犯罪小説集

著者 :
  • KADOKAWA
3.25
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本棚登録 : 874
感想 : 125
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047385

作品紹介・あらすじ

人間の深奥に潜む、弱く、歪んだ心。どうしようもなく罪を犯してしまった人間と、それを取り巻く人々の業と哀しみを描ききった珠玉の5篇。2007年『悪人』、14年『怒り』、そして……著者最高傑作の誕生

感想・レビュー・書評

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  • ミステリではありません
    後味の悪いお話、5編

    面白いかどうかという類いの作品ではありません
    犯罪に至る描写が巧みで、どれもどこかで見たような事件でした

  • この作者の奥行きの深さを感じさせます。いろんな色合いの違う作品を紡ぎ出す力量に感服します。個人的には「横道世之介」のような作品が好きですが。

  • 短編5編。
    実話をベースにし、犯罪そのものよりも人物を描く。
    読んでいる最中に、そういえばそんな事件があったと思い出した。犯罪には共感できないが、なんとなく堕ちていってしまう様にはうなずいてしまう場面も。
    読了後に、ネットで事件を調べてみて、更に内容に重みが出た。

  • 短編集です。
    どのお話もイヤミス系かな。
    最後になんか「えー」っていうモヤモヤが残る。

    こんな事からこじれて犯罪が起きる事もあるんだっていう、犯罪の背景みたいなのが切ない感じ。
    実際の事件がモチーフになってるらしいので、もしかしたらこういう背景だったのかもって事なんだろうけど。

    日常でもよくある、誤解とか思い込みとか小さい事が大きくなると犯罪にもつながるんだなと。
    だから他人事じゃないよって事なのかな。
    やっぱり吉田さんには長編を書いて欲しい。

  • どこか身近で、どこか他人事の犯罪短編集。犯罪者がなぜ犯罪を犯してしまうのか。周囲が悪いのか、環境が悪いのか、あるいは自分自身が悪いのか。紙一重な部分を読み手に心理的に訴えかけてくる文章がスゴイなぁ、と。

  • 5つの犯罪の物語。
    読みながらこれはあの事件がモチーフなんだな、とか、これはあの人がモデルだな、とか思いながら読む。
    犯罪はそれがどんなものであっても、どんな理由があったとしても、許されるものじゃない。でもこの5つの物語を読むと一つの犯罪が行われるまでにはいくつかの分岐点といくつかの偶然と、そしていくつかの扉があったのにな、と思う。誰かがどこかの時点でその犯罪への道を変えることができたはずなのに、とそう思ってしまう。許されないことだし許してはいけないことだとは思うけれど。やりきれない思いで溺れそうだ。

  • 誰でも、私でも、私の周りにいる人々も、
    何かしらで箍が外れたらば、
    誰にも、自分でさえ分からない理由で
    犯罪者になりうる。
    よく言われる、一歩間違えたら貴方も私も。
    脆く崩れそうな気持ちをどこで、何を持って、
    食い止めるのか。
    最後の話、山之内が呟く「なんで?」。
    この一言が、この短編集を締めくくる。
    自分には関係ない話だと思っているからこそ、怖い。
    吉田修一氏、微かに心がざわつく感じを描かれるのが、
    本当に巧い。

  • 読み終わった際にやるせなさが残る。普通の人たちが犯罪に落ちて行ってしまう姿が悲しい。

    • トミーさん
      人間のの悲しさ、業の深さ
      いろいろ考えました。忘れたけど
      一番好きなのがありました。
      吉田修一好きです。
      人間のの悲しさ、業の深さ
      いろいろ考えました。忘れたけど
      一番好きなのがありました。
      吉田修一好きです。
      2020/02/01
    • hiroki-musashinoさん
      吉田修一いいですよね!一番好きな作家の一人です
      吉田修一いいですよね!一番好きな作家の一人です
      2020/02/02
  • 短編で非常に読みやすかった!
    読後感がなんとも言えない

  • 短編の犯罪小説が5作日
    それぞれが短いのでサクッと読めます。
    それほど重い感じではなかったです。

  • 短編集ですな、全部全部後味悪いです。
    ブクログの紹介を見てなるほど。犯罪とそれを取り巻く人たちの悲しい物語。
    まさにそれ。
    だからそれ以上は何も求めてはいけないんだな。
    気分が落ちてる時には読んだらダメなやつ。

    最後の話はすごく人間臭くて、ひたすら子供がかわいそうだった。


    @図書館本

  • 何回も借りては返ししてたやつようやく読めた。

  • ミステリを読もうと手に取ったけど、ミステリではなかった。人間の業というか、どうしようもないところが生んでしまった物語を集めた短編集だった。
    基本的に後味は悪い。犯罪者たちが置かれた環境がまざまざと想像できてしまうほどにリアリティを伴ったものだからこそ、起きてしまった犯罪とその結末に読後感を苦いものと認識させられてしまうのだと思った。
    後味は悪いけど、やるせなさと切なさがなんだか癖になって、次々とページを捲ってしまった。

