ある日うっかりPTA

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041052570

作品紹介・あらすじ

金髪、ヒゲ、サングラスのフリーライターがひょんなことから、息子が通う公立小学校のPTA会長に就任!自分には無関係な存在として大した関わりも持ってこなかったPTA。三年の任期を経て今、感じることとは――。

PTA会長になるのは簡単だ。(中略)なぜならば公立小学校の場合、自分からPTA会長をやりますなんて言い出す人間はほぼ皆無だからである。PTA会長に大事な資質。それは、おっちょこちょいであることだ。はい、おっちょこちょいです。私、自分でも自分がおっちょこちょいだと思います。そうじゃなかったら、PTA会長なんてなるわけがないじゃないですか――。(本文より)

【目次】
(一)PTAなんて別世界の出来事と思ってた
(二)俺の金髪に触るなよ
(三)教育者なんてガラじゃない
(四)みんなでチームになりましょう
(五)がんばらない、をがんばろう
(六)うちのPTAだけ変じゃないですか?
(七)みなさんの力を借りたいんです
(八)未来の行事より今が大事さ
(九)PTA、辞めちゃだめなんですか?
(十)PTAはちゃんと卒業すべきものだ


「PTAの常識」は日本の常識じゃなかった!――白河桃子氏(ジャーナリスト)

おかしなことは、変えられる。いらないものは、やめられる。
変人PTA会長が、小さな革命を起こした!――荻上チキ氏(評論家)

感想・レビュー・書評

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  • 他人事ではないのだ。
    ひたひたと忍び寄る不安。
    できるだけ逃げの姿勢は取りたくないのだが、それだけはご勘弁なのがPTA会長。

    そんな立場をひょんなことから3年間も務めたという、書評七福神の一人、杉江さん。
    行きつけの図書館の特設コーナーに置かれていたのを目にし、自分の昨今のすう勢と、あの「杉江さん」という興味のベクトルが重なり、普段はあまり読まないようなルポ風のエッセイを読んでみた。

    少しずつシステムが違うような面もありつつ、恐ろしいほどに聞いたことのある、そして出くわしたことのあるPTAあるある。
    驚いたのは杉江さんの風体と、どちらかと言うとやんちゃな物言い(でもきちんと筋は通っている。ときどきそれは穿ち過ぎではと思うこともないではないが)。
    これまで読んだミステリ評論では、こんなお人だとは想像してもいなかった。

    そんな杉江さんの人柄が滲み出るような体験記。
    様々な難局に対して他のママ。パパ達とコミュニケーションを取り、独自の対策を打ち出し、改革しつつPTA活動に身を捧げた記録。

    いやー、やっぱできんと思った。
    自分は上の娘が小学校に入学して以来、PTA活動の中で力仕事が必要となる場面で支援をする、いわゆるおやじの会に在籍している。
    娘が6年のときに下の息子が入学して今2年生なので、かれこれ7年目だ。
    公立の学校なので、先生の入れ替わりもなかなか激しく、校長先生もすでに3人目。
    正直、資源回収や運動会などの恒例行事のポイントについては先生達よりも通じているのではと思ってしまうくらい。
    なので、貸せる力はいくらでも貸そうと思うのだけれど、こういった気の利いた立ち回りができるとは到底思えない。

    コロナ禍によりだいぶ活動制限がかかったのと、これを機にとスリム化された部分もあるとは思うけれど、まだまだ負担の多いPTA活動。
    ちょっと大変だけど根本的には楽しい、かつての部活動くらいのノリで携われたらいいのになぁと思う今日この頃。
    部活にはロビー活動や根回しなんてなかったからね(いや、もしかしてあったのかな?)。

  • 文芸評論などのフリーライターである筆者が、ある日、小学校のPTA会長に推薦される。PTA会長を3年勤め上げた体験記。

    タイトルのとおり、なんとなくなったPTA会長だが、かなりがっつりと真正面から取組、遂行されたようです。杉江さんはライターになるくらいなので、やはり興味のあることへは究める方向になるのではないでしょうか。3期目に関しては、会長職も板についてすっかり風格が出てきている。(人間関係が大変になってそうでしたが。)

    建前だとか、大人の論理なんてものには、カチンときて、ついつい啖呵きるようなことをしてしまったりするのは、子供のことを本当に思っているからだし、PTAに関わる人たちが本質的なことに関われるように思うからこそ、PTAについても改革ができていくのだろう。

    前例踏襲、滅私奉公のような日本的な集団活動であるPTAを自分なりに変えていくところがさすがの行動力。なかなかこのバイタリティは出せないと思います。自分なりにやることを腑に落としてから引き受けているからこそだろう。

    PTAとは教師と親の組織であり、PTA会長と校長が二人三脚の関係とは知らなかった。(ただ、相手が話の分かる校長先生だったからこそ、杉江さんもいきいき活動ができたんでしょうね。)他にも、PTAの常識と書かれていることはほとんど知らず。

    いずれにせよ、PTA活動を本気でやり、チームをまとめていくということは、仕事並みに(いや、それ以上に?)大変なことだなと思う。

    また、PTA活動自体が専業主婦の前提に考えられているような気もした。筆者のように学童父母出身の働く両親たちがきちんとかかわれるPTAを目指すという心意気が共感できた。(自分がやれるかどうかはおいておいて)

