ハンター・キラー アメリカ空軍・遠隔操縦航空機パイロットの証言

  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037072

作品紹介・あらすじ

アルカイダとの戦いで初めて注目を集めた米軍の遠隔操縦航空機(RPA)戦闘プログラムの内情が、パイロットにより初めて綴られる。爆音も揺れもなく、ボタンひとつで数千キロ離れた敵を殺戮する異常な心理とは?

感想・レビュー・書評

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  • 実際の戦場に身を置かないことから一段低くみられがちであったRPAコミュニティが対テロ戦争を通じて米軍内での地位を向上させていく様子が、内部からの目でよく分かる。
    自衛隊でも各種の遠隔操縦航空機の導入が進むなか、我が国RPAコミュニティを確立していく際に参考になることがありそうに感じた。

  • プレデターとリーパーというドローン(遠隔操縦航空機)操縦士の体験談。

  • 米空軍内においてドローンパイロット(米軍の中ではドローンとは呼ばないらしいが)の立場が「落ちこぼれパイロット」から空軍においける最先端の立場に上がっていく様子がよく分かった。テロとの戦いにおいてドローンの重要性が向上していき、戦場において欠かせぬ戦力となった理由がよくわかる。ドローンはあくまでも操縦者が別の場所にいるだけの戦闘機なのだ。そこには人間としての感情が存在する。ミサイルを使ってテロリストを暗殺する際でも、高性能カメラで殺されるテロリストの「自分にミサイルが向かっていることに気付く驚愕の表情」までも最後まで見続けなければならないことに思い悩むパイロットたちの姿も赤裸々に描かれている。

  • 著者も書いているとおり、本書はプレデターをめぐる「法的・倫理的事項」を議論するための本ではない。
    これは、近年の戦争において、これほど役割や戦術上の重要性が変化した機体はないと言われるプレデターを、その草創期から見つめ携わってきたパイロットによる貴重な証言である。
    アメリカではこのような最前線に身をおく人がライターと組んで、自身の経験を本にまとめたノンフィクションが珍しくなく、比較的良書も多いのだが、本書もまさにそれだった。

    かつて空軍において、プレデターを操縦することは、多くのパイロットにとって出世の終着点を意味した。
    著者たちは、そんなプレデター・コミュニティの規律を一から築き上げ、プロ意識を醸成していった先駆者。
    戦闘機コミュニティを追い出され、鬱憤を蓄積させ、プロ意識をなくした者たち。
    周りからは「覗き魔」と揶揄され、任務も偵察が主だった。
    そんなコミュニティの士気を180度変えるきっかけとなったのが、ドルーピーの成功体験で、それ以降プレデターは、アメリカ軍の戦いに欠かせない存在となる。
    例えて言えば、プレデターは単なる「中継カメラ」から、海外の敵を直接攻撃するため「長い腕」となったのだ。
    このことにより、コミュニティ内の意識は著しく変わったが、それでも他のコミュニティとは明らかに独特な存在だ。
    プレデター操縦は固定のないシフト業務で、パイロットはホテルで暮らし。
    セクシーさのかけらもなく、工場勤めと変わらない。
    操縦は極めて難しく、有人航空機での操縦経験は役に立たず、一から学ぶしかない。
    「空を飛んでいるのを五感で感じたいのに、無音なので飛行速度やエンジンの調子が伝わってこない。翼の感覚もないので失速や不具合も予知できない」。
    しかも任務遂行クルーは、離着陸は行なわず、それを専門とした現地の整備士に操縦を替わるという。

    偏見にも苦しんでいる。
    曰く、「現場から1万キロ以上離れているので殺傷行為から精神的にも距離を置ける」というものだが、それを著者は言下に否定し、むしろ逆で「距離が近すぎる」のだと訴える。
    「あまりにも多くを知ってしまう上に、敵を撃つ際にはズームインして相手をモニターに大きく映し出すことができる。実際に顔をつき合わせているわけでも自分の命が狙われるわけでもないので、命を賭けてのバトルという状況にはならない。自分たちは決して殺されることがない一方、相手の生存チャンスはゼロ。冷酷な殺し方だが、決して感情抜きではない。1日が終わると、パイロットもセンサー・オペレーターも、敵が殺された残像を頭に抱えたまま帰途に就く」。

    プレデターが持つ潜在力は計り知れないものがある。
    著者も実際に、エンジン音を抑止力として活用したりなど、機体の短所を長所に変える新たな戦い方を模索している。
    これまでのように陸上の標的ばかりを狙うのではなく、海上での追跡にも利用できれば、任務の範囲はさらに広がることになる。

  • 遠隔操作機は戦争をゲーム化する、という論調があったが、どうもそうではないらしい。
    ・一方的に標的の命を奪う罪悪感
    ・高解像度カメラを使った攻撃後の残骸確認の残像が頭から消えない
    ・倫理的問題の有無にかかわらず、問題があると非難される兵器そのものに関わる事へのストレス

    理論的・倫理的に合っていることと、生身の人間としてシックリくることとのギャップが、物凄い勢いで広がっているなー

  • 「アフガン、たったひとりの生還」と併せて読むと、とても面白い。

  • 殺るか殺られるか、ではなく、殺るかしくじるか。無人機プレデターによる標的殺害=100:0の戦いを、任務に当たった米軍将校が描く。正直なところ、不快になるどころか、作戦成功を望んで読み進める自分に驚いた。我々の立ち位置が米軍側だからなのか、ゲーム感覚に陥っているからなのか、一瞬でスマートに事が済むからなのか? 長時間標的を追う中、あまりに日常生活を観察しすぎた為、著者が標的にある種の親近感を抱く場面があるが、人間性があらわれたのもそこまで。直接自分の手を介さないという事がどれほど感覚をバーチャルなものにするかが、全編から伝わってくるようだった。

  • 空軍パイロットが、無人遠隔操縦航空機プレデターの操縦士になり、追跡・ミサイル発射トレーニングを経て実戦、アフガン・パキスタン・イラク・東アフリカ。2004〜2012年、二軍扱いから、対テロ戦争の主役となるまで。

    コストパフォーマンス、機能と精度を考えれば、無人機の優位性は必然。国のため戦争に参加したい、テロリスト追跡・銃撃任務遂行、というのは、今の日本的感覚からは異次元ですが。

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