惑星カロン (角川文庫)

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著者 : 初野晴
  • KADOKAWA (2017年1月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041051993

惑星カロン (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「ハルチカ」シリーズ。
    文化祭が終わると、片桐先輩が引退し、吹奏楽部は新体制になります。
    芹澤さんはアドバイザーとして入部、山辺さんもコーチをしてくれて、来年に向けてのレベルアップに励んでいます。

    ◆チェリーニの祝宴
    チカはフルートの腕を上げる為、「高価なフルートが欲しい」と思っていた。
    しかし、吹奏楽部のメンバーからは「買い換えるのは勿体ない、練習練習」と口を揃えて言われる。
    母親に至っては、インターネットの相談室に書き込みをしていた。

    チカは値段が高いフルートの方が良い音を出すことを知ってしまった。
    諦めきれないチカは、市内の楽器店でフルートを試し吹きして回る。

    部活が終わった後、無理やりついて来るハルタと一緒に楽器店に向かった。
    そこは中古品も扱っていて、行き場を失ったチカを歓迎して何度も試し吹きをさせてくれた。

    チカは、頭部管や主管に綺麗な模様が入った総銀製のフルートを見つける。
    ドイツ製で、国内には二本しか入荷されていないそうだ。

    フルートの見た目に惚れて、実際に吹いてみたら「これしかない」と思ってしまう。
    しかし、店長は「呪われたフルートだ」と言い出した。

    これまで、問題のフルートは何度も買い取られては、店に戻ってきていた。
    フルートを手に入れた人間には良くないことが起きてしまう。
    但し、呪いのスケールは小さいので、ハルタは話を聞いて笑い転げた末に、呪いを信じていなかった。

    大抵、呪いの楽器はヴァイオリンなどの弦楽器である。
    このことをハルタが指摘すると、店長は「このフルートには弦がある」と言った。

    フルートには仕掛けがあって、それは持ち主にならないと分からないらしい。
    チカの「フルートを手に入れたい」という熱意に負けて、店長は無料でフルートを貸してくれる。

    フルートを借りて以来、チカは不幸に見舞われていた。
    とはいえ、ショボイ内容なのでハルタに「いつも通り」と言われる。
    チカは部活の後も、母親の車を防音室代わりにして、二時間もフルートを吹いていた。

    草壁は、総銀製のフルートに興味を抱く。
    通常、総銀の楽器には彫刻しないらしい。

    チカはフルートを吹いている時、持ち主にしか見えない「弦」を見たことがあった。
    見える時と見えない時があって、天体記号が出てくるようだ。

    草壁が山辺に頼んで、ドイツのメーカーに問い合わせて貰っていた。
    フルートの件で分かったことがあるので、チカ・ハルタ・草壁は上条家に向かう。
    山辺は上条家の長女・南風と酒盛りをしていたからだ。

    フルートの模様はカジノのカーペットをモチーフにしていて、吹いている人間を興奮状態にする効果があった。
    フルートの地金にカーペットの模様と天体記号を彫り、その上に銀メッキをすることで、天体記号だけが見えなくなるようにしていた。
    メッキは使い込むうちに剥がれ、天体記号がうっすらと見えるようになったらしい。
    天体記号は、フルートを使い込むくらいに練習した人間に必要な「祈り」を意味していた。

    ここで終われば美しかったのですが、「一番呪われていたのは楽器店の店長だった」というオチになります。
    一つの楽器が何度も店に戻ってきたら、店主ならば「呪われている」と思いますね。

    チカちゃんは、家族会議で総銀製のフルートを買うことは却下されてしまいます。
    もう一本のフルートの持ち主は、後の話に登場します。

    冒頭から笑わせて貰いました。
    チカちゃんのお母さんも面白い人ですね。
    娘の相談を知恵袋に書き込みをしたりメールとのやり取りで「プリントゴッコがどうの」と書いたり。

