ラスト・ワルツ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041040232

作品紹介・あらすじ

仮面舞踏会、ドイツの映画撮影所、疾走する特急車内――。大日本帝国陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ組織「D機関」が世界を騙す。ロンドンでの密室殺人を舞台にした書き下ろし短編「パンドラ」を収録!

感想・レビュー・書評

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  • ジョーカーゲーム第4弾。戦況は、日本にとってかなり悪い方向に進んでいる様子。D機関のスパイ達が集めた情報も軍部では、上手く利用されていない状況のようだ。それでも彼らは、与えられた任務を完遂する。
    今回は、事件舞台が華やかな感じ。当時の文化がうかがわれる。
    「ワルキューレ」
    ドイツ映画界を巻き込んだ、ドイツとの危機回避。なんとなく派手目なスパイだなと思っっていたら、海軍のスパイが主人公でした。
    「舞踏会の夜」
    戦況悪化でこれが最後となるだろう仮面舞踏会。
    華族出身で陸軍中将の妻の女性は、自由奔放、夫とは仮面夫婦。長年の想い人との再会を、舞踏会に夢見る、って話かと思ったら、退屈しのぎの愛人とのスパイもどき。のつもりだったのだけど、それさえもD機関の手の内だったのかも。もしかして、結城中佐の若い頃の話なのかな。
    「アジアエキスプレス」
    満鉄特急の車内で情報売買の予定が、敵国スパイに発覚。まさか、初殺人かと思いきや、見つかったのを見つけてきちんと捕獲。スパイは、手品もできます。

  • 「ジョーカーゲーム」第4弾。
    今回も各エピソードに分かれる形。
    D機関メンバーの出番が少ない気がしたな。最後のええとこで登場って感じで。
    まぁ、スパイなんで、ほんまは目立ったらアカンから、そんなもんかもしれんけど、小説なんでね。
    海軍のスパイがメインのもあったけど、結構、優秀そうやった。どんな機関とかなのか気になった。そもそも、陸海軍バラバラで諜報活動とか無駄な気も?
    まっ!いずれのエピソードもスマートで、クールで、カッコ良い。
    結城中佐のエピソードなんか、「イケメン&クール&強い&賢い」って、天は四物も与えてる!笑。
    スラスラ読めて面白い!

  • D祈願シリーズ第四弾。「ワルキューレ」「舞踏会の夜」「パンドラ」「アジア電話エクスプレス」の4篇収録。

    裏の裏を読むD機関スパイの活躍、クセになる。現実離れしているところがかえって痛快。安心して読めるのもいい。

  • シリーズ4作目。
    「舞踏会の夜」は、若かりし頃の結城中佐との淡い恋の話なのか、こういうのも箸休め的でいいなと思っていたので、そうだったのかという結末まで面白かった。
    「アジア・エクスプレス」のスパイ対決も、わくわくした。

  • 〇学んだこと
    1.情報は集めるより使う方が難しい。
    2.科学技術の発展により、戦争は個々の兵士の優秀さが意味をもたないようになった。
    3.致命的な失敗は得意分野で起きやすい。情報戦を疎かにすれば敗北が待つだけ。
    4.スパイは平時においてこそ活躍する。いったん戦争が始まれば存在意義そのものが失われる。

  • 題名がラストワルツで、なんらかのロマンスを想像し、その終わりがあるのかと思いつつ読み進めた。

    「ワルキューレ」で日本海軍のスパイが準備した拳銃がワルサーP38、銃器には疎いが、これはルパン三世が使っているので知っている。

    「舞踏会の夜」では結城と顕子のロマンスを期待した。女性を優しく泳がせ、危険が迫ると先回りしているあたりが、結城がルパン三世と被る。

    「アジア・エクスプレス」はこれまでの柳広司氏のスパイもので終始死ぬな、殺すなのポリシーが顕著に表現されている。盗むけど殺さないルパン三世と同じである。

    「パンドラ」では密室殺人に目が行きがちだが、相手の得意な領域で凌駕する結城の軌道修正する指導力がスマートである。スマートさはまるで・・・言わないでおく。

    ドイツの状況から既に日本の敗戦濃厚は、歴史的にも、日本は掴んでいた。それでも戦争に突入した事で多くの国民が傷つき、亡くなっていった。今の日本は歴史的に変わっているのだろうか?
    顕子の言葉に余韻が残る。「それでも人は変わらない。世の中が変わるだけだ。」

