- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041023877
作品紹介・あらすじ
高校のベランダから転落した加奈の死を、父親の安藤は受け止められずにいた。娘はなぜ死んだのか。自分を責める日々を送る安藤の前に現れた、加奈のクラスメートの協力で、娘の悩みを知った安藤は。
感想・レビュー・書評
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これがデビュー作とは
恐るべし。
皆が皆こんなはずじゃ
なかった、なんです。
転落死した主人公の娘、
彼女を虐めていた友人、
母親にまで誤解される
主人公の同僚、
そしてもちろん主人公
も。
こんなはずじゃ・・・
なんで?どうして?と
とまどう心は、
出口なき迷宮を彷徨う
に似て、
行けども行けども漆黒
の闇ばかり。
いずれ精根尽き果てる
前に差し伸べられた手
にすがればいいのです。
その手は常に目の前に
あるのに、
手を伸ばせばすぐそこ
にあるのに、
暗闇の中にいるせいで
全く見えないのが最大
の難点ですが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先日のパラダイスクローズドにも登場した、熱帯魚ベタ(闘魚)。こちらでも、時折登場してきます。
縄張りとか威嚇のモチーフかな。
好きな作家の芦沢さん、10年以上前の作品ですが、女子高生達の軽薄な意識に悪寒を覚えます。
本人は、決して死ぬつもりは無かったが、教室のベランダから転落死した女子高生。
彼女は、何故死んでしまったのか。
父親は、残されたパソコンの日記から、同級生から嫌がらせを受けていた事を知る。父親は、自殺と確信する。愛する娘を奪われた父親は、人生をかかけて復讐を決意する。
親や家族の愛情さえ踏み躙る、女子高生の悪意ある行動。彼女達の正義はスクールカーストの保身のみのよう。
この父親に寄り添う、人の感情を読み取ることができない同僚の女性が、興味深いのだけれども、
登場が中途半端でもったいない。この病んだ女子高生と関わって、彼女らの罪に対する意識を変えて欲しかった。-
映画にもなったやつだね。
観た気になってたけど わたしが観たのは「渇き。」のほうだった!イヤミス??映画にもなったやつだね。
観た気になってたけど わたしが観たのは「渇き。」のほうだった!イヤミス??2023/12/01 -
2023/12/01
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うん。思っていたのと少し違いました。
最初、死ぬ場面からなんだけど、少女は、自殺だと思われちゃう、って思いながら死ぬのよ。
確かにいじめられ...うん。思っていたのと少し違いました。
最初、死ぬ場面からなんだけど、少女は、自殺だと思われちゃう、って思いながら死ぬのよ。
確かにいじめられていたけど、本人は、死ぬつもりは無かったのね。
日記を見ちゃったお父さんと、いじめがばれそうな女子高生の、駆け引き。
気持ち悪いのは、相手が死んで自分の罪を考えるではなく、保身に走るところ。
イヤミスよりだけど、最後にちょっと救いがある。2023/12/01
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家族を想う父親と繊細な高校生たちの人間関係に胸が張り裂ける! 憎みと愛のミステリー #罪の余白
女子高生が学校の屋上から転落した。事故か自殺か?
