僕だけがいない街 Another Record

著者 :
制作 : 三部 けい 
  • KADOKAWA/角川書店
3.55
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本棚登録 : 265
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041033838

作品紹介・あらすじ

連続児童誘拐殺人事件の真犯人の「手記」。それが読み解かれる時、“もうひとつの真実”が明かされる――。

藤沼悟(サトル)の壮絶な追跡の果てに、ついに連続児童誘拐殺人事件の真犯人は逮捕された。犯人は一審で死刑判決を下されるが、発見された犯人の「手記」に頻出する“スパイス”なる謎の存在への呼び掛けから、精神鑑定によって、一転して無罪判決になってしまう。
検察は即日上告するが、犯人はなぜか無罪を勝ち取った弁護士を罷免し、若き弁護士・小林賢也(ケンヤ)が国選弁護人として指名された。彼はサトルの親友であり、自身も事件の当事者の一人だった。
ケンヤは戸惑いを覚えながらも、手記を通じて犯人の不可解な内面を探り、己の“正義”をも突き詰めていこうとする。そして、ついに訪れる最高裁での審理。そこで明かされた、ある“真意”とは……!? 

真犯人逮捕の“その後”を描く、衝撃のオリジナルストーリー。
原作・三部けい氏も絶賛!! 物語の深層に迫る、感動と驚愕のラストを体験せよ!

感想・レビュー・書評

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  • 本編と若干の齟齬がある様な気がするものの、面白かった。

  • まんが『僕だけがいない街』のスピンオフ。
    ある犯罪をおかした者が、如何にしてそれを為そうとしたのかを読み解く物語。
    本来人が人を裁くことは傲慢だと認識していても尚、人の命運を決しようとする経験、あなたは本当にただの一度もありませんか。
    哲学。

  • 『なぜなら、私はようやくこのとき「蜘蛛の糸」の意味に気がつきかけたのだから。
    あれは連れて行くべき人間の印じゃないか。
    誰かが糸を断ち切るべき人間じゃないのか。
    この世は地獄であり、それを悟りつつもまだ自ら死ぬこともできない人間にだけ現れる「死」という名の希望なのではないか。』

    『さっきのクイズ ー 覚えているか? 耳の聞こえない男と目の見えない男に少年が何を渡したか、というやつさ。そう、答えは「拳銃」だ。私も初めは意味がわからなかったが、今ならば理解できる。この故事は「生きている限りは人はけしてわかり合えない」という皮肉だったわけだ。』

    『誰かが信じてやらなきゃ、この世は辛過ぎる』

    「決めた。ケンヤ、協力してほしい。今から俺が ー 雛月を誘拐する」
    「え?」
    「あの母親の虐待を止める為に、警察を動かそう」
    「悟…大騒ぎになるかもしれないぞ」
    「望むところだ」
    「ちゃんと結末まで考えたか?」
    「…ケンヤ。今、思いついたんだ。結末はこれから考えるよ。『事件』になってもいい。計画途中でみつかってもいい ー どんな結末だろうと ー 雛月が死ぬよりはいい」

    『…そうだ。あの日から悟は僕のヒーローとなったんだ。あのときの僕は、覚悟を決めた人間だけが動かすことのできる何かを前にただ圧倒されていた。』

    『毎日のように語りかけ、体を拭き、硬くなる体をほぐし、本を読み聞かせ、悟の好きだった音楽を聴かせる。何の反応も示さない息子に対して続けられるそれらの行為は、壮絶の一言だった。そのときの佐和子さんの姿を思い浮かべるだけで、僕は今でも果てしない勇気をもらえる。』

    『わからなかったからこそ、私はこのノートをつけることにしたんだ。自分に正直にすべてを書く。書くことは自分を知ることだ。自分でも気づかなかった何かに気づくことだ。』

    『もう見たくないというほど血が流されてようやく保たれている均衡こそが平和なのだ。』

    『偽りの、耳当たりのいい正義を連呼する、危機に臨んで何の役にも立たない夢想家を大量に生むだけの時代だ。』

    『どちらが正しいとか正しくないとか、そんなことはきっと誰にもわからないだろう。これからどれだけ時代が進んだところで、この世界を生きる人々それぞれに、それぞれの正義があるのだから。ただ言えるのは、正義を主張するものが一番恐ろしいということだ。疑いなく自分こそが正義だと信じているものこそが恐ろしいということだった』

