切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041020517

作品紹介・あらすじ

臓器が奇麗にくり抜かれた遺体が発見された。やがてテレビ局に犯人から声明文が届く。いったい犯人の狙いは何か。さらに第二の事件が起こり・・・・・・。警視庁捜査一課の犬養が捜査に乗り出す!

感想・レビュー・書評

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  • ドナーの母親の思いが切ない。
    臓器だけでも子供が生きているという形にすがってしまうほど、子供の死は受け入れがたいものだろうと想像がつく。

    臓器移植の推進派と反対派、どちらの言い分も分かってしまう。
    でも生きているとは何か。ある本に自分自身の生について「排泄の処理と最低限の意志が持てないのなら、それを生きていると、わたしは認めない」とあったが、私自身もそれに賛成だ。
    であれば自分がドナーになることについては、問題ない。でも自分の家族、特に子供は割りきれない。
    こういう矛盾が自然と存在できてしまう事が、この問題の難しさなのだと思う。

  • 切り裂きジャックという有名な題材と、臓器移植を絡ませた社会派の問題提議色の強いミステリ。

    著者の作品は数多く積読しており、アンソロジー以来、腰を据えて読むのは初。

    ドナー、レシピエント、医師、コーディネーターとそれぞれの観点で臓器移植についてしっかり描いていて、知識の豊富さにまず驚く。

    特に真境名先生と僧侶の臓器移植に関する白熱した対談のシーンは印象に残った。

    ミステリとしての期待値は、想像よりも下回ったが、物語の展開や描写は好み。

    他の作品も期待しよう。

  • 冒頭からグロテスクな死体で始まる。中山七里さんの作品ではお馴染みすぎて、慣れて来た自分が怖くなる。猟奇的な殺人が、脳死移植を巡る社会派的な様相を帯びる。
    ドナーとなった息子の死を受け入れず、異常な言動を起こす母親が犯人か、とも思わせる記述も良く良く考えると医療関係者では無いことから、対象から外れる。
    二転三転し、犯人を捕まえてみれば・・?
    根本的な原因に違和感があり、最後のお得意のドンデン返し。
    犬養刑事は他の作品でも良く出てくるが、これが最初の登場のよう。埼玉県警の古手川刑事も光崎教授との絡みで良く出てくるので、馴染みのコンビだった。今回は古手川刑事の上司の渡瀬刑事の鋭い洞察場面が無く、ちょっと寂しい。

  • 犬養さんの噂は予てから聞いており、古手川さんを認知していたのでそんなメン・イン・ブラックみたいなバディに興奮しながら犬養シリーズ第一弾をやっと読み始めた。

    平成の切り裂きジャック
    ×
    臓器移植
    なんとまた難しいテーマだろう。やはり家族に当て嵌めて考えしまうのだが、ドナー側、レシピエント側とで考えが180度変わってしまう矛盾に額のシワが刻まれて行く。刑事犬飼隼人が苦悩を背負いながら追う姿に、「家族の愛」を感じた。

    と、私が勝手に愛だのなんだのとメルヘン患っていただけなのだが、ジャックの動機が腑に落ちない。

    しかしジャックの告白、隠蔽工作の暴露にてこの問題定義について様々な意見があるのを知る事が出来た。考えたこともなかった臓器移植の現場や当事者達の信念や遺族の葛藤、そしてそれが自分に当てはまらないと言いきれない現実にハッとさせられる。

    この作品に出会うか自分が当事者にならない限り考える事は無かったと思うと本作に出会えた事が嬉しい。もちろん続編も追っていきたいと思います。

  • 犬養シリーズ第1弾!
    中山七里さんの小説が、手元に溢れてるんで、他の作家さんより多めに読む事に(^◇^;)
    古手川さんも、光崎さんも出て来る!
    中山さんの他のシリーズもん読んでる人には、それも楽しみかも?

    切り裂きジャックを模したような猟奇殺人に、臓器移植の問題点も取り入れた作品!なかなか面白かった〜

    一匹狼の犬養さんもカッコいいけど、古手川さんも頑張ってるやん!
    モテ過ぎで、女心は分からんとか…羨ましい…

    「事実は小説よりも奇なり」というか、「小説は事実よりも奇なり」というか…
    大どんでん返し!で、真実は…
    結局は、そんな事かい!
    手品師のトリックと同じで、右手を注目させて、左手で何かやってる感じ。ここでは、更にその左手と見せかけて、助手が何かやってるぐらいの意外性あるけど。

    臓器移植も色々と問題ありそうやな。倫理的にも。やっぱり、脳死って色々あるんやな、そこから臓器摘出とか…
    早くIPS細胞で、出来るようにならんかな?山中さん頑張って下さい!

