ブランコ乗りのサン=テグジュペリ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 388
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037393

作品紹介・あらすじ

20世紀末に起きた天災から数十年後、復興のために首都湾岸地域に誘致された巨大カジノ特区に、客寄せ目的で作られた少女サーカス団があった。選ばれた少女たちは観衆の憧れと熱狂を身に纏い、舞台に立つが……。

感想・レビュー・書評

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  • 歌姫、獣使い、人形師、ブランコ乗り……。
    養成学校まで作り、選抜されたエリートによる少女サーカスは、今宵も人を魅了する。
    けれども、どうやら様子がおかしい。
    ブランコ乗りが、精細に欠けている。
    なぜなら、彼女は、足に怪我を負った双子の妹なのだった。

    サン=テグジュペリの姉妹から始まり、カフカ、アンデルセンの章を進めることで、少女サーカスを取り巻く深い闇が見えてくる。

    それでも、一つの舞台を守るために、生きるために、彼女たちが覚悟を決めていく様子が、うまく描かれていると思う。

    世界観がしっかりしているので、学校内でのあれこれや、エンディングのその後を読みたい気持ちになった。

    これ、ワンクールでアニメ化するにはピッタリの作品と思うんだけど。

  • 少女四人の視点で、柔らかく、淡々と静かに語られるそのくせ、中身は最初から最後まで苛烈で荒々しい物語だった。こうありたい、という心情のための生き方は、高飛車なんて言葉では生温く、傲慢と呼ぶのが正しい。この人の書く話はいつも凄い勢いを感じて、息を詰めるように読んでしまう。たかだか文庫本一冊の人生が、流星が駆け抜けるが如く、燃え上がって走り去って行く、それが、激しすぎて、びっくりするほど怖い。アンデルセンが好きだなぁと思ったのだけれど、やっぱりサン=テグジュペリの激情が一番圧倒されるかな。

  • このサイトで見つけて本屋さんに注文して買った本。
    素晴らしい物語だった。
    面白くてスラスラ読めた。

    少女たちの花のように咲く一瞬の儚さと美しさ。
    完璧でも完全でもなく不完全でありなさい、グッと心にきた。

    一時の夢をみせてくれる、そんな物語。

  • 人食い3部作から読み始めたので、全く毛色の違ったお話でまず驚きました。それでもやはり、この方の作品はどこかしら欠陥を持った少女たちが逞しく生きる姿を美しく描いていてとても読んでいて勇気をもらいます。今回特に素敵だなと思ったのが、サーカスの役職にそれぞれ有名な作家の名前が肩書きとしてつくとろです。サン・テグジュペリは私も大好きで、そのせいもあって読み始めたのですが、ブランコ乗りと飛行士であった彼の名前とがこのようにリンクするとは思っていませんでした。歌姫についても然り。私はまだカフカやチャペックの作品を知らないので、読んでみてから改めてこの作品を読み直したいと思いました。紅玉さんの知識の深さと、それを開けっぴろげにせず登場人物の背景に持ってくる書き方にとても好感を覚えるステキな作品です。

  • なんとも美しく残酷な物語だった。
    歪んでいるのに潔くて、いっそ清廉さを感じる。
    アンデルセン、すきだなぁ。彼女の覚悟は美しい。

    こういう少女小説、さいきん少なくなったよね。

  • 兄弟姉妹って呪われた関係だな、という一面があるのは、兄がいるから分かっているつもりだが、双子だとしたらそれは倍増するのではないだろうか。スターの姉と、その身代わりをする妹。双子の間に交わされる約束は、呪いそのものだ。呪いが言祝がれるのか否か……この物語はファンタジーに過ぎるかもしれない。少女達の描かれ方も芝居じみているだろう。でもそれは、サーカスというモチーフを選んだ著者の意図と妄想する。その上で、少女達の儚くも美しい「覚悟」に切りつけられ、酔いしれるのが、本作の楽しみ方では無いだろうか。

  • 紅玉いづきの描く女性像がよく出ている小説。
    どんなにか弱くてもどんなに年若くても、どこかにしなやかな強さがある女性。今回の小説は「少女サーカス」をテーマに上げているが、少女から女性になる彼女らは変化と苦悩と、あの年頃特有の自信があって美しいのだと思い知らされる。「少女」に「美しい」はおかしく感じるが、紅玉いづきの文体で描かれる身体・精神状態のバランスが悪い彼女らは、「不自由」という言葉がぴったりだった。
    読み終わる直前、冒頭から引っ張られている事柄に終止符が打たれるが、そのあんまりに歪で強い結末に、首の辺りから総毛立つように感じた。

  • 913-K
    文庫

  • とてもよかったなー。
    通勤電車の中で読んでたけど、駅に到着して歩き出すといつも頭の中で毛皮のマリーズの星の王子様が流れたなー。

  • 少女たちのサーカス団。儚くて不完全で未完成で、そしてしたたかな少女性。それぞれ一人称視点で、自分の世界が全てという感じ。ラストの姉妹それぞれの決断には驚く。見世物を更に強調することで守られるものとは。読みやすく面白い世界観だった。永遠をちょうだい。不純物の混じった鉱物が美しく見えるように。ざらっとした毒が底に沈んでいて、じわじわ効いている。

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著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2022年 『雪蟷螂 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

紅玉いづきの作品

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