- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041018897
感想・レビュー・書評
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一度読んだだけでは、物語が頭の中で消化しきれない!
正直言って難解。難しい。
守り人や奏者より大人向けな印象でした。
もはやファンタジーなのか。
簡単に言ってしまえば、動物と医術なんだけど。
何だろうなー、この答えの出ないもどかしさみたいなの。
謎の病が発生した岩塩鉱から生き延びたヴァンとユナ。
その治療法を探す天才的医術師ホッサル。
東乎瑠の移民に故郷を奪われるアカファの人々。
それぞれの民と深くかかわる固有の動物。
終わり方が何とも言えない。
ヴァンとサエとユナで寄り添い合って生きていてほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これはもう児童書ではありません。
いままでの上橋ワールドでは、国家対国家、権威対権力、宗教対政治、旧対新、のような比較的大きな対軸の構図でストーリーを彩ってきていましたが、とうとうここに「マイノリティ」が絡んできました。
大国に押しやられる辺境のマイノリティを描き出しました。
共産党支配の中国におけるチベット族
西側キリスト教諸国におけるパレスチナ人
イギリスにおけるIRA
なんかを想起させ、テロリズムも想起させるようなストーリーでした。
「テロ行為は民主主義の最も先鋭な形である」とむかしなにかの本で読んだことがありましたが、そんなことを思い出しました。
ただ、上橋さんの「鹿の王」ではそういったマイノリティの先鋭さも含めて、世界を一つとして扱ってもいます。
また、ホッサルの祖父リミエッルの「マキャベリズム」を思わせる思想や、その思想にある一部で共感するホッサルの描写も見事でした。
最後、ユナ、サエ、トマといった様々な民族で、様々な境遇の彼らがヴァンを追っていくのも興味深かったです。
あえてるといいですね。 -
いよいよ下巻。
壮大な物語は、ますます複雑に絡み合い…
生きること、命とは、自分は大切な人を守る事が出来るのか…
命のことを考える物語。
希望あるラストで、しばらく物語の中に身を預けました。
ユナの可愛さがたまらなく好き! -
好きな終わり方だった。
「還って行く者」
ただそれだけの終わりだったら、言葉にしづらい嫌な読後感が残ることになっただろう。
それだけではない終わりに、(あぁ〜読んでよかった)という読後感がある。
それぞれの「想い」に突き動かされて「死」を選んでいく。
「死」を見つめるからこそ生きる覚悟と希望が生まれていくのだなーと噛みしめる。
面白かったです。 -
奇しくもこのご時世にこの本を読んだ。疫病や免疫について触れている。
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ついにホッサルとヴァンが出会い、黒狼熱の謎と背後にある政治的企みを探していく。
最後、『鹿の王』の意味も明らかになって、ヴァンがまさに鹿の王になってエンド。キレイな終わり方。
病気と治療法、人物、国家の思惑、全部が細かくて、もう一度理解しながらじっくり読みたい。 -
最後に違う種族同士が仲良く連れ立ってるシーンが印象的だった。
世界もそうなれば戦争は無くなるのだろうか、、 -
下巻まで一気読み。
後半は前半よりさらに面白かった!
ヴァンやユナが黒狼熱で死ななかった事も、そもそもの黒狼熱が発生した原因も、幻想的な要素で着地するのかなと思っていたら、ちゃんと病気として解明されたことがスッキリした。
ようやく、2人の主人公、ホッサルとヴァンが対面!しかもホッサルがなんとなく子供っぽくなるというか、えらそうにできなくなるヴァンの貫禄と渋さがとてもいい。文字だけなのに、なんか際立つ(о´∀`о)
このお二人に是非とも親友のような関係になって終わって欲しかったので、最後は別れたきりになってしまってるのが悔やまれます。続編で再会しないかなぁ。
ヴァンにはユナとサエとあらためて親娘として夫婦として歩んでくれていたらいいなと思う。
ホッサルとミラルは身分があって難しいかもだけど、こちらも幸せになってほしい。
なんか、この作品に出てくる男女はみんな幸せになってほしいなぁと思う、お互い支え合ってる関係でとても素敵でした。
特に、サエとミラルとマコウカンの姉はめちゃくちゃ自立しててアネさんですからね( ̄▽ ̄)
黒狼熱の原因は文化の違いが生み出した自然の脅威で、、それを広がろうとしたのは人為的なものでした。
現地民と移民、戦争と支配、文化の違いによって生まれるのは恵みよりも、怨みってことだったのか。。
オーファンやシカンの悔しい気持ちは伝わるけど、純粋なアカファの民以外はみんな死んでいいと思うような無差別な殺意は、ただの殺人者ですよね。
見逃すわけにはいかなかったと思う。
病気で死ぬのは、何より子供とか弱いものだし。
最終的にはヴァンが終わらせたようなものだけど、あとは本当に主人公2人が幸せになってくれたら。
現実世界に繋がるような病床とか人間模様とか暮らしが窺えるけど、壮大で幻想的な物語。
続編とかサイドストーリー、過去編とか、諸々の話を続けて読んでみたいと思うくらい面白い小説でした。
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映画化されるということでその前に、と思い読みました。
単なる争いの話ではなく、医者の視点での未知の病気に対する気持ちや薬の開発などが書かれていることにとても興味をひかれて読み進めました。
主人公、ヴァンの人柄にも惹かれましたし、何より救った子ども、ユナの話し方がかわいくて、ハラハラドキドキする展開の中での癒やしでした。
コロナ禍の今だからかもしれませんが、上巻の「幽霊が恐ろしいのは、とらえどころがないからでしょう?幽霊に身体があって、捕まえることができるなら、きっと誰も怖がらないわ。病も同じよ。実体を摑まえることができたら対処する方法を探ることができる」というセリフが心に響きました。
あとがきによると、『鹿の王』は、
「人は、自分の身体の内側で何が起きているのかを知ることができない」ということ、「人(あるいは生物)の身体は、細菌やらウイルスやらが、日々共生したり葛藤したりしている場でもある」ということ、そして、「それって、社会にも似ているなあ」ということ、この三つが重なってできた物語だとのこと。
高学年以上に、そして、将来の夢は医者や薬剤師、という子にもお勧めです。
映画もぜひ見てみたいと思います。