ドクター・デスの遺産

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041039977

作品紹介・あらすじ

「死ぬ権利を与えてくれ」・・・・・・
命の尊厳とは何か。安楽死の是非とは。

警視庁にひとりの少年から「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」との通報が入る。当初はいたずら電話かと思われたが、捜査一課の高千穂明日香は少年の声からその真剣さを感じ取り、犬養隼人刑事とともに少年の自宅を訪ねる。すると、少年の父親の通夜が行われていた。少年に事情を聞くと、見知らぬ医者と思われる男がやってきて父親に注射を打ったという。日本では認められていない安楽死を請け負う医師の存在が浮上するが、少年の母親はそれを断固否定した。次第に少年と母親の発言の食い違いが明らかになる。そんななか、同じような第二の事件が起こる――。

感想・レビュー・書評

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  • 病死と思われたのが、実は安楽死だったのではという疑惑の事案が次々と起こる。その場にはドクター・デスと呼ばれる医師の影が。まるで、手塚治のマンガに出てくるドクター・キリコのようだ。
    捜査が進む中で、安楽死の是非を読者に突き付けてくるような展開になってくる。最後の方の中東の戦場の描写も、さらに安楽死の問題を強く意識させるのだ。
    主人公の犬養隼人刑事には「七色の毒」で見せた颯爽とした姿はない。子を持つ親としての逡巡を見せ、普通の人間ぽいのだ。

  • 安楽死、それは殺人なのか…
    ネットを通じて安楽死を請け負うドクター・デス。
    それは正義か悪か───

    誰一人として不幸になっていない。
    誰一人としてドクターデスを恨む人はいない。
    それでも罪に問われるのか…
    いくら考えても答えがわからない。

    「ドクターデス」になった理由に、共感できる部分もあるけれど、
    紛争地帯におけるそれは、現在の日本の医療にはあてはまらない気がした。

    医学が発達した今日、人はそう簡単には死なせてもらえない。
    最期まで苦しみもがく姿を見たくはない。
    それでも、もしかしたら明日、特効薬が見つかるかもしれない。
    助かる可能性が少しでもあるのなら、辛くても苦しくても生きていてほしい。
    もしも自分だったら、自分の大切な人だったら…
    想像するだけで、全身が震えてくる。

    ただ一つ確かなことは、延命させることも、苦しませたくないことも、同じ愛情だということ。
    どの選択をしても、後悔にさいなまれる。
    それは法を犯すとか、そんなものでは言い表せない別の罪。
    その人自身が一生背負っていく罪。

    ”安楽死”本当は考えなければいけないテーマなのだと思う。
    でも、今はそう感じても、きっとまた目を背けてしまう。

    • あいさん
      こんにちは(^-^)/

      安楽死の問題ってよく考えるんだよね。
      私は苦しんだり、誰かに迷惑かけるくらいなら安楽死させて欲しいと思って...
      こんにちは(^-^)/

      安楽死の問題ってよく考えるんだよね。
      私は苦しんだり、誰かに迷惑かけるくらいなら安楽死させて欲しいと思っている。
      けど、実際にその時がきたらビビってしまうかもしれないけどね…

      うさちゃんの同じ愛情って言葉いいね。
      私もそう思うよ。
      中山さんの作品は読んだことないので読んでみたいな。
      この作品よさげだね〜♪

      今は本屋大賞ノミネート作品を読んでいっているよ。
      図書館で借りているからなかなか順番こないけどね(笑)
      あとは映画の原作とか。
      本当は太宰などの純文学も読みたいけど、なかなか手が回らないわ、相変わらずだよね(〃∀〃)ゞ

      それでは、またね〜♪
      2018/03/09
    • 杜のうさこさん
      けいちゃん、こんばんは~♪

      私もこのごろ時々考えるの。安楽死に限ったことではないんだけど、
      これからの事っていうのかな、自分の人生の...
      けいちゃん、こんばんは~♪

      私もこのごろ時々考えるの。安楽死に限ったことではないんだけど、
      これからの事っていうのかな、自分の人生の終末のこととかね。
      いくら考えても決められる気がしないんだけど…
      まぁ、人間いつどうなるかわからないしね~なんて楽観的にもなったりして。
      うん。自分が苦しむのも、苦しませるのも迷惑かけるのも嫌だよね…
      だから、この本の「ドクター・デス」はある意味、”救い”だったんだよね…。
      本当に難しい。

      中山七里さん、面白いよ!
      私もね、フォローさせていただいている方のおススメで読み始めたの。
      「どんでん返しの女王」と称されているらしいです。
      私はミステリー本いくら読んでも、必ず騙されるからね~(笑)
      この作品も、しっかりとだまされたわ( ゚O゚ )

