望み

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著者 : 雫井脩介
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年9月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041039885

望みの感想・レビュー・書評

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  • 魂が揺さぶられる一冊でした。
    著者の作品はすべて読んでいますが、
    その中でも、特に忘れられない作品になりました。

    高校一年生の少年が殺された。
    被害者は息子の同級生だった。

    現場から逃げる少年たちが目撃され、
    時を同じくして、行方がわからなくなった息子。

    犯人かもしれない…
    もう生きていないかもしれない…
    生きていたほうがいいのか、それとも…

    生きている。それは加害者であること?
    被害者であることは死を意味する?
    生きていてほしいと願うことは、信じているということなのか?

    望みなき望みの中で、翻弄される家族。
    父・母・妹それぞれの想い。 
    「僕は信じます。あいつはそういうやつじゃないから」
    純粋に息子を信じてくれる友達の存在がせつない。

    苦しかった…
    この家族に感情移入しすぎて、結末がわかるまで、ほぼ300ページ、
    たった数日間のできごとが、気が遠くなるくらい長かった。

    読了後、本を閉じ、目に飛び込んできた二文字。
    これほど堪え難く、哀しい『望み』を私は知らない。

  • 小説を読んで落涙したのは、いつ以来だろうか・・・
    同じような少年犯罪を扱った作品に、薬丸岳著『Aではない君に』がある。
    『A』が、犯罪を犯した少年の父親の苦悩を描いているのに対し、本作は、加害者なのか被害者なのかわからない立場の両親の懊悩に焦点を当てている。
    加害者でもいい生きていてほしいと望む母親に対し、父親は息子の無実を信じ、また世間との兼ね合いから被害者であってほしいと望む。
    事件を巡って、娘を含めた家族へのバッシング、無責任なうわさが拡散するSNS、取引先の豹変等々。そして事件は終幕へ・・・
    作者の筆力に絡めとられたまま、読み終えた。
    中高生を持つ世代の読後感は、自分の子供に限ってこんなことはないという安堵感か、それともこんなこともあり得るかもとの不安感か。
    読者に、家族のありようを問いかける感動作。

  • 石川一登は建築デザインの仕事をしている。
    妻、貴代美は自宅で校正の仕事を。
    長男の規士(ただし)は高校生。
    妹の雅は中学生。
    ごく平凡な4人の家族。

    外泊をするようになった規士を気にかけていた一登と貴代美。
    そんな矢先、事件は起きる。
    石川家の近所で高校生が遺体で発見される。
    その場から立ち去った2人の若者。
    規士は外泊をしたまま帰らない。

    警察から規士が事件に関わっているようだと知らされた一登と貴代美。
    規士は加害者か?、それとも被害者か?
    自分たちは加害者家族か?、被害者家族か?

    事件の全容がわかるまで、真実がわかるまで、家族が望むものは…
    息子の無実?
    被害者であってくれること?
    加害者であっても生きていてくれること?

    重いテーマでした。

    ネット社会の今、否が応でも触れてしまう情報がある。
    その正確さは二の次で、人々の興味を引くものはあっという間に拡散される。
    そして、拡散された情報が、まことしやかにささやかれ始め、いつのまにやら真実のように語られる。

    私自身、情報に振り回されない!という自信がない…
    恐ろしい…

  • 東京のベットタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登と校正者の妻・喜代美。
    二人には高一の息子・規士と中三の娘・雅とともに平和に暮らしていた。
    規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになった。
    そんな夏休み明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、
    連絡すら途絶えてしまった。
    心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、
    二人は胸騒ぎを覚える…。

    少年犯罪を扱った著書ですが、本書は犯罪に関わった少年の家族に
    焦点が当てられています。
    現場から逃げた少年は2人。行方不明になっている少年は3人。
    この矛盾から、夫婦の辛くて長い時間が始まって行きます。
    行方不明になっている規士は、加害者で友人をリンチ殺害したのか…?。
    被害者でもう亡くなっているのか…?
    どちらにしても、親としてはこれ程辛い事はありません。
    生きていれば加害者である事を被害者であれば死んでいる事を意味します。
    この可能性、望みなき望みの間で父と母の心は翻弄それ続けていく。
    夫婦の気持ちのすれ違い。揺れ動く心。移りゆく気持ちが丁寧に描かれていた。
    丁寧過ぎてちょっと長くてなかなか話が進まない…じれったくも思いましたが、
    なのに先が気になって仕方がない!
    酷いマスコミの取材攻勢。家にされる嫌がらせ。
    離れていく仕事仲間に親戚。
    面白おかしく書き立てるネット住民。
    読んでいて苦しかった。
    最後には祈る様な気持ちで読んでいました。涙が零れました。

    とてもとても重いテーマでした。とっても読み応えのある素晴らしい作品でした。

  • ああ、予想と逆の展開だった。色々思い悩んでいたことが突然ブツッ、と断ち切られた感じ。逃亡者が二人で行方不明が三人。自分の息子は加害者なのか被害者なのか…どちらも絶対嫌だと思いながらも、やっぱり…生きてて欲しかった…。
    被害者側、加害者側どちらの気持ちも味わった気分。どちらになっても地獄なのに、世間の好奇の目にさらされて二度殺された気持ちになる。読んでてつらかった。

  • やりきれない結末ではある。
    どちらに転んでもやりきれない結末にしかならない物語だったが、事件の謎解き、誰が犯人なのかということを推理する作品ではない。
    家族が事件に巻き込まれた時、家族が遭遇する、外を取り巻く環境と、内面の精神がさらされる嵐。

