男役

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041025253

作品紹介・あらすじ

男役トップになって二日後に事故死して以来、宝塚の守護神として語り継がれてきたファントムさん。一方、新人公演で大抜擢されたひかるを待ち受ける試練とは――? 愛と運命の業を描く中山可穂版・オペラ座の怪人!

感想・レビュー・書評

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  • 研究科3年で新人公演の主役に抜擢された、永遠ひかる。
    憧れの男役トップ・如月すみれと同じ役に、喜びとプレッシャーを感じて……。

    宝塚歌劇を描く。

    舞台で事故死した、伝説の男役ファントムの、魂と情念。
    宝塚という、女性だけの閉鎖的な環境での、嫉妬や研鑽。

    独特の世界観が面白かった。

    タブレット端末が登場する現代のはずが、文章が古くて、まるで昭和の小説のよう。
    その古めかしい文体が、ねっとりした作品の世界に合っていた。

  • 自分がどっぷり宝塚にハマっていた故に、こういう宝塚を舞台にした小説は突っ込みどころが多くて満足できない。と思いつつ、やはり読みたくて借りてしまいました。
    不慮の事故で公演中に亡くなった伝説のトップスターの幽霊と、入団3年目で新人公演の主役に抜擢された生徒と、その二人を取り巻く人間模様。
    読み始めて思ったのが、「あ、ちょっと世代が上すぎるかな」。いや、表現方法がねぇ…スターに流し目をされたら身に覚えがない人でも妊娠してしまいそうになるとか。表現方法が古め(^_^;)宝塚を舞台にした小説に有りがちなパターン。内容はファンタジーというか、古き良き宝塚の物語に有りそうな感じで、特に激しく心も動かされず(良くも悪くも)。
    公演のモデルにしているのが「哀しみのコルドバ」かな?とか、細かい所で楽しめました。

  • 中山可穂さん、初めましての作家さん。
    すごく面白かったです!

    私にも遠い昔、宝塚に憧れていた少女時代がありました。
    世は空前のベルばらブーム、母がファンだったこともあり、
    身の程もわきまえず、音楽学校を受けたいなんて夢見たことも。

    好きだったスターさんが退団されてから久しく、
    「最近はこうなんだ~」と驚きながら読みました。

    宝塚が舞台の物語なので、好みは分かれるところかもしれませんが、
    素敵な夢物語でした。

    あの舞台を観ると、しばらくは放心状態になるほどの
    絢爛豪華な夢の世界。

    内容の不思議さも、
    これって友情?それとも恋なの?といった微妙な感じも、
    宝塚らしくて面白かったです。

    なまじ宝塚に詳しくないほうが
    ファンタジーとして楽しく読めるのではと思います。

  • 宝塚歌劇団の仕組みや知識を知ると、より一層面白みを感じることができるのでは無いだろうか。
    舞台事故で亡くなった伝説のトップスターと、早くから抜擢されるもののトップスターになるまでに17年かかった月組トップスター、そして入団3年目にして新人公演にてトップスターと同じ役を演じることになった生徒のお話。
    実際に舞台事故により亡くなった娘役さんもいることから、本当にこの作品のようなことがあったのではないかと彷彿させるような不思議な感覚に陥った。
    読了後も余韻が続き、新しい作品が読めない。

  • 会社のヅカオタ先輩からまんまと宝塚にはめられてしまったニワカですが、宝塚を舞台にした小説があると知り、手に取りました。
    不慮の事故で劇中に命を落とし、以来大劇場の守り神として皆を見守る「ファントムさん」と、現役トップスター「パッパさん」こと如月すみれ、研究科三年の永遠ひかる、3人の男役の物語。
    「男役が惚れるのは男役だけや。」という台詞に納得。宝塚の男役ってかっこよすぎて本気で好きになってしまったりしないのだろうか…と時々思ったりする。憧れや尊敬から、恋愛感情を抱いてしまうこともあるだろうなぁ。
    また、トップスターの孤独、パッパさんが宝塚を退団した後どう生きればいいのかと悩む姿も印象的だった。そうだよなぁ…トップに限らず、タカラジェンヌの命は短い。ファンとしてはずっと見ていたいだろうけど、宝塚を退団したら、もうその人は女優であって、理想を詰め込んだ男役ではなくなってしまう…複雑。
    フィクションとはいえ、宝塚の内部を覗けたようで楽しかった。続編も読もう。

  • 図書館。著者の作品が好きなのと、前々から勧められていたので。
    よかった。めちゃくちゃよかった。ストーリーだけを追えば、なんとファンタジックな、なんと少女趣味なと言われかねないのを、著者の紡ぐ本当に美しい文章と眼前に肉迫するようなイメージをもって、これほどまでに悲しくて愛おしくて美しい作品にするなんて。クライマックスからラストにかけて、もしかしたら走ってきたように息が荒くなっていたかもしれない。そして葬送。
    私に宝塚趣味はないけれど、こんなにも愛され、美しく描写される宝塚、おそるべし。