  • 女児が殺害された今市事件や大王製紙のギャンブル事件、つけびの里として今も話題に上がる山口県の連続殺人事件などの、世間を騒がせた事件を元ネタにした短編小説集。

    個人的に思い入れがあるのは今市事件だ。
    事件の不気味さもさることながら、9年後に逮捕された男は冤罪なのではないかと言われていたのが印象深い。無期懲役が確定した現在も、冤罪説は根強く残っている。足利事件を大失態を犯した栃木県警に対する不信感は相当なものだった。

    和歌山の毒入りカレー事件にも同じことが言えるけど、状況証拠だけで逮捕してしまう警察と、状況証拠だけで無期懲役やら死刑判決を出してしまう裁判所、これらの機関は正常に機能しているのだろうか。
    確固たる証拠に基づいた逮捕、揺るぎない証拠に基づいた判決が必要だと思う。

    小説に出てくる豪士は、十年前に女児がいなくなった事件の犯人ではあったけど、現在の行方不明には関わっていなかった。
    どんなに疑わしくとも、その人が犯人だという確証が見つかるまでは勝手に犯人扱いしてはいけない。
    私刑なんてありえない。

  • 吉田修一は、二つくらいしか小説読んでないけど、好きな作家だとわかるんだよねー

  • 犯罪小説集と銘打った一冊のなかに5編の小説。さすが吉田修一で5編ともそれぞれ違った視点から描かれた物語。そして「犯罪」って何だろうと思わされる。
    犯罪って端的にいえば、触法だろうか。たとえば、1編目の「青田Y字路」の豪士は、おそらく触法という意味での犯罪を犯しているけど、周囲の彼を疑う人たちもまた、触法ではないけれど罪を犯しているような気がする。そして周囲の人たちはそのことにまったく自覚的でない。一方、2編目「曼珠姫午睡」の英里子など、罪にもならないちょっとした秘めごとを罪と感じているのでは。法に触れれば罪、自分がそう思えば罪、そして無自覚なままに犯される罪もある……。
    「青田Y字路」で特に感じたんだけど、三人称で書かれていながらときどきふわっと視点が変わるような違和感があって、なるほど、三人称で書くってけっしてニュートラルな立場ではないんだなと思った。よくある書き方だと、三人称で書いていても、たとえば主人公を中心に据えていたり、一定の固定された視点から語っているものだと思う。それが豪士寄りだったり別の登場人物寄りだったりと定点が変化する。この書き技をもって、犯罪って何だろう、だれが罪を犯した人なのだろうと考えさせる吉田修一の巧みさよ。

  • 実際にあった事件を元にした犯罪小説短編集。どちらかというと犯罪者の視点からの描写の多い。その話も何とも言えない哀しさが残る。
    犯罪には様々な背景や事情があるものの誰も幸せにはしない。

  • 終わりを読者に投げる締め方なので、この後どうなったの?どういう意味?ともやもやした。私の読解力の無さゆえですが。

  • 2020.07.25

    どのお話も読んでいてなんとも言えず暗い気持ちになる話ばかりだった。
    最後にスッキリするわけでもなく読み手にモヤッとその後を委ねる感じがなんともイヤミスな…。

    読んだ後に知りましたがどれも実際に起こった事件がモチーフということで読後感にモヤモヤが残るのはさもありなんという感じ。

    「青田Y字路」は結局偽ブランド品親子の息子が犯人なのか?とよくわからなかった。社会的弱者だから疑われた?それで息子がキレた?

    「白球白蛇伝」がお話としていちばん上手くまとまってたと思う。
    野球が上手い少年は加害者家族としてこれから苦難の道を歩むんだろうなと思うと切ない。

    次は逃亡小説集を読みます。

  • 『横道世之介』のような楽しい小説があるかと思えば『悪人』や『怒り』のように切ない小説もある吉田修一の小説は「人生小説」と位置づけている。
    今回は映画『楽園』の原作であるということもあり読了。前三作と比べると少し落ちるがやはり「人生小説」集だった。

  • 20/01/01読了
    kindle unlimitedで年末年始に読んだ本。これで年を越し新年を迎えてよかったのか。
    やりきれないほうの吉田修一節でした。映画 楽園の原作とは知らなかった。

  • やっぱりこの人、巧い。
    ドロドロしてたり不気味だったり救いのない話を書いたと思えば、希望の持てる話を書いたり。
    短編集だけど、それぞれひとつの単行本(長編)としても十分通用するのではないかという深みのある作品だった。

