東京クルージング

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著者 : 伊集院静
  • KADOKAWA (2017年2月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041032657

東京クルージングの感想・レビュー・書評

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  • 松井秀樹選手の特番作成を機に若きディレクターと出会った作家。その青年は失踪した恋人を十余年たっても忘れられずにいた。ドキュメンタリー風の前半と、失踪した恋人の「事情」が語られる犯罪小説としての後半。この構成が物語をぎくしゃくさせている一方で深みを出しているとも言える。アウトロー小説を書かせるとやはり巧いなあ。

  • 小説全体としては若いふたりの悲恋ともいうべき内容だが、第一部は著者自身の体験であるような錯覚を感じさせる私小説的な内容である。
    一部と二部では文章運び等全く違う小説を読んでいるようだ。私は第一部に強く心動かされるものがあった。たびたび著者の作品(エッセイ等)で表現された著者自身の体験に基づいて書かれていることは間違いなく、「死」「奇跡」を強く意識している。淡々とした日常の出来事と一方、人間の生と死を意識させる内容や躍動的で果敢に挑戦をするスポーツマンなどが静謐な文章で表現されている。
    第二部では現実的で暴力的、第一部とは全く違う世界を生きる人びとを登場させ、第一部との対比を明確にしてる。だが底辺にあるのは純粋な愛の物語だ。辛い内容だが最後には希望を感じさせる。
    不思議な余韻を残す小説である。

  • 第一部
    作家の私は、松井秀喜のドキュメント番組を通じて知り合った青年ディレクターの人間性とまっすぐな情熱に好印象を抱いていた..。その彼は、結婚を約束し心から愛する女性が居たにも関わらず、彼女はある日突然姿を消す、という悲しい過去を背負っていた。結局、彼女との再会を果たすことなく彼は癌でこの世を去る。
    第二部では
    過去に遡り、二人が出会う経緯から現在に至るまで、突然姿を消すことしか選択の余地がなかった彼女の壮絶な半生を描く。

    第一部で「私」として登場する作家は、筆者の伊集院さんのように思いますが、ディレクターの三阪剛さんも実在の人物なのか?これが実話だとすると何とも切ない気持ちになります。

  • 伊地知くん、人の悲しみにはいつか終わりがくるのです。
    本当ですか?
    私は小さくうなずき、
    わかりました。やれるだけやってみます。
    と泣きながら応えた。

    抜粋です。

    小説とは、読み手が何か一つでも、心に残るメッセージを受け取れたら、それが全てではないかと思う。言葉の力は大きい。たった1行の文章が、人生をかえることもある。受け取る勇気。励まし。迷いが消え、昔の恋を思い出し、挫けそうな気持ちを立て直す。誰かのために泣く。希望を思い出す。そして、笑う。
    伊集院静氏は、私たちに直接言葉をくれる。氏の生き様から生まれた言葉。
    この小説は、著者のノンフィクションと、その中に登場するある青年の物語という二本立て。
    メッセージは、確かにある。おすすめ。

  • これは私小説なのだろうか…。
    作家で奥さんと仙台に住んでいて、弟を海難事故で、若き元妻を病気で亡くし…とくればまさに著者そのものの人生ではないか。
    ならこの小説のNHZの三阪さんもモデルがいるのだろうか。あんな純粋で松井秀喜が大好きで初恋の女性をいつまでも忘れられない青年を癌で死なせないでほしかった。
    ヤスコさんと結ばれてほしかった。
    でも、一方的に好かれ拉致され強姦され風俗で働かされって
    ありえない。立派な犯罪じゃない。
    その娘(ミカエ)が犯罪者の娘じゃなかったというのがせめてもの救い。(三阪の子だった、野球の素質があるってのが伏線だったんだね)

    著者が松井秀喜を敬愛しているのがよく伝わった。

    ”差しのべた手の中にしか葡萄の果実は落ちてこない”
    パブロ・カザルスの”鳥の歌”聴いてみたくなった。

  • 2003年にNHKで放送された松井秀喜の密着取材。インタビュアーは伊集院静。
    この本はその番組を作ったNHKのディレクターとの出会いと別れ、そして彼の残したある思いの物語。「一期一会」誰かとの出会いというのはあるべくしてそこにあるものなのだな、としみじみ。

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東京クルージングの作品紹介

あのニューヨークの秋を私は忘れない。ドキュメンタリー番組で出会った三阪剛という青年に、作家の私は強く惹きつけられた。彼の依頼してきた仕事は、松井秀喜のアメリカでの活躍を私の視点で追う番組だった。二人で作り上げた番組は成功し、全ては順調だった。だが、三阪君には病魔が迫っており、さらに決して忘れることのできない女性がいたのだった。彼が一生を誓い合ったその女性は、突然、彼の許を去ったというのだ。何も言わずに、何も残さずに……。彼の死後、手紙を受け取った私は、三阪君の過去を辿り、彼女の行方を探しはじめる──。

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