カラヴィンカ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061688

作品紹介・あらすじ

売れないギタリストの多聞は、音楽誌に穴埋めコラムを書いて生計を立てている。最近、離婚して、妻のつくった借金を抱えて困窮していた。ある日、彼のもとに仕事の依頼が入る。カリスマ的な人気歌手、実菓子のロングインタビューだった。義理と借金のためやむなく引き受けたものの、二人は幼い頃同じ家で育ち、しかも、多聞の亡父と亡兄はともに実菓子の夫であった。二人はかつて共に住んでいた田舎の家で再会し、インタビューを開始する。実菓子への憎悪と愛情という相反する二つの感情を抱えていた多聞だったが、実菓子は多聞の知らなかった過去を語りはじめた。かつて多聞の家とともに村の二大勢力と言われた実菓子の実家の忌まわしい過去。二人の母が突然姿を消した謎。実菓子が10歳の時に起こした冤罪事件と、二度の結婚の秘密。数々の出来事の裏に隠されていた凄惨な真実が解き明かされたとき、あらたな事件が起こる――。

感想・レビュー・書評

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  • 遠田潤子さんは、登場人物を絶望の淵に陥れるのが絶妙に上手い作家さんですが、この作品はその中でも最も強烈なインパクトのある物語でした。

    主人公の売れないギタリスト、青鹿多聞のところへ歌詞のない旋律を歌う容貌のすばらしく美しい歌手の実菓子から自伝のインタビューの相手になって欲しいと指名の電話がかかってきます。
    多聞と兄の不動は丹羽谷村の「藤屋」と呼ばれる旧家の息子で、不動は一年三カ月前に亡くなっています。
    実菓子は同じ村の旧家「斧屋」の娘で不動の妻であり、その前は多聞と不動の父の青鹿馨の妻でした。

    インタビューの内容は実菓子と不動と多聞の兄弟が実菓子の母の鏡子が父の馨の妾となって一緒に暮らし始めた、子供の頃から始まります。
    鏡子は派手好き男好きな女性で、兄弟の母の奈津子は前半は地味で、体の弱い兄の不動ばかり可愛がり、世話をする耐え忍ぶ女性として描かれています。
    そして鏡子は家を出て行き、奈津子も離婚して二人を置いて家を出ます。
    父の馨は実菓子が16歳になるとすぐに結婚するのですが、新婚初夜に亡くなります。
    その後の物語も多聞のインタビューによって語られますが、意外にも離婚して出て行った奈津子がキーマンとなります。

    次に直系姻族間の婚姻の禁止により事実婚をした不動と実菓子。なぜ不動は死んだのか…。
    そして多聞が実菓子を避けようとする本当の理由とは…。
    たくさんの謎が後半一気に解き明かされます。
    二つの事件の嘘とは一体何なのか。

    遠田さんの初期の作品の傑作だと思いました。
    小学生だった多聞と実菓子が『ごんぎつね』の暗唱をする場面が唯一ほっとする場面でした。

  • 歌詞のない旋律を母音のみで歌う歌手として絶大な人気を誇る実菓子
    実菓子は人間じゃない人間じゃない、外道だ!
    容姿は吐き気がするほど美しい
    その声も
    まさに、美しいカラヴィンカ、迦陵頻伽だ


    そんな実菓子が自伝を出すことになり、そのインタビューの相手として選ばれた多聞
    二人は幼い頃同じ家で育ち、実菓子の夫は多聞の亡兄
    インタビューのために多聞と実菓子は回想に入る


    さぁ、ここから遠田ワールドの始まりだ!

    いつの時代かと思わせる村社会のしきたりに、時代錯誤の家父長主義、妻妾同居
    モラハラで暴君の父
    我が物顔に振る舞う女
    黙って耐える家族
    無視される多聞
    そして起きる事件

    どんどん出てきます、辛く耐えられないような出来事が!
    明らかになっていきます、おぞましく哀しい出来事が!


