雪と珊瑚と

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著者 : 梨木香歩
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年4月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101438

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雪と珊瑚との感想・レビュー・書評

  • くららさんが、とてつもなく素敵だ。

    私が崇拝する三大おばあちゃんの一人、『西の魔女が死んだ』の
    まいのおばあちゃんを彷彿とさせるような、しなやかな強さと温かさ♪
    (おばあちゃんと呼ぶにはまだまだお若いので、
    崇拝するおばあちゃん軍団には加えられないのが残念だけれど)

    母によるネグレクトで、帰宅しても食べるものもなく、ひとりぼっちで調味料を舐め
    給食でなんとか生き永らえ、21歳にしてシングルマザーとなった珊瑚の

    愛情こめた家庭料理がひとかけらも入ったことのない淋しい胃袋を
    ホクホクのおかずケーキや大根の茹で汁のスープで温かく満たし、
    疲れた人をおなかの底から支えるお惣菜の店を出す、という
    飢えを味わい続けた珊瑚ならではの夢を抱くきっかけを作り、
    人見知りの真っ只中の雪ちゃんを預かりつつ、その夢を後押しする。。。

    そんなくららさんや心ある仲間に支えられながら、
    カフェで出すメニューを選び、ネーミングに頭を悩ませる珊瑚に
    「ほらほら、アトピーでも食べられる、あの長芋のメロンパンもどきも入れないと!」だの
    「『エビとブロッコリ』、『カニとブロッコリ』は、あんまりだよ!
    もちょっと飾り気があっても。。。」だのうるさく語りかけ、
    すっかりスタッフになった気分でメニュー作りに参加している自分にハッとしたりして。

    。。。というくらい感情移入して読み耽っていたので
    珊瑚がネグレクトを受けて、食事を満足にとることすらできなかったことも
    人の好意を利用するような振舞いを薄汚いと感じ、何につけても遠慮がちであることも
    彼女が抱える事情を何ひとつ知らないのに、
    「私はあなたが嫌いです。」とわざわざ手紙を送りつけ
    「周りから少しずつ親切と同情を掠め取る浅ましい人」と決めつけ
    「中身がなにもない、不愉快だ、あなたの生き方が鼻についてたまらない」
    と、悪意を投げつける美知恵には、珍しく怒りがこみ上げてしまった。。。

    そんな一方的な手紙にまで怒りより先に納得と反省を抱いてしまう珊瑚に呼びかけたい。

    人の胃袋も心も温めるお店を出せたのは、
    さみしい胃袋と心に悩んだあなたへの、紛れもない「お計らい」だよ。
    素晴らしい人たちがあなたの周りに自然に集まって支えてくれるのは
    同情でも施しでも哀れみでもなく、
    あなたが不器用だけど真摯に生きようとしているからだよ。
    自分の観点に凝り固まって勝手にあなたを格付けして
    投げつけてくる毒を、唯々諾々として飲み込まなくていいんだよ。

    母の愛を得られずに大きなうろを抱え、
    外についた内臓に傷を負いながら生きていく糧を得ようとしていた
    さみしい木のようだった珊瑚は
    お腹の中に雪というあたたかい命を宿すことで、
    空っぽだった内側と傷ついてボロボロになった外側をくるっとひっくり返して
    「おいちいねえ、ああ、ちゃーちぇねえ」と、雪と一緒に幸せをかみしめられる
    おかあさん、という人間になれたんだよ。

  • 母からネグレクトを受けて育った珊瑚。
    食べることもままならず、母の愛情を受けずに育った珊瑚が
    雪という子を持ち、周りの人に支えられ、「雪と珊瑚」というお惣菜カフェを開く。

    くららさんが素敵です。
    こんなおばあちゃんみたいな存在の人がいたらどれだけ心強いか。(おばあちゃんっていったらくららさんに失礼かも・・・)

    出てくる料理もどれも美味しそうで、食いしん坊の私はメニューの名を見ながら想像が膨らみ、お腹がすいてしかたなかった。

    珊瑚は多くの人に助けられ、支えられ雪と2人で生活していくことができている。現実は、こんな甘いことはないだろうな・・と思いながら読み進めてたけど、人との出会いはやっぱり大切にしないとなぁと改めて思ったし、
    自分が年をとったとき、くららさんみたいな人になりたいなぁと思った。

  • まず、美しい響きのタイトルがいい。読むまえからずっと思っていた。
    表紙はどことなく哀しみのような寂しさのようなものを感じた。
    それはきっと珊瑚の覚悟なのかもしれないと
    読み終えたいまは思う。

    生まれたばかりの雪のかわいらしいことといったらない。
    珊瑚の自立心はそのかわいさに比例するほど確立している。
    頼る人はいない。ひとりで生きていかなければならない。
    雪を育てていかなくてはならない。
    その気持ちの強さ。まだ21にして、なんと立派なことか。

