この闇と光 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 4495
感想 : 409
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023815

作品紹介・あらすじ

森の奥深く囚われた盲目の王女・レイア。父王からの優しく甘やかな愛と光に満ちた鳥籠の世界は、レイアが成長したある日終わりを迎える。そこで目にした驚愕の真実とは……。耽美と幻想に彩られた美しき謎解き!

感想・レビュー・書評

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  • 「すべての世界が反転する衝撃」と帯にあり、読み始めたらもう止まりませんでした。
    半分以上、一体何を読まされているんだろう?という気持ちで読み進め、ある時にグラグラと崩れ落ちる感覚。それも一度ではなく、何度も!
    怖くて美しくて面白かった作品でした。

  • 嗚呼! 凄い!
    美しくて、切なくて、おそろしくて……。
    予想をはるかに上回る読書だった。
    久しぶりに「はっ」と声が出てしまった。
    この作品は何を書いてもネタバレになってしまうので、何も書けない。
    もし、自分が誰かのレビューでネタを目にしてしまい、それから読んだとしたら、きっと腹を立てるだろう。
     
    一般的に、トリックというのは道具であり手段だと思っています。
    ですから、たとえそれがどんなに複雑で精巧な仕掛けだとしても、トリックを披露するためだけに作られた物語には心惹かれません。
    感心はしますが。
     
    本書は……私程度ではうまく太刀打ちできない、説明できない、美しく切ないミステリーでした。
     
    この本を教えてくれたブグログの方々に感謝。

    • なおなおさん
      土瓶さん、こんにちは。

      何を書いてもネタバレしてしまう…ってよーく分かります。
      切ないストーリーが忘れられなくて、また読みたい本の一つです...
      土瓶さん、こんにちは。

      何を書いてもネタバレしてしまう…ってよーく分かります。
      切ないストーリーが忘れられなくて、また読みたい本の一つです。
      トリックについての考察、なるほど…と思いました。
      トリックを披露するだけの作品、私が読んできた中にもあるかも。
      そういう作品は私も何かを感じ取ったのかな…★評価低めです^^;
      2022/04/03
    • 土瓶さん
      なおなおさん、こんにちは。
      前半の、いつか不穏なことが起こりそうな予感。
      そして驚愕のトリック。
      そこで終わらずに物語は続いて、ラスト...
      なおなおさん、こんにちは。
      前半の、いつか不穏なことが起こりそうな予感。
      そして驚愕のトリック。
      そこで終わらずに物語は続いて、ラストへ。
      そのさらに後を読者に想像させるような終わり方。
      よかった~。好みです♪
      2022/04/03
  • 読みたかった本。解説の皆川博子さん言うように予備知識も先入観も無しで読んでよかった。盲目の王女レイア。囚われの身でありながら物語や音楽に囲まれ父王に慈しまれ育ったが‥という最初の章から怒涛の展開。忘れられない美しい物語。

  • ちょっとメルヘンの世界が長過ぎるんとちゃうの?
    どう繋がっていくのかと…
    少しイライラ…
    大どんでん返しと言えばそうやけど、たまに、こんな事件あるな。
    こんな誠心誠意に育てて貰ってないけどね〜
    レイアが大人になって来て、真実が明らかになっていくのは、王様が罪の意識が出て来たのか、レイアが大人の兆候が出て来たからか…
    現世に戻っても、メルヘンの時代が忘れられないのは、こんな感じで生活してたらそうなんかもしれん。
    メルヘンの世界ほど、現世はキレイやないし、綺麗事やなく生きていかなあかんしな。
    しかし、レイアさんは、これからも結構、ツラく生きていかなあかんのやろな。
    まぁ、これが現世での真実の生き方なんやけど、また、メルヘンの世界に行くんかな?
    とは言え、どんでん返しなかなかでした〜(^_^)v

