椎名誠 超常小説ベストセレクション (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047699

作品紹介・あらすじ

“お召し送り”に選ばれた妻……三ヵ月も毎日降り続ける雨……とにかく異常に大量発生した蚊……“盆戻り”で家に帰ってきた亡き母との対面……さまざまな専門家たちがなにかの理由で集められた収容所で、太軸二段式十字ドライバーを片手に脱獄をはかろうとする男……。過去30年にわたって発表された小説の中から著者自らが厳選。SF、ファンタジーの枠に収まりきらない“不思議世界”の物語19編を濃密収録したベスト版!

感想・レビュー・書評

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    ベストセレクション! どの作品も僕は過去に一度ならず読んでいる事を十全に分かった上でこの本を手に入れた。一冊に合成する際に直元本となった『月の夜のわらいネコ』と『水の上で火が躍る』もおそらく僕は読んでいる。でも読書記録があるははずの読書コミュでは最近は市場に無い本は検索できなくなってしまってそこに無い本の読書記録など簡単には見つかるわけなく証拠探しは困難を極める。

    僕は今回の様な再読的行為は基本しない。読んだ事をすっかり忘れてしまっていて,あっまた読んでしまったのだ!等と云う ”老人性結果悦楽的読書” 以外では読まない。読まないがこの本は別。長い年月を掛けてあちこちで読んで ああ面白かった と思ったシーナ兄ぃのSFもどき小説がいっぺんに読めるのだから。しかもシーナ兄ぃ本人によるセレクションときたらもう本屋さんへ走って行って手に言えるしかない。いやちがうかポチっとだけすればよかったなぁ。便利なものだ。

    本全体に言えることはものすごく負のパワーを全体が放っていて、読み手の僕の体やココロが少し弱っている時に読んでしまうとその弱り目を更に助長されてしまうことが多々あった。これには参った。ある時は負の興奮とはいえ目がさえて寝られなくなってしまった短編もあった。

    例えば作品『蚊』はただの一回も改行が無い。しかも ”「、」読点” も極端に少ない。つまり文庫本の狭いページ全体がそりゃもう文字でビッシリ埋まっているのだ。もちろんこの作品の部屋中密集状態の蚊がブンブン飛んでいる状況への相乗効果を狙ったのだろうけれど、これはもう行最下部から次の行最上部に読み継ぐ時に必死に次の行への手がかりを見つめ探しながら継いでゆかなければならなくて読みにくいというよりもお仕置きに近かった。だがそれでも面白いのでもうまいったなぁ。笑う。



    この本の最後に収録された作品『問題食堂』に身長120mの人型巨大マシンの重さが260トン という下りがでてくる。僕はこう見えても(誰からも見えてはいないけどw)自分だけが認める優秀な技術者なので、この記述の大いなる矛盾にすぐさま気づく。身長が120mもあるとその容積はちょっと大柄身長180cm普通人の、120m/1.8m=66.7倍。体積はその三乗のおよそ30万倍になる。人の体重を70kgとすれば身長120mの時の体重はなんと約々2万トンなのだ。※へ続くw。

    (はいここで控えめに( )の中に入れて書きますが大事なモンダイと説明/ウンチクです。直前に書いた「約々」という言葉の意味皆さん分かりますか。約の約だから約が一個だけよりはもっと不確かでいい加減な具合、といった感じの意味です。え?誰がそんなこと言ったのだ!って、それは僕です。

    言葉はどんどん変わってゆくものです。例えば多分皆さんももしかすると最近は使っている「ほぼほぼ」という言葉。これもその昔は存在しませんでしたが誰かが思い付いて使ってなんだかやや便利なので広まって一時は例の「全然」を肯定文にまで使うようになった最初の頃の様に昔ながらの使い方以外を嫌がるヒトビトの抵抗と反発に会いましたがやがて認められて「全然ダメ」しか使わなかったはずなのに「全然OK」も使ってよい事になってしまった例の様になってゆきつつあるのです。「約々」も密かにそこを狙っているのです。)

    ※ さてさて本題へ戻って・・・ ところがシーナ兄ぃは「身長120mだとかなり重いだろうがまあ260トンくらいにしとけばまずまずモンダイ無いだろ!」と云う誠に椎名的遠浅長靴目論見で書いたのだけどその目論見は科学:Scienceの前ではもろくも崩れ去るのであった。すまぬ。(比べると ウルトラマンなどに出て来る怪獣たちの体重はほぼほぼ科学的理にかなっていると云えるのであった。笑う。すまぬ。)

