光秀の定理 (単行本)

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 210
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  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105221

作品紹介・あらすじ

永禄3年、京の街角で3人の男が出会った。兵法者・新九郎、謎の坊主・愚息、浪人中の明智光秀。やがて3人は歴史の重い扉を開いていく。戦国の世に一瞬の光芒を遺した男たちの軌跡を描いた新感覚の歴史小説!

感想・レビュー・書評

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  • 先に読んだ「信長の原理」が面白かったので、遡ってこちらも読んでみた。
    「信長の原理」で出てきたいくつかのシーンやセリフもあって、あの時の光秀側の視点も少しわかる。

    なんと言ってもこの作品の肝は、四つの椀を使った賭け事の理(ことわり)。詳細については書かないが、これぞまさに目からウロコ。それを発見した愚息もすごいが、しつこいまでに繰り返し試行させその理に気付いた信長も只者ではない。だが先に「信長の原理」を読んだ私としては、このしつこいまでに試行させる場面は信長らしさが感じられて面白かった。

    世の変遷や身分や人間関係にとらわれず、この時代の武士としてのこだわりにすらとらわれない愚息と新九郎が、光秀の生き様と見事に対比されていて清々しい。
    最大の謎である、何故光秀が謀反を起こしたのかという点については愚息と新九郎の想像でしか書かれないが、少なくともそこに光秀本人の『意思』があったのだということは納得出来た。

    そしてこの四つの椀の理から導かれる『本当の意味』はかなり興味深いものだった。
    何故信長や光秀は滅び、秀吉や家康は天下を取れたのか。
    だがやっぱり日本人は秀吉や家康より、信長や光秀が好きなんだろう。

  • 先に読んだ、信長の原理と対になる一冊。光秀の一生にスポットを当てて、その死後15年ほど経った後、かつての友垣の2人が、追想して十兵衛を語るエンディングは、やや間延びした感があった。

  • 遂に時代物にも手を出してしまった!
    いよいよジャンル問わずに手当たり次第
    まあ時代物の入口が垣根涼介さんというのが妥当かどうかはさておき

    内容はすごい面白かったなあ
    光秀の友垣となった愚息と新九郎がもうあれ好き!

    戦国の世に生き「本能寺の変」という歴史の大きな分岐点ともいえる大事件を起こした明智光秀という人物を愚息と新九郎という人物からの視点で語ることによって光秀の人物像を紐解き「本能寺の変」の謎を解き明かあーもういいやめんどくさ

    面白かったし
    愚息と新九郎の考え方もなにか人生の中のひとつ進み方としてもってていいように感じた
    また本篇に縦に通った愚息の賭け事の謎も生きる上の指針になりうるよね
    そう感じました

  • 兵法者の新九郎、坊主の愚息、そして明智十兵衛光秀。出会った3人の生き方と、それぞれの論理。その中で光秀は、信長に仕え、歴史の中に取り込まれていく。愚息の辻博打で見せる理論が、折々の展開や生き様に影響を与えていく。
    話の中心となる定理と、それぞれの解析方法やその影響をうけた生き方がおもしろい。定理を考えることから、生き方を変えていく新九郎、定理を使うことで、戦をのりきった光秀。タイトルは光秀の定理であり、光秀の歴史がメインの話になっていくものの、やはり基本は3人が絡んだ話であり、光秀に対して離れても、よき友として見ている二人の語らいが気持ちよかった。
    こういうロジックの絡む話は、面白いんだが、そのロジックをきちんと理解できたかというとちょっと怪しいのが、自分的にはこまったところです。書評などをみると、同じ作者の信長の話は、ちょっと毛色が違うみたいですが、読んでみたいと思いました。

  • 私が、今まで読んだ本の光秀の扱い方は、信長の家臣としての光秀であり、秀吉の要領の良さとは対照的な人物として、それも本能寺の変に至る経緯のような取り上げられ方だったが、この本は
    全然違っていた

    ふとしたことで知り合った、兵法者新九郎、謎の坊主愚息、そして明智十兵衛光秀

    乱世、誰の世話にもならず自由に生きる二人に対して、片や正統な美濃源氏の嫡男の光秀、立場は違うが、互いに惹かれあい交流を深めていく

    この二人から語られる光秀は、妻子や家臣への愛と責任感、棟梁としての義務感を持った人間味あふれる人物であった

    本能寺の変の15年後、二人は十兵衛が何故あの事変を起こしたかを十兵衛の身になってとことん考え抜いてやろう、それが、何よりの供養になるに違いないと語り合う

    「・・・十兵衛が、自らの郎党を慈しんだ気持ちは、その志向を広げていけば、この国の民の行く末を危惧する気持ちと変わらぬ
    だからこそ、見方によっては単なる主殺しにしか見えぬ出来事が、この国の歴史を大きく変えた」 と