    出会いは大切だと心の底から思う。珊瑚は出会いに恵まれた。
    そして珊瑚の生き方はそれに応えている。

    美知恵の言動は、わたしのおなかのなかに重いものがたまっていった。
    もう関係がなくなってから、そんなことをわざわざ伝えるなんて
    なんの自己満足だ。


    料理が作っているときからおいしそう。ネーミングもいい。
    わたしも「雪と珊瑚」に行ってみたい。
    自分を休めることのできる場所にできるだろう。

    夢中になって読み、夜更かしをしてしまった。

  • 二十一歳のシングルマザー、珊瑚。
    ようやくお座りが出来るようになった娘の雪。
    散歩の途中で見つけた張り紙で出会って、娘の預け先となったくららさん。

    珊瑚は生活のために娘を預けて、パン屋でのアルバイトを始めたけれど、「人の生活を支えるような食べ物を提供したい」とカフェを開こうと考えるようになる。

    背の高い屋敷林に囲まれた古い家。
    顔の見える生産者が育てた無農薬の野菜をふんだんに使って、手間暇をかけて作ったお惣菜。
    ネルドリップで丁寧に入れた芳醇なコーヒー。

    ずいぶん前にNHKの昼の番組で武蔵野の面影を求めて、三鷹か吉祥寺あたりの家から中継しているのを見たことがある。
    あれは、夏の終わりだったか秋口で、少し和らいだ陽射しが木々の間から差していた。家はまるで旧軽井沢あたりに建っていてもおかしくないような雰囲気があった。
    屋敷林という言葉からその家を思い出した。

    豊かなうまみや力強い味わいを持つ野菜を丁寧に料理をして、人を養う食べ物をつくる描写。
    人の温かな思いやりや善意、妬みや複雑な感情。
    丁寧に丁寧につづられていく。

    自身もシングルマザーの母親に育てられ、愛された記憶が薄い珊瑚が不思議と人を引き付け、助けられて、カフェの営業も軌道に乗る。資金もなく、飲食店でろくに働いた経験もない珊瑚が店を切り盛りして成功することや、彼女を支えてくれる人たちの献身ともいえる態度も、現実にはなかなか難しいことだと思う。

    日常は淡々と過ぎていき、何かが起こっても、期待されるような解決もないし、その事実を深追いすることもなくそれで終わっていく。
    とてもあっさりしているようでいて、けれどリアル。

    P316
    すべてのことに解決がつかないまま、けれど生活はそんなことはお構いなしに次から次へと続いていく。朝が来て夜が来て確実に日々は流れる。

    本当に、そう。
    それでも、つかの間、丁寧に料理をしたり、誰かのために時間を割いたり、けれど結局効率的でもなく、一見無駄が多いような日々を時には必死に、時には淡々と過ごしていく。

    子どもを持つということも、シングルマザーであるということも、
    独身でいるということも、嫌いな人がいるということも、とにかく否定されない。すべてあり、と思わせてくれる。

    少し疲れている人に是非ともおすすめしたい。

  • ラストがいい。すごく好き。
    なんてなんて喜びに満ちた瞬間なんだろう。
    この幸せはきっと彼女のことを包み続けるはず。
    そして彼女も周りの人に安らぎと喜びを与え続けるはずだ。

    物語の最初、珊瑚さんと雪ちゃんがくららさんに出会う場面から、圧倒的な安心感に包まれた。
    くららさんが作る料理の湯気が私のことまで癒してくれるようだった。

    珊瑚さんが出会う人が彼女に優しいのは、珊瑚さんが魅力的な人だからだと思う。
    好きになれない人に対して、他人はこんなに近寄ってきてはくれない。
    私には美知恵さんの言うことが正しいとは思えない。
    手紙で言いたいことを一方的にぶつけるというやり方も気に入らない。
    顔を見ないで言葉を受け取ることはとても難しい。
    書き手にそんな意図がなかったとしても、受け手は攻撃的なニュアンスを強く受け取ってしまうことが多いように思う。
    美知恵さんの手紙は、そもそも攻撃的なものなのだから尚更だ。
    卑怯だと思う。偉そうなことを言っているけど、あなたのしていることはなんだと言ってやりたい。

    珊瑚さんや雪ちゃんには、そんな悪意をおおらかに受け流せる余裕を常に持ち続けてほしい。
    そしてきっと大丈夫だと、物語のラストの2人は思わせてくれる。
    幸せってこういうものだとわかった気がした。

  • 「赤ちゃん、お預かりします」

    そんな貼り紙を見て、藁にもすがる思いでくららを訪ねるシングルマザーの珊瑚。娘の雪を育てるため、生きるために働かなければならない。

    パン屋で働く中、アレルギーを持つ男の子、その母親と出会う。アレルギーを持つこどもにしてあげられることはないか、ナーバスになることもやむを得ない母親の力になれることはないか。
    くららと過ごし、一緒に食事を取る中、他者から何かあたたかいものを手渡してもらうということが、生きる力に繋がるということに気づき、珊瑚はカフェを開きたいと思うようになる。


    カフェを開くまでの過程がきちんと書かれてあるのがとてもよかったです。
    また、シングルマザーであることの気負い、同情されたくないという気持ち、嫉妬心などを素直に認めて克服しようとする珊瑚が清々しいなと思いました。
    前向きで料理上手のくららがとても魅力的です。相手の全てを認め、受け入れるという姿勢、彼女の信仰に関わるものもあるかもしれないけれど、すごいなぁと思いました。くららの作るごはんが食べたい!
    時生さんも場を和ませてくれる素敵なキャラでした!

