリストが、ハンガリーで行方不明になった。当時は「鉄の向こう側」と呼ばれていた国。ベックは、夏休み返上で捜査にあたる。ヴァルモス・スルカというハンガリー少佐とも出会う。

    ハンガリーが共産圏だったことも知らなかった。相変わらず捜査はスローで地味。ベックが、ハンガリーからスウェーデンに帰ってきて、マルメの警察にいたときの、警察同士の雑なやりとりが好きだ。

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著者プロフィール

1935年、ストックホルム生まれ。雑誌記者・編集者を経て65年から10年間ペール・ヴァールーとマルティン・ベックシリーズを10作書き上げる。ストックホルムに詳しく、マルティン・ベックシリーズの陰の主役ストックホルムの町と人々の暮らしの卓越した描写はマイの功績。現在ノルウェー語、デンマーク語、英語の翻訳者。

「2017年 『バルコニーの男 刑事マルティン・ベック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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