光炎の人 (下)

  • 104人登録
  • 3.89評価
    • (15)
    • (16)
    • (9)
    • (4)
    • (1)
  • 28レビュー
著者 : 木内昇
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年8月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041041949

光炎の人 (下)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 木内さんの才能は稀有まれなものだと思っています。
    全部読んだわけじゃないけど、全部傑作です。
    絶対的な信頼感を持っています。

    この本も間違いなく傑作です。
    木内さんの渾身の作です。力入ってます。
    だって初の上下巻ですよ(多分)。

    でもね、残念ながらここまで主人公に魅力がないのも珍しい。
    全く共感できない。共感どころかむしろ嫌悪。
    読むのが辛くて辛くて。
    物語は激動の時代を描いてそれなりに読ませるんだけど、読めば読むほどうんざりするの、主人公に。

    読者も辛いけれど、作家も辛いと思うの。
    ここまでいやな男にずーっと付き合うの大変よね。
    いや、まったくの勝手な意見ですけど・・・。

    映画化されて松坂桃李あたりが主人公演じたら、違うかな。
    そしたら全然違う話になっちゃいそうな気もするけど(笑)

  • 生まれ育った田舎にいた頃の音三郎は、大人しく純朴で、自分の好きなことをこっそり追及している若者だった。
    田舎から大阪、東京と場所を移り、小さな町工場の職工から官営の軍需工場の研究員に。
    小学校もまともに卒業していないのに東京帝国大学卒のインテリ達と共に仕事をしても全く引けをとらない…正に出世街道まっしぐらで夢も叶ったかに思えたのに、肝心の音三郎は現実の壁に立ち塞がれる。

    上巻とは違い下巻は読み進める内に胸苦しくなってくる。
    「必ず成功してやる」
    彼の強気の野心が虚しい。
    これが現実なんだろうか。
    木内さんから人生や仕事に対する「甘さ」を指摘された気がする。

    ラストの幼馴染みとの対峙は遣りきれない。
    自分の技術にプライドを持った男の夢は、現代に生きる技師達に受け継がれていると信じたい。

  • なんとも、そうなるかあという結末。音三郎、最後の最後まで不器用だった。彼は悪い人ではないんだ。純粋で、自分の仕事が大好きでそれを世間に認めてもらいたいと切に願っている。だから日夜、なんというか人間として大切な心すら置き去りにして研究して実験してを繰り返し年を重ねてきた。人を疑うことを知らないあまりに、自ら不幸な結果を招いてしまう。でも彼はそれに気づきもしない。研究者、技術者の悲哀を見事に書ききったなあ、木内さん。素晴らしいです。音三郎、がんばったよ。本当に。時代に翻弄されてしまった無線馬鹿の物語。お見事。

  • ただの真面目な農家の三男が時代に翻弄、歪められていく過程が辛いけど読みごたえたっぷりの小説。今も効率や安さが安全や質に優先されかねない時代。登場人物の一人の「技師には次があっても、不良品を使うたがために命を落とした庶民には次はないさけな」という一言は今にもつきささるメッセージ

  • 立志伝の話かと思ったが、技術者のエゴを表したもの。
    最後はまさかの張作霖爆殺事件に関連してくるとは、予想外の展開でした。
    でも世相とか技術をキチンと表現をしていて、興味深いものだった。

  • 読み進めて行くうちにどんどん主人公を、応援できなくなって行くけど、最後ははやり悲しかった。
    電気、無線のことは難しくてわからなかっが、技術とその活用、応用について考えさせられる。読んで良かった。

  • これが、技師の業か性か。
    どこまでも自分の技術だけを信じてただひたすら夢だけを追い求めて…と言えば聞こえはいいけど、なんなんだ、まったく。どこまで自分だけ大事なんだよ、トザ!
    上へ上へ。いまよりもっと自分の技術を生かせる場所へ。自分の夢のためなら親兄弟も切り捨てる。そんな自分勝手なトザを最後まで見守り続けた友との最期の瞬間が頭から離れない。
    明治から大正、そして昭和。激動の時代に電気と無線に取りつかれた一人の男の、傲慢で壮絶で、そして哀しい物語。

  •  下巻。
     新しい無線の開発がうまくいかず大阪でくすぶっていた音三郎は、経歴を偽って東京の軍需工場に転職する。そこで軍人になった幼なじみと再会し、関東軍大佐の娘を妻帯することにより、いつのまにか軍隊の意向にのみこまれる。関東軍につき従うかたちで満州に渡った音三郎の人生のレールは、大きくずれていく。

     新技術を開発して世間をあっと言わせたいと研究にいそしむ音三郎は、いつしかおのれの劣等感を覆い隠すための手段とみなすようになり、本来の技術開発の目標を見失っていく。その欠けている面を、音三郎を敵対視していた大阪の技術者が言い放つシーンがある。