    母親に愛されないということを受け入れた珊瑚の気持ちは想像を絶します。それでも雪の母親として、一人の人間として前を向いて生きる珊瑚の強さ、母親の強さを感じました。

    最後の雪の「おいちいねえ、ああ、ちゃーちぇねぇ」はほんとに泣けました。
    「食べる」こと。「生きる」こと。
    ごはんを食べると元気になる。
    それは一杯のスープでもたとえさ湯だってかまわない。「食べる」という行為は明日も頑張ろう、生きようと思わせる、心の「復興」に繋がる。
    単純だけれど、その本質に気付かされる、考え直すきっかけになる一冊です。

  • 働く女性、子供のいる女性、日々の生活に疲れてる女性、夢がある女性、そんな女性に読んで貰いたい一冊です。

    シングルマザーの珊瑚、そしてその娘の雪の物語。珊瑚が子供を育てながら働いて生きることの難しさに直面しているところから物語は始まります。そこで出会うのが、くららというお祖母ちゃん。このお祖母ちゃんは元修道女で、作者の梨木さんっぽい登場人物。くららと出会うことでゆっくりと珊瑚の人生が動き出して、ついにはお惣菜屋さんを開業します。その過程での珊瑚のゆっくりとした心の動き。多くの女性が共感するんじゃないでしょうか。

    途中で美知恵っていうとにかく性格の悪い女が登場するのですが、私は彼女のストレートな思い(というか悪意といっても良いかも)にもっとも共感してしまった。この女性は珊瑚に出会った先から敵意むき出し。とにかく性格が悪い。
    それは「シングルマザーの何が偉い?」っていう本当にストレートな負の感情から来ているのだけど、そんな美知恵に対して馬鹿正直な潔さを感じた。隠そうとしない悪意。すごく良く言えば正直。
    そんな美知恵の直截な悪意に晒された珊瑚はそこで初めて自分を客観視します。
    わたしはこの物語ではこのシーンが一番好きです。

    賛否両論だと思うけど、くららとの出会いで得たものが珊瑚の光だとしたら、対照的に美知恵との出会いで得たのは珊瑚自身の影の部分。でも嫌な出会いだからって本人に負の影響があるわけじゃありません。光と影、両方の自分を知ることで人は大きく成長できるんです。

    地味な作品だけど色々考えさせられました。

  • 山野珊瑚は、21歳。
    同棲のような結婚。出産は同じアパートで助産師養成学校に通っていた那美に手伝って貰った。
    そして離婚。生後7ヶ月の赤ちゃんの雪を抱え、途方に暮れていた。
    まず預けなければ働くことも出来ない。
    さまよっていたら「赤ちゃん、お預かりします」という張り紙を見つける。
    古びた普通の民家に一人で住む中年の女性・藪内くらら。
    くららの好意に救われ、背水の陣からの暮らしが、どうにか始まる。

    高校を中退したときから勤めていたパン屋に戻ろうとすると、今は歓迎するけれど、実は来年店を閉めると言われる。
    親切な店主夫妻だが何か事情があるらしい。

    くららは料理上手で、知恵と包容力がある。
    尼僧として海外に行ったこともあるという変わった経歴は、少しずつゆっくりとわかってきます。
    くららの甥の貴行は農業をやっていて、美味しい野菜を作っていました。
    珊瑚は生い立ち故にあまり人に馴染まない方だったが、少しずつ、くららに料理を習っていきます。
    くららさんの料理と気配りが何とも素敵なのです。

    パン屋「たぬきばやし」で働きながら、仕事帰りで疲れた人に、身体にも心にも優しい料理を作りたいと思い立ちます。
    店を出したらいいと助言され、驚愕するが。起業のために借金する方法があるのだ。
    店を出すとはどういう事か教えて貰うために、知り合いの店の手伝いに行くと、何もかも初心者なのできびしく怒られてしまう。
    しかし物件を見に行くと、少し駅からは遠いが、木立に囲まれた雰囲気のある古い家で、すっかり気に入ったのだ。
    パン屋のバイト仲間・由岐も積極的に協力。
    意外にとんとん拍子に、店の話は進んでいく。