    これぞまさに、負の連鎖の玉手箱やぁ〜♪


    明るく言ってみましたが、遠田さんもういいんじゃないの、その辺で止めてあげてと言いたくなります


    しかし、インタビューが進むに連れて、負の連鎖の玉手箱の真相が明らかになっていくのです

    登場人物たちの隠していた秘密が次々と暴かれていき、
    へぇーっ!とか
    えぇーっ!とか
    おぉーっ!とか
    ・・・・・・!?とか、ってなります


    それらの秘密が分かったとき見えるであろう一筋の希望が!
    聞こえるであろう鳴いて血を吐く迦陵頻伽の声が!

    • 1Q84O1さん
      あははw
      それヤバいですよ!
      どこか一箇所だけ気持ちよくポキっ!にしておきましょう
      あははw
      それヤバいですよ!
      どこか一箇所だけ気持ちよくポキっ!にしておきましょう
      2024/01/03
    • かなさん
      1Q84O1さん、
      今年も楽しいレビューを期待しています(*^^*)
      でも、この作品はだいぶ色々はらんでますねぇ…。
      さすが、遠田潤子...
      1Q84O1さん、
      今年も楽しいレビューを期待しています(*^^*)
      でも、この作品はだいぶ色々はらんでますねぇ…。
      さすが、遠田潤子さんの作品ですネ!!
      2024/01/03
    • 1Q84O1さん
      かなさん
      その通りです!
      さすが遠田作品w
      新年からお腹いっぱいですよ!
      けど、遠田ワールドやめられないないんですよね〜^^;
      かなさん
      その通りです!
      さすが遠田作品w
      新年からお腹いっぱいですよ!
      けど、遠田ワールドやめられないないんですよね〜^^;
      2024/01/04
  • まことさんのレビューを読んで気になっていた作品。

    遠田潤子先生の作品はとても好きなのだが、書店でお見かけすることが少ないように感じる(^-^;
    まことさんのレビューにピンときたものの、書店で見つけるのは骨が折れるだろうなぁと思い、これまたAmazonでポチっとやってしまった。


    いやぁ、もう出だしから遠田先生よ!

    いきなり実菓子という女性から、多聞のところに電話がかかってくるところから物語は幕が明ける。
    実菓子は、この時点で、かなり多聞のことをよく知っている間柄だと伺い知れるが、二人の間柄は全くわからないまま。

    ひょんなことから、多聞は実菓子のロングインタビューを引き受ける。
    そこから次第に二人の関係、過去が浮き彫りにされていく。


    本当に最初は何にも情報が無く?????え????
    この人は誰なんだ?どうなるんだ???何があったんだ???

    遠田先生の作品は、まぁ間違いなく???から始まる(笑)
    ???が何なのか知りたいから、ページを捲る手が止まらなくなる(笑)


    実菓子がインタビューの場所として選んだのが藤屋。
    幼い頃、この藤屋で多聞と実菓子は同居していた。

    山奥の田舎。この田舎には、藤屋と斧屋という旧家があった。
    この旧家には、過去に因縁があり・・・


    気が付けば、遠田先生ワールドから抜け出せなくなる自分が居た(笑)


    物語は、割と自分がこうあったらいいなぁという方向に進んでくれて、
    暗い中にも一筋の光が見えるような、そんな作品だった(*^-^*)

    いや遠田先生、さすがの表現力。
    大満足でございます(*´▽`*)

    • まことさん
      bmakiさん。こんにちは!

      bmakiさんも遠田さんの作品は、以前から読まれていますよね!
      私は、最近はまった新参者です。
      お仲...
      bmakiさん。こんにちは!

      bmakiさんも遠田さんの作品は、以前から読まれていますよね!
      私は、最近はまった新参者です。
      お仲間がいて嬉しいです!
      この作品は、初期のものにしてはかなり遠田色が出ている、これでもかというような作品だった気がします。
      私は、昨日、やっと図書館で借りた新作の『紅蓮の雪』を読了しました。
      明日レビューしようと思っています(*^^*)
      2021/04/11
    • bmakiさん
      まことさん

