鹿の王 4 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 307
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041055106

感想・レビュー・書評

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  • 2020年4月13日読了。
    ついに完結してしまった。
    普段ファンタジーを読まない自分が、こんな長編ファンタジーを楽しく読む事が出来たのはやはりその世界観やキャラクターがとても魅力的だったからなのだと思う。
    立て続けに『水底の橋』を読もうかと思ったが、まだ文庫化されておらず。文庫化されるのを楽しみに待とうと思う。

    読んだ本を再読はしない質なのだが、この本はきっと再読するだろう。
    自分の理解力の低さからも、一度読んだだけではストーリーを把握出来てない部分もあるので再度読んで理解を深めるとともに、新たな発見を楽しみたい。
    アニメ映画化も決定したようなのでそちらも期待。

  • とうとう終ってしまった。感無量。ユナとヴァンは絶対に離れられない絆で結ばれているんだ。それがすごく嬉しかった。ヴァンは「鹿の王」となるべく、自己を顧みずユナを置き、離れていこうとしたけれど、ユナの血がそれを許さなかった。本当にすごい。こんなエンディングになるなんて想像していなかった。快哉を叫ぶとはこのことか。物語、冒険はまだまだ続きそうだけれど、私たちが関われるのがここまでかと思うととても寂しい。また何かのカタチでヴァンやユナ、サヤたちに会えるといいな。ユナがどんな女の子になっていくのかとても楽しみだ。

  • ついにヴァンとホッサルが対面。
    その一方で、火馬の民のオーファンは、故郷を取り戻すべく策略を企てていた。
    それに気づいたヴァンは動き出すことになる。
    完結作。

    追うものと追われるものとして読んでいたためか、
    ヴァンとホッサルの間に流れる穏やかな雰囲気に、意外性を感じた。
    なぜ病は起きるのか? どうして治るものと治らないものがいるのか?との議論の末に出てくる「鹿の王」という作品タイトルと同じ言葉がついに明かされる。

    家族を失い、今まで独りで生きてきたヴァンの周りには、
    多種多様な人々が集まり、いつしか家族になっていった。
    当初は、抜け殻のような心を持ち、ただその日その日を生きていたヴァンであったが、
    慕われ必要とされ、みなでヴァンを迎えに行く光景に、
    「よかったな」と不思議な安堵を覚えた。

  • 感染症をテーマにした壮大なファンタジーの最終巻

    以下、4巻の公式あらすじ
    -------------------------
    上橋菜穂子の傑作長編、ついに完結!

    ついに生き残った男――ヴァンと対面したホッサルは、病のある秘密に気づく。一方、火馬の民のオーファンは故郷をとり戻すために最後の勝負をしかけていた。生命を巡る壮大な冒険小説、
    -------------------------

    一国を滅ぼす程に猛威を振るった伝染病が再び発症した経緯
    そして、病原菌の拡散とその治療薬の開発を巡る策謀

    ファンタジー設定ではあるものの、医療の設定はあくまで現実に即したもので
    国の政治や国家間の力関係、各地に住まう人達それぞれの思惑などは現実でも同じような事が繰り広げられている程にリアル

    現代でもバイオテロを描いた作品はありますものねぇ



    帝国に敗れた部族「独角」を率いた生き残りのヴァン
    岩塩坑で謎の獣に襲われ、他の人達は死んだのに生き残る
    また、同じく生き延びた子供のユナ

    伝染病で都を捨てたが、医療技術と情報収集の技術で影響力を持つオタワル
    そのオタワルで医療に携わるホッサル

    その他、それぞれの国の首脳、追いやられた部族、密命を受けた人達など、様々な策謀が錯綜する中で、徐々にわかってくる伝染病の背景と治療法の可能性



    一番印象的だったエピソードは、薬の投与を認めない清心教医術師の呂邦

    無学なようにも思えるけど、筋の通った医療哲学があるように見える
    救いたいと願っているのは、命ではなく魂という主張
    人はいずれ死ぬわけで、与えられた命をどう全うするかがであって、長短ではない

    宗教が入り混じった医療哲学だけど、現代でも倫理に反する治療が行われていないわけで、延長線上では同じ論理体系で語っているように思える

    現代においても、輸血を拒み我が子の死を選択する親もいるわけで
    この行為を安易にあざ笑ってよいものではないのかもしれない


    ホッサルは、現状は対症療法や手探り状態の治療法を試しているが
    医療が発展すればいずれ病気の治療法が見つかると思っている
    まぁ、実際は現代においても治療が困難で、予防接種で防いでいるような病気もあるわけで、医学が万能なわけではないんだけどね

    それでいて、リムエッルの人体実験ともとれる医療行為に抵抗感を覚えている
    現代医療では治験にもルールが決められているけど、そんな法がない世界であればそんな方法もある意味では間違いではない
    死ぬ可能性が高い病気で、治療薬を試すという行為は後の多くの感染者を助けることにも繋がるけど
    でも、試される患者の人権はどうなるのか……
    まぁ、本人や家族に同意を得たとことで、医療の知識がない人にとって可能性にかけるのは当然なわけで、選択肢は与えられているようでほぼ一択だけどね