  • ブクログの本棚紹介で見つけて読了
    素敵な出会いでした 収穫
    ネット検索やコメント見ないで読むことをお勧めします

    視覚を失った環境下での英才教育
    恐ろしさのなかに咲く「美」感性を描いた文書が
    知的でオシャレ

    神は光でもあり闇でもある 

  • 幻想的な表現とゴシックな雰囲気に包まれた一冊。多少表現が独特なところと、視点が入れ替わるところから読みにくい印象も受けた。
    読む前からどんでん返しだということは聞いていたので、どんなどんでん返しがあるのかと思っていたらまさかのレイアが男の子でダフネは和泉高雄の一人二役など驚かせる要素がたくさんあって面白かった。
    最後は、メリーバッドエンドかなぁと思いました。彼は光の中の闇を見てそれを自分を誘拐した父に求めた。洗脳でここまで社会との関わりが途絶えた人間の価値観が変わってしまうのかと思った。そしてそこから解放されたとしても今までいた環境とのギャップで悩んでしまうところがとてもリアルであった。
    最後に、大木怜=おお、綺麗となるの所が和泉が彼に抱いてた印象を表わしているのかなと思った。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    レイア:水瀬いのり/松岡禎丞
    父(和泉高雄):井上和彦
    ダフネ:茅野愛衣
    沢先生:安野希世乃
    大木洋子:早見沙織
    大木章二:小山力也
    美奈子:佐倉綾音

  • 書店で見かけ、書影の美しさに惹かれ購入。

    森の奥深く囚われた盲目の王女・レイア。父王からの優しく甘やかな愛と光に満ちた鳥籠の世界は、レイアが成長したある日終わりを迎えてしまう。その先でレイアが知ることになる、この世界の真実とは…。

    ネタバレを避けるため詳しい内容は避けるが、章を跨ぐたびに息を飲む展開が続き、呆然とすることも…。物語の結末は儚くも美しく、その先の話を見たい気持ちと見たくない気持ちで心が揺さぶられた。
    切なく、生々しく残酷で、そして美しさを感じられるゴシックミステリーだった。

  • ある国の王であった父親が失脚し、
    森の中の別荘に囚われた盲目の姫レイア。
    父親と召使いのダフネ、そして父が語り聞かせてくれる美しい物語だけが、レイアの世界のすべてだった。
    ところがレイアが13歳になったある日、信じていた世界は、音を立てて崩れ去ってしまう。
    そこでレイアが目にした驚愕の真実とは…。
    幻想と耽美の極致とも言えるゴシックミステリーの傑作。


    祝復刊!
    いやぁ~、なんと美しく切ない物語か( >_<)
    (新装文庫版の皆川博子さんの解説がまた秀逸!)


    心の奥底から湧き出す
    どうしようもなく激しい感情。
    読む者すべての胸の奥を掻きむしる何か。
    この泣き叫びたくなるような、切なさの正体は一体何なのか。

    ミステリーとしての仕掛けを期待すると物足りない人もいるだろうけど、
    (それでも僕個人としては充分に驚かされました汗)

    この作品のキモはそこではないのです。


    幽閉された5歳の少女。
    父のいない夜にカセットテープで聞いた「いばら姫」の物語。
    沈丁花に似た甘い香りが引き連れてくるのは、
    闇よりも濃い恐怖と
    孤独よりも恐ろしい敵意。
    耽美でとろけるような蜜の世界と
    甘やかに匂い立つ美しき幻想の日々。

    小説とはストーリーを楽しんだり
    意外性やオチを楽しむ以外に、
    その作家にしか書けない
    文体そのものを味わう醍醐味があります。
    (文体こそ人なり!)

    この物語もまさにそう。
    服部まゆみさんの審美眼が如実に投影された、
    驚愕の真相が明かされるまでの
    幼きレイア姫と父親である王との
    夢のように甘い蜜の日々の
    なんと淫靡で官能的なことか。
    (物語前半のこの部分だけで、ご飯三杯は食えるし、★8つは献上したいくらいの見事な世界観!)


