信長死すべし (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041021682

作品紹介・あらすじ

甲斐の武田氏をついに滅ぼした織田信長は、正親町帝に大坂遷都を迫った。帝の不安と忍耐は限界に達し、ついに重大な勅命を下す。日本史上最大の謎を、明智光秀ら周囲の動きから克明に炙り出す歴史巨編。

感想・レビュー・書評

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  • 朝廷黒幕説で本能寺の変前後を描く時代小説。それぞれの立場での心理戦を詳らかにし、ワクワク・ドキドキさせてくれる。本能寺の変関連は歴史的資料もほぼなく、いくらでも妄想・推論で語れてしまうので、色々な解釈があって面白い。故著者のストーリーも楽しませてもらえました。

  • 本能寺の変を正親町天皇黒幕説から描く。天皇が黒幕と言っても天皇には力がなく、他人に命令することしかできない。天皇の命令を受ける公家にも力がなく、やはり他人にやらせるしかない。このため、黒幕が全てを操る物語ではなく、群像劇になっている。
    黒幕説は明智光秀が操られた存在になってしまい、光秀自身の思いを軽視することになる。それにしても天皇や公家は汚い。失敗しても自分が傷つかないようにしている。保身第一の無能公務員と同じである。

  • 山本兼一氏の作品はやっぱり面白い。
    この人の作品他にも色々あるけど、とにかく面白いとしか言えないくらいに面白い。
    で、信長死すべし。
    いろんな人の人間模様というか、一人一人のその時々の
    心境とか行動が、本能寺の変までの変化が人物別に
    尚且つ時系列の様な感じで描かれているような。
    こんな書き方があったのか、と。
    驚きもあり、読みやすさといったら。
    朝廷vs武士なんだけれども、みんな腹黒過ぎる!とか
    最後のえー!?っていう驚きとか。
    信長という絶対的覇者であり、絶対的存在を如何にして討つのか。
    これを読みつつ、違う本能寺の変に関わる小説を読むと
    またより一層楽しめます。

  • これまでに何度となく本能寺の変に関する本は読んできたので、もういいんじゃないかと思っていましたが、作者が「利休にたずねよ」「火天の城」の山本兼一であり、しかも昨年秋か冬に亡くなったということも知っていたので、読んでみました。

    長い戦国時代を統一した信長については、その強烈な個性により、多くの人物が「信長死すべし」と願っていたでしょうが、その中でなぜ忠誠心厚く、信長に最も信頼されていた光秀が討ったのか、その動機については諸説あり、ここでは正親町帝(おうぎまちてい)の陰謀説に則った話でした。

    つまり、この日の本の国を支配しているのは帝であり、朝廷である。しかるに、信長はその帝からの官位を全く受けず、朝廷の意を組まぬばかりか、自らが神となってこの国を統治せんとしている。しかも日ごろの言動を聞いていると、いずれ朝廷を亡きものにしようと企てているのは明白。誰ぞ帝に替わって成敗せよ!。

    という正親町帝の勅を光秀が拝受し、皇軍として信長を討つという話です。

    しかしもちろん、光秀が皇軍であったという史実は見つかっておらず、その矛盾を作者の山本兼一は、朝廷側の巧みな光秀説得で、「皇軍」であることを直接言葉にせず、されど皇軍と思わせる工作を行い、見事光秀をその気にさせた、という話で纏めています。

    その朝廷の工作が、あの有名な「ときは今、天(雨)が下しる 五月哉」の句で、これは一般的には光秀が本能寺の変の前に詠った連歌の初句とされていますが、これが帝からの勅であったという話になっておりました(光秀の一族である土岐氏が今から、天下を治めよ、との意味)

    帝の勅を受けたと確信した光秀は、見事本能寺で信長を討伐しますが、ご存じのように信長の亡骸が見つからない。物的証拠がないため、万が一信長が逃げ延びた場合のことを恐れた朝廷は、光秀と約束していた「征夷大将軍」の官位を与えることをしなかったばかりか、「勅など出していない」と光秀を突き放すことに。

    このへんの光秀と朝廷とのやり取りは、朝廷のおとぼけぶりが見事で、「朝廷には鵺がいる。いずれ成敗せねばならん」と言っていた信長が正しかった、と泣く光秀が誠に哀れであります。結局皇軍とは認められなかった光秀の元には、誰も援軍として馳せ参じることもなく、中国大返しで帰ってきた秀吉軍に、あっけなく敗れて散っていきます。

    登場人物としては、正親町帝、明智光秀を始め、徳川家康、近衛前久(これが光秀説得の首謀者)、吉田兼和(これが朝廷おとぼけ役)、里村招巴(これが帝からの連歌を光秀に渡す)等が登場し、帝の信長への怒りや、家康の信長への恨みや、前久の光秀へのドキドキ説得工作や、主君を裏切る光秀の心境、朝廷に裏切られた光秀の心境など、見事に描かれていて、読み応え充分。本能寺の変を知り尽くしている人にもお勧めできる内容でした。

  • 最近読んだ同著者の『火天の城』や『花鳥の夢』に被る部分があり、とても面白く読めた。

    最終的に行き着く所は、誰もが知る”本能寺の変“なのだが、そこに行き着くまでの流れを章ごとに視点を巡らせながら進めていくスタイルで話がテンポ良く展開し、読者を飽きさせない。

    織田信長という人物の人となりやその勢い、また彼が見据えていた日本の展望や周囲の人間関係がページを捲るごとに徐々にくっきりと浮かび上がってくる。

    『利休にたずねよ』をきっかけに山本兼一氏の作品を読み始めたが、十数冊読んでハズレがない。

  • 学生(らいすた)ミニコメント
    甲斐の武田氏をついに滅ぼした織田信長は、正親町帝に大坂遷都を迫った。帝の不安と忍耐は限界に達し、ついに重大な勅命を下す。日本史上最大の謎を、明智光秀ら周囲の動きから克明に炙り出す歴史巨編。

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/654675

  • #読了 正親町帝が「信長死すべし」と思い至ってから、信長含めた複数人の視点で本能寺まで描く作品。歴史小説ってどうしても結末がわかってしまうし、この作品も大まかな流れは変わらないのに先が気になるのはなんでなんだろう?陰謀がバレないかハラハラしながら読んでしまった。
    昔から光秀が好きというのもあって、信長を扱った小説ではいつも光秀がかわいそうになって仕方ない。今回もご多聞にもれず、光秀かわいそうです。

  • 本能寺の変をいわゆる朝廷黒幕説を根拠に描いている。
    武田が滅んだ後から物語が始まる。
    天皇、近衛そして光秀など歴史上有名な描写を切り取りつつ変までの数ヶ月を時系列に群像劇のように展開している。心理描写が巧み。

    今の世の中は情報過多でSNSであっという間に情報が拡散する。それに比べ戦国時代は全て人の手により物事が動く。情報の持つ意味とかよくよく考えさせる。

    ただ、この小説信長も当然出てくるが明らかな油断としか言いようのない、あるいは全然違うことを思考しての落とし穴に気付いていない間抜けさがありそこが残念だ。

  • テンポが良くて非常に読みやすい。
    命のやりとりを日常的に行なっていた戦国時代に生きる人々尊敬の念を抱くばかり。

  • 朝廷黒幕説を取って本能寺の変に至るまでを描く。歴史小説ではあるものの、サスペンス小説のような面白さがある。

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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