望み

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041039885

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの雫井さん。テーマは重い。…うーん考えさせられます。でも結論は出ない。

    終盤で一つの結論が出たとき思わず涙してしまいました。や、こういう作品で涙が出るとは思わなかった。しかしたとえフィクションであっても人の生き死にというのは大変重いものなのだということを今更改めて感じましたね。

    立場で真逆になる世間の扱い。
    以前「加害者家族」というルポを読んだことを思い出しました。確かに被害者家族の悲しみと怒りの深さ、喪失感や虚無感などと比較すべくもないのですが、加害者家族という存在は自らは無罪であるにもかかわらず世間からは抹殺され、決して目立たず大きな声も世間に向けて出さずただ生きるためだけに生きることを余儀なくされる、場合によってはそれさえも許されなくなるという苛烈さを、その一冊で知ったのでした。そのことを思い出しました。

    主人公一家の「救い」はあまりにむごい。
    いや本当の意味では救われていないのだと思いますが、事件が起きてしまったらもう、どうだったらよかったのかというのは意味をなさないものなのかもしれません。
    読後タイトルを見返すと一段と重みを感じます。

  • 未成年の運転する自動車が事故を起こし、そのトランクからはリンチにあったと思われる少年の遺体が発見される。同じ時期、建築家・一登の息子も行方不明になり、事件との関わりが疑われる。行方不明になっている少年は3人。しかし、現場から逃走したのは2人。自分の息子は犯人なのか?それとも被害者なのか?父、母、そして妹の複雑な感情が細かに描かれる。自分の未来のことを考え、被害者であって欲しいと願う父。たとえ加害者でも生きていれさえすればと祈る母。一見、自分勝手に思ってしまうところもあるが、自分がもしも同じ立場になった時、やはり心は揺れ動くだろうと思うと、心が痛くなる作品。

  • 加害者と被害者、どちらの方がまだマシなんだろうって考えた。どちらも悲しいことではあるけれど。読みやすかった。

  • 私には高1の息子がいる。
    だからこの親たちを自分に置き換えて読んだ。

    ナイフを取り上げたことを悔やむより
    夜遊びさせ放題だった躾を悔やむべきだろう。
    うちの息子は別に真面目な高校生ではないけど、門限の9時を過ぎることなくちゃんと帰ってくるし
    もし朝帰りなんてことがあったらきつく叱るよ。怒るんじゃなく叱る。

    それと加害者でもいいから生きていて欲しいなんて考え方わからない。
    人殺しだよ…
    なんか登場人物が自分中心。

    例え我が子が犯人ではないと信じていて確証していても
    被害者のお葬式に参列する気持ちがわからない。遺族の気持ちもくみとれないのか?自分の気持ち中心。

    でも私にも子どもがいるのだから
    いつこの本の登場人物のひとりになるかわからないな。

    きっとお母さんは息子のこと人殺しとは本気では思っていなかったはず。死んでしまうくらいなら…と両天秤にかけたんだろうけど
    でも人殺しって罪は重すぎるよ。
    私は愛する息子が人殺しの方が辛いわ。

  • やりきれない結末ではある。
    どちらに転んでもやりきれない結末にしかならない物語だったが、事件の謎解き、誰が犯人なのかということを推理する作品ではない。
    家族が事件に巻き込まれた時、家族が遭遇する、外を取り巻く環境と、内面の精神がさらされる嵐。

    母は、人を殺していても、息子が生きていることを望む。
    母性とはそういうものだ。

    父は、自分たちが人殺しを育ててしまったという事実を肯うことはできない。

    妹は、身内から犯罪者が出たとしたら、自分の人生はどうなるのかを心配する。

    はたして、行方不明の家族は、被害者なのか加害者なのか。
    どちらを望むかと言われれば、どちらも望まないのだが、その選択は無い。
    どちらを望んだとしてもそれは『望み(希望)のない望み』だ。

    ていねいに、細やかに描写され、誰の気持ちも分かるだけに、結末が近づくのを恐れた。
    マスコミの迷惑さは、いつものことだが、それよりも悪質だと思うのは、何も分からないうちから犯人を勝手に決め付け、自宅に玉子を投げつけたりペンキを吹きかけたりした輩だ。
    明日には自分の軽犯罪を反省することもなくけろりと忘れて次の興味の対象に湧いてしまうのだろう。
    ストーリーに直接関係は無いが、そんなことも考えてしまった。

  • おもしろかった!
    どっちに転んでも辛い。
    その葛藤にザワザワした。

  • 息子は殺人者か被害者か。
    犯人であっても生きてさえいてくれたら、それなりの人生を覚悟して生きて行くしかないと覚悟する母親。ともかく被害者であってほしいと願う父親。執拗に迫ってくるマスコミ、嫌がらせ。
    息子を信じたい。生きてて欲しい。
    辛い、辛過ぎるよね。

  • ラストは涙が出た。 男親、女親、捉え方は違えども子を思う気持ちは同じ。 マスコミの在り方共々、考えさせられる作品と思う。

  • 近くで息子の知り合いの子の遺体が見つかります。

    その事件に息子が関わっている可能性があり、家族の中で、加害者であって欲しい。という望みと、被害者であって欲しいという望みがぷつかりあいます。

    しかし、どっちを望んでも、待っているのは不幸。

    そういう話でした。その望みに合わせ動く両親に同情したり、いや、それは違う!と思ってイライラしたりして読みました。

  • 高校生の息子が行方不明に。程なくして付近で遺体が発見。周りから加害者扱いされるが、母は息子の無事を願う。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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