最後の晩ごはん お兄さんとホットケーキ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.65
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本棚登録 : 1177
感想 : 104
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041020586

作品紹介・あらすじ

夜のみ営業の定食屋で働く、元イケメン俳優の海里のもとに、ある女性がやってきた。獣医だという彼女は、なんと海里の兄・一憲の婚約者。しかし海里と一憲はケンカ別れをしたきりで……。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第3巻。
    夏神さんの過去、海里とお兄さんの関係。
    お兄さんの婚約者登場と盛り沢山。
    人と人の絆、生きる意味など、心にドンと響く。
    さらっと出てくる影の薄い幽霊も、じわっとくる。
    今回は泣けます。

  • 夜だけ営業している定食屋<ばんめし屋>。店主の夏神と、居候兼店員兼料理修業中の元俳優の海里と、眼鏡の付喪神ロイドが営むその店で、様々な客や事件との遭遇を描くシリーズ第三作。

    第二作は貸出中だったため、第三作を先に借りてみたが特に支障なし。
    どうも第二作で海里は完全に芸能界への未練を断ち切り、<ばんめし屋>で修業しながら料理人として頑張ることにしたらしい。

    そしてこの第三作は長年確執のあった兄との関係の変化を描く。
    父親が早くに亡くなって以後、年の離れた兄が父親代わりとして自分を育ててくれたという恩はありつつも、自分の価値観をとことん押し付けてくる兄にとことん抵抗してきた海里と、海里の価値観や生き方が理解出来ない兄。
    これは兄弟だけでなく親子関係でも起こりそうなこと。わかるけれど、兄の頑固さはちょっと酷いような。ここまで拗れると上手くは行かないだろうし、程よく距離をとって付き合うほかなさそう。
    そこに現れた兄の婚約者。彼女は必死なまでに兄と海里との距離を縮めようとするのだが、その訳は。

    そしてもう一つ気になっていた、夏神の過去。こちらもなかなかハードなものだった。海里と違い人の死が絡むだけに辛い。
    しかし夏神もまた海里との出会いで救われた部分があったと分かりホッとする。

    カバーイラストが緒川千世さんなので、この夏神と海里との抱擁シーンなんて、どうもイケナイ妄想をしてしまう。それは置いておいて、支え合える仲間がいるというのは良いことだと思う。

    今作は幽霊の出番はわずか。しかしロイドのメガネをかけると見えないはずのものが見えるという設定は面白い。

    先に読んだ「京都伏見あやかし甘味帖」と違い、こちらは料理がストーリーにしっかり絡んでいる。
    流行のパンケーキだが、原点に戻った素朴なパンケーキも良い。

  • 今回は海里の兄が登場し、兄弟の確執が浮き彫りとなり、今までよりもシリアスな内容だと感じ、食堂にある女性が現れ、海里のことを話だすという展開で実は兄と婚約していることも発覚し、夏神の過去が見えてくるという、様々な人びとの人間模様、それに至る背景が映し出され、はっきりとしなかったものが少しずつ分かり、これからさらに前進していけるようになるだろうと感じる。奈津の今後の食堂との関わりを期待。大喧嘩により海里兄弟の蟠りも溶けつつあるというプラスのこと、海里の料理人としての成長、食べ物が繋ぐ温もりがあって良い。

  • 海里の「『ただ生きてていいよ』って言ってもらえるのは、それだけですっげー許されたって気がする」…否定されることの辛さを知るものにとっては染み入る言葉だね…海里頑張れ~!美味しいものは心を緩め癒してくれる、こんな定食屋に行きたい!そして私なりのホットケーキの思い出を思い出して優しい気分になった

  • 泣いた泣いた.きっと泣くだろうと予感しつつも止められなかった.縁とは不思議なものだなぁとあらためて思う.
    以下あらすじ(背表紙より)
    兵庫県芦屋市、元イケメン俳優の五十嵐海里は、夜だけ営業の定食屋「ばんめし屋」で、料理人見習いとして働き始めた。店長・夏神留二の謎めいた過去が気になるが、親しき中にも礼儀あり。打ち明けてもらえる日を待っている。そんなある日、獣医だという女性客がやってきた。彼女はなんと、海里の兄の婚約者。しかし海里と兄とは派手にケンカ別れをしたきりで…。とびきり温かく、優しい絆がここにある。泣けるお料理青春小説。

  • 夏神さんの過去が想像通りすぎたw

    お兄さんエピソード良かったです。

    2023.9.2
    146

  • この人の文章の構成?文体?があまり得意ではないみたいで、前半半分読むのがとてもスローペースに。
    一文一文楽しみながら読めるタイプの文章ではなかった。単に好みの話だけれど。