    光秀の人となりの他にも、愚息と新九郎の存在感が突出していた
    決して人にもたれかかろうとしない、人を利用しようともしない
    おもねることもない 我を貫く生き方とその口から語られる真理
    は、深かった


  • 村上隆が青春小説と表現していたが、確かにそうかも知れない。生き方をシンプルに決め、それに沿って生きる。承認欲か支配欲か、その表裏である保護欲か。しかし、そんな欲や関係性に囚われず、単に愛嬌に惹かれるという事もあるのだろう。人が人に打算なく懐くような関係。主従なく、序列なく付き合わねば生じない。だから、会社組織で直接的利害が絡むなら、本当の友人には成り難い。序列や秩序なき、無軌道で単純な愛着形成。青春とは、無軌道にあるのではないか。

    光秀を愛した坊主と兵法者。立場に関係なく、互いに認め合う間柄へ。著者特有の、確率論を絡めたストーリー展開。単純に面白くてページを捲る手が止まらなかった。

    シンプルに生きたいな、と思う。同時に、人生には、家臣や周囲を気にして生きねばならぬ人と自由人と、気楽さの選択があるような気がした。気楽さの選択。これもまた、承認や支配欲の換言となる出世欲とは表裏のもの。さあ、どちらの人生を選ぶか。

  •  明智光秀の物語というより、愚息であり、新九郎の物語である。そして、歴史小説というより、青春小説である。
     
     明智光秀は本能寺の変を起こした人物としてくらいしか認識していなかったが、こんなにも優秀な人物だったと初めて知った。また、どちらかといえば悪役というか、あまり好感が持てる人物でなかったが、本書を読み、その思い込みを覆された。
     とはいっても、歴史のことは何が正しいかは残っている書物から推測していくしかなく、誰にもその本質は知りえないだろう。

     それにしても、垣根涼介。そのキャラクター作りは見事としか言いようがない。とりわけ新九郎のキャラが魅力的に映った。もちろん愚息も良いが、ただの兵法者であった新九郎の成長していく姿はなんとも魅力的である。
     歴史小説が好きな人はもちろん苦手な人にも強くお勧めできる作品だ。

    • chie0305さん
      ひとしさん、こんにちは!
      今の私に、高田郁さんの本合ってたのかも。ひとしさんのジャンルとは違うかもしれないけれど(私も人に薦められて…。...
      ひとしさん、こんにちは!
      今の私に、高田郁さんの本合ってたのかも。ひとしさんのジャンルとは違うかもしれないけれど(私も人に薦められて…。ホントに面白いの?って感じでした)機会があれば読んでみて下さい。ああ、でも相当先になりそうですね(笑)
      2017/09/17
  • 「ワイルド・ソウル」や、「君たちに明日はない」シリーズを著した垣根涼介の初の時代小説。
    書評欄等でも高い評価を得ており、期待を持って読み始めたが、期待通り、いやそれ以上の作品。
    本能寺の変には、様々な陰謀説が歴史家、愛好家の間で論じられており、最近は、四国説が有力な歴史資料により浮上してきている。しかし、ここではあくまで光秀の行動原理から、本人自らが起こした必然の行為としている。
    それにしても、進行役と言っていいか、狂言回しと言っていいか、新九郎、愚息両人の痛快な生きざまが、この作品に爽快感を与えている。
    むしろ、主役はこの二人か。

  • 3分の1読み終えたか辺りからすごくおもしろくて読むスピードがどんどん早くなり一気に読んでしまいました。最後の藤孝とのシーンはプレゼントのような感じでいいエピソードだったので大満足しました!でも、最初の方はよくわかんなくてつまらないと感じてしまったから星4つにしました!読んだ後考えると最初も肝心で面白いんですけど笑

    数学のトリックといい、愚息といい本当に良かった!名言を連発!!!とても良かったです。
    最後にでてきた名言「生き方を変えられぬ者は滅びる」戦国の世ではなおさら、現代でも通じるいい教訓だと思います。やはり本は学ぶことが多い…
    光秀の見方が変わるのは確実です。今までもそんなに悪いイメージはなかったけど、いい人だったのだとしみじみ思いました。人間関係に不器用な人だったのが…って感じ。

    歴史大好きな人には絶対オススメです。歴史興味無いとか知らなすぎる人はきついかも、、、

    長々と失礼しました。

  • 小説とは言え 光秀に対する考え方が変わった。信長との関係とか 光秀ってこんな人だったんだとか。実在人物と史実に 架空の愚息と新九郎が加わって 光秀との絡み とても楽しく読めました

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著者プロフィール

1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。

「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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