  • アニメ「かげきしょうじょ!」から宝塚について知りたいと思い、手に取った。
    ファントムさんが一貫して存在するものとして描かれていたが、違和感なく作品に馴染んでいる。
    男役というのは宝塚でしか存在できない、として寂しさが残るラストだった。
    読み終わったあと、女性誌でコーナーを持つ七海ひろきさんのことを思い出した。宝塚を卒業した後も男役として芸能界で活躍する、という道を切り開いているのかなと思った。

  • 宝塚大劇場には50年の昔に公演中に悲劇の事故で亡くなったトップスターの亡霊ファントムさんが棲みついており、生徒の間ではあらゆる伝説が語り継がれていた。
    研3で新公主演に抜擢された永遠ひかるは責任や仕事にいっぱいいっぱいの毎日の中、舞台での失敗をファントムさんに助けてもらった時から、その存在を感じ始める。彼女はファントムさんの事故の時の相手役の孫で、ファントムさんは自身の死後、宝塚から目を背けるように退団して以来50年間一度も劇場に来ない永遠ひかるの祖母を心配していた。

    軽いノリですぐ読めちゃうし、宝塚あるあるもあって、まあまあ楽しく読みました。でも、秘密の花園である宝塚の内部事情を一般人の妄想で描かれるのはちょっと痛いし恥ずかしいのでした。とは言えちょこちょこ小説として面白いドラマもあったかなあ、何回か不覚にも涙ぐむ場面もありました。ただ、ひかるの成長物語と思いきや、ラストはすみれの男役像の完成で終わるし、で、何の話だっけ?となりました。作者あとがきには宝塚の『男役』へのオマージュ、とあったけどファンの妄想以上の何かが書けていたかと言われると何とも…

  • あっという間に引き込まれて読み終わった。宝塚の世界、プロという意識、読んでいて心地よく、最高の作品だった。

  • 能にお題をとった作品集ではじめて中山可穂さんを読み、おお、美男美女ばかりがくりひろげる修羅。
    独特の美意識の感じられる文章と世界観。
    これをうけいれられるかどうかは、独特なだけに好き嫌いがわかれるだろうけど、わたしはけっこう好きだなーと思いながら手に取った、今作。

    宝塚。

    まさに美男(?)美女、美しいものしか生き残れない愛の国。
    これが、この著者にめちゃくちゃあっている気がしました・・・。
    おもしろかった・・・。
    宝塚を題材に取った漫画、小説はいつも興味深く読んでいるけど、特にこれはおもしろかったなぁ。リアルなファンタジーの世界が感じられた。

  • 初読みの作家さん。ストーリーはそれなりに楽しめた。
    私にとって「宝塚」は、宝塚市に程近い所で生まれ育ち、通学通勤には阪急電車を使い、ヅカセイをよく見かけ、母は若い頃からヅカファンで、周りにも宝塚に関わってきた人々がいて…とても身近な環境にあったもの。だから欲を言えば、宝塚を題材にするなら、もう少し宝塚色濃く、深く描いて欲しかったかな。
    でも、中山可穂さんが伝えたかったことが「この小説は男役という文化へのオマージュである」というのであれば、それは十分に受け取れた。“花瀬レオを主人公にした物語”や、“如月すみれ(パッパさん)が若かった頃の恋の話”に期待したい。実現しますように。

  • ファン小説と文学との違いとは

    宝塚をテーマにした小説と、お慕いする方のツイッターで見つけて読むタイミングを見計らっておりました。

    プロローグの2ページの文章でのっけから引きこまれます。

    臙脂色のビロードと眩いばかりの照明、それに歴史が幾重にも折り重なり構成されたあの劇場の世界を、ことばの力を持って眼前に持ってくる文章でした。

    そこから本文に入ると打って変わってタカラヅカ小説。
    なまじファンでございますからひかるという名前でコムちゃん(朝海ひかる)が浮かびすみれと言われればおささん(春野寿美礼)が浮かび、パッパさんのエピソードはとうこさんに天海様にあの事件にあのペアのエピソードに、と現実の宝塚のあれやこれやを考えずにいられなくなってしまいます。

    そしてプロローグでうすうすと感じていたのですが、宝塚で実際に起きてしまった事件、実際は娘役さんだったはずなのですが、それをモチーフにしているという展開になっていきます。
    エピローグでは関係ないと書いてあるけども、やはりあの事件を感じさせずにはいられません。

    物語の構成としては、宝塚のファンの人が書いた小説と言われても、正直わからないかもしれない。
    宝塚をオマージュして作ったというあとがきにあるように、20年以上宝塚から離れていて、トップスターと会話をしたことがきっかけでつくられたこの作品、宝塚に関してのツメはむしろファンが書くであろう小説よりも甘いです。

    それが小説として成り立ち、夢中になって読ませ、新公ラストで号泣してしまったのはなぜか。
    それはことばの選択と、そのことばたちを並べ集めた文章のもつ力なのかな、と感じました。