打ちひしがれていた彼女の父親にはいってくる学校や彼女の友人たちからの情報は、当たり障りのないものだけだった。父親は愛娘のために真相解明を目指すが…
分かりやすい丁寧なストーリーと、心情描写が豊かな文章。さすがは芦沢先生、デビュー作とは思えない素晴らしい出来映えです。
ミステリーとしても強烈さは少なめですが、しっかり及第点は取れていて面白いです。全体的にエンタメ小説としてしっかり読み応えがある作品に仕上げてあるので、気軽に手に取って読めるおすすめの作品になっています。
なにより本作の素晴らしい点は、登場人物たちの描写。
父親、同僚、娘、娘の友人たち、全員の個性が完璧に描けています。ホント芦沢先生は人を魅力的に描くのがお上手。今にも壊れてしまいそうな、でもしたたかな女性の機微を綺麗な日本語で綴ってくれるんですよね。
特に本作は変に芸術的な表現や構成を必要以上に凝ることがなく、比較的シンプルに良いところが出ているので、芦沢先生の魅力がしっかり感じられる作品になっていると思いました。
しかし若くはない年齢になってくると、こういうお話は読んでて苦しいですね。
高校生たちの人生や生活に不安でいっぱいな思いや、微妙な人間関係に巻き込まれる不幸。自分も学生当時は必死に生きていたなぁ…
そして父親として強く生きるという、至って当たり前のこと。これがすごく難しいんです。実は最近母親を亡くしたんですが、それをきっかけに、やっと少しだけできるようになってきたかなーと思っています。
芦沢先生の魅力がバッチシ感じられる本作、おすすめです!-
autumn522akiさん
返信ありがとうございます。
お母様のご冥福をお祈り致します_(。。)_
私が最近読み終えた【カササギ殺人事...autumn522akiさん
返信ありがとうございます。
お母様のご冥福をお祈り致します_(。。)_
私が最近読み終えた【カササギ殺人事件】も、知ってはいましたが手にはとらずで、結果読んだのはautumn522akiさんのレビューが決めてだったんですよ(^^)
海外小説はどうも苦手なんですが、面白くて読んで良かったと思ってます(*´ω`*)
同じく読みたい本が増えるばかりで時間が全然足りません泣笑
お互い読書楽しみましょう♪♪2022/07/31 -
みたらし娘さん
自分のレビューで読んでくださるなんて、ありがとうございます(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
海外ものは読みづらいですよね。
ただ...みたらし娘さん
自分のレビューで読んでくださるなんて、ありがとうございます(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
海外ものは読みづらいですよね。
ただ古典でなく最近出たものは、翻訳のかたもお上手なので、じっくり読めばなんとかなりますよ。
人物表は何度も何度も見ることになる(犯人判明してる最終盤でも見ることがあるw)ので、このブックカバーがおすすめです。
https://twitter.com/autumn522aki/status/1535325333800767488
夏のうちに一回は海で読書がしたい!と思っている私でした。
楽しい読書ライフを!2022/07/31 -
autumn522akiさん
こんにちは☆
海外小説への偏見が良くないですね私(´・ω・`)
カササギ殺人事件も楽しめたので、他にもチャレ...autumn522akiさん
こんにちは☆
海外小説への偏見が良くないですね私(´・ω・`)
カササギ殺人事件も楽しめたので、他にもチャレンジしてみようと思います!
そして、一体どんな便利なブックカバーだろう…とTwitter登録して拝見いたしました!
なんと…同じシリーズ(?)のハリネズミ版とトリケラトプス版を持っております……!!!!笑笑
こんな便利な使い方があるとは!!!
気づかなかった…人物表のとこを指で挟みながら読んでました…笑
これならめっちゃ便利ですね♪
真似っ子させていただきます☆
ありがとうございます┏○ペコッ
海での読書素敵ですね!
当方海なし県なので想像しただけで羨ましい素敵な景色が浮かびます☆☆
ぜひ実現させてくださいね!
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました♪2022/08/01
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娘自殺→悩む父親、そして傍らに謎の不感症女。
女子高生の歪な友情、復讐を誓う父。
阻止、排除したい犯人。
ーーーーーーーーーーーーーメモ。
起承転結が整っていてとても読み易い。美しくも残酷なお魚、ベタが登場するのは個人的にテンション上がる展開だが、内容としては短編でも良さそうなスケールだった。と言うのもレビューを書くにあたって物語を振り返る時間がとても短かったのだ。
登場人物の心情、残酷さ、嬉しい 悲しい 辛い 憎い 愛おしい。そんな心の内と目に浮かぶ美しい背景描写を楽しむ一冊。
ハードな内容に疲れた時、内容は軽くしかし人物の心情に浸りたい時にまた手に取るだろう。 -
一番ツライのは、自分より先に子供が逝く事…
更に自殺となれば、自身への後悔も相当なものになるな。
その当たりの死の真相を親が突き止めるんやけど、もう子供が戻って来ないのも確か…
自己中の同級生には、呆れるけど、隠そうとするまでは、分かる。更に、それを実力行使までして隠そうとするのには…
でも、この娘は、ずっと自身の本音を隠して生きて来たからタチが悪いのか…
美人もええけど、性格も美人であって欲しい。増長する気持ちも分からなくはないけど。あかん!あかん!周りがこんな風に思うから、本人が、増長するんやな!
