獄の棘 (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 80
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041107126

作品紹介・あらすじ

獄の棘とは刑務所の鉄条網のこと。この閉ざされた内部では、外からは窺い知れない様々な事件が起こっている…いじめ、内部告発、偽装結婚、脱獄……新米刑務官が見た、塀の仲の真実とは……? 傑作社会派ミステリー

感想・レビュー・書評

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  • 若い刑務官の目線から刑務所で起きるあれこれを描いた話。
    7話収録。

    「赤落」
    主人公の良太は刑務所に勤める若き刑務官。
    彼はある日、キャリア刑務官の命により、刑務官の中で行われているギャンブルについて調べる事となる。
    賭けは「赤落」と呼ばれ、被告人の刑が確定した後、控訴するか否かを賭けるというものだった。
    ちょうどその頃、刑の確定した男性がおり、刑務官らは1人を覗いて控訴する方に賭ける。

    「脱獄の夜」
    模範囚で刑期が満了に近い受刑者が脱獄を企てる。
    そこにはある事情がー。

    「プリズン・グルーピー」
    プリズン・グルーピーとは、犯罪者に同情し、追いかけまわす人間のこと。
    主人公の刑務所にちょっとした有名人の受刑者がおり、その男性のプリズン・グルーピーの女性が現れた。
    やがて、二人は獄中結婚するが、そこには別の事情が絡んでいた。

    「幸せの天秤」
    工場作業のない日に行われる講話。
    そこに寺の住職と犯罪被害者家族の男性がやって来て講話をする。
    その後、受刑者たちに書かせた感想文に、ある人物を許せない、殺したいというものが見つかる。
    その感想文を書いたのは誰なのか、主人公が探る内に見えてきたのは刑務官から受刑者に対する酷い虐待だった。

    「矯正展の暗号」
    受刑者たちが作った家具を販売する矯正展。
    その売れ残った家具に数字を羅列したものが見つかる。
    やがて、その数字の暗号を解いた時、強盗を示唆したものだと分かるがー。

    「獄の棘」
    最初の話でキャリア刑務官に刑務所内の賭けを調べろと言われた主人公。
    それは仲間を裏切る事であり、この話で主人公は姿の見えぬ相手に脅される事となる。

    「銀の桜」
    刑務所に研修で新人がやって来て、主人公は指導を任される。
    その頃、受刑者の一人がコップの破片で自殺を図るという事件が起きる。

    読んでいて、ここまで刑務所の中の人間関係は殺伐として恐ろしいものなのか・・・と思った。
    主人公のいる刑務所は一応、他の刑務所に比べたら情がある方となっているけど、それでもかなりなものだと思う。
    辞めていく刑務官が後を絶たないというのも分かる。
    刑務官自身がまるで犯罪者のような・・・癖のある人間ばかりで、私ならここで働いてたら精神的におかしくなるだろうと思った。

    そんな風にアクのある人物が多いせいか、主人公があまりにも個性が薄いという印象を受けた。
    「いい人」とさかんに周りが言うけど、どこがいい人なんだかイマイチ伝わってこない。
    「普通」というのが「いい人」という事なのかもしれないけど・・・。
    他の、クセのある刑務官の上司や先輩もどこか中途半端な人物設定という気がした。

  • ドラマ化されるというので読んでみた。初めて読む作者の作品。
    刑務官の話。一話、一話完結しているので、確かにドラマにはなりそう。
    ただ、所々読みにくかったり、話がまとまりすぎている感じもした。

    主人公が刑務官になって成長していく話。刑務官の上下関係、仕事内容、心情など今まであまり触れたことがなかった世界だったので、そういう意味では新鮮だった。

    ストーリーとしては、もう少しひねりがあり、またすぐにわかってしまうのではなく、ひっぱて欲しいなと思う箇所もあった。

    しかし想像するに、勤務を続けるのも厳しい仕事であると感じた。

  • 刑務所の中の事が淡々と書かれてます。盛り上がりもないので普通に読み終わりました。

  • 弘前刑務所に勤める親子三代目の刑務官、武島良太。ベテラン刑務官に揉まれながら、赤落ちと呼ばれる刑務官の賭博、過酷ないじめや制裁、脱獄などドロドロとした刑務所内の様子を体験する。キャリア組の名久井は刑務所内の悪の根元、不良刑務官を一掃するべく良太に調査を命じる。良太とベテラン刑務官の不穏な雰囲気があったが、深みのある人間関係が築けたのが良かった。刑務所内の浄化と矯正を目論む名久井の狙い、その不良刑務官の正体とは?人情的な話としてもミステリーとしても読み応えがあった。

  • 不協和音に興味がわいて探した結果なく
    同じ作者のこちらを借りた。
    秋村さん不良だけどこんな人が上司だと
    頼もしいかも。名久井さんより付き合いやすそう。

  • 弘前刑務所の新米刑務官、武島良太が主人公。受刑者が、時には刑務官がおこすトラブルを経験していく連作短編7話。刑務所内の改革を目指しているキャリアの若き看守長からはスパイ活動を強いられ、素行の良くないベテラン看守部長からは可愛がられているため、両者の間をソツなく渡り歩くのに苦心する様子も見所。驚いたのは、刑務所内で催される盆踊り。しっかり櫓を組み、櫓では婦人会の女性が踊り、受刑者にも浴衣が貸与される。どの登場人物も味がある。おもしろかったです。

  • 17年3月から窪田正孝主演でWOWOWでドラマになると云うので読んでみたが、まあちょっと変わった刑務所の中での刑務官の話。謎解き部分もあるし、まあそれなりに面白いし、ドラマも見てみるかな? 泉谷さんがまさに囚人にしか見えないそうだ。

  • 2017_01_04-001

  • 刑務所の中で起きる事件の本格推理小説。連作短編物。
    この作家特有の刑務官や刑務所の社会問題を絡めながら物語展開を組み立てている。
    キャラクターもしっかりしていて、読みやすく謎解き要素あり面白かった。
    取材もさることながら、人間性に重きを置く手法が板に付いてきている!!
    ミスリード狙いが是正されてくると深みが増すのだが、今後の課題かも?

  • 刑務所を舞台にした連作ミステリ。刑務所なので当然さまざまな犯罪に関係はあるわけだけれど。ジャンルとしては日常の謎ミステリに近いです。ほのぼのは……してないけど。
    当たり前のことだけれど、犯罪者も人間なら刑務官も人間。いくらルールを定めたところで、更生するかしないかは本人次第だし、あるいは接する刑務官の態度によって影響される部分もあるのだけれど。逆にいくら手を尽くしても更生できない犯罪者もいるわけで、その間での刑務官の苦悩にはかなり重いものがありそうだと感じました。つらい仕事だなあ。
    お気に入りは「矯正展の暗号」。タイトル通り暗号ミステリ。この真相が分かった時には、なんだかとても微笑ましい気分になってしまいました。

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著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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