    後半、奈津さんが暴れはじめてからは一気に読み切れた。
    そもそも、お兄さんと海里の確執の話だとは分かってはいるものの、堅物で独善的すぎるお兄さんの物言いもイライラするし、かといって海里に全面的に同意出来るわけでもないしで、なんとなくずっとイライラモヤモヤしてしまっていたが、結局最後はウルっとしてしまった。
    病室のシーンは素敵ですね。実際許可が出るのかな?
    お兄さんの言ってることは正しいのかもしれないけれど、やはり正しいと思えない部分もあって、それはお兄さんの当時の裁量では到底負いきれない、仕方のないものではあったと思うけれど、幼い海里の窮屈さややりきれなさを思うとやはり可哀そうでもあって、それを今回伝えることが出来たことが、とてもよかった。
    やっぱりさ、16歳で父親の代わりなんて出来ないよ。
    どうして母親がもっと…と思ってしまうなぁ。
    それもそれで理由があってのことなので、仕方がないのかもしれないけれど、自分だったらもうちょっと息子のために戦えなかっただろうかと思ってしまった。


    ひとつ疑問は、奈津さんのような性格の女の人が、一憲さんのような性格の男性に惹かれるのが結構意外かなー。
    もっと破天荒な人に惹かれそうなイメージ。
    もしかしたら、生い立ちから、実直で堅実であることにどうしようもなく惹かれてしまうのかなぁとか。
    あとは、夏神さんの件がわちゃわちゃと兄弟ケンカをしている間になんとなく終わってしまっていた。
    衝撃的だけれど、その後のホットケーキに持っていかれたかな。

    杏仁豆腐風ふわとろミルクプリンはぜひ作ってみたい。

  • 夏神の過去がようやくわかり、海里は、お兄さんとちょっと歩み寄り・・・といった巻でした。それぞれの心にあるわだかまりが、ちょっとだけとけた感じで、よかったです。夏神と海里、お互い出会えてよかったよね。

  • うわー! うわー!! うわー!!

    まさか、五十嵐兄弟が~!!!
    夏神さんの過去もサラリと語られたし、何気にすごい情報量たっぷりの巻やったよね!?
    ちゅうか、単に「ばんめし屋」でイチャイチャと料理してるだけのストーリーじゃなかったんや!?

    (元からそんなストーリーではない)

    面白い~!! 面白かった~!!
    早く続編が読みたいけど、27年の4月に初版なので、この先はまだ刊行されてへんねやろうね~!!
    ちゅうか、よく、図書館に蔵書があったな!? ありがとう、ありがとう!! 図書館ありがとう!!

    著者の本はこのシリーズから入ったせいか、「晩ごはん」シリーズが一番好きやな~。
    いやどれでも好きやけどね~。

    基本的に料理と家族がテーマのハートウォーミング小説BL風味ってやつですか。
    たまに(?)登場する女子はおしなべてサバサバしていてしっかり者というのも、BLの王道やと思います!

    一生懸命生きてるって、いいな! と、思った。

    こう、なんやろう。どうしても目先のことだけにとらわれて、あれはどうとかこれはあかんとかあれこれ理屈をこねたがるけれど、そんなんいらんな! と、思わせてくれるシリーズです。

    ただもう、目の前のことに誠実にあれば、それがどんなことであっても自分の中になにかしらの答えが見つかるね。
    でもって、自分の中に答えがあるっていうことが、なんだか一番幸せのような気がしてきた。

    答えを探すっていうのは、間違えることもあるし見つからないこともあるけど、だから即終了というわけではなくて、それでも前を見続けてさえいれば、どこかにたどり着くような気がする。

    著者の本はたいていその道筋に「誰か」がいるので、そのハートウォーミングさがいいなと思うんやけれども、あー、だから私も、料理ができて包容力がある人に出会いたいんですが!? 笑 ←こういうヨコシマな考えしかなかったら、全然ハートウォーミングではない

    それにしても五十嵐父の仕事って海関係やっけ?
    1冊目に載ってたかもやけど、忘れちゃった・・・。
    どうして、兄と弟でこんなにも名づけのテンションが違うのか・・・。どうでもいい話やけど、びみょうに謎。

    (2016.02.14)

  • 海里とお兄さんとの関係性が変わっていくことで、物語に深みが出た感じがする。前2作よりも「読んだ」という充実感が残った。

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著者プロフィール

作家。監察医。講談社ホワイトハート「人買奇談」にてデビュー。代表作は「鬼籍通覧」シリーズ、「奇談」シリーズ(講談社)、「最後の晩ごはん」(KADOKAWA)、「時をかける眼鏡」(集英社)など多数。

「2023年 『妖魔と下僕の契約条件 5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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