反省(−_−;)
反省すれば良かったのに…嘘に嘘を重ねて…ほんまに( *`ω´) -
同級生のいじめで1人娘を亡くした父親の復讐劇。
各登場人物〈父親・同僚・娘・同級生2人〉ごとの視点で描かれる心理描写と展開法は秀逸。
同じく娘を持つ父親としては、このストーリーと結末には感慨深いものがあった。 -
子どもを亡くした親は…やっぱりこうなると思う。
咲が高校生だからではなく、自分は悪くないと思い込める人間は存在する。
何を言っても通じない…そんな奴を前にした苛立ち。
とある上級国民が頭に浮かぶ。腹立たしい。
早苗さんがこの小説の中の救いだった。 -
芦沢央の作品は、これまで『許されようとは思いません』、『悪いものが、来ませんように』、この2作品読んだことがあったのですが、そのときは、面白いけど、これを「素晴らしい!」と絶賛するのは、どこか抵抗があった。
しかし、本作は、面白かった。
夢中になって最後まで一気に読み終えた。
「芦沢央、面白い」と素直に思った。
今まで私は強がっていたただけではないか。
芦沢央の作品を絶賛するって、どこか幼いんじゃないか、と。
だから距離をとって、「もし学生のときに読んでいたら、とてもハマっていただろうな」なんていう、言い訳のようなことを言って、素直に認められず、強がっていたのではないか。
そう思ってしまうほど、本作は、面白かった。
“イヤミス”なんていう言葉があるけど、そんなふうに括ってはいけないように思った。
確かに、嫌な気分にはなった。
例えば、父親(安藤)が、ベタの殺し合いを見つめるシーンがあるのだけど、これが絶妙に嫌な気分にさせる。わざわざこんなの差し込まなくてもいいのに、と突っ込みたくなるほど。
それまで“良いお父さん”のイメージだったのが、変わっていく。見たくない姿に変わっていく。憎悪に蝕まれていく様がとても不快。
「“イヤミス”なんていう一過性のブームで括ってはいけない」、
そう思ったのは、この不快な感じは、例えば30年後に読んでもきっと不快だろうな、と思ったからだ。
それは『許されようとは思いません』、『悪いものが、来ませんように』も同様。
嫌な気分にさせる作風というか、その技術というか、これは一過性ブームではなく、きちんと評価されるべきだろう。文筆力がなくては不可能な技術である。人の心をしっかり動かしている。
とはいえ、「もうちょっとこうしてほしかったな」という、気になる部分もあった。
咲という人物。
「こんな女子高生、滅多にいないでしょ」と思うほど、強烈なキャラクターなのだが、こんな人物が生まれるには、家庭環境が大きく影響していると考えるのが自然だろう。
しかし、家族、家庭環境という背景がほとんど描かれていない(なんなら、お母さんはごくごく普通の人)。
なので、「突然変異的に生まれたサイコパス」のような存在となってしまっている。
まぁ、それならそれでいいのだけど、家庭環境がどうなっているのかほとんど書かれていないのは、違和感があった。
小沢早苗という人物に関しても、「そこまでロボットのような、無機質な性格である必要はあるのかな」と思ってしまった。
小説を書くにあたって、登場人物に引きがあるキャラクターを与えるために用意した設定――そんなふうに見えてしまった、正直。作者側の意図が露骨に見えてしまうと、冷めてしまう。
と、このように気になる点もいくつかあったけど、
それと小説が面白いかどうかは、私個人としては、ほとんど無関係である。
「細かいことは気にするな」、である。
細かいことを気にすると、ほとんどの小説は楽しめないだろう。
ミステリー作品なら尚の事。
「細かい部分に引っかからないこと」、これは小説を楽しむコツ、小説を楽しめる人の才能だと思う。
小説の面白さは“大局”にある。