    「何故、偽札のスカシを武田鉄矢なの?」と思っていましたが、朝ドラで福沢諭吉を演じていたからですかね。
    河村隆一は未だに謎ですが。

    ハルタと楽器店の店長さんとのコソコソ話や上条家の三姉妹プラス山辺コーチの「バッカス会」も面白かったです。
    成島さんは、話が進むにつれて性格が丸くなっています。
    初登場時はツンしかなかったのに、呪いのフルートの話を聞いて大笑いするくらいです。

    ハルタの草壁先生ラブ振りは平常運転です。
    草壁先生の前では乙女のように健気ですが、チカちゃんの抜け駆けは決して許しません。
    あんなに気持ちがダダ漏れなのに、よくチカちゃん以外にバレていないよね。

    ハルタの女嫌いは、年々酷さが増している気がします。
    強烈なお姉さん達のせいですが、「女の裸なんて本当に気持ち悪い」と問題発言をしています。

    トンチキな連中が多い中、草壁先生は唯一のマトモ人間です。
    顔立ちは良いらしいし、指揮者としては有能だし、人間性も良さそうで、今のところ悪い点が見当たりません。

    子猫のエピソードが気になって、「退出ゲーム」を見返しました。
    「へえ。うちの猫も食べるかな」なんてセリフがあったことさえ忘れていたわ。

    ◆ヴァルプルギスの夜
    下校時、チカは藤が咲高校の吹奏楽部部長・岩崎と会う。
    岩崎は山辺がチカ達のコーチをしていていることを知っていて、相談したいことがあるようだ。
    解いて欲しい音楽暗号があるらしく、「ヴァルプルギスの夜」というタイトルがついていた。

    山辺に話すと、何故、顧問の堺に相談しないのかを気にしていた。
    岩崎は「先生は忙しいから」と言っていたが、普門館常連校ならば相談しないのは有り得ないし、昨日藤崎が会った時は「部活は休み」と言っていた。
    話を耳に挟んだハルタも「藤が咲高のメンバーも解けなかったならば、簡単な暗号ではないのだろうと言う。

    ハルタは「密室殺ハム事件」を解明中らしい。
    知り合いのオバさんがハムスターの子供を貰い、両手に包んで持ち帰ったそうだ。

    途中、「ゴーストタウン公園」と呼ばれている「ボール遊び禁止」などの看板が沢山ある公園を横切った。
    ハムスターが突然暴れ出したので、オバさんは驚いて転んだ結果、高く放り出されて死んでしまった。

    音楽暗号を解くことを承諾した山辺の付き添いで、チカと芹澤も同行する。
    岩崎には気に懸けている後輩の部員がいて、夏のコンクールが終わってから学校や部活に顔を出さなくなっていた。
    後輩は「藤が咲高校のOBだ」と名乗る人間から送られてくる音楽暗号「ヴァルプルギスの夜」に夢中になっているらしい。

    「ヴァルプルギスの夜」は全部で九問あって、全てを解くと賞金が貰えるとのこと。
    吹奏楽部、合唱部、軽音楽部が協力しないと解けないらしい。
    音大の六回生と部活の問題生徒という組み合わせといい、全ての問題を解いた後輩が閉じこもってしまったことといい、嫌な感じがする。

    自称OBが送ってくる音楽ファイルを聞いて、メールに書いた答えがくれば次の問題がくる。
    山辺&芹澤は七問目まで順調に正解していたが、堺先生も解けなかった八問目に苦戦する。
    チカがヘルプで呼んだハルタも山辺達が出した答えと同じだったが、ここで解決したばかりの「密室殺ハム事件」のカラクリを教えてくる。

    ハムスターの子供が暴れた原因は、モスキート音が聞こえたから。
    モスキート音は小動物や子供にしか聞こえないらしいが、耳年齢が進行すると十代でも聞こえなくなるようだ。
    唯一、モスキート音が聞こえたチカが活躍(?)し、一歩前進する。

    「吹奏楽部、合唱部、軽音楽部が協力しないと解けない」というのは、以下のことを意味していた。
    吹奏楽部は、クラシックの知識がある。
    合唱部は耳の老化が比較的遅いので、モスキート音が聞き分けられる。
    軽音部は「ブラッシング」を知っているので、モスキート音を「X」に変換することが出来る。

