明治開化 安吾捕物帖 (角川文庫 さ 2-5)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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本棚登録 : 824
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100219

作品紹介・あらすじ

文明開化の世に次々と起きる謎の事件。それに挑むのは、紳士探偵・結城新十郎とその仲間たち。そしてなぜか、悠々自適の日々を送る勝海舟も介入してくる……世相に踏み込んだ安吾の傑作エンタテイメント。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。
    テイストがバラエティーに富んでいて、複数の本を読んでいるような異なる読みごたえ。
    時代背景が明治ということもあるだろうが、国や法制が固まりきっていない時代だからこその事件が多く監視社会に生きる現代人が読めば「こんな抜け道あるはずないじゃん!」っておもわれるこどが沢山。
    でも、よく考えればそうなんだ。スマホに情報を吸い上げられることもなく、監視カメラに姿が映ってしまうこともなく、完璧な戸籍とマイナンバーで身元が証明されている時代じゃないんだから。たかが100年。されど100年。
    あと100年たったらなにがどう変わってるんだろう?

  • アニメun-goの原作ということで読んでみました。
    以前にも堕落論など安吾作品に触れてきましたが、本作は安吾なりの時代風刺がとても面白く読めました。
    また、推理小説としてもおもしろく。とてもフランクに推理を楽しむことができるのも魅力的でした。
    ただ、「石の下」に関してはよく理解できなかったのが残念でした…
    個人的には「時計館の秘密」が好きな話でした。

  • 福士蒼汰の美男ぶりが魅力のNHKドラマがおもしろく原作も読んでみたくなって読んでみた。本は文体がちょっと合わず、ドラマで45分で解決してもらったほうがいいかな。

    読んだのは富士見書房時代小説文庫「明治開花安吾捕物帖」

    最初に安吾生の口上があり、皆さんのオヒマの折のお友達に、気楽な気持ちで推理をたのしんで、とある。

    「舞踏会殺人事件」
    最初に時は明治17,8年ごろとある。新十郎が幕臣の出自であること、洋行帰りの新十郎宅の右隣の住人は道場を開いている泉山虎之助、警視庁の雇いで巡査に剣術を教えるのが商売の一つ。左隣は花廻屋因という戯作者。警視総監は速水星玄で新十郎を頼みの綱としており、古田鹿蔵という老巡査は新十郎に何かあると駆けつけるのが役目。と役回りを説明している。

    ドラマでは西郷隆盛が海舟の家に訪ねてくる。西郷は明治10年9月24日に死んでいるのに。しかしドラマでは陸軍大将の西郷さん、というセリフがあったから西郷が留守政府で陸軍大将をしていた明治5年頃に設定しているのか。

    でも、小説では維新後の混乱した生活が西南戦争を経て、新しい価値観でなじみかける頃に、その価値観の逆転を幕臣であった勝海舟が、水平な目で事件の感想を言うのがひとつの鍵になっている。がドラマでは10年早い西南戦争前になり時間的視点がずれてしまっているような気がする。

    「ああ無情」
    「万引家族」
    「石の下」
    「覆面屋敷」
    旧家の跡継ぎをめぐる思惑。

    「ロッテナム美人術」
    「乞食男爵」

    1950年(S25)10月号-1952年(S27)8月号「小説新潮」に「明治開花安吾捕物帖」として20編を連載
    1953年(S28)4月、5月、S291月、日本出版共同㈱より出版(1~3巻)※だが「舞踏会殺人事件」「密室大犯罪」は未収録
    1971(S41)、「坂口安吾全集」に全20編収録

    解説によると、この安吾の開化捕物最大の特徴は、海舟がなげいている開化期の世相を、(この本が書かれた頃の)戦後の状況とかさねあわせて描いていることだという。安吾は「安吾史譚」で、維新後の30年くらいと、今の敗戦後の7年とは甚だ似ている。敗戦後が外国の占領下だから維新と違うというのは当たらない。薩長政府も実質的には占領軍だった、と書いているそうだ。
    (『安吾史譚』春歩堂 1955年7月)

    1963.1.20初版 図書館 (富士見書房時代小説文庫)