    珊瑚自身は、やはりシングルマザーだった母にネグレクトされて、家に何の食べ物もないまま何日も放っておかれたという育ち。
    給食で生き延びていた。
    スクールカウンセラーの藤村に思い切ってそのことを訴え、毎朝トーストを食べてから教室に行くようになる。
    高校に行けたのも彼女のおかげだが、母親は学費を払わないまま連絡が取れなくなったので、中退。
    その後は連絡できなかった藤村にようやく連絡してみると…

    赤ちゃんの雪がとても可愛い。
    子供は無条件にかわいいと思う方ではないんですが、この描写にはやられました。
    夜泣きをされて苦しむ珊瑚にはちょっと同情するけれど。
    そういう時期は大変だよね。
    わずか1時間、雪のいる部屋の扉を閉めてしまったことに深い罪の意識を抱く珊瑚。
    こんな一途な人だから、周りも手助けしたくなる。

    パン屋のバイト仲間だったが、珊瑚を嫌っていた美知恵。
    後にわざわざ手紙に「あなたが嫌いです」と強い非難を書いてくる。
    人に甘えていいのか迷っていた珊瑚は、全否定された思い。

    こういう事が起きうるってことは、年の功でわかります。
    異質なものがよく思われないことは時々あるけど、きついことをわざわざ言ってくる場合というのは~
    言われた側の真実を見ていることはまずない。言う側の性格やこだわり、コンディションのほうが大きいもの。
    ネグレクトされた生い立ちの珊瑚に、ようやく訪れた幸運の方が多かった時期。
    こんな人の様子をポーズと思うのがねえ…美知恵は心得違いをしていると思うけど。
    おそらく店を見に来て、すごい労働量で苦心もしていることに気づいたら、少しは見方が変わるでしょう。少しは。
    言われた側が深く考えた結果、何か成長することもありますよ。
    一人で生きてきたのではないと、珊瑚が改めて実感したように。

    若い無責任な元夫・泰司が顔を出したり、その両親が孫に会いたいとやって来たり。
    行方がわかった母に会いに行ったことも。
    はっきりした結論を出さないまま、珊瑚がなんとなく希望を抱く心境にな... 続きを読む

  • 梨木香歩の小説を読むときって、自分が何かに躓いたり気になったりするときだなあと思います。今の自分の心境とシンクロ率が高かったので星5つです。21歳のシングルマザーの珊瑚が、カフェを併設した惣菜店を開くことを決意し、開店後も葛藤しながら娘の雪と生きていく自分の居場所をつくっていくお話でした。

    珊瑚は、何かにぶつかるたびに不安を抱え、やりたいと決めたことなのに自信をぐらつかせながら、綱渡りのように一歩一歩進んで行きます。確たる支えがないまま進んでいく様子があまりに等身大で夢中で読んでしまいました。支えがないというのは珊瑚がシングルマザーで身分が不安定であるというようなことではなく、自分の決断を絶対的に肯定してくれる存在はいないということです。

    お店を開くことを決断しても、開店しても、そのお店が軌道に乗っても、絶対的な安心感はやってきません。不安を抱えながら、でもやっていくしかないという現実感が丹念に書かれていました。中でも美知恵からの手紙にはひやっとさせられました。文面だけ読めば悪意のある手紙ですが、驚き傷つきながらも「ひどく納得している自分がいる」と思う珊瑚の心情にかなり共感。

    この作品でも、エッセイでも、梨木さんは、自分の人生を遠くから見ているような、自分と現実が乖離しているような、本当は自分はからっぽじゃないか、という不安にたびたび触れています。ついつい不安なときに梨木さんの本を読んでしまうのは、こうした不安に共鳴しているからだと思います。

  • 帯の惹句は「シングルマザーのビルドゥングスロマン」。
    たしかに主人公の成長物語という読み方も出来るけれど、私は著者が『西の魔女が死んだ』からずっと一貫して書き続けているテーマ、傷を負った人がその傷を治していく過程を描いたものだと感じる。

    「癒し」という言葉を使いたくなかったのかもしれない。すっかり薄っぺらなイメージが染み付いてしまったから。残念な事だ。

    そして、小説のフリをしているが「ファンタジー」に分類される物語だとも感じる。
    ファンタジーには異世界を描いて私たちの生きる世界の深い部分を教えてくれるものもあるが、私たちの生きている社会をモチーフにして普段は見えていないものを見せてくれるものもある。
    冒頭から主人公を助けることばかりが起きるストーリーに対して「現実はこんなにうまくいくはずがない」という意味でファンタジーと言いたいのではない。(そういう論調のレヴューがたくさんあるようだけれど)