大局でみたときに、この『罪の余白』は大変面白かった。
次の展開がどうなるか、ワクワクさせるって、もうそれだけでじゅうぶんです。すごいです。 -
上手いなぁ!が率直な感想。
とても良かった。
アスペルガーの早苗さんの個性が凄く良い。
昨日まで読んでいた、よるのふくらみはヤゴだったが、今度はベタ。
安藤の娘、加奈が学校で転落死した。
妻を子宮ガンで亡くし、娘と二人暮らしだった安藤は、生きる気力を失う。
そんな彼の元へ、彼の母から依頼され彼の同僚で、アスペルガーでもある早苗は定期的に訪れる。
クラスメートからの手紙を預かった安藤は、娘の死の真相を知りたいと思う。
ある日、安藤の家に弔問に訪れた少女。
そこから一気に物語はクライマックスへ。。。
一気に物語の世界へ読者を引きずり込み、凄いスピードでエピローグへ導く。
女なら何となくわかる世界。
教室の中の暗黙のヒエラルキー。
読んでいる間中ゾクゾクした。 -
娘・加奈を亡くした父親、その娘を死に追いやったであろう娘の同級生・咲を軸にした物語
物語は転落していく加奈の心情から始まります
加奈は死にたくないと思っているし、父親に対してもこんな事になってゴメンと思っている
この加奈の気持ちを先に知らされているため、余計にこの後に書かれる父親の苦悩が心をえぐってきます
父親の苦悩と対比で同じく悩んではいるが、それは自身の保身のためである咲の軽薄さ身勝手さが不快さを煽ってきます
父親の同僚とし登場する早苗の存在は、この小説の各登場人物の心情パートを細かく繋げていく書き方にハマっていて、一見分かりにくい彼女の行動に人間らしさを現していたように感じました
終始咲の言動に胸糞悪い気持ちにさせられますが、物語の後半からはグッと展開が早くなりサスペンス要素が強くなり惹き込まれました -
本書は著者のデビュー作である。
第3回野生時代フロンティア文学賞を受賞し、本作でデビューした。
最近のお気に入りの作家の第一歩はなんだか初々しい。
選者たちの評でも記されている通り、ベタ(綺麗な熱帯魚で闘魚とも言われる)の描写が活かしきれていない。
何を象徴しているのか伝わりきっていない。
いじめの加害者たち?父親の心?
うーん、それにしてはどれもしっくりこない。
アスペルガー症候群と思われる女性研究者、早苗も良い人物像ではあるのだが、女子高生二人、父親との対照である、ということはわかってももう少し作り込めていた方がよかったなと感じた。
私が感じたのと同じような感想を選者も抱いていたということはそこは読み手が引っかかるポイントだと思う。
(なお私が読んだのは単行本の方)
しかしこのやや拙い感じが、著者のスタートかと思うと、なんだか嬉しい。
どんな書き手も最初は下手な部分がある。
そう思うと、勇気が出てくる。
・・・著者にとっては不本意だろうが。
さて、このやけつく痛みはどうしたものか。
いじめなんてそこらじゅうにある。
無視、ものがなくなること、悪口、笑い。
でもその一つ一つを犯罪と言えないのなら。ならば私が。
そう考える父親の苦しみは息苦しい。
葛藤をテーマにした物語。
そこにある合理的ではない行動は、誰もがわかるが、誰にもわからない。 -
久々の芦沢さん作品でした。独特の嫌な気持ちになるので続けては読めないけど、たまーに読みたくなるタイプの作家さん。
本作もぶつけどころのない怒りが湧いてきて、気分悪いわと言ってたけど、続きが気になって一気読みしました。救いようない。読み物としてはおもしろい。。いらいらするけど。。
自分が女子校出身でスクールカーストも感じたことない身で、周りに合わせることも小さいときからあまりなかったタイプなので、この手の話を読んだ時は、大変な世界なんだなぁと。自分はこういうことで今まで悩まずに生きてこられてラッキーだったのかと、よく思います。 -
