ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023624

作品紹介・あらすじ

「自分の後ろにはもう誰もいない」――ビジネスマンに必須の心構えとは。決断、実行、撤退…一つ一つの行動にきちんと、しかし楽観的に責任を持てば、より楽しく、成果を出せる。元日立グループ会長が贈るメッセージ

感想・レビュー・書評

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  • 上司であった日立工場長であった綿森力氏の「この工場が沈むときが来たら、君たちは先に船を降りろ。それを見届けてから、俺はこの窓を蹴破ってから飛び降りる。それがラストマンだ」が序章の冒頭で語られる。

    ハイジャック事件に遭遇してひろった命。69歳のときに日立製作所の社長への就任要請。「自分がみんなを食べさせる」という決意が、川村氏をラストマンとして火中の栗である日立の再建へといざなっていきます。

    優良の上場子会社での外部配当への流出をとめるための上場廃止。
    事業部制からカンパニー制への移行。
    意思決定が遅いことをしめす「日立時間」の解消

    決められるリーダのが大切にしているのは5つのプロセス
    ① 現状を分析する
    ② 未来を予測する
    ③ 戦略を描く
    ④ 説明責任を果たす
    ⑤ 断固、実行する

    ・人を育てるには、「修羅場体験」
    ・能力を身につけてから、マインドを鍛えていく
    ・リスクヘッジの方法は、「早く、小さく失敗する」
    ・部下の指導に「持ち時間の二割」を割け
    ・リーダは慎重なる楽観主義者であるべきだ。

    川村氏の最後のメッセージは、
      Remember,the best is yet to come!
      (覚えておきなさい、最良のときはこれから来ることを)  です。

    目次は以下です。

    はじめに
    序章 「自分の後ろには、もう誰もいない」
    第1章 大事なときに「何をきめるか」「どう決めるか」
    第2章 「きちんと稼ぐ」ための思考習慣
    第3章 意思決定から実行までの「シンプルな手順」
    第4章 いつも前向きに「自分を磨く」人
    第5章 「慎重に楽観して」行動する9カ条
    第6章 私たち日本人に必要な「意識」とは何か
    おわりに

  • 7,000億円赤字。調達3,500億円。
    黒字化→承継
    人柄、思想が見える書。
    1.意思決定者少。会長社長兼任
    2.会議→決定の場。
    3.必ず実行。
    4.始末書。次の経験へ。
    5.メンバー指導。2割注ぐ。
    執筆とカドカワ社に感謝です。

  • 2009年、7000億円の大赤字に陥った日立の社長を69歳で引き受けた川村氏が、V字改革に結びつけた改革のエッセンスを語った本。「ラストマン」とは、ある事項に対して、最終的な意思決定を行い、最終的な責任を取ること、で、川村氏の矜持ともいうべきものである。そして、この本を読むものへのラストマンたれとのメッセージでもある。

    日立が69歳の社長を戴いたというニュースを見たときは、若返りが必要なのでは、本当に大丈夫かという印象を持ったが、結果を見るとその判断は正しかったということになる。指名委員会がどういう理由で子会社である日立マクセルの会長を務めていた川村氏を推したのかは不詳であるが、子会社含めて日本型大組織において大ナタを振るうためには、年長者であることが非常に重要であったのかもしれない。実際に、反発が想定されるTV製造事業や半導体事業からの撤退を含む事業の選択と集中や、戦略子会社の完全子会社化による非上場化を次々と実行した。

    本書の中に「語弊を恐れずに言えば、たいていの改革は、スピードさえあれば何とかなるものです」という一言がある。一方、常々「日立時間」と呼ばれる大企業がゆえの意思決定の遅さが指摘されており、事業の低迷や致命的な改革の遅延を招いている原因として皆がある程度分かっていた上で、この改革をスピードをもってできる人として指名されたのかもしれない。

    改革ができたのは、結局はラストマンの覚悟をもって意思決定できたということであるとして、そのプロセスとして次の5つを挙げる。
    ① 現状を分析する
    ② 未来を予測する
    ③ 戦略を描く
    ④ 説明責任を果たす
    ⑤ 断固、実行する

    至極当たり前のように思えるが、これを大組織の中で実行することは極めて難しいことである。本書の中軸は、これらのプロセスをいかに進めてきたのかの解説になっている。また、このプロセスにおいて、日本人はいわゆるPDCAの中でPDが不得意でPDCAが回らないのだと。また結論を出せない日本式会議について、結論を出すために、「時間を区切る」ことと「情報不足の状態でも、必ず決める」ことをコツとして挙げています。

    「本当は、改革を実現させるのに特別な方法などありません。...結局のところ、決め手になるのは、最後までやり通せる覚悟があるかどうかです。その覚悟があればどんなに複雑な問題であっても解決できるのだと、私は信じています」

    部下を厳しい場面におくことでストレッチさせて人財として育てることなど、いろいろと一般的に当てはまることも多い。海外の会社や経営者の成功譚や指南書よりも、日本の大企業のためにはよほどこの本の方が役に立ちそうだ。
    期待をしていたよりもよい内容だった。

  • 日立グループの経営を再建した川村隆氏による、経営の改革に必要なリーダーシップのあり方をまとめた本。タイトルにあるように、決断し、最後に責任を取る人間である「ザ・ラストマン」としての心得が主な内容である。

    変化の激しい経営環境の中での決断において重要なのは、スピードであると筆者は考えている。そしてスピード感を持って決断をするためにも、ボトムアップではなく責任を持つトップが「ザ・ラストマン」として決断をしなければならない。「ザ・ラストマン」の重要性は経営にスピードと責任を両立させる必要と密接に関連しているということが、よく分かった。

