少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041051863

作品紹介・あらすじ

20歳にして中堅私大1年の十倉和成。下宿の天袋からセーラー服姿の絶滅危惧種的大和撫子・さちがはいおりてきた日から彼の停滞しきった生活は急転する! 映画と少女と青春と。熱狂と暴走の新型ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 初読みの作家さん、書店で平積みされてるのに惹かれ購入、ジャケットも好み。
    この一肇(ニノマエハジメ)氏、ラノベ出身で『魔法少女まどか☆マギカ』のノベライズを手掛けているとのこと。

    まず文体と主要キャラ造詣、これには大きな既視感がある。ジャケットからも想像に容易いが「夜は短し恋せよ乙女」を連想せずにはいられない。今時の若者が決して使わないバンカラ言葉、ヒロインの容姿に言葉遣い、貧乏苦学生の暮らしetc…パクリ感は否めないものの、そこに「映画」に魅入られた人々がミックスされる。

    「映画」にかかわる作品として重い浮かぶのは「探偵映画」我孫子武丸著、海外版として「フリッカー、あるいは映画の魔」セオドア・ローザック著などを思い出す。主人公の秘匿されたる停滞の原因が、「映画」に魅入られ自死を遂げた親友の「死」の真相究明というミステリ的構造を謳っており、中盤までは延々と繰り返される苦学生バンカラストーリーに、どうやって解決(オチ)をつけるのか、半ば作品としての成立に疑いを持ちつつも我慢しながら読んだ。

    しかしながら親友の未完の短篇映画の最後のカットを撮りきる件にくると、スピード、サスペンス、キャラ立ち、全て停滞を感じていたものが急激に輝き出して、一気に解決へとなだれ込んだ。

    正直、いくつかの仕掛けは仕込まれていて、それは今さらの手法ではあるが、自分は気付けなかったし見事な着地、解決と評価した。時代を築いた一大コンテンツ「まどマギ」のノベライズを手掛けただけのことはあると納得した。(まどマギもミステリ的どんでん返しに富むストーリー構成であることは周知の事実でしょう)

    ただ残念なのは最後の最後、ヒロイン「さち」の在り様をファンタジー然として、無理やりなハッピーエンドで締めてしまったことである。ハッピーエンドは嫌いでないが、もう一捻りが欲しかったと思う。

    まぁ個人的趣味をあるが、そこそこ楽しめる作品でありましょう。

  • 平積みで面白そうだったので購入しましたが、当たりでした。

  • なんというか密度の濃い小説だった。すごく集中力を要求された。くだらない映画を量産する日本映画の監督たちにぜひ読んで欲しい作品だが、こんな暑苦しい大学生は今時いるんだろうか。

  • よく一冊にまとめられたな。森見登美彦ワールドのソフト版。

  • 登場人物たちが個性的すぎて違和感を覚えつつも、男だらけの四畳半的物語を目指してるんだよな、と割りきって口の悪さやむさ苦しさを気にしないようにして読んだ。
    主人公が亡くなった友人の未完成の映画作品の続きを撮るに至るまでがちょっとうだうだ長く感じるけど、最後の怒濤の暴妄は勢いがあって楽しかったし、個性的すぎて受け入れがたかった登場人物たちが人間味を帯びたし、主人公へ力を貸す姿にいっきに嫌味がなくなり、終わりはすっきり良かったなって思えた。

  • なんてロマンチックな青春小説!疾走感がきもちよかった。あと、ハッピーエンドで嬉かったー!!!

  • 一肇(にのまえはじめ)というペンネーム自体に変な方向にこだわっている特徴が現れている。「一」を「にのまえ」と読んでいるが、「一」を「はじめ」とも読む読み方もあるのである。だとすれば、この読み方で「一一」と書いても構わないわけだ。また、2014年の刊行らしいが、偶然にもイニャリトゥ監督の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が米国公開された年である。書名も内容も実は、既に話題となっていたその作品へのオマージュとも見れなくはないのである。要は、この新人作家の性癖は、「変な方向に拘る」というものだということがわかる。

    イニャリトゥ監督は「BIUTIFUL ビューティフル」も「レヴェナント蘇えりし者」も、その年のマイベスト3に入れるほど私は大好きだった監督(私は年間100作以上は観る映画ファンである)だけど、アカデミー賞三冠に輝いた「バードマン」だけは頂けなかった。表現者の苦しみを描こうとしたこの作品、しかしその肝心の苦しみの中味は、台詞的にも映像的にも、私にはほとんど伝わらなかった。むしろ、これはあらすじが先にあって、それに合わせていろんな凝りに凝った映像と台詞を「創った」気がした。

    という、全く同じ感想を、この一肇氏の作品にも与えたい。

    それなのに、なぜこの本を手にとって最後まで読み通したのか?それは一つは編集者の文庫本の裏表紙にある紹介文「映画と、少女と、青春と。」という文句に惹かれたから。三つとも私の好きな言葉なのだ。それにもうひとつ、文庫の帯の「煽り」にやられた。そういう意味では、小説を創るのは作家ではあるが、本を創るのは編集者であることがわかる。実は、マアこれも 監督と制作の関係であり、映画的世界ではある。

    あ、ちなみに「バードマン」のエマ・ストーンと「少女キネマ」の黒坂さちは良かった。

    2017年3月14日読了

  • ボロアパートに住む二浪の青年が5年前から住んでいたという少女と邂逅する事で亡き友人の遺した映画に突き動かされるお話。
    浮世離れしたような人や世俗的な人、映画に情熱を燃やす人など登場人物が特徴的。話も意外性があって良かった。
    戦前の日本から転生してきたみたいな亜門がインパクトがあったと思う。

  • 物凄くパワーのある作品、、、
    特に後半は文章に込められた熱量が爆発してた、、、
    面白かった。

  • 友の遺した未完の映画、天井裏に住まう少女、映画に取り憑かれたものたち。
    主人公の迷走とともに物語は蛇行するが、はっきりとした目的が指し示されてからは一気呵成の盛り上がり。
    ミステリ要素も楽しい暑苦しくも爽やかな青春の物語。

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著者プロフィール

小説家。「ニトロプラス」所属。著作に『幽式』、『フェノメノ』シリーズ、『少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語』、『黙視論』、『謎の館へようこそ 白』(共著)などがある。

「2018年 『僕だけがいない街 Another Record』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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