恋スル古事記

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.29
  • (2)
  • (6)
  • (10)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 67
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041103197

作品紹介・あらすじ

初体験、禁断の愛、異種婚姻、自己犠牲…「古事記」を代表する、激しくもおおらかな5つのラブ・ストーリー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2020.10.11

    恋というより、愛憎
    古事記の解説としてはかなりわかりやすい

  •  『古事記』編纂1300年を記念しての出版だろう。近藤ようこの書き下ろし。古事記から5編の恋の物語が、いつもの軟らかくシンプルなタッチとともに紹介されていて読みやすい。
     國學院大學の卒業で、古事記を40年も愛読してきたというだけあって、それぞれの物語の最後に付けられた<ちょこっと解説>がなかなか読ませる。
     第1編 イザナキとイザナミ:「まぐわい」とは、目を見合わせて愛情を知らせるめくばせが元の意味であることを初めて知る。
     第2編 オオナムジとスセリヒメ:「オオナムジ(大国主)」の多くの試練は一人前の大人になるための通過儀礼という解説にも納得。
     第3編 ヤマサチヒコとトヨタマヒメ:「異類婚姻譚」で、正体がばれて分かれてしまう結末が多いことについて、折口信夫は、「異郷から嫁いできてその土地になじむことができず、子どもを残して帰っていく母たちを物語化した」と言っているらしいが、説得力のある説だ。
     第4編 サホヒコとサホヒメ:サホヒコが妹のサホヒメに向かって「私の衣の紐は誰が解くのか」と最後の別れに際して告げる言葉には、深い意味が隠されていることも分かる。
     第5編 ヤマトタケルとオトタチバナヒメ、ミヤズヒメ:月の初めの日を「ついたち」というが、ここでも折口信夫の説が紹介されている。古代において生理中は女が神に召され神に仕える期間であり、巫女の生理が始まる(月が立つ)日が、「つきたち」→「ついたち」となったというのも面白い。(こもっていた月が出始めると言う説が一般的のようだが)
     近藤ようこのコミックに導かれて、初歩的な入門は果たせた。そろそろ『古事記』の原典に挑戦するか。

  • 古事記ブーム到来!?

    角川書店のPR
    「イザナキとイザナミ、ヤマトタケルとミヤズヒメ、山幸彦と豊玉姫など、「古事記」を代表する激しくもおおらかな5編のラブストーリー。あなたは恋人の本当の姿を知っても愛し続けられますか?」

  • 古事記の中でも代表的な5つの物語を、神々の恋にスポットを当ててやさしく描いた一冊。近藤ようこ先生の描く美しい女神、凛々しい男神の魅力的なこと!もっと読みたい。

  • 恋をテーマに、『古事記』のなかの5つの物語を選んでマンガ化。各篇のあとに、「ちょこっと解説」が挿入されて理解を助ける。
    (1)黄泉津比良坂(よもつひらさか):イザナキとイザナミ
    (2)オオナムジの冒険:オオナムジとスセリヒメ
    (3)綿津見(わたつみ)の魚鱗(いろこ)の宮:ヤマサチヒコとトヨタマヒメ
    (4)稲城(いなき)の火:サホヒコとサホヒメ
    (5)やまとをぐな:ヤマトタケルとオトタチバナヒメ、ミヤズヒメ

    正直なところ、私は著者の絵が好きではない。タッチが粗く、顔の描き分けもほとんどないからだ。
    しかし、俯いてぽろりと涙を流す表情がいい。『五色の舟』もそうだが、悲哀のある儚い物語がよく似合う。

    どれも有名な話なので、『古事記』を読んだことがなくてもすっと読めるだろう。
    私は一応『古事記』を通読したものの、(4)は記憶に残っていなかった。悲愴な話で、サホヒメの表情に悲しみや決意がよく表われていて胸を打った。

    (1)といい(3)といい、昔話でもおなじみのパターンだが、男が約束を破って女の正体を見てしまう話にはため息が出る。どの物語でも、女性の方が聡明で芯が強いのは現代と共通しているようだ。

    私が本書のなかで最も好きな女性は、(5)のオトタチバナヒメ。聡明で、蔭ながらヤマトタケルを支える。「さねさし 相模の小野の 燃ゆる火の 火中(ほなか)に立ちて 問ひし君はも」という和歌が、彼女の奥ゆかしさを引き立てているようだ。ヤマトタケルは他人への共感力を欠くところがあるが、彼女には思い遣りを見せていて、似合いの夫婦だったと思う。

  • やさしく、上品な古事記の入り口本です。やわらかい線で浮遊感のある画風で、キャラクターがとっても可愛い。

  • 古事記のなかの恋愛譚をマンガ化したもの。
    シンプルで読みやすかった。
    超~初心者には導入本として良いかも。
    それなりに古事記を知っている人にはちょっと物足りないかもしれないけれど…。
    ちょこっと解説がけっこう奥深い。

  • 「ぼおるぺん古事記」のような力作と較べてはいけない。

    語り口はあっさりしているが、男の単純さと女の情念が描かれる。
    しずかな描写をキックボードとして、冷静な仮面の裏側にべっとりと張りついたヘドロのような情念を、読む。

  • 近藤先生がたしかな知識に基づいてわかりやすくまとめた古事記よりえりすぐった短編集。恋スル、という題名だが古事記入門書として楽しめると思う。近藤先生の漫画は素朴だけど心に迫るものがある。

  • 古事記初心者向けの入門的漫画。古事記内の「恋」を主軸にした短編形式。まんがの間にはさまれた解説もライトに見せてなかなかさすが。個人的には近藤ようこさんの独特の世界観が好きなので、もっと濃くても嬉しかったかなー。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1957年新潟市生まれ。漫画家。国学院大学文学部卒。大学在学中にデビュー。「見晴らしガ丘にて」で第15回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。折ロ民俗学や中世文学への造詣が深く、安吾や漱石作品の漫画化にも取り組む。作品は「水鏡綺譚」「説経小栗判官」「ルームメイツ」「恋スル古事記」「戦争と一人の女」「死者の書」「夢十夜」ほか多数。第18回文化庁メディア芸術祭大賞受賞。

「2021年 『兄帰る 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

近藤ようこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×