    私たちの生きているこの世界ではこういうことは起こりうる。それは声高に語られないので他の人には見えることがない。ひとつのきっかけが次のきっかけを呼びあれよあれよという間に自分をとりまく現実が変わってゆく。自分はただ流れてくるものを拾っているだけ(というか拾うのに精一杯)という状況がしばらく続き、気がついたら前にいた場所と全然違う地点に自分が立っている。
    たくさんの人がこういう体験をしているに違いないのだが、その真っ只中にいるときには客観的に見て書き留めている場合ではないし、過ぎた後では夢の中にいたような心地がして今更書き留めたり誰かに伝える気にはなれないし、うまく伝えられる自信もない。
    ただ自分の奥深いところに「こういう時間を自分は過ごした」という記憶がしっかりと根付いて支えとなり続ける。
    これを物語で、一人の人に起きた事柄として描いていくと、こういうストーリーになるのではないか。主人公の内側ではとても深い体験が起きているのだが外側を描くと「なんだかご都合主義」に見える物語になってしまう。

    著者は河合隼雄氏との関わりがあった人。おそらくユング心理学を学んだ事もあるかと思う。作品を読んでいると心理療法の症例を読んでいるような心持になる事がたびたびある。河合隼雄氏の著書の中に、患者が”治っていく”過程で”うまいこと”が起きて、それが大きなきっかけになる事があるという事が書かれていた。
    この物語を一人の患者の治療過程として読んでみることも出来るのかもしれない。そういった意味でも、ファンタジーだと思う。

    ファンタジーだと思う一方で、登場人物そのもののありようには何か現実味がある。主人公が関わる女性達の自立っぷり(良くも悪くも)に対して、別れた男(夫という呼称には値しない)のコドモっぷりはあまりにありふれていて呆れるを通り越して爆笑してしまう。立派な男のように見える時生氏も「肉じゃが」信仰にこだわっていたり、梨木氏の男性観が仄見えて面白い。

    主人公のようにネグレクトや強姦(はっきりとは描かれていないけれど)の経験をして育った人が、人の親切に頼り切る事がなかなか出来ないという描写にはとても共感できる。さしのべられた手をとる事が恐ろしいのだ。それまでの「学習」によって。
    主人公の心の内が語られる箇所で、読みながら「いや、そんなことはない」と相手を信頼すればいいのに、と感じるところがたびたびあった。読む人によっては、「そうそう、信用してはダメ」と感じるのかもしれない。いやもっと若いときの私だったら「信用してはならない」と思いながら読んだかもしれない。パン屋の主人がニュージーランドへ行く理由が登場人物には判らず読者には判るように描かれていたり、書かれていないくららの気持ちを感じられたり。そういうところはまるでグリム童話のよ... 続きを読む

  • 出来すぎな感じが否めない。
    何もかもがタイミングよく現れ、珊瑚を助けてくれているみたいに思えて。
    「そんなおとぎ話みたいな話、あるわけないよ」
    と思う私は今、ちょっとやさぐれてるのかな?
    そもそも、これはお話なのだ。話がうまく進んでそれで幸せを感じて、何が悪いんだ。
    前向きに努力を重ねる人には、くららさんの言うような「お計らい」的めぐりあわせってあるのだろうな。
    だから、何かしらの希望はいつでも持っていようと思える。

    まだ若い珊瑚だけれど、素材と真摯に向き合い、世間に対する諦観とも違う第3者的な視点を保持しつづけるその姿に、エッセイで垣間見た梨木さんの姿が重なって見えた。

    ああ、子供の無邪気さって、本当に天使みたいだなぁ。
    ラストシーンでは、珊瑚じゃないのに、涙腺が緩んでしまって。
    読後は心がほわっと温かだ。

  • 最初、出版社の新刊情報ページにタイトルが載った時、それは、「雪と珊瑚」だった。たった四文字に心惹かれて、素敵だなぁと思ったものだけれど、出版がのびのびになり、最終的なタイトルは、「雪と珊瑚と」になった。たった一文字がつけくわえられたことで、雪と珊瑚、シングルマザーとその子供の世界に、たくさんのひとたちがつながっていることが、わかる。

    珊瑚は親にネグレクトされ育ったせいで、ひとに頼るということができない。ただ目の前にある現実から逃れるという一心で21歳まで生活をしてきた。その彼女が、くらら、という珍しい経歴をもつ女性と出会い、総菜カフェを開くようになるお話。

    カフェの経営は一見順風万般だが、珊瑚の性質で、いくつもの葛藤を抱え、それを考え、考え、ゆっくりと乗り越えていく。
    その悩みは、共感できることもあれば、そういうことを考えるのかという発見もあり、その彼女の内面を深く描くことで、「かわいそう」な話でもなく、単なる成功物語でも終わらせていない。

    文章は、最近ずいぶん「軽く」て「短い」文章を読んでいたせいか、段落のない長い文章にいったんひるむが、読み出すと心地よい。やはり梨木さんの文章だ。静謐で、奥にある力を感じる。

    物語は、いったんはエンドマークをつけているけれど、わたしは続きがあるように思えてならない。なにより続きが読みたい。雪が大きくなるにつれて、珊瑚の世界はもっと広がざるをえないだろう。そこでどう対応していくのか。見守りたい。