  • 実際の事件をモチーフにした5編。こんなに重いとは思いませんでした。第三者視点から、嫌になるほどリアルな表現で語られる出来事に、登場人物と同じように感じ同じように経験したように背筋から嫌な汗が流れます。例えば「曼珠姫午睡」の子供のころのテニスの試合。息遣いや罵声、空気まで伝わってくるほど表現が巧みです。他に「百家楽餓鬼」「万屋善次郎」が特にリアルで印象的でした。どれも絶対に許せない。でもどれもが別世界の出来事ではない。一ページごとに足元がずぶずぶと泥にはまっていくような怖さとやりきれなさが残りました。

  • 人間の深奥に潜む、弱く、歪んだ心。どうしようもなく罪を犯してしまった人間と、それを取り巻く人々の業と哀しみを描ききった五話の物語。「田Y字路」「曼珠姫午睡」「百家楽餓鬼」「万屋善次郎」「白球白蛇伝」収録。

    実際にあった事件をモチーフにしているせいか、分かりやすいミステリなどではなく、一話一話が胸に重たくまさに「犯罪小説集」という感じ。犯罪そのものではなく、そうなってしまった人間そのものを描いているので「どこからボタンをかけ違えてしまったのか」「どうしてこんなことに」と思うと、ぼんやりと悲しくなります。

  • 全ての話が「なんでそうなってしまうのか」とやるせない気分になり、もやもやして、混沌しててすっきりしない。
    でも現実にはこんな感じで事件やらもつれなんかは起こってしまうんだろうな。
    なんでそうなってしまったのか説明できないことの方が多いんだろうと。

  • ひとりの人間がどんどん落ちていくお話し短編集5話。
    短編集だけど1話1話に重みがある。本当に事件があった背景はこんな感じだったんだろうな〜こんな事件あったような〜?と思いながら読んでたけど、本当の事件からヒントをえて書いた本だったとは!
    そう思うとなお考えさせられる。

  • あまり語られることのない犯罪の裏側、そこに至る過程を深く掘り下げる。
    どこでボタンを掛け違えたのか、どこで人間関係に綻びが生じたのか。
    まるで自分のことのように、後悔にも似た読後感が残る。

  • 描かれている罪は犯罪なのだ。裁かれるべき罪ももちろんあるのに、どうして読み終えた後こんなにも犯人に寄り添うような心情になってしまうのだろう。

  • 吉田さんは、新刊が出たら内容にかかわらず手に取る作家さんの一人。今作も例外なく手に取った。
    事前にレビューをちらちら見てなんだか評価が低めであり、あまり期待を持たなかった。

    独立した5本の犯罪者が犯罪者になるまでの物語。
    どの作品も実話をもとにしているのとのことだが、元となっているニュースが分からなかったことがよかったのか、5本ともとても楽しく読むことができた。

    どの作品も風景として、物語が作られており、犯罪者となってしまった人の思いや動機が分からない。知りたい。

    ゆっくり味わって読むことができた。

  • 青田Y字路(あおたのわいじろ)
    娘が失踪。犯人わからず。捜索の時、怪しい行動の男。
    また、幼女が失踪。怪しい男の家に皆で押し込む。
    娘の遺体が押し入れにあった。男は灯油で火をつけて自殺。幼女は無事に確保。

    ☆曼珠姫午睡(まんじゅひめごすい)
    弁護士の妻。中学時代の知り合いが殺人容疑で逮捕・
    スナックのママ。愛人に老人を殺させて保険金殺人。
    昔の友人をSNSを通じて調べる
    高校時代からかわっていた。

    ☆百家楽餓鬼(ばからがき)
    親族で経営する中堅企業の御曹司。高校は野球部。大学からはナンパ
    大企業の就職はせず、親の会社で修行。新事業で成功。NPOで活躍する美人と結婚
    息抜きに始めたカジノにはまる。月に一回が、毎週末マカオ、香港
    ファイナンス系グループ会社から100億円以上使いこむ。
    子会社にとばした社員が裏切り警察に密告。日本に帰れば逮捕
    一族の株を全て売却すれば着服した金はチャラ

    ☆万屋善次郎(よろずやぜんじろう)
    地元の工場で働いていた男が故郷に戻る。62才で最年少。蜂蜜作りを始めるが失敗。奇行が目立つようになる。
    注意をした老人家族を斬殺。自分も山に逃走し、自殺をはかるが重体で発見される

    ☆白球白蛇伝(はっきゅうはくじゃでん)
    貧しい家族の末っ子がプロ野球選手で一瞬だけスターになる。金使い荒くなり31才で引退。コーチ時代は借金。球団内で盗難、クビ。谷町の不動産会社の社長から1000万円。元ファンの運送会社社長の会社で給料前借り。7万円を借りられなくて社長を殺してしまう。息子がリトルリーグで注目。少年時代の父親に似ているが、人殺しの子となり、引っ越していく

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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