    2011年ころの経験を2017年に出すというその期間をおいたからこそ、客観的に書ける部分もあったのかなと思いました。

  • PTA関連の本は、半分以上が今のPTAを批判していて、それに対してこんな改革をした、こんないいことがあってみんなに喜ばれた、とこれまた半分以上が自慢話みたいな本が多いのだけど、この本はとっても読後感が良かった。おかしいことは徹底的におかしいとしながらも、楽しめるところは楽しみ、会長としていたらなかったところは素直に認め、嫌なことはやらない。確かにほんとに不思議で不気味で浮世離れしてる組織だけど、ドラマはある。気づきもある。こんなに無理せずに気の持ちようでどうにかなる組織も珍しいのかもしんない。

  • あの杉江松恋氏がPTA会長に!その体験談が面白くないはずがない。いろんなことにぶつかりながら奮闘した日々の記録を興味深く読んだ。

    PTA、しかもその会長をするなんて、煩わしくうっとうしいことだらけであることは間違いない。あれ?と思ったことをそのままにせず、正面から向き合っていることに敬服。ほんと、PTAにまつわることって、なんかヘンだなーって思うことが多かった。自分は深入りせずテキトーに受け流してきて、まあそれで仕方がないやと思ってきたけれど、今になって考えれば、あれはやっぱり良くなかったなあ。

    だって、PTAもやっぱり「民主主義の現場」だもの。忙しいからとか、すごくめんどくさそうだからとか、いろいろ言い訳はあったけれど、自分の日常できちんと「生きた民主主義」の石を積めなかったのは痛恨。じゃあもう一回やって見ろと言われたら…、むむむ、これが難しいんだよねえ。杉江さんは立派だ。

  • これはやたらと面白かった。おすすめ。なんとなく波風立てず回してる日本的組織の典型でも人のめぐりに恵まれるとここまでできるんだなあ、という組織変革本にも読めるし、ゆるゆると物珍しい世界を眺めることもできる。

  •  PTAには全く興味がなかったけど、もしかしたら自分も携わる機会が訪れるかもしれないと思って興味深く読んだ。

     いつか分からない未来の事を気にしたり、その場にいない人に対して大いに配慮したり、そんなことが行動の基準になる場合があり、そういったことに対して「違うだろ」とビシっと言っているところがよかった。

     著者の杉江さんが反骨心旺盛なところも読んでいて楽しかった。遠足で無駄な挨拶が長い事に対する意見の手紙がとくによかった。政治的な場面での駆け引きの参考になった。

  • この本を読むとPTAに関する認識が変わるのでは!?
    とても面白かった!
    私は先に著書の海外文学などの書評を知っていたので、これほど博覧強記な教養人のご子息が我が子と同じ小学校にいると知ったら、そりゃ〜ぜひPTA会長に…と推したくなる気持ちは非常にわかるが。しかし実際かなり大変だ!
    これほどの仕事を無給で…というのは、やっぱり大変…。
    かといってひたすら仕事を減らし続けいずれはPTAをなくすのがゴールではないと思えるのもこの本の良いところかと。

    他のブログで読んだのは、PTAから逃げおおせたことがスマートな生き方だと自賛している人間もいるがそれはどうなの?ということ。

  • 改革する人は格好良い。
    やっぱりPTA役員をする方々は、一定以上の知識と教養があるなぁ、、、と思いました。無い人もいらっしゃるかとは思いますが。
    作者も頭の回転が速いし、活動の問題点やその解決策をサクサク出せるのは本当に格好良いです。人情だけの人がPTA会長をしても、根性でやろうぜ!!みたいなことになって、結局負担は減らないと思うので。
    結論としては、自分はそんな頭はないので、PTAとは距離を置きたいなと言う事でした。

  • PTAってほんと大変そう…
    子どもがいたらいつかはしなきゃいけないんだろうけど、会長とか無理…
    これは私というより、主人に読んでほしい一冊。かつてPTA会長をし、今は現役の自治会長である義父の長男、しかも家業を継いでるものだから、きっとお鉢は回ってくるにちがいない!でも無理無理無理〜〜
    「絶対引き受けんといてや!」と、脅迫に近い感じで勧めてみた。

    けど、お役所仕事に異を唱え、子どものことを第一に考え行動してくれる、著者のような人にこそ、会長さん、なってほしいと思った。

  • いやあ、面白かったです。

    これまでいろいろと役員をやってきた私としては、ひしひしと分かる、その気持ち。

    それにしても、著者さんは周囲の方を上手に巻き込める、お人柄も好感度高い方なのだろうと思いました。もちろん、ご本人の大変な努力がそうさせているはずですが。

    2年目がとても楽しかったでしょうね。

    ライターさんと言うだけあって表現が上手。提言も上手にされてあれこれと交渉事をこなしてこられたのだろうと思います。

    最後、「自分のためにやっている」と気づかれた点、本当にそうだと思います。共感しました。

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著者プロフィール

東京生まれ。慶応義塾大学卒業。文芸評論家、書評家。著書に『読み出したら止まらない!海外ミステリーマストリード100』『路地裏の迷宮踏査』、『ある日うっかりPTA』など多数。

「2020年 『本格ミステリの本流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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