    宝塚というテーマであるのであれこれ考えてしまうところがありますので、
    別の作品でこの作家さんの文章を楽しんでみたいなと思いました。

  • 宝塚歌劇団の男役の新人、永遠ひかるは敬愛する月組のトップ如月すみれのサヨナラ公演での新人公演で主役に抜擢された。宝塚での異端児、トップスター、男役のなかの男役といわれる整った顔立ちと長身、客を蕩かせる流し目と微笑をもつ如月すみれは、自分のサヨナラ公演に伝説の演目《セビリアの赤い月》を選ぶ。この演目はその昔伝説的な人気を持った男役扇乙矢の命を奪った事故の、その時に上演されていた演目だった。
    闘牛士のもつ死の匂い、そしてそこから浮かび上がる生の輝き、陰影の深さ。そして恋の魅せる世界の色彩。残酷な物語は若き作家が扇乙矢とその相手役の神無月レイのために書きあげた物語だった。
    華やかで、乙女の夢の結晶でできた歌劇団の中の世界。
    切磋琢磨して美しさを磨いていく女の園で、舞台に住み着いた亡霊がいた。それが彼のトップ扇乙矢、ファントムさんと呼ばれる彼女には様々な噂が囁かれたが、その真実は舞台への愛と、ともに最後の舞台に立った娘役トップ神無月レイへの想いからの存在だった。
    舞台に立つことの恍惚と、男役という異質な存在ゆえの苦悩を抱えながら、それぞれのスポットライトが照らす。

    この本を書店で手に取った時の気持ちは安堵だった。
    中山さんが書いている、よかった、と。
    宝塚の舞台など見たこともないけれど、読んでいる間中眩い光を見つめているようで一気に読み進めたあと、眩暈がした。高潔と思える主人公たちの心に寄り添うことで自分の心も奮い立たされるようだった。そしてラストの美しさ。けして長い物語ではないのに、強い余韻の響く物語だった。

  • 宝塚が舞台の物語だ。
    タイトルの通り、男役として大抜擢された研三(宝塚用語でよくわからないけれど期を意味する)のナッツこと千夏と彼女の憧れの月組トップスター、パッパさんことすみれ。そして、何十年も前に舞台中の事故で非業の死を遂げ、現在は宝塚劇場の守護霊となっているファントム。
    三人の、女であるけれど男役として生きていく(ひとりは幽霊だけど)、宝塚という独特の世界に取りつかれた女性たちを描いている。
    よく歌舞伎と対比されるけれどまったく異なった風変わりな文化や世界が興味深い。
    千夏とすみれのどちらが主役なのかがわからずあいまいな感じに終わってしまったのが残念だな。

  • 今回の作品の舞台は宝塚歌劇。中山可穂を知らない人でも、歌劇ファンにはたまらない作品だと思うし、中山可穂ファンなら、所々に滲み出す中山可穂らしさを噛み締めながら読める。

  • この筆者の作品はお初だけど、面白かったな。
    舞台裏のジェンヌの話も(あー、そうなのかもね)って納得がいったし、実際の男役トップの雰囲気もよく表されてると思った。
    舞台で亡くなった伝説の男役の幽霊がファントムとして現れるファンタジー設定も違和感なかった。
    他の作品もさっそく図書館で借りてみた

  • 面白くて1日で読了
    ちょっとウルッときた

  • 考えてみれば、中山可穂さんと宝塚は良い組み合わせです。
    他の作品と比べて、物語がロマンチックに仕上がっているような気がしました。

  • 宝塚の男役のお話。

    周りに宝塚ファンが全くいないので、初めての世界でした。
    いや、前にファンの方のお話を読んだことがあるかな。
    でも演じている方のお話はやっぱり初めて。
    駆け出しの男役、ラスト講演を控えたトップ、オペラ座の怪人のような亡霊
    駆け出しの成長譚を二人の先輩が助けてくれるっていう感じのお話かと思っていたら、最終的にファンタジーに寄って行って、少し読みたかった方向とは違ったかな。という感じでした。

  • 世界広し 男役という文化があるのは日本くらいだろうか
    男でも女でもない 神に近い 理想の理想の理想の、天人のような美しさ その極楽にもどのような苦しみと涙が転がっているのか けれどわたしはそれでも焦がれてしまうよ
    男の人なんてこの世にいらない だけどあなたはいてほしい

    宝塚というのはね、年頃の娘に男装をさせて、踊らせて、女同士でラブシーンをさせて、そうやって全国の乙女たちをたぶらかし、その吐息と小金を搾り取って、長い間商売をしてきたのだ。男と女の性差の隙間に巧みにつけ込んで
    男役という世界中どこにもない独特の生き物をつくりだし
    その危うい魅力を売り物にして、これだけの大帝国を築き上げたのだ。(抜粋)

    男役とは時として本物の男よりも男らしく、どこまでもやさしく娘役を守り、大きくすべてをつつみこみ、何があろうと愛し抜く、ただその美学のみによって存在する男の中の男であり、騎士の中の騎士なのだ。(抜粋)

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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