    八問目を正解し、最後の問題が来た。
    山辺は八問目の答えが魔女を表す「HEXE」だったことと、「ヴァルプルギスの夜」という言葉から自称OBの意図に気付く。

    十代で頭が切れる奴に、あるものの取引をしようと企んでいるようだ。
    九問目の答えは「HASHISH」で大麻だった。

    岩崎の後輩は、いけない一線の前で踏み止まっていたらしい。
    山辺は警察の知り合いに相談してくれるそうだ。

    きな臭い展開とオチになってしまいましたが、クスリとする箇所が多々ありました。
    アメ民のコ達と成島さんのやり取りにホッコリした後の山辺コーチのスパルタ指導といい、殆どの部員がヘロヘロなのにピンシャンしているハルチカと芹澤さんといい。
    芹澤さんのチカちゃんに対するデレは加速度していますね。
    「放課後にマックでポテトを摘まみたい」なんて可愛いことを言う一方で、男共に対しては暴力ヒロインと化しています。

    チカちゃんの頑丈さはかなりのもので、この話では二度も人と衝突し、吹奏楽部に入ってからは練習漬けの日々を送っているのにモスキート音が聞き分けられています。
    「わたしを励ましてくれる言葉だけを覚えたオウムと一緒に無人島へ行きたい」と言う一方で前向きな態度を見せてくれるので、周りのモチベーションも上がっています。
    まさか、山辺コーチの「いつか車に轢かれるわよ」が前フリだったとは。

    ◆理由ありの旧校舎
    チカが朝練をする為に早く登校すると、「青少年サファリパーク」と呼ばれている旧校舎で事件があったそうだ。
    正面玄関や文化部の部室、廊下の窓が全開になっていたが、盗まれた物はないらしい。

    ハルチカは日野原に呼び出され、旧校舎の事件を解決するように頼まれる。
    愉快犯の仕業に思えたが、日野原は「大きな代償を負った」と言う。

    「今回の事件は前科のある生物部が犯人ではないか」と先生は疑っていたが、女子部員達は旧校舎の掃除をずっと引き受けていたし、修繕もしていた。
    ハルチカや日野原は、「生物部は犯人ではない」と思っている。

    「ブラックリスト十傑」の連中は取られては困る備品を部室に置いていたので、鍵は特殊なものに変えていた。
    以上のことから、事情を知らない先生方や鍵開けの技術がない生物部にはピッキングが不可能である。

    事件があった前日、旧校舎で文化部合同の引退式があった。
    引退式が終了し、見回りの先生が正面玄関や窓の鍵が掛かっているかを外から確認していたが、異常はなかった。

    ただ、近所に住む老人が「夜の九時頃に旧校舎の窓は全て開いていた」と証言する。
    犯行は、見回りの後から夜九時までの間にされた可能性が高い。

    「青少年サファリパーク」の連中は結束が固く、アメ民の清春にメールで尋ねても「箝口令がしかれているから」と返されてしまった。
    事件を解く鍵は、引退式の目玉になっていた海外旅行のお土産だった。

    このお話には、日野原元生徒会長や「ブラックリスト十傑」の名越や麻生さんが登場しています。
    私個人としては、日野原さんとチカちゃんというカップリングはアリだと思っていますが。

    引退式でお披露目されたのは、世界一臭いことで有名な缶詰「シュールストレミング」でした。
    本当は海岸で開ける予定でしたが、面倒くさがって会場で開けてしまい、あまりの臭さに会場はパニックになります。

    匂いが外に漏れては、新聞に載るような大問題になります。
    ボロい旧校舎は生物部が修繕していたので、密閉状態にしたら匂いは遮断されました。
    匂いが薄まるように校舎内に風を送ったり缶詰から零れたものを掃除したりして、先生方や運動部の生徒達がいなくなったのを見計らって、全ての窓や正面玄関を開けて帰ったようです。

