河童・戯作三昧 (角川文庫 あ 2-8)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041033166

感想・レビュー・書評

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  • まず、お勧め度の★が少し低い一つの理由は、作品が悪いからではなく、わたしが理解できなかったから。

    古い言葉が使ってあるため、ほとんどなんのこっちゃらわからないままに終わった作品も何個かあった。「糸女覚え書」なんかは、80%ぐらいよくわからなかった。何度も読み直してみたけれど、やっぱりわからなかったので、あきらめた。わたしの知能の低さだ・・・orz

    あとね、10作品のうち「河童」が代表作らしいのだけれど、わたしの趣味に合わなかった。なんとなく言いたいことはわかる・・・気がする。でも、だから?って思ってしまう。どうも、作者が自分の日々考えていることを河童にぶちまけさせてみた感じ。ひとつのテーマがあるというよりは、思っていること全部ぶちまけてみた!という感じがしてしまうのだ。まあ、この作品は、芥川の後期の代表作で、評価されているんものなのだから、わたしの好みと合わなかっただけということだろう。

    他に、好きな作品もいくつかあった。「開化の殺人」「開化の良人」「玄鶴山房」など。もともと、芥川龍之介は好きな作家だ。それほどたくさんの作品を読んでいるわけじゃないけれど、芥川龍之介の世界がなんだか好き。ひどく厭世的で、内に内にこもった感じがする。世の中、他人がわかってくれないことへの悲しみ、ないたい自分になれないための自己嫌悪。どの作品を読んでも、そんな印象を受ける。

    この本のたくさんの作品の主題は、「その人が」どう思っているかとその人がどう思っていると「他人が」思っているかのギャップであるように感じる。例えば、「玄鶴山房」という作品の中のお手伝いさんは、常に人の不幸を見て、あざ笑うことを楽しみに生きているが、実際には行き届いたお世話などによって、周りの人にはありがたがられている。重要なのは、人から見える姿なのか、本当の姿なのか。しかし、本当の姿とはどういうものなのだろう?このお手伝いさんは、「人の不幸を笑う」ことを「楽しんでいる」と本人は思っているが、実際にそうなのだろうか。もしかしたら、自分でそう思っているだけかもしれない。実際にしているのは、親切である。

    芥川龍之介が好きと書いたけれど、全部読んでいるわけではない。その理由は、重いから。少なくともわたしは彼の本を軽く読むことができない。読んだあと疲れる。なので、また読みたいと思うけれど、しばらく読まないのではないかという気がする。

    余談だけれども、芥川龍之介って本名なんだね。

    とてもきれいな名前なので、ペンネームかと思っていた。芥川は、養子に行ったさきの名前らしい。実のお母さんは気が狂って亡くなってしまったというので、そんなところからこの厭世観は生まれるのかな?

  • 天野義孝さんのイラストに惹かれて~、てな感じで読んでみました。短編集なので、他にも色々な話があるんだけど、表題作の「河童」について言えば、何と言うか、異世界でありながら、現実世界の写しみたいな世界観設定が上手かったですね。恐らく皆が一度は思った事があるような、でも駄目だよねって思ってる事が、全部現実になっちゃったみたいなイメージです。

  • 私にとって芥川とは「学校で読まされて」「感想文書かされる」ものだった。「教科書に載るような人」なので強く正しいのに違いないと。
    それがこの「河童」ではどうだ。生まれてきたくはないと言い、言葉によって病んで死んでしまうほど繊細でか弱いではないか。河童の世界にいても自らの世界へ戻っても結局居所は無く、河童の世界へ「帰りたい」と思う。そこまで病んでいる精神を、芥川はなぜ描いたのか。
    それは彼もまた病んでいたからであり生きることに絶望していたからかもしれない。

    子供の頃思っていたよりも「河童」は読みやすかった。芥川を「お堅い」「教科書」と思い込んでいたからかも。すっごいオジサンのように思っていた彼も、実は35歳で亡くなっていたのだから現代ならまだ「青年」の範疇かも。若かったんだよね。(今じゃ、肉体的にも50歳でもまだまだ「若い」もんね。マイケルにしろ郷ひろみにしろ、50とは思えない)


    その昔(笑)上高地の河童橋は何度か訪れた。元山岳部の親に毎年連れて行かれたのだ。元山岳部のミニ同窓会ともなっていたその登山会は、お互いみな子持ちの(子供の年齢も近くて)主婦であるためか例年お盆すぎだった。お盆も過ぎた夏山は雨も多く結局山に登れやしないのだが梓川の水の冷たさだけは覚えている。いかにも河童がいそうな川だ。
    …子供としては苦労して山なんか登るよりも、自然博物館(というほどのものでもなかったが)に行ったり一年ぶりにあう友達と宿でトランプしたりしていた方が楽しかったりした。懐かしい。

  • 河童、というこの作品は、数ある芥川の作品の中でもすごく好きな作品なのだけれど、倒錯してるよなあ。芥川の「ギリギリ感」が出てる、って意味では「或阿呆の一生」なんかよりも上かも知れない。そう言えば、芥川はぼくの高校の先輩らしいです。会った事ないんだけど。

著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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