記憶屋 (角川ホラー文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041035542

作品紹介・あらすじ

もしも「記憶屋」が、つらくて忘れたい記憶を消してくれるなら、あなたはどうする――?

夕暮れ時、公園の緑色のベンチに座っていると現われ、忘れたい記憶を消してくれるという怪人、「記憶屋」――。大学生の遼一は、そんなものはただの都市伝説だと思っていた。だが互いにほのかな想いを寄せ、一緒に夜道恐怖症を乗り越えようとしていた先輩・杏子が「記憶屋」を探しに行き、トラウマと共に遼一のことも忘れ去ってしまう。まさかと思う遼一だが、他にも周囲で不自然に記憶を無くした人物を知り、真相を探り始める。遼一は、“大切なものを守るために記憶を消したい”と願う人々に出逢うのだが……。

「記憶」を消せることは、果たして救いなのだろうか――? 
そして、都市伝説の怪人「記憶屋」の正体とは――?

衝撃的で切ない結末に、きっと涙こぼれる。
二度読み必至の青春ノスタルジックホラー!


★第22回日本ホラー小説大賞 読者賞受賞作★
書店員さんの支持No.1!! 「泣けました…」と感涙・絶賛の声、続々!!

・ノスタルジックホラーの名作になる予感がします。泣けるホラーとして推したいです。
――中目黒ブックセンター 佐藤亜希子さん

・一ページも目をそらすことのできない心のゆさぶられかたでした。
――オリオン書房 所沢店 高橋美里さん

・ミステリー要素も濃密でとても自分好みの作品でした。
――TSUTAYA 三軒茶屋店 栗俣力也さん

・恐怖感やせつなさ悲しさなどいろんな感情がこみあげてきました。
――八重洲ブックセンター 本店 鈴木貴之さん

感想・レビュー・書評

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  •  織守きょうやさん、初読みでした。本書は、忘れたい記憶を消してくれる「記憶屋」の話です。映画化にもなり、続編も出ているようですね。
     ホラーかミステリーかのカテゴリーはさておき、記憶と忘却を中心に本作を語ろうとすると、比較的若い世代の人とある程度人生経験を積んだ人では、評価が分かれるような気がします。いや、でも記憶の意図的な消去の是非は、年齢・性別・立場は関係ないか‥。

     意図的な記憶の消去に疑問をもつ主人公は、身近な人の記憶の変化に「記憶屋」の存在を意識していきます。恐怖心を次々と煽り、予感・予兆を高め、いざクライマックスへ‥、ん? あれ? ラブストーリー? 切なさ全開青春もの? と、戸惑いを感じたのが本音でした。(決してホラー作品としての是非を問うているのではありません)

     以前読んだ吉田篤弘さんの著書の<人は進化の過程で、快く前へ進むために「忘却」を身につけた>という一文が脳裏に浮かび、また、<「時間」も必要だ>と伊集院静さんが書かれていたなと、これまた思い出していました。人には、欲と執着が付きものですね。
     人は、記憶に留めるべきか否かを、ゴミの仕分けのように頭の中で選別してるんでしょうね。テスト勉強などの必要感のない短期記憶が、さっぱり頭に残らないのも頷けます。
     しかしながら、「人生には、忘れてしまいたいけれど、決して忘れてはならない記憶」というものがあるのも事実だと思います。
     記憶と忘却について、改めて深く再考させてくれる物語でした。

  • レビューを拝見して、かなり前に知った本です。ありがとうございます。
    図書館で借りず、買ったので、安心してずっと積んでいたらもう映画が公開と知って慌てて読みました。

    第22回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞していますが、ホラーというよりとってもピュアなラヴストーリーという感じを受けました。最後の3ページでドスンと胸を突かれました。

    五十年前からいる記憶屋という都市伝説、記憶屋は記憶を消すことのできる怪人で基本的に記憶屋に会いたいと思っている人間の前に現れる。記憶屋の噂は日本、それも東京近辺のみで、女子高生を中心に、ごく最近になって流行し出した。



    以下、完全ネタバレですので、これから読まれる方はご注意ください。

    主人公の、遼一の周りでも幼なじみの真希、大学の先輩で、遼一が好意を持っている杏子、そして遼一自身が記憶を消されていました。
    それから、出会った弁護士の高原も記憶屋を探していたし、ミサオという女子高生も記憶屋とつながりがあるのをつきとめます。
    そして遼一は記憶屋の手がかりを探し出し記憶屋に会おうとしますが…。
    なぜそんなにも、遼一が記憶屋を探しているのかが、ずっとわかりませんでした。
    そしてラスト直前すべてがわかりました。
    最後の衝撃には胸が痛みました。すごくせつなかったです。