    何故、生物部の女のコ達が大泣きしたのか。
    何故、日野原さんが今回の事件の解明に積極的に取り組んでいたのか。

    旧校舎の屋根裏にオオコウモリが住み着いていました。
    オオコウモリは絶滅の恐れがあって、本来は生息を報告する義務があります。
    しかし、研究対象にされるか、標本や剥製にされるかのいずれかになるので、可哀想だと思った生物部は自分達だけで世話をしようと決めます。

    他の文化部に内緒にしていたのは、「コウモリは気持ち悪い」という偏見があったからでした。
    マメな掃除や旧校舎の修繕は、オオコウモリを世話する為でした。

    オオコウモリは嗅覚が鋭く、缶詰騒ぎで旧校舎の屋根裏から逃げてしまいました。
    世話をしていたオオコウモリと二度と会えなくなったから、生物部のコ達は泣いたようです。

    日野原さんは生物部がオオコウモリを匿っていたことは知っていて、自ら協力を申し出ていました。
    「生徒の味方」と言っていますが、もしコウモリが亜種ならば「ヒノハラオオコウモリ」と名前をつけて貰おうとしていたようです。
    生物部からは却下されたそうですが。

    責任を感じた名越と麻生さん達は、オオコウモリの捜索をして見つけてくれます。
    生物部のコ達は嘆願書を作って、先生に相談しに行きます。

    今回のお話では、予測変換が役に立っています。
    スマートフォンにしてからはメールを作ることよりも検索することが多くなってきたので、以前よりも日常会話では出ない単語がわんさか出てきそうです。
    チカちゃんや成島さんは、ハルタに告白してフラれた女のコ達を宥める爆弾処理班もしていたのね。

    日野原さんの話を聞きながらお昼ご飯を食べるハルチカのやり取りが面白かったです。
    ハルタはピンチになると、シーチキンがおかずになるのね。
    おかずを分けてあげるチカちゃんは、優しいというより犬か猫を世話しているみたいです。

    日野原さんはトップとしての素質があって優秀ですが、ハルチカに対しては「かまってちゃん」なところがあります。
    「俺と話せよ!」「お願い。来て。」という言葉のチョイスがおかしいです。
    日野原さんが卒業したら、誰が「ブラックリスト十傑」を管理するのかしら。

    ◆惑星カロン
    表題作。
    楽器店の店長の娘・あゆみ、IT講習会の講師役・斎木、チカちゃんの三つの視点で物語が進行します。
    「チェリーニの祝宴」や「ヴァルプルギスの夜」も関係していて、草壁先生の過去が少し明らかになります。

    「空想オルガン」に登場していたマンボウも出ています。
    以前は振り込め詐欺に絡んでいましたが、今回は斎木が勤めている会社に匿って貰っています。
    ちなみに、マンボウはチカママさんの知恵袋相談にハマっているそうです。

    斎木の会社の社長はヤクザですが、アコギな商売はしていません。
    娘さん達は一般の人と結婚し、孫の為にポケモンを集めているそうです。
    「千年ジュリエット」に登場していたキョウカちゃんとはポケモンでやり取りがあったそうで、彼女が亡くなった後に母親からお礼の手紙を貰って泣いたそうです。

    テスト前で部活が休みに入ったチカは、女子部員に「土曜日に街で買い物をしよう」と誘うがフラれてしまう。
    仕方なく一人で買い物に行くと、偶然、私服姿の草壁を目撃する。
    挨拶をしようとしたら、ハルタが現れて阻止された。
    ハルタは、草壁がどこに向かうのかを前以て知っていた。

    草壁はITの講習会に参加するようだが、ハルタは「胡散くさい」と気になっていた。
    スキルアップ講習会はビギナー向けのようでいて、「人工知能」や「データサイエンス」は高度なイメージがあるので矛盾している。
    ハルタは草壁が講習会を終えて出てくるまで待つことはしないで、チカの買い物に付き合ってくれた。

    ハルタの姉が行きつけのセレクトショップでチカが試着していると、女のコに見られている気がした。
    服を買う様子はなく、試着室の傍から離れないらしい。

    あゆみは中学三年生で、楽器店の店長曰く「プラモに嵌った娘」だった。
    県主催のアンサンブルコンテストに後輩と二人で出場するつもりである。
    あゆみが「惑星カロン」というフルート二重奏を演奏したいと思ったキッカケは、この曲で金賞を受賞した演奏のカセットテープを聞いたからだ。

