不時着する流星たち

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著者 : 小川洋子
  • KADOKAWA (2017年1月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041050651

不時着する流星たちの感想・レビュー・書評

  • すべてに重大な秘密がこめられているかのような文章で、それらを決して見逃さないようどうしても注意深く読まざるをえない小説だった。
    不時着、と表すのがぴったりな不思議でいびつな人物たち。
    手荒くあつかえばすぐにこわれてしまいそうな、儚くて静謐な世界がありました。そんな世界を、これは夢だとわかっていながら子供にもどって歩いているようだった。
    小豆色の裁縫箱、文字に似た小石、国際空港のロビー、おきざりにされる手紙、塩田王だった祖父、ヴィヴィアン・マイヤー、食べ切れないほどの肉詰めピーマン、若草物語、サクラ文鳥と青年、サー叔父さん。
    私もこういう小説を書きたいだなんておこがましくも思ってしまった。

  • 作者固有の透き通った世界が味わえる短編集、今回はわりと「こわいな」とひそやかにひやりとするような、そんな感覚を持ったお話が印象に残りました。

    「誘拐の女王」の二人の少女の箱庭の世界の閉じていながらにして感じる底知れなさ、「若草クラブ」から立ちのぼる純粋でひたむきな狂気、「さあ、いい子だ、おいで」で突然変転する慈しみの世界…。どれもが人々そのものはまっすぐに背筋を伸ばして生きていそうにさえ見えるから、よけいにすっと現れる濁りのない非日常がしっかりした輪郭を伴って印象を残していきます。

    実際の人物などをモチーフにされているそうですが、そのモチーフからここまで空想を広げるのか、というその意外性にかえってびっくりさせられました。

    今回の短編集で一番好きなのは「測量」、「博士の愛した数式」をどこか彷彿とさせてくれるあたたかな世界がとても好きです。そして「十三人きょうだい」も同じように、ささやかな秘密の共有がとても素敵でした。

  • ヘンリー・ダーガー、グレン・グールド、放置手紙調査法、ヴィヴィアン・マイヤー、世界最長のホットドッグ…
    何の繋がりもない、そしてとても有名なわけではない人やものたち。世界の隅でそっと異彩を放つそれらをモチーフに描かれた、十篇の物語。
    ふわふわした手触りはまさしく小川洋子ワールド。
    説明がないまま物語が始まり、終わった次のページでモチーフが明かされる。中には予想だにしなかったモチーフもあって、その鮮やかな種明かしに驚く。
    「えっそれがモチーフだったの?」というくらい、本当にひっそりと現れているのに、種明かしされた瞬間それが主役に思えてくるから不思議だ。

    ある場所や想いに囚われ、そこから逃れられない人たち。その渦の中にいると、どうして自分はそこから逃れられないのだろう、と考えたりはしないのかも知れない。無意識の執着に突き動かされる登場人物たちを見ていると、どことなく甘く、そして息苦しい気分になる。
    何かに囚われそこから逃れられないと自己暗示をかけることは、どんな人生を歩む人にも少なからずあるのかもしれない。だからこそ読んでいて息苦しくなる。

    ひっそりと静かに、何かに執着しながら生きる人たち。抜け出したいけどどこにも行けない彼らは儚く美しく、タイトル通り、どこか見知らぬ土地に不時着した
    流星たちを思わせる。
    時々表れる残酷さがまた、深く刺さるように印象に残る。

    余談としては、1つ物語を読み終えた後、ついついその人物などを検索してしまった。ひっそりと一部に有名な人たちのことを知れて面白かった。

  • 不思議な人々の短編集。
    各短編の最後に物語のヒントとなった人物などのエピソードが書いてある。
    現実にこんな人々がいたということにびっくり。
    また、そういう人々を発掘してきた小川さんはすごいと思います。そして、そのエピソードにしっくりした話を綴ることができるのは、小川さんならではなのでしょう。
    不思議な気分になれること請け合いです。