  • 多少の齟齬はあったものの、わりと良かった。

    ケンヤが子供のころに、雛月と悟が将来くっつくと思ってた、けどそんな映画じゃあるまいし、みたいな記述があったけど、奇遇だなケンヤ、俺もそう思ってたよ。

  • 凄い!これは僕街において十分すぎるほどの補完であり本作をより完璧にしたものだ。そして、八代による八代を知るための話であり、弁護士となったケンヤが一人孤独に八代と己と向き合い戦った物語でもある。二人の表情はカバー裏でしか分からないが不気味な印象。ケンヤの顔もちょっと暗い。小説形式も相まって八代の怖さが増してるようにも感じた。悟は「八代手記」をちゃんと読んでないだろうから何とも言えないが、ケンヤだからこそあの「答え」に辿りつくことができた。八代は昔からケンヤが他の子とはどこか違うところを見抜いていたんだろう。

    悟が八代の蜘蛛の糸を切ったのと同じように、ケンヤもまた八代の心残りであっただろうことをなくしてあげたんだと思う。最後の裁判での八代の言葉がそうであるように。うまく伝えられてない気がするが、要するにケンヤもまた影の主人公だったということだ!あの最後の裁判は鳥肌モノでした!ケンヤは悟と一緒に八代を追い詰めたけど、どこか悟と八代の間には入り切れてない感じがした。けど「八代手記」により真実(悟が過去をやり直していたこと)に行き着いたケンヤはやっと二人の領域に追いついた気がして勝手にだけど良かったなぁと思う。やっと悟もケンヤも肩(心)の荷が下りたことだろう。「この世は生きる価値がある」八代が言うんだから間違いない。それぞれの正義があるだろうが、八代のやったことは間違ってるし、ケンヤは正真正銘正義の味方だよ。
    「勇気ある行動の結末が悲劇でいいはずがない」by八代。
    「この世は、戦う価値がある」byケンヤ。

  • T図書館
    『最後の最後に自分の身を委ねるものは「己の理論」なのだと、この作品を読んで改めて思う。一肇は自分にとってもう一人の乱歩だ』
    帯より 原作者三部けいさん
    逮捕後を描くオリジナルストーリー

    被疑者の手記は、頭がよく自分なりの哲学がある残酷なものだった
    それは普通の人からしたら狂気でしかない

  • <b>スピンアウトにしては、再構成だけの内容</b>

    ケンヤが八代の国選弁護人に選ばれて、彼の半生を追想していく内容。
    しかし、原作を知る者には特に驚くようなエピソードが見当たらない。
    (高裁無罪判決wやサラちゃんの件くらいか?)
    逆にコアなファンだった私には時系列的に違和感がある細部が気に障る。
    本書の快楽殺人者の正当化妄想は、僕街本来の魅力であるアドベンチャー感と毛色が違うところ。
    だから、原作で時間かせぎのためにページが割かれた八代の回想の件は好きではなかった。
    逆に、このようなスピンアウトにはしやすいパーツなのだな。
    ライターはニトロプラスの人だそうだが、もっと冒険してもらいたかったところ(角川から条件があったりしたら気の毒だが)

    まあ、原作のよさを活かしたスピンアウトの難しさを感じる。
    コミックの方はどうなんでしょう?

  • 本編はアニメで観た作品。

    真犯人が誰だったか忘れかけるくらいには腑に落ちてなかったから、読めて良かった。
    ケンヤ目線なのも良い。

    八代とケンヤが交互に語り手を務めるのだけれど、要は書き手が同じだからか、トーンが似ていて混ざる。

    “僕だけがいない街”というタイトルはサトルを意味しているとずっと思っていたけれど、
    八代を(も?)指していると分かって強烈だった。

  • 本編終了後が舞台のスピンオフ。
    犯人の手記が見付かり、犯人の国選弁護人となったケンヤ(ホントだったら絶対選ばれないんだろうな)がそれを読みながら進行する。

    結構キレイに纏まってて満足だった。
    というより原作の終わりに納得いってなかったのだが、これがあると少し良くなった気がする。

    設定に色々無理があるのはご愛嬌。

  • 漫画僕だけがいない街のその後。ケンヤと犯人の手記から。
    スパイスは、そうだったのかと。読めて良かった。

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著者プロフィール

小説家。「ニトロプラス」所属。著作に『幽式』、『フェノメノ』シリーズ、『少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語』、『黙視論』、『謎の館へようこそ 白』(共著)などがある。

「2018年 『僕だけがいない街 Another Record』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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