ジェームズ・ボンドは来ない (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041107195

作品紹介・あらすじ

2003年、瀬戸内海の直島が登場する007を主人公とした小説が刊行された。島が映画の舞台になるかもしれない!島民は熱狂し本格的な誘致活動につながっていく……。実話をもとにした小さな島の心温まる物語。

感想・レビュー・書評

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  • なんて淋しいタイトルなんだろう、と思った。
    “来なかった”ではなく“来ない”。

    そう、ジェームズ・ボンドは“来ない”のだ。
    今までも、そしてこれから先も。

    「007」の新作小説『赤い刺青の男』の舞台として登場したことから、香川県直島が始めた映画誘致の活動の実話を元にした小説。
    ベネッセの各施設が出来る前のプロローグから、ほんの数年前までの長い期間のお話だった。
    以前から直島には行きたいなと思いながら、なかなか叶っていないのだけど、こんな活動があったことを知らなかった。
    署名は八万人に及んだという。
    どこまで実話か調べずに読んだけれど、「赤い刺青の男」記念館は実在するらしい。
    「ボンドガールはうちや!」コンテスト(ミスコン)も実際に行われたらしい。
    では、その後の出来事も、事実だった、のだろう、か。

    熱に浮かされたような署名運動やイベントが盛況なほど、その後に判明した事実が痛い。
    責任を擦り付け合う県側と島民たちの小競り合いも苦い。

    ラストで主人公・遥香が「日常」を生きていく姿は前向きで地に足がついている。爽やかだと言ってもいいような情景。だけど、そこまで読んできた私には少しほろ苦さが残った。


    直島に行きたくなり、「007」の映画を観たくなる(私はD.クレイグver.が好き)けれど、それ以上に小説『赤い刺青の男』が気になって気になって!
    巨大な心臓のオブジェの陰からボンドを狙う刺客は・・・河童!
    河童!!(思わず二度言う)
    あああ読みたい誘惑にかられるっ!!!

  • 『あの世界的映画を
    わたしの島で撮影させる!』

    岡山県と香川県の間の瀬戸内海に浮かぶ
    美しい自然が残る人口3千人の島、直島(なおしま)。
    直島の由来は素直な人たちが住む島という意味。
    自分が生まれ育った直島をもっと都会にしてみんなが裕福な町を作りたい、
    誰もが憧れる島にしたいと願う16歳の女子高生、峰尾遥香。
    直島を舞台にした007の原作『赤い刺青の男』をなんとか映画化し、観光の目玉にしたいと画策する香川県フィルムコミッションと直島町議会の老人たち。
    2004年3月、
    ひょんなことから知った「直島にジェームズ・ボンドを呼ぶ企画」に賛同し、島を活性化させるため、ロケ誘致署名運動にのめり込んでいく遥香。

    待ち受ける困難や嫌がらせ。親からの猛反対。
    原作者であるレイモンド・ベンソンからの手紙。
    遥香たちの追い風となる、007の映画化権を持つMGM/UAを日本企業のソニーが買収したという衝撃のニュース。
    集まった8万人にも及ぶ署名と
    ボランティアの力だけで築き上げた007記念館と
    映画出演権付きボンドガールコンテストの開催…
    なんとかして過疎の島を変えたいと願う島民たちと遥香の思いは
    果たして叶うのだろうか?
    知られざる実話を基に描かれた青春ノンフィクション。


    ずっと読みたかった本。
    まず印象的なタイトルと儚く美しい表紙が秀逸です。
    いやぁ~、それにしても
    イアン・フレミング原作以外に007を主役にした小説があったことと、
    日本でこういう誘致運動が行われていたことを恥ずかしながら初めて知りました。
    (映画制作の複雑な構造とからくりも勉強になります!)

    007シリーズと言えば日本でもほぼ2、3年置きに公開されていて、
    お馴染みのテーマ曲と共にその年その年の有名歌手たちを起用した主題歌も大ヒットしてましたよね。
    そして毎作ごとにスタイルのいいセクシーな女優が起用されるボンドガールも話題の的だったし。

    熱心な007マニアではなかった小学校時代の僕でさえ、
    ジェームズ・ボンドが乗るボンドカーとして有名なアストンマーチンのミニカーや、
    水陸両用のロータス・エスプリのプラモデルなんかにハマってたくらいの影響力だし(笑)、
    昭和の日本で007シリーズの映画と言えば
    寅さんに匹敵するお正月恒例の人気作だったのです。