  • なんかすべての話がちょっと不思議な感じ
    独自の世界を作っているというか

  • 小川さんはどうしてこう隙間にいる人々を見つけるのが上手いのか。
    誘拐の記憶を持ち運ぶ女性、散歩同盟、空港の片隅でひっそりと行われるカタツムリ競争、手紙をさりげなく置き去る実験、葬儀のお見送り幼児…。
    なかなか思いつかない仕事、思いつかない生活、思いつかないキャラクター。
    密やかに慎ましく整然と、しかしそれが時に猥雑で残酷に変化し、でも美しく。
    今回は実在の人物や実際に起きた出来事などをモチーフに作られた物語だが、この広い世界にはなんと小川さんにお誂えの人々がいることかとそのことに驚く。
    そしてエリザベス・テーラーやパトリシア・ハイスミスなどの有名人たちの逸話すら小川さんの手に掛かれば、小川さんの物語の巧妙なスパイスになる。

  • 不思議な雰囲気漂う、10の短編小説集。
    第6話手違い、第7話肉詰めピーマンとマットレス、第10話十三人きょうだいの甘酸っぱいような、ほろ苦いような短編が個人的には好き。

  • いつもの小川洋子の不思議ワールドがさらに加速。イマジナリーで狂気に満ちている短編→その種となった現実の人物のエピソード、というセットになっているのだが、そのエピソードには驚かされるものが多い。カタツムリの輸送は想像を絶する。
    第九話『さあ、いい子だ、おいで』は、鳥飼育経験者には身を抉られるような感覚。

  • 請求記号:913.6/Oga
    資料ID:50086063
    配架場所:図書館1階東館 め・く~る

  • 実在した人をモチーフにした短編10編。普通なら物語の主役にはならないような人が、小川さんの物語では主役になれる。道端に落ちている石を拾いあげて、その石が語る物語に耳をすませるかのように、ひっそりと物語は進んでいく。でも、静かなだけではなく、中には異常な、狂ったような人たちも登場する。彼らは皆、地球という星に不時着してしまった流星のような存在なのかもしれない。挿絵も物語の雰囲気にぴったり。装画はMARUUさん。

  • 小川洋子さんの短編は怖い。

    ほかの作家が書いた、何重にも伏線を張り巡らせたミステリーや、
    異形が蠢き這い回るホラーのような、何百ページに亘る長編小説よりも、
    小川洋子さんの、この僅か20ページほどの短編の方が何百倍も怖ろしい。

    静かに始まった日常が、もうすぐに終ってしまうという予感が、最初の1行目から纏わりついてくる。
    ほんの短い物語であるからこそ、これがどんなふうに終わってしまうのか、この世界がどんなに冷酷に、どれほど呆気なく壊されてしまうのかという不安が、いつもそこに見えている。

    それでもページを捲らずには居られなくて、また始まりが静かで美しければそうであるほど、より終わりが恐ろしくなるのは、
    まるで私たちのありふれた日常そのものとよく似ている気がする。

  • 小川洋子『不時着する流星たち』角川書店。

    同じようなテイストの10編の物語から成る短編集。よくぞ、これだけ奇妙な物語ばかりを紡ぎ出したものだと感心する。

    そもそも、タイトルの『不時着する流星たち』からして非常に奇妙だ。通常、‘’不時着‘’という言葉は航空機にしか使わないし、‘’流星たち‘’と敢えて‘’たち‘’を付けているからには流星を擬人化しているのだろう。つまりは、流星というのが航空機でも人でもあるという有り得ない状態が表現されていることになる。全くもって奇妙なタイトルだ。

    この奇妙なタイトルが象徴しているかのように、ヘンリー・ダーガー、ローベルト・ヴァルザー、パトリシア・ハイスミスといった作家や社会心理学者のスタンレー・ミルグラム、ピアニストのグレン・グールドなどに着想を得たと思われる10編の奇妙な物語。いずれも決して後味の良いものではなく、心の中に小石を置かれるかのような違和感が残る寓話的な、或いは哲学的な物語ばかり。

    第一話『誘拐の女王』、第二話『散歩同盟会長への手紙』、第三話『カタツムリの結婚式』、第四話『臨時実験補助員』、第五話『測量』、第六話『手違い』、第七話『肉詰めピーマンとマットレス』、第八話『若草クラブ』、第九話『さあ、いい子だ、おいで』、第十話『十三人きょうだい』を収録。