      本屋大賞!今回はいつになく読みたい作品が多くて、嬉しい~。
      純文学もね…なんだろ、昔はなんのためらいもなく読んでいたのに、
      どんどん読み方が偏ってきているような気がする。
      純文学や外国文学も、昔はそれはそれは好きだったの^^
      実家の本棚はそちらのほうが多いくらいなのに。
      今は難しそうだったり、カタカナの名前が出てきたりすると萎える(>_<)
      あ、後は二段構えの分厚い物もだわ。
      ブク友さんの本棚をめぐっては、読みたい♪登録本ばかり増殖中。
      私も相変わらずだ(#^^#)

      では、またね~(^^)/
      2018/03/10
  • 読んでからシリーズ4作目だと気付きました…。
    安楽死がテーマとなっており、私自身安楽死容認の方が割合が強いので考えさせられるテーマでした。難しいですよね。

    けど逮捕のところがん?となったりしたのでそこは私的には残念。

  • 安楽死を扱った作品だけどウエット感が無くて良かったです。

    長寿社会の今日、「生きる権利」「死ぬ権利」を今一度考えさせられました。

    自分は「安楽死」では無く「看取り」で行こうと…。
    そうすれば、生きる権利も死ぬ権利も使えるのではないかと思いました。浅はかな考えかもしれませんが…。
    それよりもピンコロが一番ですよね。

  • 刑事犬飼隼人シリーズ。
    このシリーズは、過去に起こった事件を扱うことを決まりごととしているようだ。犯人はキャッチーな第二の名前がつけられ、その犯罪の手段は過去の事件の模倣犯を思わせる。

    今回のテーマは、安楽死。
    ストレートに犯人を残虐と言い切れない、何とも言えない気持ちになった。
    苦しみを長引かせるなら、いっそ楽に。病を抱える娘を持つ犬飼の気持ちも大きく揺れているのがわかり、それにも共感できる。
    今回は、ミステリーよりも、ヒューマンに寄っていたような印象。いつもの七里先生を読み終わった後の高揚感という部分では、この作品はあまり感じられなかったかな。
    でも、このシリーズは好きな登場人物が多い。犬飼はもちろん、相棒の高千穂も、上司の麻生も、そして娘の沙耶香も。沙耶香にはこの先、元気に退院して欲しいな。

  • 一気読み。面白いというより考えさせられた。

    自分の大切な人のために安楽死を依頼する。今の日本の法律では殺人になってしまうけど、ほんの近くで大事な人が苦んでいる状況から助けてあげたい気持ちは殺人ではない。
    全く個人的な意見だけど、
    超高齢社会になる未来に、その問題となる高齢者になる自分の事を考えると、子どもたちの事を思って、お互いの事を想って、尊厳死が認められるようになって欲しい。せめて選択肢の一つとして存在してほしい。

  • しまった!
    読み始めて知ったけど、これって刑事の犬養隼人シリーズなのね。先に「切り裂きジャックの告白」っていうのを読めばよかった…まあいいや面白かったし。

    通信指令センターに入った少年からの電話
    「悪いお医者さんがきてお父さんを殺しちゃったんだよ」
    いたずらかと思われたこの電話から、安楽死を処してくれる「ドクター・デス」の存在が…。
    安楽死は殺人か?それとも人間に残された死ぬ権利なのか?

    うわ~めちゃくちゃおもしろかった!
    さすが中山七里先生!
    ラストまで明かされない謎とドキドキで一気読みしてしまった。

    「安楽死」というテーマがなかなか重いですが
    生きているうちに一度は直面するテーマのように思います。

    もし私が…あるいは身内が…あるいは愛する人が…
    様々な理由で安楽死を望んだら…
    私なら…
    いやいや、ここで結論や意見を書くのはやめよう

    最後の最後までなかなか考えさせられる内容でした

  • 図書館で借りたもの。
    警視庁に入った少年からの通報。突然やって来た見知らぬ医師に父親が注射を打たれ、直後に息を引き取ったという。捜査一課の犬養刑事は、少年と母親の発言が食い違うことを怪しみ…。
    『死ぬ権利を与えてくれ』命の尊厳とは何か。安楽死の是非とは。

    「刑事犬養隼人」シリーズの第4弾らしい。
    映画化されて気になったので読んでみた。

    『医師による積極的な安楽死。平和な場所では犯罪とされる行為が、戦場では救済手段となっていた。』
    所変われば、立場が変われば…出来ることも変わってくる。

    消極的安楽死(延命治療の中止)は認められてるけど、積極的安楽死は日本では認められていない。
    どうやって死にたいか、を選択できるようになってほしいな。

  • 2020年11月に綾野剛、北川景子主演で映画されるので読んでみたら、犬養・高千穂刑事のシリーズだったと知る。4作目なんだ。全然読んだことなかった。正直、最初に読むときつい話やな。まあ、七里さんの作品は、ある意味、痛みなしで読めない話が多いので、他の作品も気楽に読めるとは思えないが、いきなりこの話は厳しい・・・
    でも、まあ読みではある。さすがに七里さん!でも、映画はどうしようかな・・・