      まことさんも遠田先生の作品、たくさん読まれてますよね(*^-^*)

      私も、去年か一昨年知ったばかりのような気がします...
      まことさん

      まことさんも遠田先生の作品、たくさん読まれてますよね(*^-^*)

      私も、去年か一昨年知ったばかりのような気がします。雪の鉄樹を読んで、大嵌りしました(*^-^*)

      紅蓮の雪ですか!?未読ですね~。
      レビュー楽しみにしてます。

      またAmazonでポチってしまうかもしれません。
      実は先ほどもまた、まことさんの本棚からポチりとやってしまいました(*^-^*)
      2021/04/11
  • 歌詞のない旋律を母音のみで歌う「ヴォカリーズ」の歌手である実菓子。
    彼女の自伝のインタビュー相手として選ばれたのは青鹿多聞。

    何か妖しさを漂わす実菓子に対して拒絶する多聞。

    2人は、幼い頃同じ家で育ったのだが…
    インタビューが、進むにつれて明らかになっていく多聞さえも知らなかった自分の出生の秘密。
    実菓子の行方不明となっていた母の最期。

    終盤に進むにつれて明らかになっていく事実に唖然となる。
    悍ましさだけではなく、凄絶な愛憎劇である。

  • 遠田潤子『カラヴィンカ』角川文庫。

    『鳴いて血を吐く』を加筆修正、改題、文庫化。

    遠田潤子は『アンチェルの蝶』を読んで以来のお気に入り作家である。やはり本作も期待に違わず物凄い作品であった。閉鎖的な村の旧家という十字架を背負った人間たちの業が、まるで川の堤防が決壊したかの如く汚泥となって溢れ出す…そんなおどろおどろしい物語なのだ。

    多聞と実菓子の男女のただならぬ状況から幕を開けた物語は少しずつ状況が説明され、知らぬ間に異常な物語の世界へと引きずり込まれていく。登場人物の誰ひとりとしてまともな人間は居らず、唯一、主人公の多聞が自らをまともだと主張する声さえ怪しく聞こえる。そして余りにも凄惨で、哀しい物語はいつ終わるのかという時、ラストの驚愕の一声で…

    やはり遠田潤子は凄い作家だ。

  • 遠田さんは、不幸を書かせたら天下一品だと思うが、この本はちょっとやりすぎな感じがした。
    遠田作品は大筋が決まっていて、いろんなアレンジで読ませてくれるストーリーが多い。
    新鮮さはないのだ中毒性があって、わかっているのについつい手に取って読んでしまう。そしていつも、読み終えてがっくりと疲れてしまう…。

  • ここ最近お気に入りの作家さん。

    本書の解説で書かれていた通り、『読まされてしまう』のです。
    今回も何と言っていいか、遠田作品独特の雰囲気で、読み始めてすぐさま引き込まれる。
    田舎の旧家で育った男女の罪と罰と言った様な内容。

    遠田作品を読んで毎回思う。どうしてこんなにえげつない内容なのに読むのが止まらないのだろう。

    これからも追いかけていきたい作家さんです。

  • 本屋さんで見かけて手に取った本です。
    内容がとてもダークで不愉快なんだけれど、読むのをやめることができない!ああもう!すごく不愉快!いやなことばっかり起こる!でも先が知りたい!ああああああ!
    ・・っていう感じでした。
    すごく不愉快な内容なのに、読むのをほっぽり出せないというのは、すごいですよ。なんて読ませる本なんだろう・・・と呆れながらも読み終えて、この著者は、他にはどんな小説があるんだろうかと思ってしまいました。

  • 『鳴いて血を吐く』の改題とのこと。

    であれば、体力のある時に再読するか…

    感想の言葉を書けないまま、だけれど星は4つ。
    魔的な力がある。

  • てんこ盛り、壮絶。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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