  • +++
    たくらみに満ちた豊穣な世界文学の誕生!
    盲目の祖父は、家中を歩いて考えつく限りの点と点を結び、その間の距離を測っては僕に記録させた。足音と歩数のつぶやきが一つに溶け合い、音楽のようになって耳に届いてくる。それはどこか果てしもない遠くから響いてくるかのようなひたむきな響きがあった――グレン・グールドにインスパイアされた短篇をはじめ、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー、ローベルト・ヴァルザー等、かつて確かにこの世にあった人や事に端を発し、その記憶、手触り、痕跡を珠玉の物語に結晶化させた全十篇。硬質でフェティッシュな筆致で現実と虚構のあわいを描き、静かな人生に突然訪れる破調の予感を見事にとらえた、物語の名手のかなでる10の変奏曲。
    +++

    さまざまな場所のさまざまな時間を束の間旅する心地に浸れる物語たちである。ひとつの物語が終わる度に、物語が生まれるのに影響を与えた人物が紹介されているのだが、その影響の受け加減がまた絶妙で、思わずうなる。物語のエッセンスが胸に沁みこんでくるような一冊である。

  • 10話の短編集。『散歩同盟会長への手紙』がいちばんすき。

  • 静かで狂気をはらんだような不思議な世界に入りこみます。
    臨時実験補助員、肉詰めピーマンとマットレス、十三人きょうだい、が余韻から抜け出せません。

  • ちょっとしたヒントをもとに、様々な物語を紡ぎ出す。作者の才能がすばらしい。その物語は独特の世界で、不思議な気分にさせてくれる。

  • 2016年「本の旅人」に掲載された10短編

    次のものにインスパイアされて書かれた短編らしい。
    3人の世に知られない外国の作家
    放置手紙調査法
    ピアニストのグレングールド
    埋もれた写真家
    バレーボールのオリンピック米国代表
    女優エリザベス・テイラー
    ギネス認定の世界最長ホットドッグ
    牧野富太郎が妻の名をつけた笹の新種
    ふたつ目までは直接的に繋がるが、グレングールド以降はどこからその話になるの???という感じ。

    共通するのは、無感動の穏やかな不気味さ。

  • 誘拐の女王…精神を病んだ姉を突き放すことはなく、優しい憐れみに包み込んでいた。
    散歩同盟会長への手紙…どこかが少しズレている。
    カタツムリの結婚式…着眼点があまりにミクロで遠近感が狂う。
    臨時実験補助員…評価はこの作品。噴出する母乳が目に浮かびなかなか消えてくれず大変だった。
    測量…測れば測るほど寂寥感が増す。
    手違い…靄のかかった記憶を手繰り寄せると湖面が現れた。
    肉詰めピーマンとマットレス…異国で我が子が立派に成長した姿を見て頼もしい反面どこか寂しさもある。
    若草クラブ…気の強そうなのに囲まながら必死にメルヘンを守る。
    さあ、いい子だ、おいで…小鳥が気の毒で溜息が出た。
    十三人きょうだい…おじさんの肩身の狭い気持ちに触れてはならない。

  • 面白かった。
    アジールを描いた作品が多かった気がする。

    第九話の「さあ、いい子だ、おいで」がお気に入り。

  • 小川洋子さん独特の“ひっそりとした”空気がある短篇集。

    十人の実在の人物にまつわる(インスピレーションをうけて(?)から、そこから紡ぐ短篇。

    「測量」「手違い」「十三人きょうだい」が、特に好き。

    何とも言えない距離感、空気感。

    挿絵もよい。

  • 何に繋がるかワクワク。

  • 【収録作品】第一話 誘拐の女王/第二話 散歩同盟会長への手紙/第三話 カタツムリの結婚式/第四話 臨時実験補助員/第五話 測量/第六話 手違い/第七話 肉詰めピーマンとマットレス/第八話 若草クラブ/第九話 さあ、いい子だ、おいで/第十話 十三人きょうだい

  • ヘンリー・ダーガー、グレン・グールド、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー…世界のはしっこでそっと異彩を放つ人々をモチーフに、その記憶、手触り、痕跡を結晶化した珠玉の十篇。

  • 私のようなろくでなしには、高尚過ぎて読むのが辛いという気分になった。隙がない。ラジオの口調より、実は若いんだ、とプロフィールをみて思う。失礼なことに。

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