やみ窓

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041050774

作品紹介・あらすじ

2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターで働く シフト制で働くフリーターだ。義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。柚子が味わった地獄は、別の形となって続いていた。それは何の前触れもなく突然やってくる異界のものたちとの闇の取引だ。いつ蹂躙されるともしれない危険と隣り合わせだが、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子なのであった……。(「やみ窓」)
 月蝕の夜、「かみさん……」土の匂いのする風が吹き、野分の後のように割れた叢に一人の娘が立っていた。訛りがきつく何をしゃべっているか聞き取れないが、柚子を祈り、崇めていることが分かった。ある夜、娘は手織りの素朴な反物を持ってきた。その反物はネットオークションで高額な値が付き……。そんなとき団地で出会った老婦人の千代は、ネットオークションで売り出した布と同じ柄の着物を持っていた のだ。その織物にはある呪われた伝説があった……。(「やみ織」)
 ほか、亡き夫の死因が徐々に明らかにされ、夢と現の境界があいまいになっていく眩暈を描いた「やみ児」、そして連作中、唯一異界の者の視点で描いた「祠の灯り」でついに物語は大団円に。新人とは思えない筆致で細部まで幻想と現実のあわいを描き、地獄という恐怖と快楽に迫った傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 気持ち悪い書き方、上手。
    最後まで面白かった。
    ファンタジーなのにリアリティ。
    異界なのか過去なのか、いつか山姥になるのかなぁ。

  • 未亡人の部屋には異界に続く窓がある。ペットボトルと物々交換,法も秩序もない闇窓の取引。平太の最後にとった行動に愛があり,救いを感じる。柚子には山姥伝説を変えて欲しい。

  • 思ってた怖さと違うけど
    不気味でなかなか無い小説内容でした。

    個人的にはちょっと読みづらい文面でしたが
    飽きずに読めました

  • 大好き。 幻想文学。
    湿った濃い闇の中で、細く繰り広げられる密かな遣り取り。
    繋がる場と時は違う。
    神と知るかモノノ怪と知るか。
    ヒトの欲はケモノ。 細く白い腕の力弱さとヘイタの恋。 山姥となるは彼女の内の漆黒の闇の中で。

  • 「幽」文学賞短篇部門大賞受賞作品。一人でひっそりと暮らす女性が、夜の窓辺で行う取引。日常と異界とのあわいの怪異を描いた、緩やかな不安と少しの穏やかさを感じさせられる作品です。
    窓の外の異界からやってくる者たちに対する恐怖、というか警戒心にぴりぴりさせられる一方で、現実世界よりもむしろそちらの交流に寄りかかってしまう柚子の心情がわからないでもない、かも。もちろんそちらの収入の方が重要というのもあるけれど。勝手に恩恵だの祟りだのを与えられると思い込み、神として崇めたり物の怪として恐れたり、そんな者たちにとって自分の存在が良くも悪くも「特別」なのだということがある意味魅力的だったのではないのかな、などと思える部分があったり。その一方で自分がなにものなのかがわからない曖昧さもまた、心地よいことのような気もします。
    現実に辟易していた彼女が魅入られた異界は、決して恐ろしいだけのものではなかったのだなあ、と心底思ったのは最終話の「祠の灯」。どちらにとっても安らぎであった繋がりが、実に優しく印象的でした。

  • フォローしている方の本棚にあって、気になったので借りてみました。
    面白かったです!
    一気に読んでしまいました。短編連作なんですが
    続編が読みたいほどのお気に入りです。

    夏休み、バタバタしている最中にサッと読んだきりなので
    (あっという間に貸し出し期限になってしまった。(;´▽`A``
    9月に入って落ち着いたら、また図書館で借りてきて読みたいです。

    作家読みしてみたい、そんな作風でした。

  • 結婚後数年で夫と死別し、寂れた団地で暮らす女性が、窓を通して異界とつながる連作短編集。

    団地の窓が時おり異界に通じるという怪談的な怖さのなかにも、ペットボトルと物々交換するなどやけにリアルな部分もあり、そのちぐはぐさに独特の浮遊感のある表題作はよかった。その後は、嬰児の遺体などグロテスクなものが加わって、生理的に受け付けない。
    暑くなってきたので涼しげなものをと思い図書館で借りてみたが、擬音の多用や直接的な気味の悪いものを突きつけられるより、雰囲気で怖がらせてくれる作品のほうが好き。

  • 2年前に結婚し、夫と死別した柚子。
    義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒し
    どこまでも追いかけてくる。
    引っ越した古いくたびれた団地の一室の窓は
    深い闇へと繋がっていた。
    窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの
    来訪を待ちわびる夜は続く…

    闇のねっとりとした感じと危うさ
    そして現実世界のざらつきと寂しさが漂う
    良い雰囲気。ホラーというほど怖くなく、
    怪談と言うのも少し違う…幻想的な物語。
    柚子の闇の世界への憧憬、
    柚子の闇そのものが話が進むごとに
    深まっていってぞわっとしました。
    最後の章は「闇」から見た「かみさん」の姿が見え
    「へいた」との関係がせつないです。

  • はい、面白い!

    腰高窓の網戸を叩く音がすれば、そこには畏敬の念を抱く異世界の住人がこちらを覗いているかもしれない。そしてその者たちとの闇取引にハマってしまう、現実世界を諦観し憂いを纏った柚子。この発想と雰囲気が良い。

    飲み終わったら結構かさばるゴミになってしまうペットボトル。確かに昔にあれば重宝されるだろう。映画「コイサンマン」を思い出した。

    今回で最後のとなった第10回『幽』文学賞、短編部門大賞受賞作を単行本化した本書。先に『人喰観音』で蠱惑的な魅力にハマってしまっていた篠たまきさん著。新作お待ちしてます!

  • 古く、くたびれた団地に隠れるように一人住む30代なかばの女性柚子。 
    彼女の部屋の窓は、夜な夜な異界との通り道となる。 
    異界の者との夜の取引が彼女の生業となっていく。 
    そこには、異界のものと柚子の悲しい物語があった。 
    4編の短編集。 静かな悲しい物語。 堪能しました。 

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著者プロフィール

しの・たまき●秋田県出身。東京都在住。ホラー作家、ライター。第10回「幽」文学賞短篇部門にて「やみ窓」で大賞受賞、デビュー。著書に『人喰観音』『氷室の華』『月の淀む処』などがある。

「2022年 『やみ窓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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