    そして最後に感想ですが、過去になにか大きなトラウマがある人は記憶屋に頼るのもいいかと思いますが、片思いの告白をした気まずさを消すためや、亡くなった人の存在を忘れるために記憶屋に記憶を消してもらうのはやらなくていいと思います。
    元の友人関係が気まずくなるなら、それは受け入れるのも仕方のないことではないでしょうか。
    あと、亡くなった人の記憶を消すのはとんでもないことだと思いました。いくら哀しみが大きくて耐えられなくても、思い出も存在ごと決してしまうなんてとんでもないです。
    私も、父が50代で急逝したとき、愛猫を亡くした時は、外を歩いている時でも、涙が止まらず大変つらい思いをしました。でも、時間と共に絶対無理だと思った傷も癒えました。
    あとから思えば、一番の宝であり、最高の思い出として心に残っています。

    • まことさん
      映画の公開がもうすぐですね!
      続編もあるらしいですよ(*^^*)
      映画の公開がもうすぐですね!
      続編もあるらしいですよ(*^^*)
      2019/12/30
  • 映画観てないけど、あの感じは感動もんやと思ってたのに、本は角川ホラー文庫?えっ?ホラーなん?って不思議に思って読んでみた。
    まぁまぁ、面白かった!
    ラストも「え!」ってなったし。
    但し、私もミステリー系をそれなりに読んでるんで、予想できなくはなかったな(^○^)
    個人的には、嫌な事もええ事も記憶には残しておきたい派かな。そんな記憶全てが、自分を創って来てるんやもん。
    忘れてしもたら、反省もできんし、また同じ事、懲りずに繰り返しそう。
    っと、こんな事書いてるけど、何かツライ事あったら、「記憶屋さ〜ん!忘れさせて〜!」って言ってそうな気が…^^;
    やっぱり、ホラー感は薄目やな。帯に泣けるホラーって書いてあった。泣かんかったけど、分かる。

  • わたしが高校生だったら胸キュンホラーね♪
    ってなるんだけど…

    わたし何やろうとしてたんだっけʕʘ‿ʘʔって年になると記憶は何一つ忘れたくないわね。

    ラストでえ〜っそっち⁇
    そっち系ですかとまぁ驚いた( ̄▽ ̄)

    3冊セット激安購入しちゃった…

    • みんみんさん
      逆にめちゃ怖いホラー読んでみたくなった(*´-`)
      逆にめちゃ怖いホラー読んでみたくなった(*´-`)
      2023/03/23
    • 土瓶さん
      ポッと思いつく王道ホラーは澤村伊智さんかな?
      ポッと思いつく王道ホラーは澤村伊智さんかな?
      2023/03/23
    • みんみんさん
      まだまだ京極シリーズでいきます\(//∇//)
      まだまだ京極シリーズでいきます\(//∇//)
      2023/03/23
  • ホラー小説大賞の読者賞とのことで読んでみた。皆さんの書評では好評のようですが、文中にもあるように「考えは人それぞれ」というように個人的には主人公の遼一の考えや行動に同意しづらかったので、読み進めるのに時間が掛かった。記憶屋に縋る人にとっては苦しい思い出であり、記憶を消すことで立ち直れるのなら、それも有りと思うのだが、遼一の考えは付随して自分との思い出を消されたことによる逆ギレのようにも思ってしまう。一人突っ走る遼一の言動やホラー仕立てということもあり、読んでいて寒々しさを感じる。最後に幼馴染との遣り取りがあり、想定内ではあるが落ち着くところに落ち着いた感がある。
    続編も買ってしまったので、暫くしてから読もう?

  • うわ~、この切なすぎるラストシーン、好きすぎるわ~。

    初読みの作家さんの作品。この方は弁護士さんで弁護士活動の合間に小説を執筆しているという異色の作家さんなんですね。

    本書は、何人かのフォロアーさんが紹介していたので気になってはいました。
    書店に行ってみると、本書は…「おお、平積み!」ではないですか。しかもPOPには『2020年、映画化決定!』の文字が。「映画の原作になった小説に外れなし」という原則が僕のなかではあるので、本書の「読みたい度」が一気にアップ(ちなみに映画は山田涼介君と芳根京子さんが主演なんですね。うん、キャスティングはぴったり)
    さらに、決め手になったのは、カバーイラストが僕の大好きなloundraw氏だったってことですね(←おい。そこはフォロアーさんのレビューが決め手になったって言っとけって!)。

    本書は『記憶屋』に依頼すれば記憶を消してもらうことができるという都市伝説的な話がテーマになっています。
    大学生の遼一は、同じ大学で一つ年上の杏子に片思いをしていました。杏子は夜道恐怖症という病気(?)を持っていて、飲み会でもなんでも午後8時には家に帰ってしまいます。
    遼一は、杏子の夜道恐怖症を治そうと、夜間は杏子に付き添い、自宅まで送り届ける役目をしていました。杏子もそんなひたむきな遼一の姿勢に好感をもち、本気で夜道恐怖症を克服しようとします。
    そんなある日、遼一は深夜、外を歩いている杏子を見つけます。夜道恐怖症の杏子がこんな深夜に出歩いているはずはないと思いながらも、遼一は杏子の前に立ち、夜間恐怖症が治ったのかと彼女に尋ねます。すると彼女は、遼一に向かってこう言うのです「あなた、誰?」