    「惑星カロン」の楽譜を探すが、絶版になっていてあゆみは途方にくれていた。
    諦めかけた時、作曲者・新藤直太朗と同じ名字を持つ誠一のホームページを見つける。

    誠一は普門館常連校の吹奏楽部に所属していて、アンサンブルコンテストで金賞を取った時に演奏したのは「惑星カロン」だった。
    あゆみの推測通り、誠一は直太朗の息子だった。

    最後の更新が五年以上前だが、あゆみは掲示板に書き込みをする。
    誠一から返事があって、「何故、『惑星カロン』を演奏したいのか」と問われる。
    考えた末にあゆみが答えると、誠一は父親に許可を取ると約束してくれた上、楽譜や音源も公開してくれた。
    しかも、演奏や運指のコツを動画でアップするとも書いてくれる。

    誠一はあゆみに「意見が聞きたい」と書いてきた。
    ある町のセレクトショップで、AとAの友人Bが買い物をしていた。
    Bが試着室に入ってからいつまで経っても出てこないので、Aは店員に尋ねると「お客様はひとりで来店されました」と言われたようだ。
    あゆみはセレクトショップの場所に見当をつけて、試着室をジッと見ていたらしい。

    あゆみから「惑星カロン」のことや「セレクトショップ消失事件」を聞いたハルチカは、マンガ喫茶のインターネットが出来る個室に向かう。
    掲示板に書き込みをすると、誠一が返事をくれた。
    三人が相談して考えた答え「事件とは、AとBの通信もしくは回線が遮断されたことだ」を書き込むと、「興味深い回答だ」と返事が来る。

    あゆみが「今、誠一と会話をしているが、この場に本当の私はいない」「本当の言葉は誠一と会って口から出るものだ」と書き込む。
    誠一は「中学生の少女がデジタルツインの構造的な欠陥を見抜いた」を書き込んだ後、「自分は父親の直太朗だ」と名乗った。

    「セレクトショップ消失事件」は実際に起こっていたそうだ。
    実際のトリックは、試着室に隠し扉があってBが指示通りに隠れ、Aは騙されたらしい。
    後にネタバラシがされて、Aとセレクトショップで示談が成立したようだ。

    「セレクトショップ消失事件」の黒幕を直太朗は知っていたが、あゆみに話すことで「彼女が代わりに現場へ行くだろう」と見込んでいた。
    直太朗は、事件の動機を知っているらしい。

    あゆみは黒幕の顔を何度も見ていたので、「教えるから会って欲しい」と書き込む。
    直太朗は「黒幕を呼ぶから家に来て欲しい」と返事をしてきた。

    一方、講習会が終わった後、草壁は斎木に「デジタルツインについて詳しく話を伺いたい」と言う。
    デジタルツインとは、行動、思考、癖、声をコンピュータに模倣させて意思決定を行わせる技術である。
    メールやブログ、SNS、PCやスマホの履歴等からデータを集めて、基になっている人物の近付かせていた。

    斎木は「カロン」と名付けられたプログラムを草壁に紹介する。
    「カロン」は五年前に亡くなった男子学生の人格がコピーされていて、制作者は男子学生の父親で、斎木の元上司でもあった。
    文字を入力して問い掛けると、「カロン」は複雑な日本語に対応して答えることが可能である。

    デジタルツインの欠点は「歳を取らないこと」と斎木は言う。
    斎木と話をするうちに、草壁は「デジタルツインの致命的な欠陥は、人間は死んだら終わりということだ」と言った。

    本人と会って話すことと、離れた相手にメールを交わすこと。
    共に自分の気持ちを伝える手段だが、時間を置いて推敲するので言葉が違ってしまう。
    自分ではあるけど、自分ではない。
    草壁も、あゆみと同じことを考えていた。

