おやすみ人面瘡

著者 :
  • KADOKAWA
3.30
  • (16)
  • (21)
  • (22)
  • (15)
  • (7)
本棚登録 : 212
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041046289

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人瘤病という身体に脳を持った顔が映える奇病に侵された日本が舞台のホラーミステリ。平山夢明の実話怪談ばりに描写がグロく、それがまた風俗店や治安の悪い地方都市という底辺世界の、おどろおどろしい舞台設定と噛み合っている。異質な世界観ではあるが、感情のベースは常識的であるため、ギリギリついていけたものの、それでもこの倫理観の無さは少し受け入れられない部分があった。それはモラルとしてどうという話ではなく、作中のリアリティラインがどこにあるのか見失ってしまうような感覚とでもいうのだろうか。例えば中学校の不祥事にしても、異常があまりにも当たり前としてサラリと描かれすぎていたせいで、読み手として感覚麻痺を起こしてしまった部分がある。しかしミステリとしての出来は素晴らしく、人瘤病という設定を縦横無尽に活かした奇想天外なミステリである。半分過ぎてもいまいち全体像が見えなかったが、後半の畳み掛けるような怒涛の展開は素晴らしく、推理の多重構造も最高である。また序盤の異形の女イモコの伏線がちゃんと回収されたり、途中で絡んできたチンピラがトリックのネタを暗に指し示していたりと、全体を通して一切の無駄がなかったのには息を呑んでしまった。一見するとありえないことが、正当なものとしてまかり通ってしまうグロテスクさに加えて、ここまで謎を多重構造に描いた作品にはちょっとお目にかかったことがない。とある仕掛けを複数回に渡って使ったことで足場があやふやになり、悪夢の迷宮に迷い込むような錯覚を覚えた。咳嗽反応と脳瘤の位置がキーというわかりやすさも良い。それ故に、帯の部分で若干のネタバラシをしているのには非常に興ざめをしてしまった。トリックのネタは素晴らしく、非常に気に入っただけに、動機がつまらなかったのは残念である。それもギャップなのだろうが、響いてくるものは感じず。ただオチの後味の悪さは最高で、こういう話を締めくくるのに相応しいオチであった。

  • 2016年。思うに井坂さんも千葉県出身→東北大学だったなぁ。
    結合人間の次は人面瘡ですか。江戸川乱歩先生!
    身体に人面ができる。脳死しても人面は生き続けるらしい。ただし知能はない。人瘤病。
    仙台のヘルスこぶとり姉ちゃん、海晴市(宮城県)の中学校での出来事が交互に語られる。このふたつの関連性が明らかになる時。。。別にへーそうかぁ、くらいな感じw
    おやすみ、パルコ。好きな女のために頑張ったってことかな。パルコちゃん化け物になっちゃってたけど。
    グロさが増していくのであるが、白井さん文章がうまいから大丈夫。この方の文章は読みたい。

  • グロ系の世界観がよくまとまったミステリー。論外に気持ち悪い世界観をよく考えられるなぁと思う。人が道具として扱われている残酷描写が好きな人でも中々気持ち悪いと感じられるだろう。
    『東京結合人間』と同様、女を凌辱する女というモチーフが出てくるが、筆者の拘りなんだろうか…

  • エログロミステリ。
    人面瘡が体に出来てしまう奇病、それを売り物にする風俗店と序盤はエグい部分も多いが、後半は推理が飛び交うミステリ。人面瘡までが推理を語り始めるのには驚いた。
    エログロも含めて面白く読んだ。

  • 子どもにはオススメしません!残虐グロ最悪です。書評なりを見て分かった上で自己責任で読みましょう。
    こんな本も需要があるんだなー。気持ち悪かった。

  • ホラーかなと思って読んでいたら、途中からミステリだと気づいた。かなり作りこまれた作品で、ややこしかった。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、誰が誰やら、途中からわけがわからなくなってきた。かといってもう一度読みたいという気にはなりませんでした…。最後のオチでずどんと落としてくるところは好みです。メメタロウの死体の真相にはいやいやいやいや…と突っ込みたくなりましたが(笑)

  • 2016/10/10読了

著者プロフィール

1990年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作となり、同作で2014年にデビュー。『東京結合人間』が第69回日本推理作家協会賞候補、『おやすみ人面瘡』が第17回本格ミステリ大賞候補となる。『名探偵のはらわた』は「2021本格ミステリ・ベスト10」で第3位。他の著作に『少女を殺す100の方法』『お前の彼女は二階で茹で死に』『そして誰も死ななかった』『ミステリー・オーバードーズ』『死体の汁を啜れ』がある。衝撃的な作品で読者の度肝を抜く、気鋭の本格ミステリ作家。

「2022年 『お前の彼女は二階で茹で死に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白井智之の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×