    『技術も設備もあるから手術させろというのは本末転倒でしょう。武器も兵力もあるから自衛隊に戦争をさせろという理屈と同じではありませんか』(文中の宗教家の言葉から)
    医学的に出来ても、日本人の死生観とのせめぎ合い…難しい…

  • 初めてかもしれません。犯人が何となくわかりました。何だかいろんな人がちょいちょい出てくるので読む順番がわからなくってます。

  • 被害者を絞殺後、体を切り裂き内臓を全て持ち去ってしまうという猟奇的連続殺人事件が発生した。犯人はマスコミや警察に犯行声明文を送りつけ、日本中を巻き込む劇場型犯罪へと展開していく。
    そこだけを切り取ると快楽殺人者vs警察のただの推理もののように思えるが、そこはやっぱり中山七里さん。猟奇殺人の真犯人を追求するミステリーが軸にありながらも、そこに脳死判定や臓器移植を絡めてしっかり社会的問題も浮き彫りにしていくところが見事。
    脳死は人の死なのか…
    臓器移植のドナー側レシピエント側の心情…
    移植コーディネーターや移植に携わる医療者の葛藤と苦悩…
    これまでニュースの中では知っていたがあまり深くは考えてはこなかった問題を色々と考えさせられたように思う。

    ミステリーとしては、最後のどんでん返しまで真犯人がわからず、ドキドキハラハラを楽しめた。
    個人的には犬養とペアを組んだ古手川のいい意味で空気を読まないキャラクターが魅力的だった。

    後半まで真犯人と目されていたドナー遺族の、エピローグでの姿に胸が熱くなった。唯一の生き残りとなった敬介には必ず幸せになってほしいと思った。

  • 犬養隼人シリーズ。これが1冊目か。
    また順番間違ってしまっている私(^-^;

    順番関係なく、超絶面白い!!

    中山七里先生の物語は、別作品であっても、何となく繋がっていて、登場人物が交差する。
    それが何とも言えぬ幸福感(笑)
    あ、ここでも彼が登場ね!っていう(*^-^*)


    この前読んだ犬養のシリーズは「安楽死」がテーマだったが、今回のお話は「脳死と臓器移植」

    これまで深く考えたこともなかったが、確かに脳死状態の人間は、まだ心臓が動いており、体温もある。
    当然生きている身体である。その生きている身体から、臓器を取り出すわけなのだ。

    東野圭吾先生の人魚の眠る家を読んだ時に、脳死についてはかなり考えさせられたが、こちらもまた色々考えさせられる内容だった。


    ミステリとしては、さすがの中山先生。絶対に裏切らないwww

    最後のエピローグでは、母親でもある私はうるうるさせられてしまった。
    ミステリとしても凄いし、登場人物も魅力的だし、何よりテーマの重さも凄い。

    中山先生、やめられませんねー。全作読みつくしたい!!最高(*´▽`*)

  • お馴染みの犬養隼人刑事と埼玉県警の古手川刑事がタッグを組むことになる。その二人のやり取りが面白い。お互い通じ合うものがあって、楽しそうではある。切り裂きジャックを真似た猟奇殺人なのだが、ここまでするには動機がなんだか弱いような気がするし、警察側の動きにどうもなあというところもある。テレビに出演する管理官なんてあり得る?

  • 刑事犬養隼人シリーズ第一弾
    テーマは臓器移植
    いろいろ考えさせられます!

    ストーリとしては
    「切り裂きジャック」をモチーフとした物語。

    都内の公園で臓器をくりぬかれた女性の死体が発見されます。テレビ局にはジャックと名乗る犯人からの声明文が..
    そして、第二、第三の殺人が発生します。
    それを捜査するのが犬養刑事と小手川刑事。光崎もちょびっと登場。

    ミスリードを誘う描写がありながらもミステリー要素としては、それほどでもありませんでした。
    事件の犯人は?
    という展開でしたが、動機がちょっと弱い..

    それよりも、臓器移植をベースとした脳死の考え方。
    臓器移植推進派の真境名と僧侶の対話が刺さります。
    また、臓器提供者の母親の言葉
    人の死とは何か?を考えされらます。
    自分ならどうするのか?
    臓器の提供側、受ける側それぞれの想い
    自分自身、そして、肉親なら..

    お勧め!

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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