題名通りの物語だったなと感じた。
ノートに取った授業の内容と、暇つぶしで書いた落書きがなんの関連性もないように、この物語でも内容が進んでいく。内容的には関連がないわけではなかったが、、、
本人が書いたものとは別の意思で勝手に余白に書き込まれるように進んでいく物語が面白かった。
余白でかスギィ! -
「娘が死んでもお風呂は入るんだ…」そんな感想しか出て来ない無機質な悪意が 怖かった。
結局 いじめの原因でさぇ…「なんとなく」だったんだろぅ。
そんな 反省もない2人を 自らの死で 永遠に刻みこませるように復讐する父親の覚悟も怖い。
作品自体は 登場人物の視点から 様々 代わって行くが、時系列が一定で進んで行くので 凄く読みやすかった。
赦しを乞い、赦しを受け入れたら……
被害者は忘れられる……のかなぁ……
って 犯罪被害者の苦悩も垣間見えた。 -
近い年代の子どもがいるオッサンとしては読み進めるのがツラかった...。心理系やアスペルガー症候群も絡めた、これでもか! という設定はちょっと盛り込み過ぎかと思いつつも、これはこれでアリだろう。受け止めるパワーがある時に読みたい一冊。
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落下シーンから始まる。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。警察は自殺と判断。学校はいじめの事実はなかったと。妻もなくしている安藤は、なぜ娘が自殺しなければいけなかったのか知りたい。到底納得がいかないのだ。
葬儀を終えて放心状態の安藤の元に、1人のクラスメートが線香を上げにやってくる。そこで加奈の日記を探すことになり、そこが真実を解く端緒となった。
安藤の同僚の早苗は元来冗談が通じない。人の心の機微が全く分からない。アスペルガーかと脳を調べてみたが正常だった。安藤と早苗、クラスメートの咲と真帆の視点で紐解かれる。それぞれの想いが交錯する。 -
思春期の女子と女子同士の世界は男子のそれとはかなり異なるらしいとは知らされていたが、実際かなり難しいものであろう事が本作で感じられます。
主人公のひとり、美形の咲は前半では芸能界を目指して少し計算高い少女ではあるものの、自分というものを持ち周囲に惑わされない真の通った真っ直ぐな少女という感じを受けていた。
ところがその真っ直ぐさのまだ先を行く、自分の為ならば手段を選ばない強烈な性格をも持っている少女だったんだ。
愛する者を失った者の無念と悲しみ、自分の夢を追いきれない無念、自分の周りの人々の思いを汲み取れない苦しさ。
人間の感じる負の要素が集まってしまった。 -
一人娘の転落死の真相を追う大学講師の父親の姿を描いたサスペンス。
小説のテーマはどちらかと言うと使い古された感のあるものだったのですが、非常に巧くまとまった秀作だったと思います。
心理描写が個人的に良かったです。娘を失った父親の後悔などの心理描写はもちろんのこと、ヒエラルキーや仲間外れを恐れる女子高生の心理描写、そして自分の行為が明るみに出ないか恐れる心理描写が非常に真に迫っていてサスペンスフルで読まされます。
登場人物でもう一人重要な位置にいるのが主人公安藤の同僚の小沢早苗。アスペルガー症候群などではないものの、相手の言い回しや比喩表現が理解できない彼女と、安藤のやり取りが安藤の、そして陰鬱なストーリーのこの本の救いでもあります。
複雑な人間関係や”空気”というものに対し彼女が無自覚で、冷静に外から見ているからこそ、彼女の心理描写が描かれる場面は一種のエアポケットのような安心感がありました。
第3回野生時代フロンティア文学賞