    「そやさけおどれは駄目なんや。すべての技術は希望からはじまらなあかんのや。人の暮らしを明るくしよう、楽しゅうしよう、安全に高度な技術に接せられるようにしよう--そないな意識をもって開発にあたらな、技術っちゅうのは本当の意味で成就せんのや。馬鹿な軍人が涎垂らして使うような、つまらんものしか作れなくなんねや」(P.50)

     ここまで言われて何も感じないようになってしまった音三郎は、この時点で終わっていたのかもしれない。

     自分が作った無線機が役立つことを証明したい、という小さな野心の殻から最後まで抜け出せず、功名心に執着して周りが見えなくなっていた音三郎は、知らないあいだに張作霖爆殺の工作に関わったことで、大きな時代の波に呑まれ消えていく。

     他の木内作品同様、時代のうねりの中でもがくひとりの人間を描いた作品だが、ひたすら新技術開発にいそしむ研究者の鏡のはずの音三郎に最後まで共感できなかった。作者も自分が作り出した人物を持て余したのか、ラストは他者の視点に変わってしまったのが残念。

  • 上巻で技師としての魂を悪魔に獲られた音三郎は時代の波に翻弄されながらある事件に巻き込まれて行くこととなる。
    ひとりの男を通してその時々の背景を描くのが木内イズムなのだがこれだけの史実に物語を絡めるとなると必然結末は見えてしまう訳で難易度は相当に高かったと思われる。
    それでも最後のページまで捲る手をへ緩めさせないのは彼女の揺るぎない実力と言うしかない。
    科学技術の進歩は諸刃の剣でありメッセージは原発事故を経た社会への警鐘であるのだろうが私の印象としてはあの割烹着女史を思い出す…
    堕ち行く運命の放物線の始点を慮ることとなる問題作

  • 「技師は新しいアイディアを試してみたいし、自分の考えた技術が世間で使われるのを見たくて仕方がない」

    実験の大きな失敗にも学ばず、音三郎ははじめての技術開発の職に見切りをつけて、東京の大きな会社の引き抜きに乗る。彼は自らを見失い、学歴を詐称し、栄華だけを夢見て突っ走る。

    軍需と結びつきが強い関係から、陸軍大佐の娘を嫁にもらうのだが、この女性が 陸軍至上主義のヒエラルキーにすっかり洗脳されている。
    なんだか某A大臣を想起するような人物。。

    大震災が起こっても、相変わらず自分の研究にしか関心がなく身近な人たちになんの注意も払わない音三郎。
    彼は通信機の仕事で満州に転勤になり関東軍の仕事に関わるのだが、あるとき経歴詐称がバレて会社をクビになりひとり満州に残される。

    ここから話は張作霖爆破事件へと進んで行き、人間的に少しも成長しない音三郎は自分でも気付かぬうちに大きなミスをする。。。そして呆気ないほどの結末へ。

    先週だったか、ダボス会議の席で「AIの成長が早すぎて今後どうなるか予想もつかない。認識が甘かった」と、こともあろうに 先頭切ってAI 開発やってる人たちが言ってたというコラムがあった。
    http://tocana.jp/2017/02/post_12245_entry.html

    理念なき技術開発がなにをもたらすのか?
    音三郎は日本の技術開発の姿そのものではないか。
    競争と発展を錦の御旗にやみくもに見境いなく、湯水のようにカネを使い「壮大な実験」を性懲りもなく繰りかえす。

    それでも高度成長期は需要の器が巨大だったのでなんとかなった。
    今はどうか 。
    長く使われ古くなったものの安全性はおざなりにしたまま 懐具合も考えず ”セカイの先端” だか ”イチバンじゃなきゃだめ” とかで原発やらリニアやら .....

    技術者だけのせいではなかろうが ........

全28件中 1 - 10件を表示

木内昇の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
東山 彰良
冲方 丁
西川 美和
宮下 奈都
村田 沙耶香
塩田 武士
朝井 まかて
西 加奈子
米澤 穂信
木内 昇
池井戸 潤
西 加奈子
西 加奈子
池井戸 潤
辻村 深月
朝井 まかて
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

光炎の人 (下)はこんな本です

光炎の人 (下)を本棚に「読みたい」で登録しているひと

光炎の人 (下)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

光炎の人 (下)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

光炎の人 (下)を本棚に「積読」で登録しているひと

光炎の人 (下)の作品紹介

大阪の工場ですべてを技術開発に捧げた音三郎は、製品化という大きなチャンスを手にする。だが、それは無惨にも打ち砕かれてしまう。これだけ努力しているのに、自分はまだ何も為し遂げていない。自分に学があれば違ったのか。日に日に強くなる音三郎の焦り。新たな可能性を求めて東京へ移った彼は、無線機開発の分野でめきめきと頭角をあらわしていく。そんなある日、かつてのライバルの成功を耳にしてしまい――!?

光炎の人 (下)のKindle版

ツイートする