墨東綺譚 (角川文庫 な 20-1)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041022108

作品紹介・あらすじ

にわか雨に傘をひらき、慌てふためく街のさまを見ながら歩きかけると、結いたての潰島田の頭を入れてきた女がいた。わたしとお雪の出会いであった-。私娼窟が並ぶ向島の玉の井を訪れた小説家の大江匡は、かすかに残る江戸情緒を感じながら彼女のもとへ通うようになる。移ろいゆく季節と重苦しい時代の空気の中に描き出される、哀しくも美しい愛のかたち。永井荷風の最高傑作が、文字が読みやすく解説の詳しい新装版で登場。

感想・レビュー・書評

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  • 吉行淳之介の『娼婦の部屋』を借り直し、
    読み終えたら、やっぱり『墨東綺譚』を読もうと
    昨日借りた。

    そしたら今朝の新聞の週刊誌の広告に
    「墨田ユキ」がどうのと載っていた。
    何かの縁を感じた。

    墨東は吉原ではなく、玉ノ井なんだな。
    今の墨田区東向島。

    濹東綺譚や吉行淳之介のあの感じは
    いまは望めないな。「風俗」ではねえ。
    昭和レトロ。今はないものとして読んでみる。

    学生の時以来か?
    「自棄(やけ)になっちゃいけない」
    そんなセリフを覚えてる。

    あと作家夫婦の小池真理子と旦那は
    はお互いの男女関係に関知しないらしいが
    作家は作品の為にいろんなことを
    体験しようとする。
    それを好ましく思ったことを
    思い出した。

    主人公が雪子のところに通う動機に
    執筆する小説が理由であるくだりを
    読んで、むかしそう思ったのだ。

    「自棄」は違ったな。太宰かだれかのだったか?

    P106
     軽い恋愛の遊戯とは云いながら
     再会のなき事を初めから
     知りぬいていた別離の情は、
     強いて之を語ろうとすれば
     誇張に陥り、之を軽々に叙しされば
     情を尽くさぬ憾みがある

    ↑名文だねえ。
    たまにはこういうのを読まないと
    すっかり情緒がなくなって、
    せちがらいだけになってしまう

    P157
    悪徳の谷底には美しい人情の花と
    香しい果実が却って沢山に摘み集められる

  • 荷風は西洋化していく東京を残念がっていました。日本が日本でなくなるという危惧を抱き、変わらない日本の姿を江戸の情緒に求め、花柳界へと足を踏み入れ、やがて私娼の世界にそれを求めたのでしょうか。
    荷風のすばらしいところは、自分の足で歩いて観察する姿勢と、品格のある文章です。『墨(さんずい)東綺譚』だけでなく、『日和下駄』やその他の作品でも歩いて観察する姿がよくわかります。
    登場人物の「わたし」と、ふとした縁で知り合った私娼「お雪」とのわずか数ヶ月のことを書いています。ふっと現れ、すっと消えるような季節の移り変わりの中で、登場するこの二人にどこか哀切を感じます。
    この作品は荷風の日記である『断腸亭日乗』と照らし合わせながら読むと、作家荷風の心の動きなどがわかり、さらに興味深く読めるのではないかと思います。

  • 有名な永井荷風の名作。
    小説のようなエッセイのような曖昧さを感じながら読んだ。
    永井荷風の作品を読んだのは初めてだった。
    江戸情緒、下町情緒を背景にわたくしとお雪の数ヶ月の出会いと別れをさらりと、でもしっとりと描いた作品。
    お雪の素直な性格が好ましく描かれ、お雪のためを思って自分の恋愛感情をひっそりとしまいこんでしまおうとするわたくしの心の動きがちょっと切ない。
    文字が読みやすく解説の詳しい新装版だったけれど、それでもわたしには文章表現や語句に馴染みがなく読みにくかった。

  • わたくしは東京の人が夜半過ぎまで飲み歩くようになったその状況を眺めるとき、この新しい風習がいつ頃から起こったかを考えなければならない。

    明治時代にこれだけの作品を残せるのは素晴らしい。天才的だ。

  • メタフィクションの要素があり、永井荷風がどのように創作をしていたのかが伺えた。

  • an・an 1698号で桜庭一樹が推薦
    -----
    夢中になった一冊。
    年配の小説家と、若い女の切なく淡い恋愛関係が良い。
    心惹かれるばかりに無恥なことをもしてしまう、
    そんな恋愛がしたくなるかもしれませんよ。
    -----
    気になるー!
    最近恋愛小説読んでないなー
    ていうか無恥なことしてぇー!

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著者プロフィール

東京生れ。高商付属外国語学校清語科中退。広津柳浪・福地源一郎に弟子入りし、ゾラに心酔して『地獄の花』などを著す。1903年より08年まで外遊。帰国して『あめりか物語』『ふらんす物語』(発禁)を発表し、文名を高める。1910年、慶應義塾文学科教授となり「三田文学」を創刊。その一方、花柳界に通いつめ、『腕くらべ』『つゆのあとさき』『濹東綺譚』などを著す。1952年、文化勲章受章。1917年から没年までの日記『断腸亭日乗』がある。

「2020年 『美しい日本語 荷風 Ⅲ 心の自由をまもる言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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