    母は、人を殺していても、息子が生きていることを望む。
    母性とはそういうものだ。

    父は、自分たちが人殺しを育ててしまったという事実を肯うことはできない。

    妹は、身内から犯罪者が出たとしたら、自分の人生はどうなるのかを心配する。

    はたして、行方不明の家族は、被害者なのか加害者なのか。
    どちらを望むかと言われれば、どちらも望まないのだが、その選択は無い。
    どちらを望んだとしてもそれは『望み(希望)のない望み』だ。

    ていねいに、細やかに描写され、誰の気持ちも分かるだけに、結末が近づくのを恐れた。
    マスコミの迷惑さは、いつものことだが、それよりも悪質だと思うのは、何も分からないうちから犯人を勝手に決め付け、自宅に玉子を投げつけたりペンキを吹きかけたりした輩だ。
    明日には自分の軽犯罪を反省することもなくけろりと忘れて次の興味の対象に湧いてしまうのだろう。
    ストーリーに直接関係は無いが、そんなことも考えてしまった。

  • 読んでいて思ったのはこれを文章力のない人が書いたら読めたもんじゃないということ。
    今時にしては珍しくシンプルなストーリーと構成で、あくまでも純粋に主題について描いている話。
    ・・・なだけに、筆の力のない人が書いたらとても最後まで読めずに陳腐な感想になっていたと思う。

    この話は4人家族の両親の目線それぞれから描かれている。
    父親は建築家、建築デザイナーの男性で、妻は自宅で校正の仕事をしている。
    子供は高校生の男の子と中学生の女の子。
    その高校生の男の子がある日、行方不明になる。
    その直後に知った、高校生殺害事件。
    行方不明の子と殺された子とは面識があったと分かり、もしや我が子が事件に関与していたのでは?と両親は思う。
    父親は我が子が事件の被害者ではないかと思う。
    しかし、その望みは我が子が既に死んでいるという事に自然につながる。
    母親は我が子が事件の加害者ではないか?と望みをもつ。
    しかし、それは加害者の家族として生きていくという覚悟を要する。
    二人の望みは時に交差しつつ、ストーリーは進行していく。

    事件そのものは大した真相というものでもなく、あくまでも子供が被害者なのか、加害者なのか、そのどちらかに望みを託す登場人物の心情を丁寧に描いている話となっている。

    読んでいて思ったのはこの物語の主人公となっている両親は家に押しかけるマスコミや周囲の理不尽な態度にとても常識的、大人な対応をとっているということ。
    私なら感情的になってとてもこんな冷静で理性的な対応はとれない。
    そんな人たちだからこそ、考えていることをちゃんと受けとめようとしたし、じっくり読もうと思えた。

    このおもたる主人公の二人は全く違う望みをもっているかのように見えるけど、実は同じ望みなのだと私は思う。
    それは家族も自分も幸せに暮らしたいということ。
    だからこそ、話の中で母親の母が言った言葉は一瞬何かいい事を言ってるようだったけど、違和感があった。
    もう十分に幸せに過ごしたのだからこれからはそれをあきらめよ、もっと大切な事があるんだ、というような言葉だったけど、幸せになる以上に何が大切で、それをあきらめてまで守るものってあるん?と、後からじわじわ思いがわいてきた。

    こんなシンプルなストーリーでラストに衝撃的な事がある訳でもない話なので、読んでいて退屈と思う人もいるかもしれない。
    私はこういう気をてらってない、文章だけで読ませるという話は大好きで、あっという間に読んでしまった。
    とてもいい本だと思う。

  • 重くそして苦い。
    心情に訴える作品。

  • もしこの現実が自分の身に起こってしまったら、私はどうするのだろう。どんな現実になったとしても、それを受け入れる覚悟が出来るだろうか…。
    本文中で初めて「望み」という文字を目にしたとき、タイトルの重みをずっしりと感じた。どう変わっていくかわからない、家族を取り巻く環境。誰の望み通りになったとしても、悲しい現実からは逃れられない。先のことは考えても仕方がないと思いつつも、各々が想像の中で不安にとらわれていく心理描写に、こちらまで不安になる。物語は読者をも巻き込んでゆく。読む側の心境もページをめくるたびに変わるのだ。
    指の間をするすると零れ落ちていく常識、価値観、想い。正解はどこにもない。
    こんなに胸の苦しくなる物語は読んだことがなかった。私のように、思春期の息子を持つ家族だけでなく、すべての世代に読んでみてほしいと思う。

  • 久しぶりの雫井さん。テーマは重い。…うーん考えさせられます。でも結論は出ない。

    終盤で一つの結論が出たとき思わず涙してしまいました。や、こういう作品で涙が出るとは思わなかった。しかしたとえフィクションであっても人の生き死にというのは大変重いものなのだということを今更改めて感じましたね。

    立場で真逆になる世間の扱い。
    以前「加害者家族」というルポを読んだことを思い出しました。確かに被害者家族の悲しみと怒りの深さ、喪失感や虚無感などと比較すべくもないのですが、加害者家族という存在は自らは無罪であるにもかかわらず世間からは抹殺され、決して目立たず大きな声も世間に向けて出さずただ生きるためだけに生きることを余儀なくされる、場合によってはそれさえも許されなくなるという苛烈さを、その一冊で知ったのでした。そのことを思い出しました。

    主人公一家の「救い」はあまりにむごい。
    いや本当の意味では救われていないのだと思いますが、事件が起きてしまったらもう、どうだったらよかったのかというのは意味をなさないものなのかもしれません。
    読後タイトルを見返すと一段と重みを感じます。

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息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。相反する父と母の望みが交錯する――。心に深く突き刺さる衝撃の心理サスペンス。

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