- Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041035498
作品紹介・あらすじ
双子の片割れの死体が埋まったこぶを頭に持ち、周りの人間を死に追いやる宿命を背負った男―ボズ。香港九龍城、カンボジア内戦など、底なしの孤独と絶望をひきずって、戦後アジアを生きた男の壮大な一代記。
感想・レビュー・書評
-
数年前の文庫王国で、ミステリ部門の同率首位だったことから入手。とはいえ、手元には結構前からあったけど、そして表紙のインパクトに惹かれる部分も多々ありつつも、他に読みたいものが多過ぎてつい伸ばし伸ばしになってしまってた。先日、作者が山田賞を獲ったことで、これは早めに読んどかんと、と思って読了。600頁越えの大作だけど、殆ど一気読みに近かった。不気味だけど、実は人間臭さ満点の主人公をはじめ、キャラの造形の見事さも特筆もの。最終的に、表紙であれだけ強面のボズが、かなり良い人キャラだったのもちょっと意外でビックリ。20世紀アジアの最大の災厄といえば、毛沢東とポルポトに止めを刺すだろうけど、さすがに彼らにも影響を与えた、みたいな非現実まで話を飛躍させず、邂逅までに止まっていたのも良い。おもろかったす。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
物凄く奇妙な物語。死んだ双子の兄弟を頭のこぶの中に持つ墓頭。墓頭の孫が自分のルーツを辿るため、怪しい探偵・新実に墓頭の捜索を依頼する。
紡ぎ出される墓頭の数奇な運命とグロテスクな描写。読後のスッキリ感は無いが、兎に角、奇妙な物語。 -
☆4.0
生まれながらに頭に大きな瘤を持つ男は、戦後のアジア各地で都市伝説のように「墓頭(ボズ)」の名を裏社会に刻みながら時代を駆け抜けた。
その瘤は産まれそこねた双子の兄弟の体を包含し、その死体を墓として呪いのようにボズを"自ら以外の周囲の死"に呪縛し続ける。
彼の人生は瘤の死体を取り除くという命題に縣けられていた。
周囲の人物たちに死をもたらすのは、自分が墓である―頭の瘤に死体がある―ためだと考えていたからだ。
死んだ友人の伯父に支援され、異能を持つ子どもが集まる「白鳥塾」に滞在した間も、子どもたちからでさえ特殊な存在として捉えられていた。
この白鳥塾でのいくつもの出会いが、ボズの命題を叶えるための数奇な運命を、さらに破滅的で暴力的なものにしてゆく。
これはまさにピカレスクロマン。
長い作品だがあっという間だった。
汚いもの、残酷なもの、凄惨なものの描写にちょっと、いやかなり、鼻白む瞬間はあるものの、読ませる力が強いので、先を先をと急いでしまう。
あるスランプドはまり中で精神不安定な作家が、父親の失踪を調べるのをきっかけにボズに行き着く。
調査の末ボズを知る人物に出会い、その人物が語るボズの一代記を記すという形式で書かれていて、その外枠の「ボズを語る彼は一体何者だ?」という謎も、ボズの一代記の魅力に劣らない牽引力を持っている。
読んでいて、ボズがどんな人なのか捉えにくいように思ったけれど、それはきっとボズ自身にもわからないことが多すぎたからなんだろう。
その時々でどのような思いだったんだろうと考えれば考えるほど、ボズの輪郭は曖昧になって、その謎に放り込まれてしまった。
それに対して、この作品で書かれている戦後アジアの空気がとてもくっきりと濃く、息苦しくなるくらいだった。
ホウヤ伯父やヒョウゴもこちら側の濃い存在感で、彼らとボズの対話があるとき、ボズの曖昧さが極限まで強まる。
だからこそボズの思いの発露に触れたとき、感動に近い気持ちを抱いた。
-
私は何を読んだのかな
なんだか凄いものを読んだのは確かだなあ -
読了