結婚

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101407

作品紹介・あらすじ

結婚願望を捨てきれない女、結婚生活から脱したい女…。満たされない女たちの欲望を金に換える古海とるり子、そして古海を家で待つ妻。果たして彼らに待ち受けるものとは?サスペンス色に溢れる父・井上光晴氏の同名小説に材を採り、まったく新しい物語を構築した野心的な長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 結婚というタイトルから勝手に夫婦の話かな〜なんて思ってたらなんと、結婚詐欺師の話でした。

    ちょっと登場人物が多くて頭の中で整理がし辛かったけど、いつもながらに井上さんの文章には引き込まれました。

    次から次に騙されていく女性たちを見てるとやっぱ切ないですね、同姓として。みんなどこにでもいそうな普通の女性なんですもん。騙されたなんてバカだねーなんて言ってられないくらい自然なんですよね。

    だけど、みんなどこか疲れてるというか、寂しい気持ちを抱えてるんですよね。うぅ、さらに切ない…。

    騙している男も何故か憎めなかったな。彼は最後どうなるのだろう。明るい未来ではないことは確かですね。

  • 本の帯に全く新しい物語を構築と書いてあったからてっきり結婚生活をじっくり書いた話かと思ったら、そこはやっぱり井上荒野。うらぎりませんね~。
    狙いを付けた女を次々に落としていく古海のような結婚詐欺師、実際にいるんだろうか?こんな男なら騙されてみたいって思ってしまった。「きんつばが食べたい」とか可愛いよね。物語に出てくる女性たちも決して恨んでる様子もなく、まだ心のどこかで信じてるし、よっぽど魅力的なんでしょう。
    それに引き換え、女は怖い。鳩子はどこに行ってしまったのだろう・・・。るり子、怖すぎ。

  • 全国を旅する宝石商をしながら結婚詐欺師を働いている男の物語だ。
    語る視点は、男に騙された女、男、その男の周囲にいる女、騙された女を知っている男、とさまざまに変わる。
    ただの悪辣な詐欺師かと思えば、その内実はどうにも抜け殻のような無気力感があって、惰性で歪んだ方向へ進んでしまう、そのだらだらと嫌な感じが、内容はまったく異なれど『だれかの木琴』を思わせる。
    しかし井上荒野と結婚詐欺師というネタは似合いすぎて怖いなぁと思う。このひとの描く胡乱な感じ、人の裏側を皮肉に見せる感じがよく出ていて、嫌な感じなのに不愉快じゃない。
    絶対爽やかじゃない、ってわかっているのに、この人の物語はクセになる。

  • しがない宝石鑑定士の男と普通の主婦が出会った時から運命の歯車が回り出した。
    男は主婦と出会わなければ、詐欺紛いの鑑定で口に糊するただの小悪人だったろう。
    主婦もまた男と出会わなければ、普通の家庭の主婦のままだったろう。
    いつしか二人は結婚詐欺で女を騙し、大金をせしめることを仕事にする。
    それは次から次へと面白いように成功するが、行き着いたところは......。

    悪の化学反応というのはなんと恐ろしいのだろう。
    最後の方で、男が結婚していたことに驚く。
    その理由が明かされた時、なるほどなと思った。
    男にとって子種がないということは、とんでもない屈辱であり、
    受け入れられない負い目だったのだろう。
    その捌け口を、女たちを騙すことであがなっていたのかもしれない。

    荒野さんは「ママがやった」に続き2冊目だが、
    どうしようもない男を書かせると天下一品だなと思った。

  • 結婚詐欺師の話。
    さりげなく女性の心に入ってくる男と、騙されてお金を巻き上げられた女たち。

    騙されて生活が変わってしまった女性の哀れさを描くばかりかと思いきや、結婚詐欺師も奥さんから見れば暗い部分ばかりだった。

    終始暗い話だったな。掃除代行のマネージャーをやっている女性が一番哀しかった。

    Mr.Childrenはこんなふうに歌っている。
    『"幸せ"ってつまり何なのよ 結婚であったり恋が女の全てじゃないにしても 心にポッカリ空いたまんまの穴を 誰が埋めてくれるの』

    みんな穴だらけなのかもしれない。男も女も関係なく。
    誰かに穴を埋めてもらいたい。

  • 結婚てなんなのかしら、と。
    なんかしみじみと考えてしまいました。

    井上さんは不安定さを出させるとすごいなーって思う。
    なんていうの、すっごく大きくて圧倒的な絶望とかじゃなくて。
    日常に潜んでいるような不安が引っ張りだされる。
    するすると周りに絡んで、その気配に心がざわざわする。

    この物語は誰に感情移入するわけでもなく読んだけど、
    そういう不安なものをはいどうぞって常に提示されているようだった。
    それがなんかうっすらと怖かったなぁ。

  • こういう気持ちの悪さ(褒め言葉)を描かせたら著者は一級だと思う。『潤一』の悪い版というか(笑)
    2章まで読んで、ああこういう話が続くのか...と思っていたら、いい意味で覆された。気分のいい終わり方ではないものの、それも含めた完成度だと思う。こんなタイトルで、すっきりと垢抜けた装丁。なのに中身は黒々。

  • 結婚願望を捨てきれない女、結婚生活から脱したい女…。
    満たされない女たちの欲望を金に換える古海とるり子、そして古海を家で待つ妻。
    果たして彼らに待ち受けるものとは?
    (アマゾンより引用)

  • 現状に満足できない女達。その心に巧みに入り込む結婚詐欺師がいた。だが、彼の心にも埋められない闇があった…。
    父・井上光晴の同名小説にオマージュを捧げる長編小説。

    結婚詐欺師と翻弄される女という、波瀾万丈さを想像させる設定のわりにおとなしい印象。
    登場人物達が冷静に自己分析しているせい?騙したり騙されたり、愛憎が入り混じる心も、もて余したり壊すこともなく、客観的に見ているような冷静さを感じました。

  • 場面があっちこっち飛んで、なんだかよく分からなかったというのが正直なところ。この明るい野原のような色の表紙がすごいギャップ。なにか思惑があるんだろうか?読了すればわかるのかなと思っていたが、わからなかった。
    主人公の容姿も想像しにくくってなんだかぼやっとした印象の作品だった。

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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