    「セレクトショップ消失事件」は、斎木が実験を兼ねてしていたことだった。
    ブログ等を頻繁に更新している人物をリストアップして、人間が予期せぬ出来事に遭遇し、どのような情報発信をするのか解析しているらしい。

    草壁が講習会に参加したのは、進藤直太朗の住所を教えて貰い、謝る為だった。
    直太朗は、草壁が指揮をする予定だったが行方不明になったせいで迷惑を被ったメンバーの一人だった。
    ここで、直太朗からの電話が掛かってきて、時間を指定されて「家に来るように」と言われた。
    草壁やマンボウも一緒に向かう。

    直太朗氏の家に、チカちゃんサイドと草壁先生サイドが合流する形になります。
    あゆみちゃんは、ここで誠一が亡くなっていることを知ります。

    直太朗氏が「カロン」を作ったのは、誠一が最後に送信しようとしたメッセージは何だったのかを知りたかったからでした。
    誠一の携帯電話は、遺品として手元に残っています。
    壊れているので、予測変換して推測することは出来ません。

    「おとうさん、あ」の後に続くのは何か。
    あゆみは「ありがとうに決まっている」と答えます。

    直太朗氏は、あゆみちゃんにお詫びとしてフルートを渡します。
    国内に二本しかない筈の総銀製の模様入りフルートでした。
    あゆみちゃんは「自分で手に入れたいから、まだ持っていて欲しい」と答えます。

    「ゴーストタウン公園」に看板やモスキート音を流すスピーカーを設置していたのは直太朗氏でした。
    最後に、斎木やマンボウにこれらを外して欲しいと頼んでいます。

    今回の話は、あゆみちゃんにとって残酷な結末になってしまいました。
    好きになった相手が既に亡くなっているなんて、どんな悲恋よ。
    悲恋といえば、草壁先生も愛する人を亡くしているかもしれないんですよね。

    「花を供えに行こうか」と言った草壁先生の胸の中で泣くあゆみちゃんに、ハルチカは嫉妬しなかったのかとハラハラしました。
    ハルタはともかくチカちゃんは女のコに優しいので、「私も草壁先生の胸元で泣きたい!!!」なんて不謹慎なことは思わない筈。

    切ない展開になりましたが、所々ではクスリとするシーンもあります。
    チカちゃんは「ハルチカ」シリーズの癒しです。

    本当に車に轢かれそうになるとは思いませんでした。
    一度ならず二回も「これ何本に見える?」「ピース」というやり取りをしています。
    番町皿屋敷の話で「一枚足りない」に対して「皆でどんま~いって言えばいいじゃない」に大笑いしました。

    ハルタは、ちゃっかり私服姿の草壁先生を撮影しています。
    チカちゃんを「発情期のメス猫」扱いするのは酷いと思うわ。
    それでも、お買い物に付き合ってくれているので仲良しよね。

  • 長かった…。待ちに待った新刊。1巻目からおさらいするところから始めました。

    おさらいしながら思ったのは、巻を追うごとにどんどん読みたくなってくるということ。今回もまた面白さが増しています。

    解説にもあるように、ただただまっすぐ青春を追いかけていたチカが、終わりを見据えてきています。天真爛漫な彼女、でも苦味も知っているというか。そして、彼女よりももっと早くから終わりを見ているのがハルタでしょう。それを指摘してくれる友達がいること、そして、チカの姿から学ぶこと。
    一見、チカがハルタに頼っているようですが、ハルタもまたチカを頼りにしているのですね。ハルタだけでなく、吹奏楽部、生徒会、関わる全ての人が。芹澤さんの「私は自分の未来のことを考えないくらいのバカになりたい。そう決めた」の言葉がそれを表していると思います。

    さて、話は「ヴァルプルギスの夜」「惑星カロン」が好みです。特に表題作は、今後ますます現実味を帯びていくのだと思います。
    ところどころに流行りものに振り回される人、若い女性をイメージしているのでしょうか、その人達をけちょんけちょんにしているところがあります。初野さん、そういう人は苦手なのでしょうか。小気味いいです。

    マンボウ達がまた関わってくるとは思っていませんでしたが、さて、今後もつながりがあるのかしら?そして、草壁先生の恋人?とは?(ハルチカの二人は失恋かな…)次巻も楽しみです。

