羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 2359
感想 : 109
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041033159

作品紹介・あらすじ

うち続く災害に荒廃した平安京では、羅生門に近寄るものもいなくなっていた。その楼上で、生活のすべを失い行き場をなくした下人は、死人の髪の毛を抜く老婆に出くわす。その姿に自分の生き延びる道を見つける…。文壇処女作となった「羅生門」をはじめ、初期の作品を中心に18編を収録。人間の孤独と侘しさを描いた名品の数々は、時代を超えて新鮮な驚きを読者に与え続けている。芥川文学の原点を示す、繊細で濃密な短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 芥川が二十歳そこそこで書いた作品に触れ、只々、感嘆してしまう。
    若い青年の書いた文章のわりに、大人びてというより老けすぎていて、なんだか生き急いでいるようで、ちょっぴり哀しくなってしまった。

    本書は表題3作品の他プラス15作品収めてあり、その中でも私が印象に残った作品は『葬儀記』。
    これは夏目漱石の葬式の記なのです。
    大正5年12月に胃潰瘍のため死去した漱石先生の死顔に、たくさんの文学青年たちが最後の別れを惜しんでいる様子が伝わってくる。
    その文学青年たちの中でも若いほうであった芥川が、忙しない葬儀中にあたふたとしている姿に、やはり年相応の幼さがあり、あんなに大人びた作品を書いている反面、『葬儀記』では、素顔が見え隠れしている。

    18作品の最後の最後に『葬儀記』をもってきた編集の仕方にグッドジョブ!!と言ってしまった。

    • だいさん
      時々読むと、現代作品と違い、感激することありますね。
      時々読むと、現代作品と違い、感激することありますね。
      2016/06/25
    • あいす桃さん
      遠い昔に読んだかな??と思われる本を、大人になって読み返してみるのはいいものですね。
      内容こんなふうだっけ?と随分と忘れていました。
      遠い昔に読んだかな??と思われる本を、大人になって読み返してみるのはいいものですね。
      内容こんなふうだっけ?と随分と忘れていました。
      2016/10/07
  • 昭和48年5月30日 改版14版 
    (日焼け変色の為、今回で廃棄)

    文学講座 「シューマンと芥川龍之介」視聴、再読

    シューマンと芥川が歴史的背景、精神性、作品の芸術性など類似性が高くドッペルゲンガーなのだというようなことを楽しそうに講義されてました。

    作家活動初期の頃の短編集。少し堅いというか道徳的な内容が多いかなぁ。漱石が芥川を激推ししていたのは有名らしいけど、手紙の中で、無暗にカタカナ使わない方が良いとアドバイスしていた。そう言われると、英単語をそのままカタカナで使っている言葉は、読者を選択する感じがしてしまう。
    巻末に当時の先輩作家さん達からの書評が掲載されていた。厳しめの評価の方もいて、若手だったし、小説としては面白くは無かったかな。

    「水の三日」は中学校学友会雑誌掲載の芥川の作文?水害被災者が学校に避難している時のボランティアについて、誠実に書かれていて印象に残った。

  • 芋粥がとても良い。マリッジブルーの話と解釈した。人間は目標の達成という事実よりも目標を達成する努力や憧れなどプロセスを好む。夢が叶いそうになる時の一瞬の戸惑いはよくわかる。鼻は素晴らしい。コンプレックスという人間には切っても切り離せない問題をうまくついている。アイデンティティというものは、欠点も含めて存在している。その人にとってどんなに嫌な体の一部や考え方の癖などは、実はなくなってしまうと意外に寂しいものであったりするのである。
    ひょっとこ。これは、仮面をつけている間に、元の自分に戻れなくなってしまった人間の話である。最近、ジキルとハイドを読んだせいか、なんだか近いものを感じた。人間の内面を感情と理性の葛藤とみなした場合、一度感情や快楽に溺れてしまうと、もはや元の自分には戻れなくなる。
    煙管。どこかで読んだことがあった。ものというものはそれ自体の価値だけではなく、社会的に付与された価値というものがある。皆が持っていないこと、そしてそれを惜しげもなくあげてしまうことが富の顕示につながるのだ。ここに、マルクスの物化・物象化の概念を見出すのは拡大解釈だろうか。物の価値は、あたかも自然にあるもののような外装をしているが、実際には社会的関係の中で価値を持っている。富の顕示という意味では、モースの贈与論など、贈与というものがもたらす人類学的な働きについても考えることが可能である。

    このような作品群を見る中で私が感じたことは。生きることや自分という存在への肯定である。つらいことや苦しいことも含めて人生であり、醜いところも含めて自分なのである。人は夢や理想を語るが、叶いそうになる瞬間に躊躇する心は、まさしく理想や夢を具現化できていない自分への愛、何か憎めない、不能への愛であると思う。そのような意味で、芥川龍之介はやはり人間の真理を鋭く突いている。

  • 生きていく中で目を覆いたくなるような嫌な部分を文章にして見つめることができる芥川さんは偉大。

  • 『鼻』が好き

  • 羅生門って今読むと話が深い。主人公の葛藤とか罪悪と正義の揺れ動きは学校で習う文学にしてはおもしろすぎっ!!中学校の頃は意味ぷーでしたよ。

  • 羅生門の下人も、鼻の内供も、内供を笑う者たちも、煙管の斉広も、芋粥の五位も、ただの物語の登場人物ではなく、私達人間そのものである。
    人間の孤独さ、侘びしさ、なんのために生きているのか…というものを鋭くシニカルに描いていて面白かった。

  • 本屋にて、かまわぬ限定カバーということで購入した。
    芥川作品で羅生門・鼻は読んだ記憶があるが、その他は呼んだ記憶がないのでいろいろな作品を読めてよかった。
    すらすらと読んでしまい、何も印象に残らなかったので、逆に印象に残らずに読み終えるのも気持ちがいいと思われる。

  • 学生時代を思い出す。『河童』が無かったのが一寸残念だった(>_<)

  • なんとなく読んでみた。
    なんだろうな。。。国語の教科書を思い出しました。笑

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著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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