    それにしても、物語の最後で、どっと涙があふれそうになった。
    赤ちゃんの「雪」の成長物語でもあるこのお話。彼女の描写もまた、かわいいの一言で終わらせない。赤ちゃんは赤ちゃんなりに感情があり、その発露があるのだと気づかされる。その描写の細かさは、珊瑚がいかに雪をしっかりと見ているのか、ということにもつながっている。

  • 「春になったら苺を摘みに」がすごく好きで。
    あの、丁寧に生きていくこと、というか、きちんといきていくこと、というか、そういう姿勢にすごく惹かれる。
    この小説のなかに出て来るくららさんが、まさにそういう丁寧にきちんと生きてくことのお手本のような人で。
    彼女のような人がそばにいてくれたら、きっと疲れてぎりぎりのところで立ち止まってしまったときにほっと肩の力を抜いてため息をつけるんだろうな、と。

    「他者から温かい何かを手渡してもらうーそれがたとえさ湯であってもーそのことには、生きていく力に結びつく何かがある、それは確かなことだ」

  • 自分の過去と重なる部分が多く、読み進めるうちに古傷が痛むこともあって、辛い事もあった。

    誰にも頼らずに育ててきたようで、実は色々な人に助けられ、支えられている。
    例えば、道で転んだ人に手を差し伸べるのと、それは同じだと私は思う。
    助けられて当たり前と思うのは間違いだけど、助けられたことに卑屈になるのも違うんじゃないかと。
    でも渦中の珊瑚にはそれがなかなか呑み込めない。
    このお話は、様々な経験を通して、珊瑚が「大人」になっていこうとする過程を描いたものかなと感じた。
    子が出来たから大人になる訳でもなく、就職したら大人でもない。という。

    最後に、雪の言動にいちいち涙が出てしまう私もやはり心のネジが緩んでるのだろう。
    夜泣きが続いて自分も限界で一人部屋に閉じ込めてしまうところ、気持ちが解りすぎて泣きながら読んだ。

  • シングルマザーの珊瑚という女性が、くららという不思議な、素敵な女性と出会い、カフェを開店させながら自己の心や環境と向き合って進みゆく話。
    全体的に出来過ぎてる感じが大きかった。まぁ、お話なのでそれで良いのだと思いますが(笑)
    くららの作る食事のシーンは、食べることの大切さや素晴らしさを実感することが詰まっていた気がする。
    こんなお店は周りにないけど、たしかに近くにあれば行ってみたい気持ちになった。

    ただ、もう一つ何か盛り上がりが欲しかったなぁ。再読はしないかな…

  • 食べることって本当に大切なことなんだと教えてくれる。
    珊瑚が決意し、お店が建って経営していく時間とともに雪も成長していくのも微笑ましかった。
    これは雪だけでなく珊瑚も成長してる、親子で成長していく物語なんだなと思った。
    最後は笑顔で読み終えられる素晴らしい作品。
    ただ、美知恵の悪意や泰司のぶっとびさには頭を殴られるような衝撃があったけど「ああああいるいるこんな奴」と同時に思った。
    美知恵のように悪意を相手に思いっきりぶつける(しかも手紙!)奴や思考回路が訳が分からない泰司の様な奴にはこちらの言葉が通じないので読んでいて腸煮えくり返った。
    それに対する珊瑚の対応を見ていて「優しすぎる!」と思ってしまった。
    でも毅然とした対応をとれない珊瑚が逆に生々しかった。
    2人とも結局は雑誌に取り上げられるようなことを成し遂げた珊瑚に嫉妬とあわよくば利益にあずかろうとする嫌な感情で近づいてきてるよな…。
    泰司のほうが訳わからないな、「今更どの面下げていってきとんねん!雪にあんまり興味持たない時点でお前が情じゃなくて金や名声にすり寄ってるのが丸わかりじゃいボケカス」と罵りたくなった。
    いや、本当にわかれた元妻が今でも自分のこと好きでいてくれるって思考何でもてるの?馬鹿なの?馬鹿だわ
    沙羅に関しては今時の若者の典型的な例だけど自分も同じことしてないか凄く怖くなった。
    私も彼女と同じことを無意識にしてたらどうしよう。

  • 良かったんやけど、
    雪のかわいさと珊瑚の悩みみたいなんはすごい共感できるんやけど、
    こだわりのカフェをするっていうのいる??
    てゆうか簡単に実現しすぎじゃない?
    ゴハンにたいするこだわりもたいしてなかったのに
    いきなり専門的に主体的にカフェなんてできる?
    むー。他の人に頼りまくるのはキャラクターの性格やから良いとしてもするするいきすぎて拍子抜け。
    いろんなことを一つの話に詰め込んだ感があって、
    中途半端に入りきれずに終わりました。
    むー。残念。好きやから残念て感じー。

  • 始まりのざっくりした、あっけらかんとした人と繋がって離れたところなど
    好き嫌いがはっきり出そう。
    そのへんをすいっと抜ければさくさくとすすめる。