    一方で、スピードを重視した経営が現場を置き去りにしたり、根拠なく勘だけで判断する賭けのような経営になったりしてはいけない。

    この点で筆者は、意思決定におけるデータの重要性や、未来を予測するときにそれが想定から外れたときにどのようなシグナルで察知でき、どのような対策を打てるかまで考えるという、ロジカルな意思決定のあり方を強調している。

    また、決定したことを実行に移すにあたり、数字だけではなくストーリーやビジョンを含めてそれを現場に語っていくことも重要であり、その上で実行にあたっては大きな方針は変えないものの実際に実行する手段は現場に権限委譲していくことを通じて、経営と現場の間の有機的な関係性を構築することも大切であるとしている。

    全体を通じて、地に足の着いた実直な経営論であり、やるべきことをきちんとやること、誠実にコミュニケーションをしながら進めていくことの大切さを感じられた。このようなことをグローバルに展開する大企業で実行することは並大抵の労力ではなかったと思うが、カリスマ的なリーダーシップに依存するような経営スタイルではないからこそ、一度このような組織のあり方が定着すれば、その後も継承されていくものになるのではないかと感じた。

  • 川村元会長の考えに共感するところが多く、とても面白かった。リーダーとして大事な5つのステップ、特に最後の断固実行する、には強い思いを感じた。

  • 背筋が伸びる本。志高く、開拓者のようにチャレンジをしなければならないと思った。

  • 2021年4月30日読了。

  • 読み易く、今でもぶれないアドバイス!

  • 2015年に書かれた本。このコロナ禍で色々と働き方や仕事に対する個人の価値観が変わろうとしているタイミングで、ふとラストマンというフレーズがよぎり手に取ってみた。率直に2009年の底から10年経過し目に見えて色々なものが変わったし、働く個人の意識として変わってきたが、今後の当面の10年どう意識し働くのか、改めて考え直すいい機会になりました。伏目のタイミングで読み直し、その時の自分としてどう考えるのか、向き合っていきたいと思える本でした。

  • 日立製作所の川村元社長の書かれた本書。
    その名も「ラストマン」。

    ラストマンとは、「最後に責任を取ろうと意識のある人」。


    ラストマンの改革は、、、

    【決断の仕方】経営に必要なのはスピード
    ①選択と集中をトップダウンで迅速に決定
    ②一方で、カンパニー制導入し、競わせる。
     その為に権限委譲。
    ③カンパニー長が投資家へ説明→当事者意識を持たせる


    これから世界で勝負になるのは、売った後の高度なサービスと、顧客の課題を解決する「ソリューション型サービス」。
    例えば、鉄道のリモートメンテナンス。

    【思考習慣】
    ①自分達以外の目を持つこと
    ②会議は、時間を区切ること。情報不足でも必ず決める事。
    ③稼ぐ意識を持たせる
    ④平常時の構造改革を行う

    【手順】意思決定から実行までのシンプルな手順
    ①決められるリーダーが大切にしてる事
     意思決定した事を、実行できたということが当たり前だが、難しい。実現するには次のプロセス。
     ●現状を分析する
       データを元にする
     ●未来を予測する
       高感度のアンテナにする
     ●戦略を描く
       戦術は変えても戦略は変えてはいけない。
     ●説明責任を果たす
       未来を話す時間を持つ
       メッセージを伝える為のキーワード
       言い切る
     ●断固、実行する
       情より理をとれ
       PDCA

    【自分磨き】
    修羅場体験が人を成長させる
    失敗の数だけ成長する。耐性をつけることができる。
    考えすぎるより行動してみる。

    部下の指導に持ち時間の2割を割け。
    いきなり大仕事を任せてみる。
    要所要所で褒める

    【行動9カ条】
    1.リーダーは、慎重なる楽観主義者であるべき
    楽観と言ってもやるべきことがわかっている意思ある楽観主義でないとダメ。

    2.開拓者精神
     開拓者精神を養うには、育ちづらい環境にある日本を離れ、海外に出ることが次善の策。

    3.人生のプロジェクトマネジメントをする

    4.T型定規タイプ(専門の分野を極めた上で、経営や会計、資材調達、HRなどを身につける)が、経営のリーダーの理想。

    5.思いやりの心もビジネスに活きる

    6.読書で鍛えられるものがある
     特に古典。「論後」「言志四緑」「幸福論(バートランド・ラッセル)」

    7.必要以上にむれない

    8.自分の健康にも責任を持つ

    9.ラストマンこそラストが大事
      引き際が大事。

    【必要な意識】
    1.グローバルの意識を持つ
    2.「正しい道がわかる人」を育てる
      意思決定力と問題解決力のある人材
    3.多様性を受け入れる


    これらが、川村さんが会社人として長年働く中で体得してこられた、そして実行してこられた内容。
    経験に裏打ちされた言葉一つ一つにはやはり重みがあります。

    私も残りわずかな会社人生活をラストマンとなれるよう気概を持って臨みたいと思います。





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著者プロフィール

川村 隆(カワムラ タカシ)
1939年生まれ。日立製作所元会長。東京電力前会長。1962年東京大学工学部を卒業し日立製作所入社。電力事業部火力技術本部長、日立工場長を経て1999年副社長。その後、日立マクセルなどグループ会社の会長を歴任したが、日立製作所が7873億円の巨額最終赤字を出した直後の2009年に呼び戻され、執行役会長兼社長に就任。日立再生を陣頭指揮した。黒字化の目処を立てた2010年に社長を退任、2014年には取締役会長を退任。2010~2014年日本経済団体連合会副会長。2014~2019年みずほフィナンシャルグループ社外取締役。2015~2017年カルビー社外取締役、2016~2017年ニトリホールディングス社外取締役。2017年に東京電力ホールディングス社外取締役会長に就任し2020年退任。

「2021年 『一俗六仙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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