    だからこそ、そんな映画を
    日本で撮影することに情熱を燃やし夢を見る人たちの気持ちは笑えないし、痛いほど分かるし、
    観光になる目玉の何もない過疎の島が原作に書かれているとなれば、
    島民が躍起になるのも尚更ですよね。

    将来やりたい仕事も展望も何も持たなかった少女が
    病院もコンビニすらない過疎の島を
    ただただ華やかな場所にするために大きな夢を見て、
    少しずつ夢に近づき
    そしていつしか挫折し、
    最後に小さな奇跡を起こします。

    「事実は小説より奇なり」を地でゆく驚きの展開に
    ページをめくる指が止まりませんでした。

    松岡さんの作品は初めてだったけど、読みやすくテンポのいい文章と
    ノンフィクション小説でありながら
    一人の女子高生の成長を描いた青春小説とも呼べる仕上がりで
    読後感の爽やかさも◎。

    とは言え、素直な島民たちだからこそ、
    権力に都合よく利用されたり、
    金目当てで集まってきた輩に
    容易く騙されてしまう直島の人たちの姿は読んでてかなり切ない( >_<)

    しかし、素直な島の島民や遥香だからこそここまで頑張れたのだろうし、
    遥香の素直さ、ひたむきさが
    最後にとてつもなく大きな気付きと
    ささやかな奇跡を呼んだのは間違いない事実だと思う。

    少子高齢化と過疎に悩む小さな島の理想と現実、
    島おこしの方法も含めて
    この物語を読んでいろいろ考えさせられました。


    ★小説内に出てきた直島の007記念館が見れます↓
    https://www.youtube.com/watch?v=WsoXdf_TImc&feature=youtube_gdata_player

  • まったく知らなかった。直島で007の誘致活動が行なわれていたなんて~
    実話に基づくお話しって事で、驚く限り。読み終わってすぐネットで調べまくったし(笑)
    今1番行きたい場所、直島が舞台って事で、それだけでも満足だったけど、
    全体的に面白かったな。文章も読みやすかったし。

  • ジェームズボンドが主人公である小説「赤い刺青の男」の映画化、そして小説の舞台となっている直島のロケ誘致を目指す島民のお話。
    実話なんだね?! 007ファンであると自認しているのだが、恥ずかしながらこの話は知らなかった。
    直島には007記念館も有るらしい。
    過日、J.ディーヴァーの「007白紙委任状」を読んだ時も思ったのだが、映画にすればいいのに思ったものだ。
    そのくらいよく出来た小説だった。本作を読んで知ったのだがイアンフレミングが書いた作品以外は映画化された事はないそうだ。
    だからそもそもこの話の前提自体に無理があったのだが、そんな事はしらずに映画化を信じて突き進む島民たち。
    素直な人々が住んでるから「直島」と言うそうだ。
    島の女子高生を主人公として話は進むが小説の中では、ピアースブロスナン主役で007は公開中。ここまでは女子高生は「赤い刺青の男」の映画化は「有り」だと思っていた。
    主演俳優ごとに「007」は結構テイストが変わるのは有名な話だが、主役が現在のダニエルグレイグに代わった「カジノロワイヤル」を見た途端女子高生の夢は砕け散る。あまりにもリアリティのある007。最早007は力士と戦わないし、河童と戦わないし、車は宙返りしないし、タイガー田中は姫路城に住まない事に気付いたからだ。
    この辺の描写は007ファンなら嬉しい処だろう。だって本当だから。
    小説は主人公がソニー社長であるハワードストリンガー宛に書いた島民の思いを綴った手紙が引き起こした小さな奇跡を描いて終わる。暫くは「赤い刺青の男」が映画化されることは無いだろう。しかしこれから先またロジャームーア路線が復活しないと誰が言い切れる?(私は好きだったけどね。)
    直島の夢は終わらない。

  • 大好きな作家さんが、大好きな007を書いていてくれてたなんて驚きました。しかも同じ女子高校生が主役でもいつもとは全くちがった話に、二度びっくり。たまにはいいかもしれません。

  •  「千里眼シリーズ」や「ミッキーマウスの憂鬱」的な展開を期待していたので、期待外れの感が大きかったです。
     でも、直島の人たちの島おこしに対する情熱は理解できたし、あの情報流出問題を起こしたベネッセが実名で出ていることにびっくり。
     あの問題以降も島の美術館は大丈夫なのか?心配になりました。
     007の映画撮影は出来なかったけど、島が豊かになり、病院やコンビニが出来るように誘致運動に必死になってた遥香が、普通に幸せになっているラストが良かった。