    ドラマ:NHKBS BS時代劇 2020.12.11~2021.2.5 20:00-20:45

  • 明治開化 安吾捕物帖(角川文庫)
    著作者:坂口安吾
    角川グループ パブリッシング
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  •  角川ではなく、富士見書房なんだけどこちらで登録。
    話の空気は横溝っぽいのに、探偵は小五郎のよう、と読んでいたけど、やはり金田一に似てるダメな感じ。
    犯人を自殺させちゃったり、逃がしちゃったり。
    「ぼくがもっと早く気がついていれば!」(映画の金田一だけど)と言うかと思った。
    勝海舟はなんで出てくるんだろう?(それを言ったら虎ノ介も花廼屋も)と思っていたけど、読者代表なのかな。勝先生が犯人を口にすると「あ、やっぱりそれじゃないんだ」と思う。
    そして、犯人は外しても勝先生の一言はピリリっとくる。

    「完璧なるものといえども敢えて恐るるには当たらないということは、兵法、経済等のことに於いても真相だよ」
    「運命というものは、在るような、また、ないような、あまり当てにはならないものだ。」
    「律儀や忠義をやるにしても、実役にたつことをやるがいいや。こういう役にも立たぬ律儀が万事につけて無役な悲劇をい生むものだ。私もそれをやります、と虎の顔にも書いてあるぜ。血相変えてシクジリをやらかして、忠君愛国と称し、仁義孝行と号して、地獄へ落ちると書いてある。」

    勝海舟が出て来ない最後は締まらないなあ。

  • “捕物帖のことですから決して厳密な推理小説ではありませんが、捕物帖としては特に推理に重点をおき、一応第二段に推理のタネはそろえておきますから、お慰みに、推理しながら読んでいただいたら退屈しのぎになるかも知れません。作者はそんなツモリで捕物帖をかいているのです。第三段の海舟が心眼を用いるところで本をふせて一服しながら推理することに願います。海舟は毎々七分通り失敗することになっていますが、今までの探偵小説では、偉い探偵の相棒にトンマな探偵が現れて大マチガイの推理をはたらかせてあんまりバカすぎたようです。よんでいる方でも、自分の推理が当たらないと、トンマな探偵氏と同じようなトンマに見えて自分がイヤになるのが通例ですが、海舟という明治きっての大頭脳が失敗するのですから、この捕物帖の読者は推理が狂っても、オレもマンザラでないなと一安心していただけるでしょう。そこでメデタシ、メデタシ、というのが、この捕物帖です。”[P.5]

    アニメ「UN-GO」を見た影響で。

    “今日は、彼の他にもう一人妙なヤジウマが早朝から詰めかけている。お梨江である。朝の新聞で紳士探偵出馬の記事を読んだから、私も探偵の心眼を働かして犯人を捕まえてあげましょうというので、馬にまたがって早朝から乗りこんでいる。新十郎の書斎へ詰めかけて、
    「あなた、お馬にお乗りにならないの」
    「乗りますけれども、馬を持っておりません」
    「じゃア、人形町のような遠いところへ、どんなもので、いらッしゃるの?」
    「歩いて参ります」
    「アラ、大変。私、お馬を持ってきてあげるわ」
    「ところが、連れがありますので、ぼくだけというわけに参りません」
    「存じております。気どり屋の通人さんに、礼儀知らずの剣術使いでしょう」
    「ほかに古田さんという巡査がおります」
    「じゃア、四頭ね」
    と言ったと思うと、馬にのって駈け去る。やがて馬丁と四頭の馬をひきしたがえて、戻ってきて、庭木へ一頭ずつつないでしまった。”[P.93]

  • NHKでドラマ化されたものを見て、坂口安吾が書いたという所にも興味を持ち読んでみました。
    お約束のシンプルな構成の話が一話完結で記されていて読みやすい。もともとドラマにしやすい作りだなと思いました。
    主要登場人物の語られない部分になんとなく興味を惹かれてるのと、現代人からすると昔の風俗というものが出てきて、興味深く読めると思う。

  • ドラマを見て、原作を読んでみたが、ドラマはあまり原作に忠実ではなかった。1話で一つの事件が解決するので、昔の言葉でも意外と楽しく読めた。最後にお決まりの新十郎さんが解決して完結だが、それほど凝った謎解きではなかったように思う。

  • そもそも犯人が誰か見当もつかないで読んでいるし、いったい誰が犯人なんだろうというワクワクよりも、普通に面白い読み物として最後まで進んだといった印象だった。
    多少時代物の雰囲気もあるから、探偵物として読んだものか、時代物として読んだものか、(正しくは両方なのだろうけど)自分の中でまとまらず、楽しみきれなかった。両方を織り混ぜてくるのは、さすが安吾だと思う。

  • 福士蒼汰のドラマを観て、原作も読んでみたくなり購入したのだけれど文章があまり好みではありませんでした。
    でも内容は嫌いではなかったのでなんとか最後まで読み上げた感じ。

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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