散り椿

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.93
  • (26)
  • (80)
  • (31)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 328
感想 : 59
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101193

作品紹介・あらすじ

かつて一刀流道場の四天王の一人と謳われた瓜生新兵衛が、山間の小藩に帰ってきた。一八年前、勘定方だった新兵衛は、上役の不正を訴えたが認められず、藩を追われた。なぜ、今になって帰郷したのか?新兵衛を居候として迎えることになった甥の若き藩士、坂下藤吾は、迷惑なことと眉をひそめる。藤吾もまた、一年前に、勘定方であった父・源之進を切腹により失っていた。おりしも藩主代替わりをめぐり、側用人・榊原采女と家老・石田玄蕃の対立が先鋭化する中、新兵衛の帰郷は、澱のように淀んだ藩内の秘密を、白日のもとに曝そうとしていた-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 若き日々に剣道場で四天王とも言われた面々も中年になり各々歩く道も境遇も別れてしまったけど、究極の局面では自ずと固い絆が生ずる!
    瓜生新兵衛は愛妻の病死で失意のうちに昔追われた故郷に亡き妻との約束を果たすために舞い戻るが、藩にはきな臭い争い事が渦巻いている。
    武骨だが愛すべき人柄の新兵衛もご多分に洩れず否応無く渦中に巻き込まれて行くのだが、我を貫き通す生き様が周りにも大いに影響していくのであります♪
    亡妻の甥っ子にあたる藤吾はひたすらに傾いた家の再興のために出世すべく邁進しているのだが、不意に現れた叔父新兵衛が出世の邪魔になる懸念から距離を置く。そんな彼もいつしか新兵衛に徐々に心酔するようになるけれどその過程がいいです。
    手放しのハッピーエンドではありませんが例によって余韻が残るエンディングでした。

  • さすが映画化されただけのことはある、序盤からぐいぐい惹き込まれた。
    篠の気持ちわかるなあ、申し訳なかったんだろうなずっと。好きだから一緒にいたい、けど私とでなければ、違う人生を歩めたかもしれない才を持つひとを制限してしまっているかもしれない苦しさ。新兵衛のこれからの人生がもうすこし続いて、すこしでも違う幸せを体験できる時間をもてることを望んだんだろうなあ。采女、源一郎、三右衛門、新兵衛の四人の関係性も、深いものがある。それぞれが絡み合って、守りたい気持ちと傷つける気持ちが両刃の剣となるような。ひとことで言ってしまえばとある藩のお家騒動ストーリーなんだけれど、出生の身分に縛られ、士分の使命と弁えがあり、夫婦や親子の愛と憎しみの関係あり、いろんな角度から心をぎゅうぎゅうとせつなく締め付けられる物語に仕上がってる。新兵衛はまたいつか椿を見に戻ってくる運命だといいなあ。中年にオススメなヒューマン時代劇。でした。

  • 大河ドラマや水戸黄門などテレビの印象で歴史ものって何だか古臭いというイメージをもってしまうのはもったいないなといつも感じます。
    司馬遼太郎的なものはそんな感じもありますが、最近の葉室麟や阿部龍太郎、山本兼一の歴史ものは作者なりの考察が新しくて面白いと思います。
    単に古い時代の物語というだけでなく、虫や花や香りなどが織り込まれてのクライマックスのさっぱり感は葉室麟独特のものなのでしょうが、本書も期待以上でした。

  • ほぼお初?の時代小説に挑戦。
    葉室さんの文章は淡々としていて少し武骨だけど、物語の隅々に一本の糸が張ってあるような感じ。武道をする前の黙想の時に漂うような、凛とした雰囲気。
    いろいろな人物が出てきて少し複雑だったけど、話についていけないほどでもなく比較的読みやすかったと思う。
    あまりにも清らかなお話すぎて、ちょっと物足りないかなあと感じる部分あり。

  • 簡単に本心を言えない世界。
    みんな相手の気持ちを慮って動いてる。
    だけどその手には常に刃があって。
    すれ違いの結果は、お互いに刃をむけることにもなりかねない。
    心の刃と現実の刃と。
    難儀な世界だ。

  • 武士の世。権力に翻弄され自死た父の死後、若者らしい心を失いかけていた藤吾が自らの道を信じることができるようになったのは、疎ましいと思っていた叔父(新兵衛)の生き方だった。現代の世も自分の信じる道を進むことは難しい。人生の最後に満足できる生き方とはどんな生き方か、考えさせられた。幸せは自分の心が決める・・・

  • 泣きそうになりました。

  • 花弁が一片ずつ散っていく散り椿。美しくも切ない時代小説。本作品に込められた思いは”大切な人を守る”。上役の不正を訴えたばかりに藩を追われる事になった実直な剣豪が主人公。苦労をかけた愛しき病弱な妻の最期の願い。それは故郷の散り椿を見に行って欲しいと。18年ぶりに訪れた故郷が待ち構えていたもの、それは権謀術数渦巻くお家騒動。更にそこには過去の忌々しい事件の真相が一片ずつ浮き彫りになっていく。それにしても葉室作品の特徴は派手な描写はなく淡々と物語を進め、時々の心理描写が絶妙。例えば和歌をさり気なく使いこなし物語に彩りを与える。教養の成せる技だな~。本作品加えてミステリー要素が幾重にも織り込まれ最後まで飽きさせません。それにしても後半の亡き妻の回顧録。目頭があつくなりました(^-^;)

  • 13/03/12 終わりは少し寂しい気がするが。

  • 江戸時代の地方藩を舞台にした武士の生き様の時代小説。

    武士の友情や愛情を藩内の権力闘争をからめて見事なエンターテイメントに仕上げられて描かれています。
    一部の悪役の腰ぎんちゃくたち以外はキャラの背景も丁寧に描かれ、それぞれの思惑に絡み取られた哀愁を感じました。
    やはり作者は、このような歴史的有名人物でなく一介の武士の物語に真骨頂が発揮されると思います。

全59件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

葉室麟の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×