    気になったところで立ち止まるもいいし、
    走り抜けるように読んでもいいし。

    山は「手紙」かな。

    手紙にどう応じるかで印象も変わるんだろう。

    不幸ではないけれど、満たされるわけでもなく不安がある生活は
    まだまだ続くのだった。
    でもそれは誰でもおんなじことだね。

  • いろんな強さを感じます
    珊瑚さん自信の強さ
    運をつかむ強さ
    でも珊瑚さんはちっとも自分を強いなんて思っていなくて。

    すごいなと思う
    でもすごくないと思うひともいる

    全体的にはとても優しく、
    でもしっかりと厳しさとか
    いろいろいろいろつまっていて

    実際にはこんな風に進むのは
    なかなか難しいかもしれない
    それはそれは
    とてもよくわかっているけれど
    希望がもてるなあ!って。
    希望がするりともてる作品て最近会えたかなあって

    反発しないでするすると読めたのは
    梨木さんだからかな
    もし同じテーマでまた違う方が描かれる本があったら
    どう感じるかな

    なんというのかしら
    読んで、あ、よかったなあって
    じんわり思える自分でよかったなあーって
    思ったのでした

    うまくいえないな!

  • 私は梨木さんのあまりよい読者ではないけれど、これは梨木さんにしか書けないお話だと思えてならない。丁寧に丁寧につむがれた、心の深いところに響いてくるような物語だった。

    親に捨てられたも同然に育った主人公珊瑚が、赤ん坊の雪とともに生きていこうとする中で、様々な人たちに出会っていく。「運命的な偶然」と呼びたくなるようなくららさんをはじめ、それぞれの人生を生きる人と珊瑚との関係が、濃淡をもって細やかに綴られている。その距離感が絶妙だ。

    「いい加減なところがない」と友人に評される珊瑚は、極めて厳しい自らの境遇をいたずらに嘆いたりしない。また、親に愛されなかったため、他人に「甘える」ということに敏感にならざるを得ない。まず、その静かな強さと自負心に打たれる。苦しさを内に抱え込んで、頭を上げて生きていこうとする気概に打たれる。

    その珊瑚が、雪を何とか育てようとする中で、どうしても他人の手助けが必要になり、葛藤しながら自分のプライドと折り合いを付けていこうとする。そこが物語の一つの大きな核になっている。赤ん坊は、無力で、かつエネルギーに満ちている。心の底から愛おしく、同時に、自分の心身を脅かす存在でもある。その存在を受け入れることで親は変わっていかざるを得ない。そのことが「母性」なんてもの抜きに説得力を持って語られていると感じた。

    このお話になんともあたたかい空気を運んでいるのが、丁寧に作られる料理の数々だ。いつもお腹をすかせた子どもであった主人公が、生きていくための仕事としてお惣菜やをする。その厳しさが、一見夢物語のようなカフェ開店への流れに、一本筋の通ったものを与えている。それにしても、どれもこれもなんておいしそうなんだろう!

    最初の方で、石原吉郎の詩が少しだけ出てきてちょっと驚いた。考えてみれば、人間の生死についてとことん突き詰めた、全く緩みのないその詩や文章は、なるほど梨木さんの世界に通じるものがある。極めて倫理的で、透徹したまなざしが共通している。

    他の作品を読んだときも、梨木さんの書かれるものには「静かな怒り」が流れていると感じた。人の大事なものを踏みにじっていくものへの怒り。しかし、そんなものにたやすく屈したりはしないのだという、人間性への深い信頼が透けて見えるところが作者の素晴らしさだとあらためて思った。

  • 読み終わって、いろいろな感情にぐるぐるした気分になる。
    21歳のシングルマザーがカフェを開店する話、と聞いて予想していたものとは違う。
    主人公・珊瑚自身は世間知らずなところもあるが、思慮深く、常識がないところを指摘されて憤慨するよりむしろ素直に聞き入れるような真面目な性格だ。偶然とも呼べる周囲の様々な助けや出会いがあって、開店まではほとんどとんとん拍子といっていいほど順調にこぎつける。おいしい惣菜とコーヒーを提供する隠れ家的なカフェと、そこに集う人々……、そんなよくある物語か、と途中までは落胆しながら読んでしまっていた。でも、違う。
    そんな、生ぬるい物語ではなかった。
    カフェ開店が主眼のストーリーではなかった、当然ながら。
    本当の物語は、カフェ開店後にある。
    現実はそんな単純ではない。カフェ従業員の人間関係や珊瑚が受け取った手紙をきっかけに、また娘の夜泣きも重なって、珊瑚自身捕われていながら向き合おうとしてこなかったものに否応なく、向き合っていく。母娘の関係から本当の意味で自由になり、一人の人間として改めて立つ。
    物語後半のその過程が、読むのがつらい。しかし珊瑚自身が捕われていたものから解き放たれ、最後の場面、娘・雪がたどたどしく発した言葉で思わず落涙する。
    ぜんぜん、生ぬるくない。読んでいるこちらも、誰かしらに感情移入し、自分の嫌な面をつきつけられ、でもきっと何かに救われる。読んで、良かった。