  • 「ワルキューレ」
    冒頭の映画がそのままに、逸見自身にふりかかるところが面白かった。最後に描かれているたとえ機密情報を収集したとしても、上層部が無能ならばそれを活かすことができない。っというのは、いろんなところで描かれる「人は見たいものしか見ない。」というのの引用で面白かった。

    「舞踏会の夜」
    華族に生まれ陸軍中将の妻、という退屈な生活に飽き飽きしている女性を中心に話が進む。飽きた先に行ったものがスパイ行為で、それを咎めたのが初恋の相手っというのが、この作品には珍しくロマンチックな展開だった気がする。

    「パンドラ」
    ロンドンを舞台にした密室殺人事件もの。ただ、最後の展開が、過去作の失楽園とほぼ同じな気がする。

    「アジア・エクスプレス」
    高速列車を舞台とする密室ミステリー。解決に無邪気な子供を使うところが良かった。

  • 面白かった
    「ジョーカー・ゲーム」の第4弾!
    帝国陸軍内の秘密裏に設立されたスパイ組織「D機関」が世界で広げる諜報戦。
    本作では4編の短編が収められています。

    ■ワルキューレ
    ナチス支配下のドイツでの映画制作現場での物語。
    冒頭のシーンはいきなりのスパイアクションで、D機関ってこんな感じだったっけ?と思いきや、実はそれが映画のワンシーン。

    映画を利用してナチスのイメージを確立しているゲッペルス。その映画業界で映画を取る逸見。映画スタッフ。そして、日本大使館の内装屋として潜入したD機関の幸村。
    日本大使館に設置されたたくさんの盗聴器の謎。
    ゲッペルスの謎の発言。
    それらの意味するところは?といった展開です。

    ■舞踏会の夜
    陸軍中将の妻となった顕子の目線で語られる物語。過去、ある男にピンチを救われた顕子はその男と再び出会うことを期待して舞踏会へ。
    しかし、その真相は?といった展開です。

    ■パンドラ
    密室での発見された死体。自殺か?他殺か?
    たった一人、ヴィンター警部だけは、殺人とにらんで、捜査を命じます。そして犯人が明らかになりますが、その背後にあったものは?

    ■アジア・エクスプレス
    満州の特急車内で繰り広げられる、D機関の瀬戸とソ連の暗殺者との攻防になります。
    社内で瀬戸の協力者が殺害されます。ソ連の暗殺者は誰なのか?

    今までのシリーズ同様、エンターテイメントとして楽しめます。
    スパイもの好きな方にはお勧め!

  • シリーズ第四作。舞踏会でワルツを踊る結城中佐。まさかのロマンス?そんなはずなく、やっぱり任務を果たしてました。続編でないかな。

  • シリーズ4作目(最終作)。

    ほとんどスパイの存在が見えない。
    これが「目立たない灰色の小さな男(グレイ・リトル・マン)」か。
    いきなり本書を読んでもピンとこなかったかもしれないが、
    4部作として続けてみることで、時系列や一貫性を感じる。
    全体を通して飽きずに楽しく読むことができた。

    だからこそと言うべきか、
    最後の最後に「アジア・エクスプレス」が配置されていることに、
    どうもしっくりこない違和感が残る。
    鳩のくだりにも、何かの意味や意図が隠されているのだろか?
    と気になって考えてみるもよくわからず・・・
    どなたか教えてください。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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