  • 実話に基づいた話なんだって。
    直島でこんなことがあったなんて全然知らなかった。
    瀬戸内海国際芸術祭のイメージしかなかった。
    映画の撮影で賑わうとか、知っている人が映画に出演するかもというのは確かに盛り上がる。
    観光で盛り上がるのは一瞬だけだと思うのだけれどもなぁ。
    住んでいる人が楽しんで積極的に関わりたいと思えるようなこと、ずーっと継続していけることでないと島の発展は望めないのではないかしら。

  • 一昨年読んだ本だが、書きかけのレビューがPCに残っていたので。

    初めて親同伴でなく映画を観に行ったのは高校一年の夏だった。
    同じ野球部の友だちと二人だけでの映画鑑賞。
    女の子と会うわけでもないのに、何故かちょっとだけ服装に気を使った。
    映画館の入っているビルの一階にある本屋さんで待ち合わせ。
    そこから、エレベーターで映画館のあるフロアに上がる。
    生まれて初めて自分の意志で観に行った映画。
    それが007シリーズ「死ぬのは奴らだ」だった。

    期待に胸を膨らませているとスクリーンの幕が上がった。
    南の島で奏でられる太鼓と祭りのざわめき。

    鮮烈なオープニングだった。
    ポール・マッカートニーとウイングスの華麗なテーマ曲。
    ジェームズ・ボンドのファッションと仕草のカッコよさ。
    ボンドガールの可憐でエロティックな美しさ。
    それら全てが僕を虜にした。

    新ジェームズ・ボンドである“ロジャー・ムーア”のお披露目となる
    シリーズ第7作「死ぬのは奴らだ」。
    それから僕は、007シリーズの新作が封切になる度、
    欠かさず観に行くようになった。
    本気で僕は007に憧れ、世界を股に掛けるスパイになりたいと思った。
    それはその後、年と取って“いい大人”になっても変わらなかった。

    今でも「007」や「ジェームズ・ボンド」と聞けば、興味が湧く。
    だからこの作品のタイトルを知ったとき、読みたいと思った。

    どうやらこれは実話らしい。
    「赤い刺青の男」というタイトルの007映画は
    これまで封切られてなかったので、知らなかったが。

    中学生の遥香は自分の住んでいる“直島”に
    007の映画のロケ誘致を進めようと、いろいろな策を考える。
    遥香の母親が昔の007のボンドガールコンテストに応募していた、
    という事実。
    遥香は懸命に“直島”復興のために奮闘するが、結果は───。

    007オタクの僕にとって実に面白い話だった。

    巷では現在の“ダニエル・クレイグ”ジェームズ・ボンドの評価が高いようだが、
    ジェームズ・ボンドとしては、真面目すぎるところがちょっと物足りない。

    僕は、ウイットやユーモアに飛んだ粋な会話の応酬があったりする
    “ロジャー・ムーア”や"ピアース・ブロスナン"時代の頃のほうが、
    普通のアクション映画と違った魅力があり、好きだった。

    昨年の暮れに、最新作「スペクター」が封切られたので観に行ったのだが、
    途中で爆睡。
    どんなストーリーだったのか、内容を殆ど覚えていない。
    別につまらなくて寝てしまうわけではないのだ。
    最近、映画を観に行くと何故か必ず途中で睡魔に襲われ寝てしまう。
    さすがに、もう一度お金を払って同じ映画を観る気にはならず、
    どんな映画だったのか、数カ月先のDVDレンタルまで待たねばならない。

    その後に観に行った「スターウォーズ/フォースの覚醒」のときも同様。
    何とか治さないと劇場で映画を観ることができなくなってしまう。
    と悩んでいる僕なのであります。

  • 題名から思ってたイメージと全く違う実話でした。
    007が好き故の許されるツッコミは楽しかったです。現実は厳しいことがはっきり描かれているけれどまっすぐな直島の人達が変わらなくて良かったと思うくらいそのままでいてほしいです。

  • 「本書は実話に基づく」作品であるとのこと。
    エンタティメントとして読むには面白かったが、実話に基づくとしたら切ない話だ。
    もちろん登場人物周辺については膨らませてあり、そこが小説としての読みどころなんだと思うし、小説としての落としどころは「そうきたか」と思えるものだった。
    それより、この当時の007シリーズに関する認知度の低さにも驚いた。

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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