  • ★自分の中でいろいろ分裂していることがある気がして。散らかった自分の想いを整理したいなと思って、再読。きっと珊瑚のように機が熟すとき、つまりよいタイミングがご縁があればあるような気がする。それまでは焦らずにいようと思う。それにしても、くららさんがいいなぁ。まいのおばあちゃんと重なる。押しつけがましくなく、でも、迷う人の進む道をまっすぐに示す。そんな人になりたいな。(2014/05/05)

    ★再読。最近、梨木さんの本ばかり読んでいる。自分が思っている以上に切羽詰まっているのかもしれない。『不思議な羅針盤』を読んだばかりなので、あぁ、梨木さんは自分が体験したこと、それを通して感じたことをするりと物語に反映されているんだなぁとしみじみと感じた。身の丈にあった生活。きっと私自身の許容範囲をこえたことばかりに囲まれていて、落ち着かないのだと思う。スケールを小さく、密に。そのことを心に留めながら、日々を見つめていたい。(2013/03/07)

    ★この物語の主人公(のひとり?)の珊瑚は、マーガレットに似ているなぁと思いながら、ページを重ねていった。

    様々なことに葛藤しながら、でも、その時がきたらしっかり向き合う。言葉にも誠実。そんな珊瑚と珊瑚のまわりでそんな珊瑚にふんわり寄り添っている人たちが好きだなと思った。
    今、きっと私たちは個人レベル、それからもっと大きなレベルで生き方を社会の在り方を、価値観の見直しを迫られているのだと思う。この物語はそれに対するエールのような気がしている。ゆっくりゆっくり、でも忘れずに、そして確実に。

    それにしても、自分の住まいの近くに「雪と珊瑚」のようなカフェとそのカフェがあるような空間があったらいいのになぁとしみじみと思った。(2012/04/29)

  • 自身は、親からのネグレクトの経験のある21歳のシングルマザー珊瑚が、周りに助けられ、子育てをしながらカフェを開く話。

    カフェが軌道にのるまでの部分は、なんとも優しく、いいお話でした。
    終盤、珊瑚の生い立ちが明らかになるにつれて、やるせない気持ちになりましたが、珊瑚の強さに感心しつつ、雪と珊瑚親子を応援しながら読み進めていました。

    珊瑚の一番の協力者となったくららさんが素敵です。
    珊瑚のやっているカフェもとってもいい。近くだったら、絶対通うと思います。

  • おかずケーキ美味しそうです。
    周りの人を味方につけることができるのも、周りの人に上手に頼ることができるのも、才能というか、能力だと思う。そういう生きる力って羨ましい。

  • 珊瑚は21歳。生まれたばかりの娘・雪を抱えながら、明日生きるのに必要なお金もなく途方に暮れていた。しかし様々な人と出逢い、心にも体にもやさしい惣菜カフェをオープンさせることになる。

    最初は単なるカフェオープン物語かと思ったが、徐々に主人公の珊瑚が抱える問題へ踏み込んでいく。子供時代に母親に育児放棄され、誰にも頼らず、心を寄せることもなく一人で生きてきた。妊娠が発覚して相手の男性と結婚するがすぐに離婚し、アパートの隣室に住む助産師見習いの那美に雪を取り上げてもらった。幼いころは「母親によって傷ついた子供」である自分を通してでしか母親を見ることができなかった。
    しかし娘の雪とカフェが彼女を変えていく。自分が子供を育てる側になり、自分と雪との関係を通して、自分と母親との関係を見つめ直すことができるようになったのだと思う。
    カフェオープンに向けて多くの人と交わりながら、珊瑚は食材や料理、経営についてはもちろん、人との関わり方をも学んでいく。特殊な家庭に育ったために、他人と比べて自分は何かが欠落しているということを珊瑚は自覚しているが、卑屈になるのではなく、その穴を埋めようと前向きに物事に向き合っている。どんなことでも柔軟に受け入れて自分の糧にしようとする彼女の素直さが良いと思った。
    また周りの人々の様々な考え方に触れて成長したことで、母親とあらためて向き合う覚悟を決めることができるようになった。母親に母性がなかったのは認めざるを得ないが、その母の中に娘である自分の存在や、人として尊敬できる部分を発見し、珊瑚は過去の自分から脱することができたようだった。

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雪と珊瑚との作品紹介

珊瑚、21歳。生まれたばかりの赤ちゃん雪を抱え、途方に暮れていたところ、様々な人との出逢いや助けに支えられ、心にも体にもやさしい、惣菜カフェをオープンさせることになる……。

珊瑚(さんご)
21歳。家庭の事情により高校を中退し、20歳で結婚するが、約1年後に離婚。雪とふたりで暮らしている。

雪(ゆき)
珊瑚の子。生後約7ヶ月。

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