総理大臣暗殺クラブ (単行本)

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著者 : 白河三兎
制作 : 也 
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年7月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041014820

総理大臣暗殺クラブ (単行本)の感想・レビュー・書評

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  • 冒頭───

    入学式が終わって体育館を出ると、部活動の勧誘が待ち構えていた。それぞれのコスチュームに身を包み、キャッチセールス顔負けの無駄に爽やかな声で新入生に呼びかける。
    体育館から校門まで桜並木が続いている。入学式に合わせたかのように見事に満開になっているのだが、桃色の花弁が散る中でカラフルなコスプレもどきをした人たちが騒いでいるのは、あまりにも見苦しい。桜への冒涜に等しい。

    新入生の双子の姉小松茂子は、妹三重子を盲目の恋から立ち直すために高校内に政治部を創設する。
    メンバーは、いつでも沈着冷静な茂子。
    恋に恋してしまった妹の三重子。
    電波オタクのムセンこと田崎もも。
    大富豪の息子、ボンボンこと成村明人。
    中年のような風貌のオッサンこと柏木保。
    この五人が『政治部』という隠れ蓑の中で、訳あって“総理大臣暗殺”という目的を掲げ、それぞれの役割をこなしていく。
    途中から、ガイコツこと清水弥生もそのメンバーに加わる。
    この個性的で、自分の目的のためには手段を選ばぬ自己中心的な生徒たちが、用意周到な計画を練り、総理大臣暗殺に向かって着々と突き進む。
    一見、荒唐無稽な設定なのだが、これがなかなかに面白い。
    と言っても、実際の暗殺には当然のごとく、多くの障壁が立ちはだかるのだが。

    自分の利益でしか結びついていなかった部員たちだが、最後の事件を機に、六人の間に不思議な心情が芽生え始める。
    それまで経験しなかったことに遭遇し、一人一人が確実に子供から大人への一歩を歩みだしたことの証。
    このときの六人は眩しく輝いてさえ見える。
    あれだけ幼く、独りよがりの考えしか持たなかった六人が、自分の本音を吐露することで人間としての連帯感が生まれる。
    冷酷なまでに無機的で感情を表さなかった茂子さえもが、ここにきて突然、血の通った人間になる。
    その転換部分が見事だ。
    そして、予想だにしなかった最後の三重子の行動。

    この作品は何やら不思議な小説だ。
    SFでもミステリーでもない。
    読み終わってみれば、爽やかな青春小説にさえ思える。
    白河三兎という作家の懐の深さを知る作品だ。
    ちょっと変わった面白い小説を読みたい人にはお薦めの作品です。

  • 総理大臣暗殺クラブを立ち上げた高校生 お局、三重子、ムセン、オッサン、ボンボン。
    突拍子もない設定でどういう終わりになるのかと思ったけど、物語を通して書かれていたのは人間の成長。(総理大臣暗殺メインの話ではない)
    三重子、ムセンの徹底っぷりはほとんど共感できなかった。

  • 「ぶっちゃけ、総理大臣を暗殺しようと思っているんだけど」


    『世間は子供や老人に『なのに』を付けて持て囃したがる。成人に『なのに』を付ける時は大抵悪い意味だ。』

    『少なくとも私には命の重さがわからない。私は父の死に間近で触れたけれど、『こんな簡単に死んじゃうんだ。なんか軽いな』としか感じられなかった。』

    「俺が悪かったよ。体重計に乗るから。だからボタンを留めろ」
    「私をがっかりさせないで。声高に平等を訴えたものだから、柏木くんは男女の身体的特徴の差異など気にしない懐の深い人なんだな、と感服したばかりだった」
    「どんだけ自分の体に自信があるか知らねーけど、男でも女でも自分から脱ぎたがる奴なんて、自惚れ屋のド変態なんだからな。このナルシストがっ!」
    「正確には『ナルシシスト』です。言葉を知らないのなら、口を閉じていなさい。黙っていれば、少しは利口に見えるわ」

    「この世界は金がなければスタートラインに立つことすらできない。そのことを知らないのなら、おまえは恵まれているんだよ。親と神に感謝しな」

    「私が預金している銀行のATMは音声であれこれ指示してくれる親切なATMです。ATMは嘘をつきませんし、言葉遣いも丁寧です。柏木くんは見習うべきところがあるのでは?」