  • これがシリーズ最後かな?
    次の世代へ交代していくんやなって感じれたけど、惑星カロンは切ないね・・・
    残された方の気持ちも分かるけど・・・

  • ハルチカシリーズ第五作。再読。
    今回は呪いのフルート、怪しい謎が隠されていそうな音楽記号、密室ならぬ校舎全開事件、そして知る人ぞ知る楽曲『惑星カロン』を巡る様々な謎。
    前作で文化祭が終わり、いよいよハルチカも三年生に…と思いきや、まだまだ二年生の話は続く。
    次はアンサンブルコンテストに出場するらしいが、そちらはまだ練習中で終わっている。
    うーん、二年生だけでこんなに足踏みするとは思わなかった。まぁ、指導者が変わりました、実力派の部員が何人も入ってくれました、部員も増えました、高校から吹奏楽を始めたチカも実力つけました、普門館行けました、じゃ短絡的過ぎるから少しずつ過程を描きたいのは分かるけど。
    今回の収穫としては草壁先生の過去がまた一つ明らかになり、一度は逃げ出した過去と草壁先生自身が向き合おうとしている姿が見えたこと。
    だがそれは再び指揮者として戻る過程でもあるのでは(本人は否定しているが)とも思え、少し寂しくもなる。
    ハルチカたちに残された時間は少ない。それでも後継者たちは次々生まれるようだ。嬉しいような、それが今でないことが切ないような。
    次こそ三年生の話か…と期待していたら、最新作は番外編らしい。それはそれで楽しみだけど、そろそろ前に進んで欲しいな。
    読み終えるとやっぱり清水南高校は変人で良い人揃いだと分かる。
    前作から表紙デザインが変わったが、ますます残念な感じに。

  • ハルチカシリーズ第5弾
    4編からなる短編集
    過去シリーズを読んでるので手に取ってみた

    正直このシリーズ自体に少し飽きてきたのかもしれない
    学生物の推理小説として読めば別にいいんだろうが、普門館を目指す青春小説として読むと歩みが遅すぎて少しだれてきた

    ヒットしているシリーズものとして、出来る限り長く続けたい意向があるのかもしれないが、そろそろ話を纏めてもいいのでは

  • 惑星カロン
    巷に溢れかえっているコトバ。
    でも、バーチャルでなく、相対して発せられたコトバこそが、自分の気持ちなのだな、と再認識してしまう。
    感情で突っ走るチカちゃん、大好き❤

  • 感想は単行本版をご参照下さい。

  • 今回はミステリーよりも人間関係主体の物語の感じがしました。

    自身が主役でもいずれ次の世代にバトンを渡していく。
    そんな感じが続く作品でした。

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    喧噪の文化祭が終わり3年生が引退、残った1、2年生の新体制を迎えた清水南高校吹奏楽部。上級生となった元気少女の穂村チカと残念美少年の上条ハルタに、またまた新たな難題が?チカが試奏する“呪いのフルート”の正体、あやしい人物からメールで届く音楽暗号、旧校舎で起きた密室の“鍵全開事件”、そして神秘の楽曲「惑星カロン」と人間消失の謎…。笑い、せつなさ、謎もますます増量の青春ミステリ、第5弾!

    【キーワード】
    文庫・シリーズ・高校生・吹奏楽部


    ++++2

  • どちらかというと本書はミステリィよりも物語を進める方に力点が置かれている.つまり,次巻の発刊を期待できるということだ.

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喧噪の文化祭が終わり三年生が引退、残った一、二年生の新体制を迎えた清水南高校吹奏楽部。上級生となった元気少女の穂村チカと残念美少年の上条ハルタに、またまた新たな難題が? チカが試奏する“呪いのフルート”の正体、あやしい人物からメールで届く音楽暗号、旧校舎で起きた密室の“鍵全開事件”、そして神秘の楽曲「惑星カロン」と人間消失の謎……。笑い、せつなさ、謎もますます増量の青春ミステリ、第5弾!

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