旧談 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041035511

作品紹介・あらすじ

雨が降りしきる夜道でうずくまる女に遭遇した、実直な武士のUさん。20年便所から出てこなかった商家のIさん。酒好きのMさんと一人娘を心配して狐に相談した女房の幽霊。猫になったYさんの母親。さらには、「稲生物怪禄」や、「播州皿屋敷」にまつわる裏話など、江戸時代の旗本・根岸鎮衛が聞き集めた随筆集『耳袋』から怪しい話や奇妙な話を選び、京極夏彦が現代の怪談実話スタイルに書き改める。新しく書かれた“旧い”怪談集。
『旧怪談 耳袋より』を改題して文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 怪談であり奇たん集

    後半、20pに渡る
    京極夏彦と 宮部みゆきによる
    「 対談 『 耳嚢』(みみぶくろ) と江戸の怪(あやし)」 が好み

    これを読むと、私がスティーヴンキングに感じる魅力も、確かにホラーというより奇たんの部分。
    論理も倫理もない(というか次元も違うような)存在が、理由もなくそこにいて 影響を及ぼしてくる。
    しかし、そこに描かれる人々は紛れもなく生々しい人間らしい背景と個性を持っている。

    「プライド 義は命より重き事」
    妖怪なんて異形のものも出てこないのに、この
    気味悪さと理解し難さとどこか納得出来る様に心揺れる。

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    京極
    フィクションかノンフィクションかという点に拘泥する方がいるのは、その辺の区別をされないからにも思いますね。「これって実話なの? 」という点に重きを置いて読まれる方はいます。でも、判断基準はプレゼンテーションのしかただけですからねえ......。

    宮部
    「この話は本当です」と書いてあるかどうか

    京極
    ええ。まあ本当だとしましょう。でも、例えば「 ここに宮部さんと京極がいました 」 という記述は、事実なんだけど、「 宮部さんと京極が楽しそうに談笑していた」とかいたら書いたら、もう事実じゃない。

    宮部
    書き手の 主観が入ってきますからね。

    京極
    宮部さんは笑顔なのに内心かんかんに怒っているのかもしれない(笑)。楽しそう嬉しそうは書き手の主観ですからね。じゃあそれを書かなきゃいいのか、というと、それじゃわからない。「 机1、机2、宮部1、京極1、録音機2」とか(笑)。どんなに情報を簡略化しても、事実を正確に伝えることは不可能です。主観的ならぬ文章はない。だから、ノンフィクションを書く方というのは本当に言葉を選んでますよね。

    p318
    ────────────────────
    京極
    そもそも明治期の小説家の多くは、まず言文一致の問題から始めたわけですからね。
    p324
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    雨が降りしきる夜道でうずくまる女に遭遇した、実直な武士のUさん。20年便所から出てこなかった商家のIさん。酒好きのMさんと一人娘を心配して狐に相談した女房の幽霊。猫になったYさんの母親。さらには、「稲生物怪禄」や、「播州皿屋敷」にまつわる裏話など、江戸時代の旗本・根岸鎮衛が聞き集めた随筆集『耳袋』から怪しい話や奇妙な話を選び、京極夏彦が現代の怪談実話スタイルに書き改める。新しく書かれた“旧い"怪談集。
    『旧怪談 耳袋より』を改題して文庫化。
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  • 夏ももう終わりかけですが「 」談シリーズ四作目、旧談です。

    これもばたばたしていて感想書く前に返却してしまったのですが
    耳袋の中からいくつか京極さんが現代版に再構成されています。

    一度あげたはずの感想が消えている…悲しい。

    遺言が1番お気に入り…だったと思う。
    あんなにネコが好きだったはずなのに…そこまで⁈という感が良かった。
    原文が読めれば、もっと趣があったのになぁ、と思った。

  • 江戸時代の旗本が聞き集めた随筆集「耳嚢」の中から選んだ話を京極夏彦が読みやすく書き改めた怪談集。現代でも通じる話もあればその時代では当たり前でも今だと分かりにくい話もありで短編集だけれど読み応えは抜群。気に入ったのは「プライド」「正直者」「血は出たけれど」かな。

  • 耳嚢のエピソードを怪談風にアレンジしたもの
    「談」がついているけど、他の「談」シリーズとは内容が違う
    まぁ、その元にはなってるかもしれないけど

    ちなみに、「このエピソード知ってる!」とか「他の作品に出てきたっけ?」とか思いながら読んでて気づいたけど、「旧い怪談」の文庫化したのが「旧談」なのね
    すでに読んでたわ(笑)

    原文の耳嚢では淡々と事実(?)が書かれてあるだけだけど、ただ単に不思議な話ではなく怖さを感じられるようにリメイクされているのは京極夏彦の力といったところ

  • 江戸時代の怪談奇談随筆を基に、現代語に直しただけあって、非常に読みやすかった。人物名をAさんBさんという風に簡略化してあるのはあまり好きではないのだが、原文が併記されていたこともあって、意外とバランス良く感じた。
    怪談というよりはやはり奇談というのが適しているか、微妙に脚色した部分に作者なりの読みを感じられたりして、そこが面白い。

  • 耳嚢から取った奇談の現代語訳というかなんというか。
    京極夏彦さんらしく切り取って補完した怪談?集というべきものかな。
    今どきの怪談より、不思議や不条理に原因も何も求めていない。そのあたり、余韻が残って良い。
    歯切れ良く語られるお話の1つ1つが、とても不思議で面白い。原文も掲載されている。
    江戸時代の不思議話、ちょっと怖くて、とても面白い。

    今このときに旧にエアコンが内部清掃なんか始めるから、いつもよりビビった。

  • 江戸時代の怪談を現代語でリライトした短編集。
    じわりとした怪異。

  • 江戸時代の随筆「耳嚢」から取った怪談風の話をリライトした作品集。怖い話というのはあまり無いのだけど、併記されている原文を読むと当時の社会情報まで伝わってくるようで面白かった。

  • 江戸時代の随筆集(みたいなもの)を書き改めたもの。各話の最後に原文が書いてある。原文の空白部分を埋めて書いている部分があって、そこがどうも理屈に勝過ぎているというか、原文の方がすっと入ってくる部分があった。原文がなければ、そう感じなかったと思うので、原文がなかった方がよかったかなぁ。もともと理屈をこねくり回す文章な人だと思うので、京極さん版としてはかなり面白かった。

  • 話しは1つ1つが短めで「なんで?」と思う終わり方が多かったけれど、それもまた味なんだろうな。
    昔のものを京極さんが現代語訳しているだけから地名などはそのままなのに、人物名はAさんJさんといったアルファベット表記なのがじわじわ面白かった。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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