    この本は今後僕の旅のお供などにもう絶大な人気者になるだろう。読みふけりすぎて電車や飛行機?を乗り過ごしたりしない様に気をつけねばねば。笑う。すまぬ。

  • 椎名誠の独特な世界観の短編集。
    灰汁と百舌のシリーズを始め、北政府ものが多数収録されているため、シーナワールドを堪能出来る。

  • SF、ホラー、幻想譚、冒険活劇、いくらでもジャンル付けはできるけれど、いずれにしても純度100%のオリジナルな地名、人名、動物、植物、生物、生態、食物、習慣、擬音、から成るその世界観は圧倒的だ。そして豊饒な言葉たち。はまればはまる。でももしかしたら、はまらなければまったく受け付けないかもしれない。
    実に19もの短編が収録されている。好みのものもあればそうでないものもある。正直、好みでないもののほうが多かった。短編集の総合評価は難しい。
    好きなのは「いそしぎ」「雨がやんだら」「猫舐祭」「中国の鳥人」。

  • 椎名誠のSF傑作集。私個人的に椎名さんのSFは初期の頃のほうが最近のものより好きです。特に『雨がやんだら』と『蚊』は最高!今までのベストセレクションにも登場して何回も読んでますが、何回読んでも面白い!

  • 「椎名誠」のSF短篇集(超常小説集?)『椎名誠 超常小説ベストセレクション』を読みました。
    『孫物語』に続き「椎名誠」作品です。

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    「シーナワールド」全開の「超常小説」ベストセレクション!

    “お召し送り”に選ばれた妻……三ヵ月も毎日降り続ける雨……とにかく異常に大量発生した蚊……“盆戻り”で家に帰ってきた亡き母との対面……さまざまな専門家たちがなにかの理由で集められた収容所で、太軸二段式十字ドライバーを片手に脱獄をはかろうとする男……。
    過去30年にわたって発表された小説の中から著者自らが厳選。
    SF、ファンタジーの枠に収まりきらない“不思議世界の物語19編を濃密収録したベスト版!
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    1981年(昭和56年)から2010年(平成22年)に発表された、幻想的で摩訶不思議な物語19篇が収録されています、、、

    SFやファンタジーの枠を突き抜けているからか… 「椎名誠」は超常小説と定義しているようですね。

     ■いそしぎ
     ■雨がやんだら
     ■蚊
     ■胃袋を買いに。
     ■ニワトリ
     ■ねじのかいてん
     ■猫舐祭
     ■スキヤキ
     ■中国の鳥人
     ■みるなの木
     ■ねずみ
     ■赤腹のむし
     ■海月狩(くらげが)り
     ■抱貝(だかしがい)
     ■こん飩商売
      ⇒"こん"は"食"偏に"昆"
     ■漂着者
     ■飛ぶ男
     ■ぐじ
     ■問題食堂
     ■あとがき
     ■解説 北上次郎

    眼が覚めると虫になっていた… という不条理極まりない「フランツ・カフカ」の『変身』や、突然鳥が人間を襲い始め、その理由は最後まで明かされない「ダフネ・デュ・モーリア」の『鳥』のように、読者は唐突に摩訶不思議な「シーナワールド」に放り込まれ、その世界観に慣れ始めたかなと思うと、いきなり幕切れを迎える、、、

    喩えると、熱い湯を貯めた湯舟に放り込まれ、身体が熱さに慣れたかな と思ったら、ゆっくりする間もなく風呂から上がらされる… そんな物語の連続で、プロローグとエピローグは、自分で想像するしかなく、読み手によって、解釈も様々という作品集。

    好き/嫌いがはっきり分かれると思いますが… 私は意外と好きなんですよね、、、

    本作品集の中では、

    事情はわからないのですが、祝い事として妻を政府に取り上げられる切ない物語を描いた『いそしぎ』、

    雨が降りやまなくなった世界の終わりを少女の日記形式で綴るかなり哀しい物語を描いた『雨がやんだら』、

    酔って帰ったアパートでの地獄の蚊騒動を描いた『蚊』、

    中国の奥地で空を飛べる一族から飛行訓練を受ける主人公を描いた『中国の鳥人』… 本作品は既読ですね、

    セールスマンが田舎の居酒屋で酒を飲むだけだが、なんだか薄気味悪い不気味な味わいのある不思議な物語を描いた『抱貝』、

    無人島への漂着モノで意志のある島と格闘する主人公を描いた『漂着者』、

    あたりが印象的でしたね… 訳の分からない作品もありますが、意味を求めず、ムツカシイことは考えず、力を抜いて自然体で魔訶不思議な世界観に入り込むことが、本書を愉しむ秘訣かな。

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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