つれづれ、北野坂探偵舎 感情を売る非情な職業 (角川文庫)
- KADOKAWA/角川書店 (2015年3月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041021668
作品紹介・あらすじ
佐々波と雨坂が、本当に編集者と作家だった、若き日の物語。ある一人の女性の存在と本にまつわる謎が、眠れる天才を呼び覚ます。推理しない探偵コンビの語られなかった過去が今明らかに!
感想・レビュー・書評
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佐々波蓮司が編集者だったときの話。同棲していた校正者の萩原春が事故死し、蓮司は自殺ではないかと疑う。数日後、それまで何年も眠り続けていた雨坂続が突然目を覚まし、小説を書き始める。同僚の工藤凛は、担当の作家になんとか賞をとらせようと悪戦苦闘する。筋だけを追うと何のことなのか分かりにくいが、小説というものに憑りつかれた編集者と校正者の運命と小説を書く天賦の才能がテーマなのだ。結構重いテーマのような気がする。蓮司に幽霊が見えるというのは重要な意味を持ってくるのだが、都合がいいと言えばそうかもしれない。
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つれづれ、北野坂探偵社シリーズ4作目。
今回は雨坂続がまだ事故で目を覚まさない、佐々波は編集者で、恋人の萩原春と一緒に暮らしている、そんな五年前の出来事を中心に語られる。
編集者と作家、校正者という密な関係が大いに語られて、一つの作品にかける情熱が感じられる。だんだんとデジタル化されてきている時代だが、やはり私は紙の書籍を大事にしたい。本が出来上がるまでに込められた想いは深い。
少し見えてきた「紫色の指先」は私にとっては意外な正体で驚いた。これからどう展開していくのか楽しみ。そしていつか、天才朽木続の本が読みたいな! -
「文学賞にうってつけの原稿」
素晴らしい作品だが。
応募作品を見て決めたこととはいえ、受賞者が出ないものに作品を何回も送りたいとは中々思わないだろう。
「タイトル未定」
中々進まない原稿は。
誰一人とて目の前で事故現場を見ていなければ、勝手に色々と憶測してしまい本当にそうなのか疑うだろな。
「感情を売る非情な職業」
一番に選ばれたのは。
何気なく書き連ねた文章だったとしても、それが読み手に何かを与えるのであれば才能としか呼べないだろ。 -
4巻目、幽霊要素少なめ。
佐々波の編集者時代の過去が語られる。彼女なんて居ないと思ってたらいたんだね。大学時代からなんていい話。
雨坂と違ってちゃんと青春時代があったのか。
だけど最後に少ないページで萩原のことが語られるが、残り少ないけど大丈夫か心配だったが、割とあっさり語られてた。佐々波が萩原との最後の繋がりもあっさり描写。でもあの二人ならそんなものか。 -
佐々波の特殊性がよくわかった過去編。春さんとの最期は心が苦しくなった
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これまでのミステリ風味と異なり編集者を素材にした職場ものな一冊
それぞれの仕上がりは流石の出来栄えなのだが
全体として方向性が良く分からない -
全体像が見えて来るからか、巻を追う毎に難解さが薄れて、段々と読み易くなる。五年前を知ることで当時編集者だった佐々波の人物像がぐっと飲み込み易くなった。佐々波の恋人の萩原春の死や、賞に向けて奮闘する後輩編集者の工藤凜や、目覚めたばかりの雨坂にも引き込まれた。文章の良い意味で色のない感じが心地好くて、朽木続の「トロンプルイユの指先」の圧倒的なところも印象的だった。溢れるような校正者に対する尊敬が眩しくて、校正の仕事や文章を磨いていく作業のプロフェッショナルさが格好良い。一巻で読むのをやめなくて良かったなあ。
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今回は佐々波の過去編。同棲していた彼女を亡くした佐々波が、当時のことを思い出す。彼女には何が起こったのか?いちいち会話と文章が好きだなー。
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図書館で。
登場人物もあらかた出そろった所で過去編。優秀な編集者と彼の恋人で優秀な校正者と目を覚まさない天才の話…なのかなぁ。もし、続さんの才能を彼女が天才幽霊の存在を知る前に知っていたとしたら結末は変わったのかもしれない。けれどもまあ、展開のためには彼女はこの選択をするために出てきたキャラなので仕方ないといえば仕方ないのか。
とは言え結構簡単に生と死の境を飛び越えちゃう登場人物が多いような気がする。前作のおばあちゃんもそうだったし… というわけで大分材料は出そろったのでそろそろ佳境!といったところだなぁと思いました。 -
北野坂探偵舎シリーズ第4弾。
佐々波がまだ編集者をしていたころ、歴史ある新人賞である「はやて文学賞」は応募数が少なく、2年連続で大賞作品は該当なし。そんな「はやて文学賞」を途絶えさせたくない編集長の新尾と、新人編集者の工藤。編集部にはそれぞれの思惑が渦巻いていた。
そんなある日、佐々波は最愛の恋人・萩原春を失う。
はたして彼女の死の真相と、はやて文学賞の行方は……?
彼らの過去が明らかになる物語。いつもと雰囲気が違うお話だけれど、安定して楽しかった。
そして作家、編集者、校正者、それぞれが「本」について語る言葉が愛おしい。
本好きにはたまらないシリーズ。