    本作は、第22回日本ホラー小説大賞・読者賞を取っていますが、いわゆる「ホラー」ではないですね。どちらかと言えば『記憶屋』という怪人の正体を探るミステリー要素が強い作品です(でも「あと少しで彼女と両思いになれる」って時に彼女が自分のことを完全に忘れたりしたらと思うとこんな恐怖はないですねぇ。おお、怖い、怖い)。
    遼一が『記憶屋』のことを調べれば、調べるほど、遼一の身近な人達の記憶が消えていき、自分の記憶も断片的に消されているのではないかと思い当たることもあります。そして、自分が妹のように大切に想っている3歳年下で幼なじみの女子高生・真希にも『記憶屋』の魔の手が迫っていきます。

    本作品は「人の記憶を消すことは善か悪か」という深い問題が根底にあります。
    確かに誰でも消したい記憶ってありますよね。
    僕の場合は、学生時代に片思いの女の子に告白して、こっぴどくフラれた記憶とかね(笑)。
    確かに消したい記憶ではあっても「じゃあ♪その女の子の存在の記憶ごと消しちゃいますね☆(都市伝説の怪人なのになぜか自然と魔法少女風に再現される僕の脳内構造・・・たぶん病気)」と言われれば「ちょ、ちょ、ちょっと待って。そ、そこまでは消さないでください」ってなります。
    僕の場合はこんな感じですが(←どんな感じだ)、例えば性被害にあった女性や子供の頃に酷いトラウマを受けた人の記憶なんかは消した方が幸せになれるのかなぁとも思ったりもしますね。う~ん。難しいですねぇ。

    主人公の遼一もこの辺のことで悩みますが、彼は自分の存在ごと杏子の記憶から消してしまった『記憶屋』に対しては、相当、根に持っていますので、そこは簡単に割り切れません。
    そんな想いを胸に遼一は最後に『記憶屋』と対峙することになります。

    そして、このラストシーン。
    僕の中では、少なくとも今年一番の衝撃というか、切なさ爆発というか、美しいというか。まあ、強いて言えば、いわゆる号泣ってヤツですね。
    いろいろと考えさせられることもあって、そこを想像すると涙が今でもこぼれ落ちそうです。
    本書はノスタルジックホラーの名作になると思います。

    遼一を主人公とした『記憶屋』の話は、本巻で終了。
    続編の『記憶屋2』『記憶屋3』は本作から10年後の話で登場人物も違うそうです。2、3で一つの話みたいですね。いずれ読んでみようと思います。
    切なさがこみ上げるこの『記憶屋』。素晴らしいお話でした。

  • ラノベ的なジャンルと思いますが、その中ではしっかりしている方だと思います。
    長編なのですが、短めに場面が変わっていくので短編集を読んでいるように感じました。つまり長編としてはフォーカルポイントがはっきりしていないような。
    記憶屋をあんなに執拗に探す主人公の気持ちにうまくシンクロできないせいか長編としては少し弱いなと思いましたが、若手弁護士のストーリーの部分は圧倒的に好きでした。
    続編もそのうち読むつもりです。

  • いちおうホラーに分類されていたけどファンタジーっぽい気もする。記憶を消せる「記憶屋」を主人公が探す物語。結末は予想通りで特にひねりもないが、ちょっと切なくなるようなお話。

  • 記憶を消す謎の怪人、記憶屋。
    その記憶屋を追いかけて謎を解き明かしてやろうとする主人公。

    過去と現在をうまくバランスさせて、核心に近づいていくのは、ハラハラドキドキの連続です。

    ラストはこれしかないとは思いますが切ないですね。

  • 忘れ去られたあの人への想いは何処へ行ってしまったのだろう。

    忘れてしまいたい記憶を消してくれる「記憶屋」。
    トラウマに縛られ悩んでいる人には有り難いことなのかもしれない。
    忘れたいと願った側はいい。
    けれど「忘れられた」側の記憶を消すことはできず、「忘れられた」現実に動揺を隠せない。
    一人置いてけぼりをくらったみたいに。

    忘れたい過去も思い出も全てなかったことして人生をリセットする。
    それがいいことなのかどうなのか、正直分からない。
    けれど「消された」後もなお、過去の記憶に左右されて途方にくれる切なさも思い知る。

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著者プロフィール

1980年イギリス・ロンドン生まれ。2013年、第14回講談社BOX新人賞Powersを受賞した『霊感検定』でデビュー。15年、第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞した『記憶屋』は、シリーズ累計35万部を超えるベストセラーとなる。その他の著作に『SHELTER/CAGE』『黒野葉月は鳥籠で眠らない』『301号室の聖者』『世界の終わりと始まりの不完全な処遇』『ただし、無音に限り』『響野怪談』がある。

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