    王である父は目が見えなくなったレイア姫に
    色や言葉や食べ物や動物や花の名前を教え、書き方を教え、言葉遣いを教え、ピアノを教え、
    絵本を読み聞かせ、
    やがてレイアは数や時の概念を知り、
    小さな哲学者となっていきます。

    目が見えないレイア姫が
    文字や言葉を覚えた喜び、
    音楽や物語にのめり込む切実さは
    三重苦を克服したヘレン・ケラーの「奇跡の人」が頭に浮かんだし、
    闇を抱え、闇と葛藤するレイアの苦悩と
    中庭の芝生での「ピクニック」と言う名の幸福を絵に描いたような昼食のシーンのコントラストが
    より物語を美しいものにしています。

    目は見えないが、輝くように美しく妖精のような5歳の少女レイア姫に
    怒りと憎悪が凍りついた声で
    「死ねばいいのに」と囁く
    召使いのダフネの圧倒的な悪意。

    父がくれた巨大なくまのぬいぐるみの「プゥ」と
    レイアの騎士となる犬の「ダーク」を従え、
    「赤頭巾」「ヘンゼルとグレーテル」「ピーターラビット」「ラプンツェル」「小公子」「小公女」「嵐が丘」「デミアン」「罪と罰」「緋文字」などの物語の世界を夢想し、
    やがてその幻想とシンクロし、取り込まれていくレイアが
    なんとも切なく胸を打ちます。
     
    けれども、やりきれないリアルな現実の中で
    物語の中に真実を見いだそうとする少女の姿を誰が笑えるだろう。

    無垢な魂だけがたどり着くことができる残酷なまでに美しい世界を幻想的に描いた
    ギレルモ・デル・トロ監督のダークファンタジーの傑作
    『パンズ・ラビリンス』を彷彿とさせる世界観に
    とにかく僕は耽読し、酔いしれました。

    後半の衝撃的真相にはあえて触れなかったけど、
    少女小説や幻想小説が好きなら
    必ずや前半の展開だけで、
    充分に満足してもらえる作品です。


    なお、著者の服部まゆみさんは
    2007年に肺ガンのため、58歳の若さで亡くなられました。
    心からの御冥福をお祈りいたします。
    (紹介してくれたkwosaさんにも最大の感謝を!)

  • 「闇の中にあって、世界はなんと美しく輝いていたことだろう」

    闇の中で与えられる光だからこそ最高に美しいと感じるのだろう。

    レイアは自分の思う美を詰め込んだDの作品。歪んでいる。だが、少し羨ましいと感じてしまう体験でもある。(ダメ誘拐絶対)洗脳ではあるが、こんな洗脳ならされてみたい。(だからダメ絶対)なんて感じてしまった私もこの闇に光を感じた読者の一人である。

    最後は私的にはD側をもっと掘り下げて欲しかったのでモヤモヤが残るが、これも作者の「美」なのであろう。

    でも一人三役って難しそう。兵士はいけたとしても、ダフネいけるかな?読み返したら上手いことやってるなってなるのかも。

    • 土瓶さん
      何かが起こる! 
      何かが起きそう!
      何かが起きている!
      そんな不穏な空気感が好きです^^
      ネタバレになりそうなので何も言えんです。
      何かが起こる! 
      何かが起きそう!
      何かが起きている!
      そんな不穏な空気感が好きです^^
      ネタバレになりそうなので何も言えんです。
      2024/02/09
  • 国王の父が失脚し、森の奥に囚われた盲目の王女レイア。
    侍女のダフネには怯えながらも、父とぷぅと愛犬ダークと共に、父の愛や、美しい音楽や童話や小説に囲まれ育てられた。

    ある日突然その全てが奪われ、真実が明らかになる。

    またまた未来屋書店さんのミステリーコーナーのポップに負けて購入してしまった。
    この書店のミステリーコーナーは巧みに読者の心を掴んでくる。

    そして、読者を裏切らない。

    この小説は今まで読んだことがない雰囲気でとても新鮮だった。そして文章もぐっと惹き付けられ、短時間で読み終わってしまう、そんな作品だった。

    いつも素敵な作品に出会わせてくれる未来屋書店さんには感謝!

    この小説は何を書いてもネタバレしそうで危険な作品である。

    ぜひ何の情報も入れずに読んで頂きたい。そんな一冊(*^^*)

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著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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