アベノミクスの不都合な真実 インフレ救国論の罠、デフレ悪玉論の嘘

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105085

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  • 類書と同内容。アベノミクスに対する反論は定まってきたか?

  • 正式決定は2013.10になるそうですが、消費税の増税が決まりそうです。先週新聞を見ていたら、併せて法人税の減税も検討しているそうです。ネットで見る限り、自民党や公明党の一部から反対の声も上がっているようでどうなるか分かりませんが、前回の失敗を繰り返してほしくないものですね。失敗と思っていない確信犯だったらもっと恐ろしいですが。

    さて、この本は現在進行中の「アベノミクス」に警鐘を鳴らしている本です。アベノミクスを礼讃する本も多く出ている中で、両方の意見に耳を傾けていきたいと思っています。

    この本の著者の中原氏によれば、「悪いインフレ」より「良いデフレ」のほうが良いのではと論じています。デフレに慣れ切った生活を、私が社会人になってからずっと続けているので、インフレに転じるときの対策はそろそろ準備する必要があると思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・アメリカは連邦制なので、連邦準備銀行は12あり、それを統合するのがFRB(p23)

    ・量的緩和とは、金利はもう下げようがないけれど、別の方法で世の中に出回るお金の量を増やそうとする、別な方法とは、一般銀行の持っている国債を買い取って、銀行にお金を供給する(p28)

    ・国債の消化方法は、1)金融機関への入札を通じた市中での発行、2)個人向け国債、3)日銀による保有国債の借り換え、がある(p34)

    ・ロシアのデフォルトでは、1997年に1ルーブル 20-22円だったものが、半年もかからずに 5円の価値となった、サブプライムローン危機のあとは 2円台、いまも 3円台前半のまま(p37)

    ・先進国が構造的に給料が上げにくい状況になっている大きな原因の一つは、2000年以降の資源エネルギー価格の高騰により、先進国の所得が新興国に流出(交易損失)している。2012年では 18.9兆円(p53)

    ・FRBバーナンキの評価が高いのは、株高・通貨安・インフレ・利率低下が実現され、政治に大きな影響力を持つ富裕層は儲かったから(p54)

    ・インフレ期に経済活性化し、所得が上がるという理論(クルーグマン)は、エネルギー価格が安かった 90年代後半までしか通用しない理論(p56)

    ・見事に抜け落ちているのは、消費者の買い物の現場・設備投資をする中小企業の現場・賃金をもらう労働者の現場、である(p58)

    ・2010年にアメリカのFRBがQE2を実施したとき、多くのものが値上がりしたが、玉ねぎだけ上がらなかった、先物やETFがないから(p70)

    ・実需なら、1バレル(160L)は50ドル程度と考えられるが、実際は90-100ドルとなっている、先物取引などによる金融商品が売買されているから(p72)

    ・世界貿易の7割はドルが決済通貨、アメリカから見れば、海外からの借金の目減り分は、自国に還流するシステムになっている(p74)

    ・日本は2000年以降、経済構造が2度大きく変わっている、ひとつは世界的なエネルギー価格の高騰、もう一つが、東日本大震災と原発事故(p80)

    ・経常収支が赤字に転落するとき、つまり、国と企業と家計の資金の合計が国内に足りないことを意味するので、国債暴落の可能性がある(p87)

    ・円が 90-95円程度でとどまるならば、日本が経常赤字になるリスクも少ないだろう(p89)

    ・2012.11にアメリカ国勢調査の発表によれば、2011年の国内貧困層は、4970万人で全国民の6人に一人、世帯収入が2.6万ドル(住宅ローンあり)以下を貧困層とする(p101)

    ・低成長は「デフレのせい」ではない、低成長の結果が「デフレ」(p105)

    ・日本の企業の利益率が低すぎるのは労働分配率が高いから、アメリカと同じ労働分配率にしたら日本の賃金は一気に下がる(p120)

    ・リフレ派は 2008年以降の数字しか見せないが、日本は2001年から2004年までの4年間で、190兆円の量的緩和している、これは 2008-12年までアメリカの量的緩和の総額(2.3兆ドル)に相当する(p125)

    ・1998.9にLTCMは破綻したが、ドリームチームによるロシアがデフォルトする確率を 100万年に3回とした。ドリームチームにノーベル経財賞受賞者が2名いるが、経済賞は、スウェーデン銀行が1969年に300種年記念で出資したもの(p129)

    ・石油化学工業各社にとって、シェールガスは「原料」でも「燃料」でもある、石油化学工業はガス化学工業になろうとして、アメリカへ進出している(p148)

    ・エネルギーコストが下がるとは、全ての製品・サービスの価格を下げることになる(p153)

    2013年9月16日作成

著者プロフィール

1970年生まれ。慶應義塾大学卒業後、金融機関や官公庁を経て、現在は経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。大手企業・金融機関、地方公共団体等への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に務めている。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。実質賃金、実質成長率など、名目数値よりも実体経済に近い数値推移で市場を把握する。著書に『AI×人口減少』(東洋経済新報社)、『日本の国難』(講談社現代新書)など。

「2021年 『マンガでわかる その後の日本の国難 稼ぐ力の高め方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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