  • 犯人にやられた! そして、安楽死がテーマとして、非常に読み応えがありました。苦しみから早く解放させたいか(したいか)、最後まで戦い少しでも長く生きて欲しいか(生きたいか)、人それぞれ思うところはあるでしょう。自分自身も考えながらも読みました。
    最後は息もつかず一気読み。
    犬飼隼人シリーズ、初めて読みました。麻生とのやりとりもいい。他作品も読みたくなりました。

  • 犬養刑事シリーズ。
    たくさん出ているような気がするが、シリーズとしては4作目なのだそう。
    前回の「ハーメルンの誘拐魔」でも医療を扱っていたが、今回のテーマは安楽死。
    通信指令室にかかって来た「お父さんがお医者さんに殺された」と言う子供の電話から、ドクター・デスと名乗る人物がカリウムを使った安楽死を請け負っていることを知る犬養たち。しかし、捜査を進めても、なかなかドクター・デスの正体にたどり着かない犬養は自分の娘を引き合いに、ドクター・デスをおびき出すが…
    安楽死が法で定められていないことは分かっているが、日本の現状が抱える問題を考えると、一概に「犯罪」とは思えず、その苦悩が犬養や麻生を通じても描かれる。
    そして、中山七里ならではのラストのどんでん返し!慣れたはずが、またやられてしまった…

  • 安楽死について考えさせらる1冊。何が正解か分からないけど、本中に出てきた「死ぬ権利」はあってもちいのかもしれない。サスペンスとしてもおもしろく、同時に人間らしく生きることについても考えさせられる1冊だった。

  • 映画を先に観たので、内容が随分違うことに驚いた。
    正直、安楽死は介錯だと思う。
    苦しみを長引かせないためなのに、なぜ行ってはいけないのか?
    人を拷問してギリギリ死なせないように苦痛を与えるのは犯罪だが、病気や怪我の苦しみを長引かせるのは「命の大切さ」を盾に正しいこととされる。
    本当にいけないことなら、どうして動物に対してはしてもいいのか?
    私は死ぬのは怖いが死ねないのも怖い。

    今作の犯人が間違っているとは思えず、終始犬養に対して反感を持ってしまった。

  •  初の中山七里ミステリー作品を読みました!!相当面白く、いい意味で掻き乱してくれました!
     この方の作品は、実際に現代で問題になっている事を小説を通して教えてくれているのですね。
    今回はテーマは「安楽死」。 自分ももし病気になり苦しむ側になった時あるいは、看病側に立った時絶対に「安楽死」を選ばないとは言い切れない事に気付きました。遠いようで近い問題であり、他の国では合法もあるが日本ではいけない犯罪に扱われるそんな違法な国に『ドクターデス』は突如現れた。
     主人公の葛藤、犯人の思想、被害者遺族の思い
    全ての部分が面白く、1ページも読み外せない作品でした!!

  • 激痛のまま最期を迎える中、安楽死を選択するのか。刑事が、患者の気持ちに応える看護師を、法を犯す罪人として追う。

  • この終わりかあと思いましたが、沙耶香ちゃんに救われました。

  • 犬養隼人シリーズ第4弾。
    少年の110番通報は、本当なのか。冒頭から引きこまれる展開で、面白かった。
    安楽死は、ありか、なしか。消極的安楽死に比べると、薬物を使っての積極的安楽死には、抵抗がある。しかし、治療すべがなく、苦しみ続けるとしたら?
    考えさせられるテーマ。

  • 犬養隼人刑事シリーズ。
    『安楽死』についてとても考えさせられました。
    是非はいくら考えても今の私には出そうにありません。
    歳を取るにつれて老後の事を考える機会も増えています。延々と続く苦痛にそれでも生き続けないといけないのかと疑問に思ってしまいます。
    これだけ寿命が延びている日本、それにともない弊害も出てきて当然です。『安楽死』が認められている国々があるという事はこれからの可能性として日本でも考えるべき事のひとつでもあるんじゃないかなと思っています。
    ベッドの上で送る余生はイヤだな...

  • 犬養刑事シリーズ4作目。安楽死がテーマ。物語として読みながらも深く考えさせられるテーマ。大切な愛する尊い命を前にして何をしてあげられるのか?考えると正しいことが何かわからなくなる。法を守る、それは間違えなく正しいこと。でも気持ちだけで考えられるならドクター・デスに傾いてしまうかも。

  • 今まで読んだ犬養シリーズの中で、一番好きな作品。

    自分にバイアスがかかってることに自覚がなくて、犯人に全く気づかなかった。医者にせよ、刑事にせよそれぞれが能力発揮できるのには必ず条件があって、その条件が揃わないと単なる人になってしまう。でも、その職業に誇りをもらっているからこそ、どうにかその職業としての側面を発揮しようとしてしまうこと、悲しいと思う反面、どこか美しさを感じてしまった。

    問題が生じたとき、自分で出来ることはなんだろう、なにかしたいと思うことは悪いことじゃないし、そういう人間でありたいと思う。その反面、何かをする時は必ずその真逆の立場があって、自分がやる何かが誰かにとっては悪であることを忘れたくない。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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