JR崩壊 なぜ連続事故は起こったのか? (角川oneテーマ21)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.04
  • (2)
  • (5)
  • (13)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 81
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041106747

作品紹介・あらすじ

相次ぐJR北海道の事故・不祥事を招いたものは何か? 背景にあるいわゆる「JR三島会社」の経営難や、国鉄民営化の際の見通しの甘さを踏まえ、その構造的問題を指摘する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  2011年から13年にかけて、JR北海道で相次いで起こった脱線事故や車両の不具合の原因を分析し、安全が担保できない程の経営難であることを含め、JR北海道が抱える構造的な問題を指摘した本。事故の解説については技術的なことも含め、鉄道経営の話についてはデータを駆使して、問題点と筆者の提言がなされる。
     『JR崩壊』というのは物騒、というか落ち着かないタイトルだとおれは思ったが「JR北海道をはじめとする鉄道事業者が共通して抱える問題を放置しておくと、いずれ危険な状況に陥るから改めなければならないとの願いを込めたもの」(p.195)らしい。正直鉄道の経営とか、あるいは北海道についても全然馴染みがないので、読むのに苦労するのかと思ったし、実際興味の持てないデータの話も多々あったけど、主張自体は明確で読みやすい。なんといっても国鉄民営化、でJRグループが出来たけど、「経営状況が脆弱」なJR三島会社(JR北海道、四国、九州)&JR貨物と、本州にあるJR東日本、西日本、東海の二分化できる、というのが、印象に残った。ロゴの色が違う、とかそういう話ではない、ということが分かる。
     第3章までは筆者の分析や提言だが、第4章は「識者の意見」として交通評論家、という肩書の人と元JR九州の社長の2人が現在と今後のJRについて語る章になっており、この章は極めて分かりやすく、興味深く読めた。特にJR九州の元社長の話は「常に改革し続けていかなければ改革ではない」(p.168)とか、「消費者が何を基準に選ぶかと言ったら理性的な価値ではなくて、感性的な価値で選ぶ」(p.177)とか、「現場と現物と現実」の「三現主義」(p.183)とか、ビジネス書みたいになっている。「ななつ星」をヒットさせる思想、というのが経営を立て直したハウステンボスやUSJの話みたいで、面白かった。確かにJR北海道だってこの元社長の言うように「開拓使的な原野的なロケーション」(p.190)を活かしたビジネスなんてできそうだけどなあ、と思うけど、同時に経営はそんなに簡単なものじゃない、というのも分かるし、もう1人の識者も言うように「技術屋さんと営業屋さんと労務屋さん」(p.144)のバランスが悪いということで、そういう発想に至らないという、まさに構造的な問題というのもあるらしいので難しい。
     今から7年前、なので、こういう不祥事を受けて今はどういう状況になっているのかよく分からないということと、北海道はよく分からないのでJR東日本の場合はどうなのかということを知りたいと思った。(20/09/18)

  • 民営化の中ですべてがうまく行ったわけではないことがよくわかる一冊。特にJR北海道含む三島各社と貨物の状況はなお厳しい。べき論だけで片付く話ではないことを認識しつつ、鉄道事業の存在意義を再認識するべき時であると思う。

  • 知らないことがいっぱい有った。
    今、JR北海道に起こっていることを、少し理解できるようになった。

  • 久々に質の低い本を読んでしまったなーと。既存のレビューとも重複しますが、下記の点が問題。

    ①看板に偽りあり
    『JR崩壊』と言っているが、JR北海道のことしか書いていない。冒頭で、JR北海道の問題は他のJR各社にも当てはまる、だからタイトルはこうだ、というロジックで論が始まるのだけれど、いざ読んでみると北海道の寒さでディーゼルがどうこうとかポイントがどうこうとか、沿線の距離とかがどうこうとか、ほとんどJR北海道固有の問題についてしか述べられていない。加えてJR北海道固有の問題とJR全体の問題が混同されている。そりゃ最後、有識者にも「こんなタイトルになるなんて」って驚かれますよ。

    ②出典が不明
    途中で「JR東・西日本は整備新幹線の運用を歓迎していない」みたいな記述がありますが、ソース不明。こういうのが随所にあって、公表データと一部へのアンケート送付以外、ほとんどまともに取材していないことがわかる。

    ③論理があまりに稚拙
    JR北海道との比較に、観光資源としての価値も維持費も物価もまったく違うスイスの山岳鉄道を引き合いに出したりと、やりたい放題。そして結論が「料金を上げれば黒字になる」というのだから、唖然呆然。著者は本当に専門家なのかと。この著者の意見は、最終章で出てくる堀内氏、石井氏のコメントにより、あっさり否定されています。

    このように著者の取材やタイトル設定、肝心の論評があまりに稚拙ですが、客観的に見ればJR北海道で起こった事実関係を把握できる資料的な意味はあり、さらに堀内氏、石井氏による著者の主張を否定する、著者の論よりはロジカルなコメントを隠すことなく掲載しているので、☆2つ分の価値はあると思います。

    著者の梅原氏、他の著書はなかなか好評のもあるみたいだけど、この本に関しては書いてることが本当にひどいです。この本のせいで仕事なくなるんじゃないかってレベル。

  • まとめた記事としては良いと思う。タイトルを「JR北海道崩壊」にしなかった点が他の方の評価に影響を与えているような。

  • 由々しき事故が相次いだJR北海道だが、同情すべき点も多い。広大なエリア、人口密度の低い地域に張り巡らされた鉄道網、冬の過酷な厳しさ。最悪の環境下にあることは十分に考慮する余地がある。極寒の中、列車の運転が全面休止されてもおかしくないような状態でも時刻通り動かさなければならない。しかも主力車両はディーゼルカー。メンテナンスが複雑なうえ冬季は一晩中アイドリング状態にしていなければならない。内地に比べ莫大なコストを必要とするにもかかわらず、運賃は公共料金扱いで営業収益が悪化しても変更するのは極めて難しい。いきおい管理職はコストの削減だけを言い、お客様や現業部門の声を軽視してしまう。現場から破損箇所、故障したものを修繕したいとの申請があっても社員の落ち度と撥ね返してしまう。事故前、現業部門は軌間が基準値より広がっていたことに気づいていたにもかかわらず、管理部門には報告しなかった。JR北海道の復権には、固定資産税、軽油引取税、都市計画税の減免、経営安定基金の活用等、実質的な公的支援の議論も大事だが、まずしなければならないのは、管理部門と現業部門の風通しの悪さの改善。人と人との信頼関係を取り戻すことが最も大切と思う。

  • 昨年くらいに続発したJR北海道の事故多発問題を分析してみたもの。巷では労働組合が悪いなどということもまことしやかに語られているが、問題はそのように単純化できるものではなく、国鉄改革時の改革の不徹底(民営企業として成立しうるレベルまでの十分な資産を渡さなかったこと)が問題であり、対応策についても一応意見が書かれている。JR北海道の問題は単純ではなく、公的企業が大きな問題を抱えた場合にどうすればいいかの試金石になるかもしれない。

  •  やはりとは思ったが、それほど評価は高くなかった。

     批判覚悟で書いたようだが、大体は北海道内であれば指摘されていることだしなあ……

  • 北海道は大変です…

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1965年、東京生まれ。鉄道ジャーナリスト。『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。執筆活動を中心に、マスメディアでの解説や講演、鉄道に関して行政が実施する調査等にも識者として参画している。

「2021年 『JR貨物の魅力を探る本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梅原淳の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×