失われた過去と未来の犯罪

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.68
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本棚登録 : 364
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041034699

作品紹介・あらすじ

ようこそ、謎と人間の新しい可能性へ――。
『アリス殺し』の鬼才が贈るブラックSFミステリ、ここに開幕。

全人類が記憶障害に陥り、長期記憶を取り外し可能な外部装置に頼るようになった世界。
心と身体がバラバラになった今、いくつもの人生(ル・ものがたり)を覚えている、「わたし」は一体何者――?


◆女子高生の結城梨乃は、自分の記憶が10分ともたないことに気が付いた。いち早く状況を理解した梨乃は急いでSNSに書き込む――「全ての人間が記憶障害に陥っています。あなたが、人類が生き残るために、以下のことを行ってください」。それから幾年。人類は失った長期記憶を補うため、身体に挿し込む「外部記憶装置」(メモリ)に頼り、生活するようになった。

◆「わたし」の中には、なぜか何人分もの記憶、思い出が存在している。「替えメモリ受験」をしようとした学生の話。交通事故で子供を亡くした父親の話。双子の姉妹の話。メモリの使用を拒否する集団の話。謎の「声」に導かれ、「わたし」は自分の正体をついに思い出す……。

物語の終幕に、「進化の果て」が浮かび上がる。

感想・レビュー・書評

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  • 小林泰三さんは、デビューしたてのころは短編の切れ味が凄まじかった。
    だんだんナマクラになってきたかなと思ったら、今度は長編がいい味だしてきました。

    モジュール簡単に外れすぎだろう、という突っ込みはさておき、本作は『記憶』という作者お得意の素材が遺憾なく発揮されています。ラストの行き着くところまで行ききった感じがお見事。

  • 記憶がメモリー化されたら?

     面白い設定と平易な文章で、休日午後の2時間程度で一気読みできたよ。エンディングが2001年並みのスケールに拡大されるのは少しばかり笑えるけれど、いろんなケースでの「記憶の差し替え」が面白いね。

  • 外部メモリーに記憶を保存出来るようになって、他人の体にメモリーをさすと、中身が入れ替わる。
    っとなると、魂って何だろう。
    魂=メモリーなのかも。
    輪廻転生する事で人の魂は成長していくというし、どんどんメモリーに蓄積されて成長していくのかもと思った。そんな風に想像するのがまた楽しかった。

  • 人々のきおくが10分しか持たなくなった世界。
    長期記憶ができず短期記憶しかできなくなり、人としての生活が保てなくなり、時代が進み人はメモリという半導体に自分の記憶を残すようになる。
    6つほどの話に分かれていて、最初は記憶がなくなることをメモやSNSを使い状況を改善していく話から、メモリに頼りはじめた人類に起こることがまとまっていて面白い

  • 古典的テーマであるが故に、読みながら/読み終えた後も色々と考えさせられました。
    爽快感や感動とはまた別の、思慮深い作品です

  • 記憶を外部保存できるようになるとは、すなわちその人の人格や魂を保存できるようになること…
    前編では、記憶ができなくなってしまった人々がどのようにそれらの問題にまず立ち向かうか、後編は世界が大きく変わってからのお話

  • ある日突然長期記憶が不可能になった人類の混乱とその後の発展(?)の話。何をもって死と判断するのか、死後の魂は、記憶はどうなるのか、誰もが一度は抱くであろう疑問に切り込んだものであるように感じた。

  • ブラックSF単行本。2部構成。
    第1部
    地球規模で全人類の記憶障害が発生。それによって起きたパニック、解決策を探る様を原子炉運転の緊張感とともに描く。
    第2部
    数十年後、人類は連続しない記憶をメモリー化し持ち歩くことで、日常生活ができるレベルになった。
    果たして「自己」とはメモリーの情報なのか。
    人の進化と魂の帰結は読者に委ねられる。

    「自己」とは、己が〇〇だと認識し、それを他人が承認することによって生じる。
    他人の記憶メモリーを挿入したからといって直ちに他人に代わってしまうわけではない。
    しかし、自分が認知症になった場合、こういった事態に陥るであろう…なかなかにシンドイ作品。

    外レビューにもあるが、命ともいうべきメモリーが、階段を落ちたくらいで抜けたりしてしまう仕様は改善して欲しいものです。

  • 記憶という機能をほぼ失った人類の、その事象発生時の混乱と克服、そしてその後の物語。人間の命は体に宿るのか精神に宿るのか、では精神とは?と考えさせて興味深い。
    けど各人の記憶を担うことになった外部媒体=メモリの運用がここまで適当だと、ここに描かれたドラマはドラマというより日常になってしまうだろうな、というところが設定として弱い気が。

  • メモリの重要性の割に扱いが雑すぎる…

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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