    清心教の存在意義としては、そんな医療倫理観への歯止めのの意味もあるのかもしれない



    作中には様々な対立が描かれているけど、単純な二項対立になっていない
    全員の心の中に「正義」があって、絶対的な正しさはないというのがわかる

    文化、風習、宗教観など、様々な背景があって、過去現在未来を含めてそれぞれの思惑がある

    アカファ王の選択や敢えて見逃す行為も、為政者として一概に避難されるようなものではない

    それよりも、国としては滅んだけど自らの能力で存在意義を示してある程度の地位を築いているオタワルという集団
    生物の体内にも細胞内小器官のレベルかられっきとした異種の生物のレベルまで様々な生物が共生している
    普段はそんな事を意識しないけど、我々の免疫にしても異物を排除しつつ共生するシステムが組み込まれているわけで
    それが国という組織においても存在しえるのは当然でしょうねぇ
    でも実際問題、取り込まれるケースの方が多いんですけどね

    タイトルの「鹿の王」も意味
    「鹿の長」とは異なる存在

    自らの命を賭して仲間達を逃がす行動をする個体
    果たして、称号なのか、それとも愚かなるものなのか

    生態学的には、集団のための利他行動も結局は自らの包括適応度を上げる行為なので、そんなに不思議な行動ではないんだけどね
    そんな知識のない人達にとっては英雄的行動に見えるかもしれないし、また考え方によっては無謀な行動にも見えるでしょうね

    結局は見る人がどう解釈するかの違いでしかないかもしれない

  • ヴァンはついにホッサルと対面する。黒狼熱により病むものと病まぬものの違いについて気づき始めた医術師のホッサル。仲間を失った〈火馬の民〉のオーファンは、故郷を取り戻すために最後の勝負に仕掛ける。病により苦しむ人々を見過ごせないヴァンが世界のために下した決断とは。

    「人は身体の内側で何が起きているのかを自分で知ることができない」「人と細菌やウイルスは共生している」「社会でも似たような状況が起こる」という発想から描かれたファンタジーで、病と人のみならず民族や信仰といった社会、人間模様も交わった物語でした。

  • 政治、民族、疫病、ナショナリズム、グローバリズム、戦争。。
    時代を超えても人間の根底に流れ続ける暗いテーマを見事に描ききる名著。出会えてよかった。


  • 再読。

    1〜3巻まで、大波小波、山あり谷あり、
    そうやって物語が進んできて、まとまりを持たせて始まった第4巻。
    収束に向かっていく物語ではなく、最大の大波が1〜3巻の大波小波、山あり谷ありをスパイスにしてやってきた感じ。

    様々な国、民族、立場、宗教etc
    そんなものの中で進んできた物語だから、様々な視点で描かれてきたことが、第4巻でどこに結びついているか明確になって輪郭を作り出しています。

    ↓ネタバレ

    p.275で、ホッサルの祖父リムエッルの企みが明らかになった時、「最小の被害で最大の利益を得る」とはこのことだなあと言葉がでてきました。

    ただ、その時にはヴァンはヴァンが持てる力でできることをしようと出発した後のことで、
    医術を極める者として考える「最小の被害で最大の利益を得る」ことが机上の空論であり、ただひたすらにその身を投じてできることをしようとするヴァンの生き様との違いで浮き彫りになった違和感を感じました。

    そんな気持ちを、リムエッルの話を聞いていたホッサルも持ったことが、これまでの話の流れで、大きなうねりの中、知り合って打ち解けて、さらに親しみまで感じてつながっているヴァンとホッサルを読み取ることができてなかなか胸が熱い。


    ホッサルに、「病素も自らを生かすために、宿主を動かす」と説明を受けてから、初めてヴァンが裏返るのが、鹿の王となるシーンであることが、なかなか運命的でグッと胸を打ちます。


    この感想を書き始めた時に、1〜3巻がスパイスと書いたけど、「鹿の王」に関しても。
    鹿の王について説明があるシーンは2回ありました。

    1回目は、「こういう鹿を鹿の王と呼ぶんだ」という説明。
    2回目は、ヴァンの父が「鹿の王と持ち上げることに反吐が出る」と言うところに焦点を当てて。

    ヴァンの父の言わんとしていることが、私はすごく良くわかる。
    「できる力を持つ人ができることをすればいい」
    「できる力を持つならば、それを淡々としながらも率先してした方がいい」
    これが私がよく思うところ。

    “できる”から行った。
    ただそれだけのことに対して、外野が「素晴らしい」と持ち上げることもあれば、
    持ち上げられるという側面があるからか、「エゴだ」「八方美人だ」「格好つけてる」そんなふうに叩かれることが多いなと思うシーンがよくある。
    いいじゃん。できるからした。それだけなのに。
    と思っちゃうんだよね。
    そこにその事実があるならば、その事実だけ評価すればいいのに〜なんて。

    ヴァンものホッサルもサエも、
    ユナもトマも智蛇も、
    そうやって「できることをする」
    そうやって4巻が終わったことが何よりでした。

  • よかった

  • 評価は3に近い4。

    世界観は素晴らしく最後まで飽きずに読めて面白かったです。でも、獣の奏者と比べるとエンディングの盛り上がりに欠け、微妙な終わり方でした。

    医療の話は、現実世界で誰かがやってきたことなので、それを異世界でホッサルやその一族の手柄として描かれたのも、ちょっとずるい気がして、獣の奏者、守り人シリーズほど世界に入り込めませんでした。

  • エンドロールが美しい。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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