    『大人が『色々あって』を言い訳に使う時は、大抵『何もない』時だ。』

    「領土問題のことはさっぱりだけど、日本は無視していればいいんじゃないか」
    「勝手に占拠されても黙っているんですか? 横暴な振る舞いを見て見ぬふりしていたら、相手は付け上がるだけですよ」
    「でもな、他国に横暴なことをする国は、自国にはもっと横暴なことをするもんだ。いつかは国民が怒りだして内側から崩壊する。だから日本は自滅するのを待っていればいい」
    「先生は隣の国で行われている反日教育を知らないんですか? 国民の怒りの矛先を日本へ向けさせるための思想教育です。領土問題もその一環です。反日教育が存続する限り自滅することは有り得ません」
    「お隣さんでは、学校に通えないために読み書きができない子供がごまんといる。そういう子たちにとって反日教育なんて夢のまた夢だ。純粋に自国の政府を憎む。国防にばっか金を注ぎ込んで、教育と福祉を疎かにしたツケはいつの日か払うことになる。すでに自滅に向かっているんだよ」

    『一見、「誰が得するんだよ」と言いたくなるものでも、誰かはこっそり得をしているもので、哀れなことに「誰得?」と騒ぐ人たちは蚊帳の外なのだ。』

    『時に、想像力の欠けた人間が勇敢に見えることがある。チーターは勇者なのか、愚者なのか判断つかない。』

    『自分の心に浸透し易い物語を作り上げていることなど考えもしない。滑稽だ。でも私にも覚えがある。愛する人を失った時、人はその欠落を癒すために物語を描く。』

    「私は頭脳明晰でもあるし、スポーツ万能で、乳首の色と形も申し分ない。欠点のない私がいちいち自分の力をひけらかす必要はないんです」

    『でも不平不満を言ってもなんにもならない。自分が手にしているものが一つでもあるうちは、それに感謝していたい。神様を恨むのは、死ぬ間際でいい」

    『人の気持ちはその人そのものだ。他人にはわからない。相手のことが理解できた、というのは思い込みだ。思い上がりだ。相手を理解したいと自分が思っているから、そう感じたいのだ。』

    「先ずは自分の弱さを認めること。そうすれば景色が違って見える」

    『人に優しさを感じさせないよう配慮して、周囲にも当人にも気付かれずにそっと優しくできる三重子が眩しかった。』

    「そう。不可能じゃないよ ー 知らないことを知るのは、自分を変えることへ繋がる」
    「世の中を変える初めの一歩は、自分を変えることからってこと?」
    「そうよ」

  • 総理大臣暗殺のためにクラブ活動を立ち上げた双子の妹と,阻止するべく入部した双子の姉と,集まってきた個性豊かな面子の青春特攻野郎Aチーム劇。
    設定はいいが,やたらモスキート音と利き足のすり減りネタで引っ張って単調に感じるところもあった。

  •  とんでも話かと思いきや、仲間を増やし体験を通して成長するやつです。
     茂子がトムクルーズ並みの身体能力です。話を大きく広げた割に、最後が残念。でも、面白かったです。

  • 仰々しいタイトルではあるが実際のところは青春小説である。うーん、なんだかわからないけれどなかなかページが進まなかった。。。登場人物に魅力を感じられなかったからだろうか。特にムセン。オッサンは唯一人間味のある高校生らしいキャラクターだったけれど他は高校生にしてはすれすぎている。それぞれ家庭環境に薄暗いものがあるにせよ。

  • 白河三兎は、例によって青春ミステリ。
    政治部に入って、“総理大臣暗殺”を企てる妹の為に青春する姉の話。
    村上春樹が非現実的で孤高な感じを醸すとすれば、白河三兎は実に愛着の湧くクールを描く。
    キャラクターのユーモア・ニヒル具合が、個人的な趣味に良く合う。
    ストーリーも、少しヒネクレた学園もので面白い。
    筆者他作品に比べて、少し文学のテイストがある。壊れていない本谷有希子というか、エンタメ系藤野千夜というか。
    今回の方針なのか、作風変えてきたのかは今のところ不明。
    4-

  • すごいプロフェッショナル。やっかいな高校生たち。

  • 遠い暗殺計画の中にあるのは
    身近な人への思い。
    物語は欠落を埋め、想像力を高め、
    そして私を救ってくれる。
    時として絶望に追い込まれたとしても、
    それでも物語に縋ってしまう。

  • 青春を戦え!!

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